中指の長姉兼アビドスの二年生、見鷹アリサ   作:柚子古豪二千

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失った者、手放さなかった物、あるいは砂にまみれて埋もれゆくもの

『カイザーの撤退を確認しました…』

「疲れましたね〜」

「アヤネちゃん、これいくらで売れると思う?理事の残骸」

『アリサ先輩はその前に便利屋の皆さんに謝ってきてください。すごい目で見られてますよ…残骸は売りましょう』

“アリサちゃんは私からも怒るね”

 

そう言われて便利屋の方を見る。

紫が視線だけで私を撃ち殺せそうなほどに睨んでいる。白髪も笑みこそ浮かべているが爆弾の入ったバッグを今にも投げそうだ。

 

「ハァ〜……悪かったね。暴言吐いて」

「私も貴女の邪魔して悪かったわね。でも貴女って私のこと社長って思ってない?」

「だってそんなアホ……んん、間抜……まぁ、以下にも人の良さそうな顔だし」

「アホ!?間抜け!?!?」

「ハルカも謝ってるんだし許してあげなさい。それがアウトローよ」

 

やっぱアウトロー向いてないな…なんだ適当に謝っただけで許すって。

すぐ死ぬぞコイツ…

 

「この謝罪は後で改めてするから……ごめん」

「アル様が許すなら私も許します。ですが……」

「ですが…?」

「アル、嫌な予感がするんだけど」

「奇遇ね。私もよ」

「この爆弾が許しますかね!?!?」

「これは紫ちゃんが悪いなー」

 

紫がキレた。

キレたのは紫じゃなくて爆弾らしいけど。

…謝罪も済んだし後は一億でも包んで便利屋に持っていこう。紫は適当にいなせば良い。

 

「で、理事は死んだ…けどこれもボディが壊れただけだよね?」

“うん。データが転送された記録が残ってる。まだ終わってないよ”

「…背中滅茶苦茶攻撃されてるけど」

「ノーダメージ。話戻すけどこれでヘリや兵、特注の黒いゴリアテも失ったから戦力はダウンしてると思う?」

「ん、カイザーは大きい会社だからこれだけだと本社からさらに兵が送られると思う」

 

私もシロコと同意見だ。これしきで終わるんじゃあんな大口叩いて無理やり侵攻するわけがない。

次はこれの非じゃない戦力が必要になるだろう。

その時スマホが震える。…嫌な予感がするのは私だけかな…

 

「宛先、ゲマトリア…」

“ゲマトリア!?”

「それってカイザーと繋がってる…!?なんでアリサちゃんが?」

「私もホシノ先輩と同じで勧誘来てた。……そんな目で見ても勧誘は受けないって」

 

そこで言葉を切って便利屋を振り返る。

制服が破け始めたしそろそろこのうるさいのともお別れだ。

おいだからその爆弾を投げるのやめろ…ティルフィングで突き壊すのもめんどくさいんだって。

 

「じゃ、謝罪金は後で振り込んどくから。じゃ、さよなら……これ返すね」

「えっ謝罪金!?そんなのいらないわよ私が割り込んできた……ちょっと!?」

「次あったら必ず殺してやります!!どこにいようとどこであろうと!!!」

 

信心も行き過ぎたらめんどくさいなぁ……これを飼い慣らせるコイツはアウトローの才能はないけどリーダーの才能はあるかもしれない。

……今度あったら甘いものでも持っていこう。金ならあるからとびきり高級なやつ。

見たときのアルの顔が楽しみだ。

 

⬛️⬛️⬛️

 

「アリサちゃんが言いたくないなら剣のこととかは聞きませんけどちょっと口はチャックしたほうが良いですね〜☆」

「分かった、聞かないでくれるのは助かるけどちょくちょく聞こうとする人もいるし」

「なにか言いましたか〜?」

 

私は何も言ってない。

だからその耳の上をぐりぐりする拳を下ろして。悪いのは私なのは分かったから。

邪魔したのはアルだけど。

 

「先輩が言い過ぎたのが悪いので大人しくしててください…」

“アリサちゃんはもっとコミュニケーション力を鍛えたほうが良いね”

「いや話すより引き金を引くほうが早いからキヴォトスって」

 

温泉開発と渉して道路を爆破してビルを壊す奴らや大抵の飲食店を爆破するやつがいるから手は出る。

正義側も勝手に侵入してビル壊すから新手のテロリストだ。

その時、ポケットの中のスマホが震えた。

一旦ノノミの手から逃れてスマホを開く。恐らく黒服からだ。

うん、予想通り。

 

「あ、ゲマトリア」

「ゲマトリアってホシノ先輩が書いてた組織の…!?」

“連絡先知ってたの?”

「私だって勧誘受けてたからね。正直ホシノ先輩が止めてくれないとアイツと契約する気だったし私。そこを先輩に止められた」

“そうなんだ。……なのにホシノちゃんは行っちゃったんだね…”

 

本当に困った先輩だ。だからノノミ、その拳をホシノ先輩に取っておいたほうが良いんじゃないかって思うんだけど。

 

「で、黒服…ホシノ先輩にも契約を持ちかけた奴は夜の7時にビルに来いって言ってる。黒服に色々聞くならここがチャンスだと思う」

“そっか。アリサちゃんにも…行こう。できることなら何でもしたい”

「よし。じゃ…また6時に学校で」

 

瞳に映る私を見ながら頷いた。

 

「…カイザー理事、どうしましょう…」

 

⬛️⬛️⬛️

 

「来たね」

“…ホントは私だけで来たかったんだけど”

「仕方ないでしょ。先生道順も分かんないんだし」

 

夕暮れの校門前、いつになく硬い表情で先生がやってきた。

時間的もちょうどいいし出発しよう。

 

「こうやって先生と二人で話すのも久しぶり…っていうか初めてだね」

“だね。なんだかんだで忙しかったからねぇ”

 

太陽の方角に向かって歩きながら少しづつ話し始める。

 

「私がアビドスに入学した理由って結構不純っていうか…私頭よくないから廃校寸前のここなら試験も簡単かなって…ホントはミレニアムに生きたかったんだけど如何せん学力がね」

“私も勉強苦手だったなぁ…英語の文法とか訳わかんなかったもん。かと家計簿”

「入学当初のホシノ先輩は今みたいな感じじゃなくてもっとピリピリしてるっていうか。余裕ないし言葉に棘あるし。…ところでここってタバコ吸っても……」

 

口寂しさを覚えてタバコを出すと即座に先生に咎められるような目を向けられる。

未成年喫煙はダメか……ワインをぶどうジュースと偽れば酒くらいはイケるか。

一回やってみよう。ウォッカは水だし。

 

“私タバコ吸わないタイプだし…どこで買ったのこのタバコ”

「乙女の秘密ってやつ」

“…そっか。じゃあ私も詳しく聞くのはやめとくね”

「なんで先生も皆もこう…優しいの?無理やり聞き出すことも私も秘密なんていくらでも分かるのに」

“生徒が本気で嫌がってることは出来ないよ。アリサちゃんの心の準備が出来たらそのタバコも、剣の事も話してほしいな”

 

生徒をむやみに信用するところは先生からなのかこの人の人柄なのか。

都市には存在しない性格の人だ。…これも信用させて裏切るっていう可能性もありえるが。

 

「そうだね……いつかはちゃんと伝えますよ。私も剣のことも、罪も全部」

“うん。よろしくね。そしてここが黒服の所?”

「うん。住所と地図にはここだって」

 

咳払いをして敵影を警戒する。カイザーと契約してるんだからここらへんにカイザーの兵が居たっておかしくない。今すぐ扉を蹴破りたい衝動を抑えながら警備員に黒服からのメールを見せる。

渋々、といった感じで通された。そのままエレベーターに乗り込み目的の回へと向かう。

この景色どこかで見ような……

 

「着いた。油断しないで」

“うん。ここからは大人の戦いだよ”

「…お待ちしておりました。見鷹アリサ。そして先生」

 

黒いスーツに異形の頭。黒服、と名乗った男がそこにはいた。

ニヤついているかのような白い亀裂が形を変えることなく男の声が発せられる。

 

「あなた達とは一度こうして、顔を合わせてお話してみたかったのですよ」

"御託はいい。私は、私の生徒たちを助けるためにここに来た。だからアリサちゃん。外で待っててくれる?"

「いや。私もここにいる。あのメールは私宛に来たものだし。大人っていうのなら私だって聞く権利くらいはあるでしょ?」

“……あとでラーメン奢ってあげるから”

「私よりお金ないでしょ」

 

先生は微妙な顔をしたが私が意地でもどかないことを確認すると改めて黒服に向かい合った。

私はタバコに火をつけて黒服を睨む。敵意のたぐいは感じられない…この部屋にはこの三人だけしか居ない。

 

“あなたがゲマトリア何だよね?”

「ええ。私はゲマトリアの一員、黒服とお呼びください。まずはっきりさせておきたいのですが私は貴女と敵対するつもりはありません。むしろ良好な関係を気づいていきたいのです。連邦捜査部シャーレの先生」

“…残念だけど私はあなたたちとあまり仲良くする気はないかな”

「そうですか。私達は探求者であり研究者。未知の存在である貴女達とはぜひとも仲良くさせていただきたいのですが……」

「こっちから願い下げだね。今殺さずにいることに感謝しな」

 

壁にもたれかかっていつでも黒服の首に手をかけられるようにしながらも話を聞く。

いつ壁をぶち破って怒りに満ちた理事が現れるか分からない。先生は無力なんだし私がそうなる前に殺さないと。

 

「連邦生徒会長の残したオーパーツを扱える大人、先生。約一週間昏睡し、未知の力を手に入れた見鷹アリサ。お二人とも私達が喉から手が出るほど欲しいのです」

“アリサちゃんになにかしたら…”

「安心して先生。契約は断るから」

 

黒服の目の前に置かれている書類を見る。私に関する契約書類だ。

それをよく見えるように破り捨ててポケットに入れた。

残念ながらホシノ先輩が居ない以上私までしっかりしないわけにはいかないのだ。

 

「アリサさんならそう言うとお思いでしたよ。ですが先生。この神秘と不可思議に満ちたキヴォトスと解き明かし、真理と秘儀を手に入れる提案を断って貴女は何がしたいのですか?」

“真理や秘儀はどうでもいい。私はホシノを返してもらいにここに来た”

「心意気は素晴らしいですが小鳥遊ホシノは契約書にサインをしました。もうアビドスの生徒ではありません。退部届を確認されていないのですか?」

“確認したよ。でも…対策委員会顧問である私がサインをしていない。だからホシノちゃんはまだ私の生徒でアビドスの副生徒会長だよ”

 

ほんとにあれが柴関ラーメンで発狂していたあの先生と同一人物なのか?

知らぬ間に入れ替わったりとかはしていないだろうか…

やる時はやるタイプってことだな。

 

「私はただ砂漠で水を求める者に水を差し出しただけです。その値段を一生かかっても返せないほどに釣り上げて。大人である先生なら覚えがあるのではないのですか?」

“私が知っている言葉でこれをボッタクリっていうんだけどね”

「こういうのは死ぬほど見てきた。騙されて、叫んで嘆いて破滅する。確かに都合の良い…良すぎるカモだ。力がある者がない者から奪うだけ。ありふれたつまらない話」

 

中指もある意味はそうなのかもしれない。因縁をふっかけ、叫んで嘆いて懇願するものを甚振る。

私はそうならないように強くなった。 そして泣いて懇願する者を甚振った。

 

「小鳥遊ホシノを諦め、見鷹アリサをこちらに渡すというのならば……」

「いい加減黙れ。先生、交渉決裂だ」

「どうあっても貴女達は私と敵対するおつもりなのですね。アリサさんはともかく先生には戦う力もないというのに」

“私にはこれがある”

 

そう行って先生が取り出したのはただのクレジットカードだ。

何の変哲もないカード。だがそれを目にした黒服は少し身を乗り出した。

 

「…それが何を意味するかお分かりですか?使う度に貴女の生が、時間が削られていくのです。ですからそのカードはしまってください。貴女にも自身の生活というものがあるでしょう?元々貴女の知り得ることのなかった学校です。放っておいてもよいではありませんか」

“断る”

「…なぜ?私には理解できません…どうして拒むのです?自身がどうなろうとも良いのですか?そのために自身を使い潰して見ず知らずの他人、家族でも姉妹でもない赤の他人にすべてを捧げるというのですか!?」

“今までこの子達には責任を取る大人も寄り添える大人も居なかった”

 

私はそこで初めて先生を気持ち悪いと思った。

黒服の言うとおりだ。たかが数日、数週間一緒に過ごしただけの薄い関係。

それだけでこの大人は私達を……異常だ。

優しいと言うにはあまりにも優しすぎる。きっとすぐに死ぬ人種だ。

 

「なぜ取る必要のない責任を…」

“それが大人で、先生である私がすべきことだから”

「その生徒が理解不能な存在だとしてもですか?」

“アリサちゃんのことを言っているんだったら、そうだよ”

「アレは生徒から逸脱しています。大人にならざるを得なかった生徒…いえ、それよりも尚酷い」

「私のことアレとか舐めてる?」

 

もはや完全に私は蚊帳の外だ。この隙に殺せないかな。

いや、それやったらどうせカイザー来るか。殺したら何が起こるか分からないけどやってみる価値はあるはずだ。

 

「……私お前ら嫌いだわ…帰ろう。先生」

「では最後に一つだけお聞かせください。貴女達にとって大人とはどういう存在ですか?…大人とは思いのままに社会を改造し、法則を決め型にはめ、弱いものを支配するものです。先生、貴女はキヴォトスの支配者になり得ました。しかしそも地位、財産、権力を全て捨てた…何故です?」

 

先生は一瞬私の顔を見て頭を撫でた。

思わず顔をしかめながら手を払いのける事もできずに手を受け入れる。

 

“言っても理解できないと思うよ”

「…なるほど。貴女と私の交渉は決裂です。もしかしたら良き仲間となっていたかもしれないというのに……」

「やっと終わった。帰ろう、先生」

“え、そっちは窓だよ…?”

 

困惑する先生の手を引いて窓辺に近寄り、ポケットに手を入れる。

忍ばせておいた手榴弾の感触を感じながら黒服に言う。

 

「今回は先生が居たから見逃したけど次は絶対に根絶やしにしてやるからな。ゲマトリア。忘れるなよ…中指はいつでもお前達を狙っている。せいぜい夜道には気をつけるんだな」

“え、ちょっと…うわぁっ!?”

 

手榴弾を投げつけ机においてあった通信機器を奪い取り窓を蹴破り外へ飛び出す。

先生を抱えて落ちる頭上から爆発音と爆炎が吹き出し、夜を照らした。

あたりはすっかり暗くなってしまっている。

黒服も対策はしているわけだしこの程度死んでるわけがない。

ただ拠点の一つを潰せたんだしやる価値はあったかな。

 

“急に何するの……”

「私なりの仕返し。黒服、ずっと訳分かんない話してきて頭痛かったんだよ。先生いなければ出会い頭にドタマぶち抜く予定だったし」

“やる時はちゃんと言ってよぉ…急に飛び降りたらびっくりするじゃん!”

 

足に刺青の力を込めて着地の衝撃を和らげる。無事に二人とも怪我なく帰ってこれた。

先生の異常さも思いしれたことだしカイザーと通信しているであろう機械まで奪ってこれた。

これになにかホシノ先輩の居場所があれば良いんだけど。

 

「で、黒服のこと、どう思う?」

“少なくともいい人ではないと思うよ”

「人…人間ではないでしょ。あの見た目だし。服着たゴミ袋でしょあんなん」

 

黒服…ゴミ袋はずっと前からホシノ先輩のことも狙ってたみたいだし偉そうに難しいこと言って結局仲間にならねーか、だ。

先生はそんなことをしないだろう。不気味だし気色悪いほど私達のことを考えているし。

 

“アリサちゃんは口が悪いねぇ…先生将来が心配だよ”

「ホシノ先輩みたいなこと言うじゃん」

「ん、二人ともおかえり」

「ただいま。まだ居たの?」

「先に帰るわけにもいきませんから」

 

行きと違ってあまり会話もなく、そしてカイザーの襲撃もなく学校に帰ってこれた。

皆不安そうな顔をしている中回収した機械を置いた。

 

「小鳥遊ホシノは契約後、カイザーPMCの実験室に輸送。6時に実験開始予定」

「それって…!」

「ホシノ先輩の場所……!」

 

思ったとおりだった。中に残されていたのは黒服と理事の会話内容。

少し先生に頼んでハッキングしてもらう必要があったがその内容はホシノ先輩に恐怖を適用できるかという実験。

その後、仮に生きているとしたらカイザーの兵として使われるということも。

恐怖が何なのかは分からないがよくないということは分かる。

 

“それじゃあ皆!ホシノちゃんを助けに行こう!!”

 

 




今までタイトルを一年生にしたということにようやく気がついた
ほんとは二年生です

お試しでAI使って文章の校正などを行いたいけどAI使って許せる?

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  • 全然使って良い
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