基地前に到着すると早速オートマタやカイザーPMCに拾われたか雇われた兵士、戦車にヘリが私達を出迎えた。
どうやらあっちもこちらを迎え撃つ準備はできているようだ。
ため息を付いて帳簿を開いた。これまでの罪はしっかり帳簿に記載済みだから逃れられない。しっかり仕返ししてやる。
「それじゃ先生、いつも通りよろしくね」
“うん。絶対ホシノちゃんを取り返そう!”
ティルフィングを背中から抜いて戦闘準備に入り、敵を見つめる。
その指が動いた瞬間踏み込んでその鉄の身体を一刀両断しながら振り返り盾を構えるオートマタの頭を殴り飛ばす。
それが戦闘の合図となってか周りにいた複数体の敵が、私に向けて引き金を引いたので上に跳ぶと見事にお互いを撃ち抜いた。その光景を眺めながらかかとを振り上げ重力に従い落ちていく。
足につけられた鎖が風によってジャラジャラと音を奏で、そして敵の後頭部にめり込む。
砂埃が舞い、私を見つけられなくなった敵の混乱する声と、叫び声を聞きながらまずはうろたえている敵の頭をもぎ取り投げ捨て兵士にぶつける。
「なんだこれ…頭っ!?」
「はいそこ、うるさい!」
唐突に足元に味方の頭部が転がっている光景に叫び声を上げる兵士のヘイローを刈り取るようにティルフィングで思い切り後頭部を殴打した。一応頬を蹴って置く、よし、気絶してるな。ヘイローも消えているし。
やっぱり人を殴れると気持ちがいいねぇ。
「おい、なんで手止めてる!」
「だってもう弾丸が……!」
恐怖に震える部隊の雑魚の意識を刈り取ってこっそり手足を踏み潰しておく。恨むんなら理事とカイザーに入った己を恨むんだな。
続いて私の目線の先を通過したアルの爆発弾によって、よろめく兵士の鳩尾を殴りつけ右腕を掴んで身体を蹴り飛ばした。飛ばされたオートマタは右肩の穴からコードを垂らしながらトラックに突っ込んだあげく壊れた。
ここでは機械も弱いからつまらないな…その分敵の数が多いから楽しめそうだが。そう思いながら剣の封印を解いて少し鋭くなった剣で、オートマタの左腕を切り落とした。
攻撃手段がなくなって慌てるロボットの切断面に、銃口を突きつけ内部から銃弾で破壊する。
なるほど、必ずしも頭だけを狙う必要はなかったんだな……これでもいいらしい。
「アリサ!頭下げなさい!」
アルの声の言うとおりにして目の前にある敵の膝を蹴り壊して無力化すると紅い弾丸が私の頭上を通過した。
私が目の前で関節を砕かれて痛みに叫ぶ敵からやっと武器を強奪して顔面を殴った所であの盾を持ったオートマタに着弾し、爆発して空に上る煙から鉄の装甲や銃などが飛び出してきた。
盾持ちは健在だけど取り巻きが巻き込まれたのか、気絶した生徒を踏みつけながらひたすら前に向かいやがて鎖で閉じられたフェンスの前へとたどり着いた。
「よし、後ろには誰も居ないな?」
「うん。全員気絶してる」
小さく呟いてデカいだけの盾を構えるオートマタの後ろに回り込んでかかと落としを入れてもう一体を切り裂く。
基地前の奴らは掃討したのでフェンスを蹴り開ける。鎖が蹴り跳び、文字通り空中分解する。
それを無視して先へと一歩踏み出しながら辺りを見回す。
以外にも私達以外には誰も居なかったが左にある踏切が空いてそちらから敵が登場する。無駄にカッコいい登場だな…
「一丁前にカッコつけて…」
「そっちですね〜!」
「ん、ターゲット指定完了」
シロコのドローンが宙を跳び敵のドローンと撃ち合いを繰り広げている中、部隊に爆弾入りのバッグが投げ込まれ混乱がもたらされる。
それによって崩れた部隊にシロコと二人で潜り込んで、敵を視線を引きつける。
腕に当たりかけた銃弾をティルフィングで叩き落として、撃った敵に狙いを定める。ティルフィングをダーツみたいにして投げ飛ばし、兵士を複数気絶させる。ヘイローが消失したことを確認して、ティルフィングを地面から引き抜き、再びオートマタには殺戮を、ヘイロー持ちには四肢をいずれかを折りに走った。
四肢くらい数本折れてもどうにもなるだろう…ちょっと、乱暴にしちゃったからもしかしたら直らないかもしれないけど、先に手を出したあっちが悪いので仕方ない。私達は被害者だしね。
それにしても…
「…シロコも結構足グセ悪いよね」
「ん、そう?」
「先生がここに来たときの初めての戦闘で盛大にヘルメット団の顔面蹴り飛ばしてたしさ」
あれは記憶に新しい。シロコにもセリカちゃんと同じようにスパッツを履かせるか私と同じようにズボンに変えるように勧めるか…いや、余計なお世話ってやつだろう。
口内に銃口をねじ込んで引き金を引き華奢な体を蹴り飛ばして、トラックの荷台の角にぶつかって動かなくなったことを確認してから次の敵へと狙いを定める。
盾持ちから盾を奪い取り頭部を踏み砕いてから普通のオートマタの腹部に手を入れ、ぐちゃぐちゃにかき乱しながら確実に機能停止に追い込んでいく。
頭の中を裏路地で有名なパレルモがよぎったが、すぐにその考えを捨てた。私には似合わないし今更ほっそい剣で精密な技術を使った所でどうにもならないだろう。私には乱暴に殴ったり暴れるほうがあってる。
もしシロコが剣とか使ったらカッコいいだろうけど使う日が来ないことを祈っておこう。
「…シロコ、剣に興味ある?」
「……?何の話」
「やっぱなんでもない。気にしないで、記憶から捨てていいよ」
気をとりなして銃口をヘリの窓ガラスに向け連射する。一瞬機体が揺れたので、その隙にヘリの下部に捕まりティルフィングを持ち直す。私を見失ってか暴れるヘリに振り落とされないようにしながら、ティルフィングを持って下から突き刺すと何やら重い手応えと爆発する!という叫び声が、上がって機体が爆炎に飲まれる。
私は操縦桿か、燃料タンクを貫いたらしい。
燃えゆくヘリと落ちるオートマタも逃さぬようにヘリを蹴ってオートマタに追いつき頭部をむしり取る。
首からコードを延ばす様はなんとなく間抜けに見えて面白い。そして背後で墜落したヘリが大爆発を起こした。
「ふぅ、面白かった……セリカちゃんもやってみる?ヘリに乗るの」
「アヤネちゃんのヘリには乗せてもらったけど下に捕まるのはやりたくないわね……アリサ先輩はあれでヘリに乗ったって言うの?」
「…見方を変えればそうでしょ」
私がヘリを壊している間に敵はあらかた殲滅できたみたいで壊れたか気絶している敵がちらほらいた。まだまだ序盤だし、そろそろ敵も私達に気づいても良い頃だからやがて忙しくなるはずだ。もう一段階剣を解放できればよかったけど敵がそこまでタフじゃなかった、残念。
“皆、怪我はない?”
「うん、大丈夫」
「今は敵が全員死……倒れたけどここもまた敵が集まってくるはずだから早く先行こう」
『いえ…もうすでに東方と北方から敵が……!』
ようやく敵も本領発揮ってところか…ここに集めてもいいけどそれだとめんどくさいし…
どうしようかと一人頭を捻っていた時、突如背後から大砲の音が響き、何者かが新しく通信してきた。
相手は…紙袋をかぶったトリニティ生だ。滅茶苦茶怪しい。
『L118、トリニティの牽引式手榴砲です!いったいどうして…って、ヒフミさん!?』
「……ヒフミ?誰そいつ」
『あっ、私はヒフミではなくファウストです!』
「今アヤネちゃんがヒフミって…」
『私はファウストです!そして私もこの牽引式手榴砲もトリニティとは一切関係ありません!』
自分で言っているのは無視してやるとしよう。トリニティに助けられると今度何されるか分からないけど文句行っているわけにもいかないし。
『すみません…皆さん困っているのにこれくらいでしかお役に立てず…』
「ううん。とても助かった」
『あ、そういえば…東の方で音楽流しながらオートマタ達を倒している人がいたんですが…知っていますか?』
「音楽…?」
その報告に思わず口角を上げる。北側はファウスト率いるトリニティが、東は図らずもヒースが担当してくれているらしい。
これは大いに助かる。今頃理事が電子声でギャアギャア騒いでいることだろう。
ヒースもあのオートマタを全員壊して時期にこっちに来るはずだ。
でも、まずは……
「第2陣だ。まだまだ気ィ抜けてられないね」
『あはは…皆さん、頑張ってください!』
正面からぞろぞろ迫る敵に私達は銃を構え直した。
⬛️⬛️⬛️
黒いオートマタが盾を振り上げ、防御壁を展開する。真正面から撃ち合っている皆とそれに気を取られて私に気づいていないオートマタの背中を切り裂き前へと蹴る。
もう一体もすぐにだるまにしてやった。
「オートマタってさ、もっといろいろ入ってるかと思ってたけど意外とコードだけなんだね。面白くない」
『どの視点で見てるんですか…あ、アリサ先輩、補給品です』
通信越しのアヤネちゃんに親指を立てて絆創膏を貼る。やっぱり前に出たせいか、少し擦りむき傷や切り傷が目立つ。
これくらいどうってことないけど後々がめんどくさいからな……
「…にしてもよくアルはあの紫を飼い慣らせたな…」
「なにか言ったかしら?」
「いや?」
飼い慣らせたからこそあの狂信者っぷりになったのか、初めからああだったのか…できるだけ敵に回したくはないタイプだ。
ま、勝つのは私だけど。
「もっと強い敵とはいないの?ただ多いだけじゃん」
「弱いに越したことはないと思うよ。それに…アリサが強すぎるだけだと思う」
「はは、ただ強くても強いだけじゃ何にも意味ないよ?」
“………”
先生からの謎の沈黙と一緒によく分からない視線をいただいたがすぐに眼は逸らされ指揮に使うタブレットへと向けられた。
よく分からないけど、まぁいいか。後でゆっくり問い詰めればいい。めんどくさいからしない可能性が非常に高いけれど。
それにもうすぐヒースが到着すると思うから少し気を抜けるとはいえ、まだ敵はいるんだし余計な事を考えないようにしないと。
“セリカちゃん、そっちに敵が二体いるよ!”
「え!?分かったわ!」
“あとアヤネちゃんはアリサちゃんとハルカちゃんを支援してあげて!”
『はい!今から飛ばしますね!』
だがこちらのほうが戦力を上回っているのか、先生の指揮がすごいのかヒヤッとさせられる場面は少しあったものの、それでも格段に安全な方法で進行することが出来ていた。
やがてフェンスや踏切はなくなり、砂に覆われて崩落した家の残骸や埋まった電柱が見え始めた。
この当たりまでは行ったことがなかったがここまで砂に覆われているとは予想外だった。人が居なくなるのも当然だ。人が一人二人くらい死んでいそうだな、この感じだと。
「よくあの二人はアビドスに入ってきたな…」
「なにか言った?」
「独り言…あ、左前方の物陰と屋根の上にいるよ」
そいつらはすぐにノノミのガトリングに撃ち抜かれて屋根から落ちた。
それを踏みつけて完全に壊し、眉間に当たる弾丸の感触に顔をしかめながらティルフィングを振って、敵を誰も居ない家の中へと招く。痛くはないが如何せんウザい。
オートマタの頭頂からティルフィングを振り上げ、串刺しにする。それを持ち上げて地面に叩きつけ肉塊…じゃなかった、ゴミの塊になったそれを振り払う。これはもうやめよう。時間がかかりすぎる。
「クルセイダーは私とアルが担当するからその取り巻きはよろしくね」
「じゃあ私がいい感じに目眩ましするからその隙に壊してちょうだい!」
そんな事もできるのか?よく見ればアルが使ってる武器種はスナイパーライフル……まぁ、本人が言ってることだし一応信頼しておいてやろう。
アルはなんと片手でクルセイダーの下部に爆発弾を撃ち込み、見事に命中してみせた。これは意外だな…口先だけで祭り上げられてるだけかと思ったら実力もあったとは。
兎に角、これで十分な隙が生まれた。狙いは定まって居ないしめの前の私の姿すら捕らえられていない。
当然負けるわけもなく迷彩色のクルセイダーはティルフィングによって鉄くずに姿を変え、その姿を爆炎に消した。
『目標地点に到着しました!この当たりにホシノ先輩が閉じ込められているはずです!』
「これで一段落……疲れたわね…」
「アリサちゃんの呼んだ協力者さんも頑張っていることですし私達も早く行きましょう!」
「…ここって学校だよな?」
「あ、ほんとね。もう廃墟になっちゃってるけど……」
あちこちが砂に占領されてかつては広大な土地と生徒数を誇っていたのだろうがその姿は見る影もない。
恐らく、ここが……
『ここが、かつてキヴォトスで一番大きく、強大だった学校…アビドス高等高校本館だ』
「…理事。また新しいボディに変えてご満悦ってところか」
ペッ、とチビたタバコを吐き捨てて火を踏み消し新しいものに火をつけた。今すぐにでも殺してやりたいがそれをしたらホシノ先輩に対する実験が……いや、黒服も探して殺せばいいのか。
じゃあさっさと送ってやろうと足を踏み出したがカイザーが従えているオートマタに銃口を向けられ、シロコに袖を掴まれる。今は我慢しろってことか……
『カイザーPMCはここで総力戦に持ち込むつもりです!』
「総力戦…いい響きだ。乱戦は楽しいもんだしさ」
「いや、私達だけでこの量に勝てるわけないじゃない!いくら貴方が強いからって……!」
「大丈夫」
確証はないがなぜかそう言えた。
己のピンチに気づくこともない愚かな標的がまだ煽り足りないのかその口は減ることを知らない。よっぽと鬱憤が溜まっていたのか、発情期なのだろうか。
バカは死んでも治らないと言うがまさしくその言葉通り……いや、正確には別の機体にデータを移しただけだから死んではないんだろうけど。じゃあゴキブリだ。
『砂漠化が侵攻し、捨てられたアビドスの中心地。その地下にゲマトリアは実験室を立てることを要求した』
「この地下に…ぶち抜け…はしないか」
「そんな事よりホシノ先輩はどこですか!」
『小鳥遊ホシノは……もしかしたらすでに実験が始まっているのかもしれぬな。どうしてもというのなら私達を振り切っていけばいい。見鷹アリサがいるとはいえ君達にそれができるとは思えないが』
「っ……ここは私が……」
「いや、その必要はない」
シロコの肩を掴んで飛び出しそうなその姿を見ながら上を見る。耳を澄ますとどこかからあの音楽が聞こえる気がする。……そろそろだ。
ティルフィングの蒼い刀身を眺めてからその切っ先を理事に向ける。ここで完全に殺してやる、という意思表示も込めて。
「私達は便利屋と一緒にいるから、皆は先に行ってあげて」
手を皆の方に向けて振り払いながら一歩前に踏み出す。カイザーの兵が臨戦態勢に入り理事もいつでも撃てるぞ、というような余裕の笑み…少なくとも表情筋があったらそうしていただろうと思えるほど不気味に笑った。
だが誰も上を見ていない。理事も、これだけいる兵士も、全員。全身、義体だからそういうの分かりにくいのかな。何分義体を見たことも殺したこともあるけどなったことは一度もないのでね。
「いや、だからアリサ先輩と便利屋だけでこの量は……あれ?」
「音楽…上から?えっ、人!?」
“……あれがアリサちゃんの言ってた協力者?……その、ヤク…なんでもない”
「…ま、いいや。それじゃ、先輩のこと、よろしくね」
全員上を見ていたが私の声にハッと前を向いて腕を伸ばしてきた。それが届かぬうちに私はティルフィングを理事に投げると同時に走った。雑魚を蹴散らし、そして上を見る。両方のサングラス越しに目があった気がした。
土煙が舞い上がり、私の姿も敵の姿も砂に覆われる。混乱の声と咳き込む声、そして理事の叫ぶ声とゴリアテらしき機械の音が聞こえるが、何より耳に響くのは聞き慣れてしまった、あの音楽。
「中指構成員の侮辱…理不尽な借金…脅迫……」
『誰だ…お前は!?』
「あぁ、だからオレが来た。カイザー…お前達に苦痛を刻みにな!」
向こうで紫の刺青が光、あちこちで苦痛に呻く声がする。いい気味だが少しは私のぶんも残してもらいたい。
私だってこいつらをぶちのめしたいのは同じだ。
「記憶は大事…死にながらよく覚えとくんだな!オレの名前はヒースクリフ…中指の末兄、ヒースクリフだ!」
⬛️⬛️⬛️
ヒースが最近ようやくフサフサが戻り始めた髪を掻き上げながら身体中に入った刺青を光らせ、敵を殴り潰す。
それでも息の根が消えていないに回し蹴りをいれてティルフィングを振り上げ、腕をもぎりとる。
「義体でも殺せんのか?」
「さぁね。死んでなかったら後でゆっくり、何度でも殺してやればいいんじゃない?」
血が見れないのが非常に残念だがそれでもたまにはこうして戦いの楽しむのも非常にいいことだ。都市に行くとどうも憂鬱になるから……
それに弟が見てるんだからカッコ悪い真似は出来ないんだ、しっかり遂行しないと。
「っと…逃げちゃう前に殺せてよかった…」
この場から離脱しようとしたバカに向けて銃口を引き、震える身体を踏み潰して飛び上がり、地面にクレーターを作ったヒースを援護するように首を飛ばす。
面白くはあるがやっぱりつまらんな…戦いは血を見ないと。
「チッ、しけてんな…どいつもこいつも同じ反応しやがって……」
「その分の怨恨も上乗せってことでいいでしょ。コイツらがこんなに弱いとは思わなかったんだし」
思えば私は中指の代表とも言えるべき存在でヒースはなんだかんだ幹部的立ち位置にはなれたんだ。今更義体風情に負けたりしないな。
それでも久々に肩を並べて怨敵に拳を叩き込み内部のコードを引っこ抜いて空っぽの身体を地面に散らばらせ、短時間で与えられる限りの苦痛を与えるのは楽しい。弟が成長しているってのも見えて嬉しいしね。
「全員これだけで死ぬってのも気に食わねぇな…こっちはまだまだ遊びだってのに」
「でも、そうやってると足元救われるよ?」
そう言って銃口を片腕が潰れたオートマタに向けるもそれより早くヒースの拳がその胸部を貫いた。……殺し合いをしてきた歴はヒースのほうが断然上だから言うまでもなかったな。これに関しては全員に負ける。
その時、背後からなにかの気配を感じる。続いて背後から迫る小さな物体の気配。耳鳴りがなるような錯覚を覚えた中、手を伸ばしてそれを掴み取る。
……真っ赤に白熱する弾丸だった。これは、確か、アルの……
その考えが思い浮かんだ瞬間に再び拳を握った。指の隙間から黒煙が上がり、顔を歪める。さすがにあれを受けるのは厳しかった……
「いや、何やってるの…!」
「え、掴んだ……!?」
白目をむきそうなほどに驚いているアルを睨みつけてから舌打ちをして八つ当たりに目の前のオートマタの腹を踏み潰して上部に向かって足を進める。鉄を裂き、配線を断ち切る感触がなんとも気持ちがいい。
それにしてもまだ便利屋とあの子達がホシノ先輩の所に行っていないのは想定外だった。私達は大丈夫なんだけど、お人好しすぎる先生達はなぜか中指の手が回っていない敵を倒している。
さっきの弾丸も後ろのクルセイダーを狙ったものだったんだろうな。
『クソ…なんだ…なんなのだお前らは!!唐突に割り込んで…何の理由があって我々の邪魔をする!!』
「あ?うっせぇな…オレは長姉様に頼まれたんだよ。んで、お前らを全員処刑するだけだ」
「そしてホシノ先輩を解放してもらうよ」
ティルフィングを回して銃口を下にずらし、バキバキとデカいオートマタの身体を潰す。理事はというと叫ぶのをやめていそいそとゴリアテに乗り込んだ所だった。
それを追って後輩たちが指揮の元に駆け出すのを背景に群がる雑魚の腹をまとめて殴り貫き、地面に叩きつけてティルフィングで首を刎ねる。
ふと理事を見ると何やらあのデカい砲台にエネルギーを貯め始めていた。
「…こういう無駄なチャージ時間作るから死ぬんだよ」
『なっ…!見鷹アリサァッ!!!お前は…お前は尽く私の邪魔をしてくれる!!』
ティルフィングを砲台の根本に突き刺し、深く蹴り込む。思ったとおりにチャージが止み、更にショートしたのか理事の焦った声が盛れる。大当たりだ。
やがてあちこちの銃痕よって穴が空き、見るも無惨な欠片になったゴリアテから爆発に巻き込まれたか服が破れてボロボロな理事が吐き出された。既視感を覚えながら笑みを浮かべて理事に歩み寄る。
『くっ…!私を殺す気か!?そうしたら小鳥遊ホシノはどうする!?私抜きで実験を止めるのか!?それにボディを移せばそれでいいのだ……!』
「へぇ。興味ない」
ティルフィングを振りかぶって脳天に叩き込む。光が消え、あれほどうるさかった声が消えた。
もう一発斬る。更に傷口が広がって断ち切られたコードが血管のように広がった。それを踏みつけて剣をさらに振り下ろす。右半身と左半身が泣き別れ、どうにも見栄えが悪い。
そこで腰からも斬ってやるといい感じに四分割に出来た。これでスッキリしたな。
ぐしゃぐしゃ、と鉄くずを踏みつけて砂に還しながら皆に言う。
「ホシノ先輩の所に行こう」
“……うん”
⬛️⬛️⬛️
重厚な扉は確かに学校だったものの地下にあった。それをだいぶボロボロになった拳で殴り破る。
数人がありえないものを見る目でこちらを見ているが無視して踏み込んだ。
「ここがゲマトリアの実験場…なんだか普通だな」
「実験場は普通なんですかね?」
そんな会話をしながら新たに敵はいないかとティルフィングを構えているが特に何事もなく最奥の扉にたどり着いた。どうやらカイザーは文字通り全てを私達に突っ込んだらしい。
それは私達にあっという間に破られたが。ゴリアテも私がちょっとぶった切っただけで壊れた。まったく、骨がない。
戦闘の余波で幾度となく震える施設に急かされるように扉を開ける。そこには見知ったピンク髪がふらふらと歩いてきていた。
「危ない!」
シロコがいち早くドローンに捕まって落ちかけたホシノ先輩の腕を掴んだ。ホシノ先輩のオッドアイがシロコの顔をまじまじと見つめ、なんだかんだでボロボロな私達を信じられない目で見つめる。
ホシノ先輩はここに骨を埋める覚悟で自分を売ったんだろう。まさか助けてくるとは思っていなかったらしい。
「え、シロコちゃん…?皆も、なんで……?」
「バカな先輩を迎えに来たって所かな」
手を掴んで外に連れ出す。硝煙とあちらこちらに砕かれたオートマタが散らばっている。
あんなに空高く昇っていた日は沈みかけ、もう少しで夜が訪れるだろう。
“ホシノちゃん”
「あ、そうか…皆が…先生も……」
「……え〜っと、おかえり、先輩!」
「あっ、先に言ったな」
「うるさいうるさいっ!順番なんてどうでもいいでしょっ!!」
セリカちゃんが顔を赤くして叫び、便利屋は疲労に包まれながらもどこか満足そうだ。きっと金のことを考えているんだろう。ヒースは伸びをしてまだまだ暴れ足りないとばかりに笑っている。
「ホシノ先輩、お帰りなさい!」
「おかえりなさい、です!」
「おかえり、ホシノ先輩」
“…無事で良かった。おかえり”
「……いなくならないでよかった…おかえり。先輩」
三者三様のねぎらいと再開の言葉をかけた。それに先輩は照れくさそうに笑いながら小さく恥ずかしそうに、だが晴れきった笑顔で告げた。
「―――ただいま」
これから夜が訪れる。何度も凍てつく寒さが訪れ、足を止めることもあるかもしれない。
でも、きっと大丈夫だろう。だって…皆生きてるんだから。
アビドス編二章、終わりです
後半は戦闘密度がすごかったのでなかなかに苦労しましたしどうヒースクリフとキヴォトスを絡ませるかにも悩みました
次回は後日談を挟んだ後、再び閑話に移ります
IFルートや掲示板回、もしかしたら番外編もあるかもしれません
お試しでAI使って文章の校正などを行いたいけどAI使って許せる?
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誤字直し程度なら
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全然使って良い
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使うのは嫌だ