詰め込んだらこんなになっちゃった…
感想、誤字報告いつも見させてもらってます
めっちゃ力になるのでこれからもください
10章、良かったですね。滅茶苦茶落ちまくってストレスでしたが
『今度は…今度は何なのだ見鷹アリサ!!なぜ私達を再び殺しに来た!?何故だ!?』
『先輩、今どこですか?先生来てますよ?…なんだか騒がしくないですか?』
「あぁ、ごめんねアヤネちゃん。今ちょっと野暮用があってさ。すぐに向かうよ」
『質問に答えろ!』
「そう騒ぐなって。静かにしたほうが楽に死ねるぜ?まぁ変わらない差だけど」
アヤネちゃんからの電話を切ってスマホを仕舞って理事の右腕を慎重に取り外し、身体に開いた穴を握るようにして閉じる。理事の身体は金になるから丁重に取り扱わないと。身体のほうはゴミだけど内部は役に立つかもしれない。コイツの売った金で学校を修復するなんて癪だけど。やっぱ燃やして殴り砕いとくべきかな。
それにまだやってもらうことがあるんだ。不安の芽は植木鉢ごと潰して、砕かなきゃ。
「最期に、契約をしてもらう。拒否権はない」
『契約だと!?お前達に何の権利があって…!』
「うるさいなぁ…これも帳簿行きだな。ヒース?」
「いるんだよな。中指の執行から逃げようとするやつ。お前は逃げた所で死ぬのは変わらねぇけどよ」
後日、私達はまだ戦力が再生していない段階で報復を果たしにカイザーの基地へ訪れていた。当然監視カメラは壊れて私達の侵入を示すものはないがヒースの鳴らす音楽と叫び声によって私達の場所は丸わかりとなった。
だが立て直しも完全には出来ていない中、都市でもかなり強いと自負している私達に残当ごときが倒せるわけもなく、あっけなく全員気絶か機能停止に追い込めた。
かなり時間はかかったがその分貴重品らしき物はぶんどれたからいいとしよう。その分の価値はあった。
長ったらしいが言わなくても分かるだろう。詰みだ。もはや理事の頭の中には泣いて許しを請う自分の姿しか浮かんでいないのだろう。
もっとも、生かしてやる気は毛頭ない。中指に手を出すっていうのはそういう事だ。
「そういうわけで、早く死にたくないでしょ?できるだけ生きていたいでしょ?じゃあサインしろ。今すぐ」
『……なんだ、この契約内容は…!借金の全額取り消し…!?今まで返済してきた金をアビドス高校に返還…!?こんな馬鹿げた契約が飲めると思っているのか!?』
「黙れ。お前に拒否権はない。さっさとサインしろよ…分かってんだろ?」
そう言いながら後頭部の装甲を引っ剥がして内部を露出させる。へぇ、中ってこうなってるんだ。
色々機械あって難しいなぁ……その分高く売れそうだからいいけど。
『わ、分かったっ!サインする!サインするから殺すのだけはっ!!それだけはやめてくれ!!!私を殺したら黒服が!カイザー本社が黙ってはいないぞ!!それを分かっているのか!?』
「…はっ、ヒース、今の聞いた?すっごく笑えるな、これ!まだ分かんないの?お前は捨てられたんだよ。2回も襲撃を許してその本社から何もアクションがないのが証拠だ」
「姉貴、もうさっさと殺っちまおうぜ?オレたちも時間があるわけじゃねぇんだしよ。コイツにわざわざかまってられねぇだろ」
都市でいくら時間が立っているかが分からないので処刑はなるべく早く行わないと。アビドスに居た分の仕事が貯まって悩殺された先生も今日はアビドスにいるとのことだし、挨拶はしておきたい。
義体にはありえないはずの恐怖を感じているのか、単に不具合か。ぶるぶるとみっともなく震える左腕でサインを書き上げた理事を投げ捨てて契約書を確認する。変なところもなし、契約完了だ。
「ご苦労さん、それじゃ…さよなら」
『待っ――……』
こうして長らく私達を苦しめてきたカイザー理事は死に、カイザーPMCは全社員が死亡、あるいは身ぐるみ剥がされて夜の砂漠に放置された事で壊滅した。義体じゃない生身の人間の方は運が良ければ生きてるだろう。知ったこっちゃないけど。
これで終わりだ。借金は理事本人のサインがある契約書によって無くなり、私達はもう苦しめられることはなくなった。手にはそれぞれカイザーPMCに残された高そうなものを目一杯詰め込んで今後、学校に必要なものを買うためのいくらになるかわからない資金も手に入れた。
……あっけなかったな。もっと…派手に爆発するか、そういうもんだと思っていたが。
現実はあっさり死ぬらしい。いや、分かってたことか。人はドラマチックに死ぬんじゃなくてあっさり、ゴミのように道端の石ころのように死ぬんだ。
「……じゃ、また来るよ。今回は付き合ってくれてありがとね」
「あぁ。オレも楽しかったしな。姉貴もちょっとは肩の力抜けよ?」
都市の裏路地で別れの言葉を言い合いながら肩を叩き、私は再びポータルを通過してキヴォトスに戻った。途中手に入れた袋に金属片や機械の基盤などを慎重に入れて、学校までの道を歩く。借金がなくなったらと知らせたらどんな顔をするだろうか?ぶっ倒れる人は出そうだな。
そんな事を考えながら仕返し帳簿のカイザーPMCの文字に、取り消し線を引いた。これでカイザーの罪も死を持って一旦償ったのだ。本社がまたちょっかい出してきたら今度はカイザー自体を潰すことになるかもしれないけど、その時はその時って事で考えよう。
「ただいま〜。もう始まってる?」
「もう、遅いですよ!……って、どうしたんですか!?滅茶苦茶汚れてるじゃないですか!」
「ごめんノノミ…でもいい知らせを持って帰ってきたからさ。一旦そのタオル下ろして……」
「ん、部室が汚れる」
そういえば砂とかで制服が少し茶色くなってる。普段はこうならないから怪しまれるか…
その願いは聞き入れられることなく、無慈悲にタオルは私の顔に擦り付けられた。そして怪訝な顔をされながら対策委員会の扉を開けるとまだ寝てるホシノ先輩と難しい顔で端末を睨んでいる先生達の姿があった。
そういえばまだ暗いうちに処刑に向かったから時刻はまだ10時くらいだ。先輩は当然寝てる。あれほどのことがあったのに何も変わらない。
“う〜ん…”
「ん、先生、どうかした?」
“いや…仕事の量が多くて…今できる仕事は少しでもやっとかないと……”
「もう人雇えば?」
「そういえばいい知らせってなんですか?」
「そこも含めて最後の定例会議でね」
そして最後になるであろうアビドスの借金をどう返済するかの会議が始まった。と、言ってもそれを知るのは私だけなので皆相変わらずにしてるけど。
つまりホシノ先輩と私を除いた2年生がふざけ、それを一年生が怒り、私は笑みを貼り付けながらただ見守る。
「ではまず借金のことです。アビドスの借金は理事によってかなりの額が減りました。あの異常な量の利子もなくなり、一旦楽になりそうです」
「アリサ先輩の硬貨を売ってればすぐに返済できそうだよね、アヤネちゃん!」
“一時はどうなることかと思ったけどなんとかなったね。皆、改めてお疲れ様”
褒められて心なしか嬉しそうにしているセリカちゃんの揺れている耳を眺めながらため息を付く。私にもそういう耳が生えていたら良かったのだが生憎耳を尻尾も生えていない。
生えていたら都市で切り落とされていただろうから幸いだったけど。
「ですがまだまだ借金は残っています。アリサ先輩のコインを売っていればいずれは、と思うのですが……」
「それなんだけど…ひとつ渡したいものがあるんだ、見てくれる?」
謎の緊張を感じながら震える手でポケットから折りたたまれた契約書を見せる。怪訝な顔で覗き込んたホシノ先輩の顔色が変わり、契約書は机の上から消えた。
ありえない、だとか信じられない、だとか言っているホシノ先輩の手元をなんとか覗き込もうとしている。
「これって…いや、この内容って……本当?」
「大マジ。私がカイザー理事の所に出向いてサインを貰ってきた、本当のもの」
そのカイザーはもういないけど。今頃地獄で部下とよろしくやっているだろう。
“今日遅れたのってもしかしてそれをしてたから?”
「怪我…はなさそうでしたけど…私達に何も知らせずにこんな危ないこと……」
「……言ったら間違いなく反対されるでしょ」
「アリサはそういうところがあるからホシノ先輩にも言われてる」
ため息を付きながらヒースの一緒に苦労しながら詰め込んだ貴金属類が詰まっている袋を置いた。
中から緑色の基盤やコード、真っ暗になったっモニターや蛍光灯を反射して光る金属板などが顔を覗かせる。
「これはお土産。価値はよく分からないけどアヤネちゃんならそういうの詳しいでしょ」
「……待って。アリサちゃん。理事が施設の一部を渡すなんてあり得るはずがない」
「つまり?」
「アリサちゃん。カイザー理事って…いや、カイザーPMCって今どうなってるの?」
「…あまりに勘が良すぎても困るね…」
私はため息を付いて頭を掻いた。どう説明しようかとしばし悩む。
やがて突き刺さる視線に耐えかねて私は口を開いた。
「理事は死んだよ。今度こそ、完璧に死んだ。換えのボディも潰して通信機器も全部破壊したから間違いない。これは理事が書いた正真正銘の契約書」
「ほんとに…死んだの?アリサちゃんが…人殺しに?」
「いや、さすがにそれは…ない、ですよね?」
「……なんか勘違いされてるけどアレ人じゃないからね。義…いや、オートマタなんて皆も壊してきたじゃん。同じだよ。なんで今更そんな顔してるの」
“それとこれとは…いやぁ、う〜ん……”
そう言ってもなかなか事実を飲み込めないようで私の顔を触りながらブツブツ言うホシノ先輩を必死で無視しながら話しを続ける。
だから殺したんじゃなくて邪魔なものを壊しただけだって。それにやられっぱなしは家族が黙ってないしああなるのは必然だった。
「兎に角。これで借金は消えた。それどころか今まで返済に当ててきたお金も全て帰って来るよ」
“そう、なんだ…ちょっと情報量が多いかな……カイザーPMCが壊滅して…借金がなくなる…”
「い、色々起こりすぎかな…うへへ…」
頭を抑えながら言う先生に背中をさするノノミの姿を眺めながら改めて私が成し遂げたことの大きさを実感する。
9億の借金を眼でほとんど失くし、借金も消えた。
「でも土地も返してもらえばよかったかな……どうして皆喜ばないの?せっかく私達を悩ましていた問題の一つが消えたのに」
「…こんなあっさり終わるものだと思わなかったわ……正直、アリサ先輩以外この状況わかってないと思う。アヤネちゃんなんて見うからに元気がないわよ」
その言葉に少しだけ考える。確かにホシノ先輩達時点だとある日突然借金が消えたんだから、すぐには飲み込めないだろう。一気に伝えたのは悪かったな。
でも悪いことに問題はそれで終わりじゃない。
「……アリサ先輩。つまり借金は無くなったんですね?」
「まぁね」
「…でも、まだやることは残ってますよね?」
“やることって?”
首を傾げる先生にようやく感情の整理が一区切り着いたらしいホシノ先輩が言う。
完全に飲み込めなくても半分は理解してくれると嬉しいんだけど。
「アビドスがここまで衰退した原因。正体不明、どんな原理で、どんな周期でやってくるのはも分からない砂嵐だよ」
「あれのせいで私達が住んでいたところも住みにくくなっちゃったのよ」
「サイクリングの時もここの近くは砂が酷いから苦労してる」
皆も砂の災害に関する感想を述べていく。大方砂に覆われて家が住めなくなった、道が封鎖された、近くの商店街が丸ごと潰れた、など。
借金はまだ、良かったのだ。これしき時間さえかければよかったから。でも…砂嵐はどうしようもない。都市の力を使っても砂嵐を起こさせないようにする特異点なんて私は知らない。
原因不明対処不能のものをどう気をつければいい?
アビドスを復興するなら土地を買い戻して、砂嵐も起こさせないように、せめて起きる周期さえつかめればいいのだけれど……
“まだ砂嵐もあるんだ……なにも分からないの?”
「うへ、残念だけど全然だね〜…」
「自然現象に人の力は通じないから…カイザーならどうとでもなったけど、これは私もお手上げ」
“そっか…私にできることがあったらなんでも言ってね。できる限り協力するから”
「ありがとうございます。先生……」
先生が協力してくれているとは言え、まだまだ問題は山積みだ。だからそれをどうにかしなきゃだな。
でも、まずは……
「取り敢えずパーティでもする?」
ケーキ屋のサイトを開きながら、私は皆に訪ねた。白いクリームとイチゴに皆の目が吸い寄せられる。
そして私達は誰が言い出したでもなくケーキ屋、チキン屋へと分かれて歩み始めた。
⬛️⬛️⬛️
“それでは急だけど借金完済を祝して、乾杯!”
「かんぱ〜い!」
眼の前には今まで見たこともない大きさのケーキとそれを囲むように、サラダやフライドチキンが入ったバケツが鎮座しており。いかにも美味しそうな匂いを漂わせている。
私が伝えた時は皆に表情が硬かったが数時間もしたら実感が湧いたのかセリカちゃんの顔が柔らかくなった。
やっぱりセリカちゃんは笑っているのが一番いい。
「でもこういう危ないことをする前は私達に連絡してくださいね!分かりましたか!」
「アヤネちゃんのエアちゃぶ台返し…んっ、分かったよ」
“反省してない?”
「先生も何か言ってください!」
“えっ私!?そうだな…とりあえず私もだけど皆もすごく心配したんだから危ないことはしないでくれると嬉しいな。女の子の顔に傷ができると……”
「これはカイザーのせいじゃないから気にしないでよ。ましてや先生のせいじゃないんだし、そんな顔しないで」
そして実感が湧いたせいなのか皆に怒られてる。何故これだけ怒られるのかが理解し難いな……
私はただ皆のために行動しただけなのに。
「ま、まぁこれでかつてのアビドス生徒会が遺した負債も帳消しに出来たし、肩の力抜けるねぇ」
「ですね…アリサ先輩が取ってきてくれた物を売れば新しい黒板もマットも買えます!」
「うへ〜、あの超高級マットがここに2つも誕生しちゃうのか〜」
「あそこまで高いのは買わないと思うけど」
それにあれは高くともない普通のベッドだとマットだと思う、という言葉は炭酸と一緒に飲み干した。
わざわざ言って水を差す必要はないはずだ。
“なんというか…私何にも借金のこと何にも手伝ってあげられてない気がするなぁ…”
「そんなことありませんよ!ホシノ先輩を取り戻せたのだって先生のおかげでもありますし!」
「え、何急に…酔ってる?」
先生が飲んでいるビンを確認する。特にアルコールは入ってなかった。じゃあシンプルに憂鬱な気分になってるだけか。…もう酒飲ませたらいいんじゃないかな。
「先生がいたからカイザーの調査に踏み込めたしそのおかげで結果的に借金はなくなったんだからそんな悲観しないでよ」
「それにしても学校行ったら借金が無くなってるなんてまだ信じられないわ……一応確認なんだけどカイザーローンからまた難癖つけられたりしないわよね?」
「それに関しては連邦生徒会がカイザーローンを摘発したのでもうその心配もないはずです」
へぇ。無能な連邦生徒会でもこういう時は仕事が早いんだな。保身のためだろうけど。
やれるなら初めからやってほしいもんだけど。自分のことしか考えていないような気がするが、ブラックマーケットからカイザーが退いたのは事実だ。それだけは有能だな。
「ですがアビドスが衰退した原因の一つの砂嵐はまだ解決していません。ですので!」
アヤネちゃんが元気よくホワイトボードになにかの紙を張り出す。寄って見ればそこには「砂嵐対策委員会」の表記があった。
「アビドス廃校対策委員会はアビドス砂嵐対策委員会に表記を改めます!…とは言ってもやることは借金返済が砂嵐の調査に変わっただけなんですけどね…」
“どんなことするの?”
「え〜っと、砂嵐の調査とか、会議とか…おじさんたちがもっとアグレッシブに活動するんだって」
「おぉ、ホシノ先輩の腰が死にそうだね」
“そっか。私にもできることがあったら言ってね!応援してるから!”
かくして廃校対策委員会改め砂嵐対策委員会は真っ暗になるまでパーティを楽しんだのだった。
⬛️⬛️⬛️
「長姉様!なんだか久しぶりでありますな?」
「やっほ。…髪切った?」
「うむ!前髪らへんをすこし切りましたぞ!当人、少し落ち着かないのでありまするが……」
「へぇ、似合ってるよ」
帳簿を流し読みしながらテーブルの上を見る。そういえば最近あのチキンを見ていない。チキン屋店主は死んだんだっけ?
よく覚えてない。
「そういえば自然現象を制御する製品知らない?」
「自然現象…?あっ、長姉様の故郷に雨を降らせたいのでありまするな!」
「多分違うと思うぞ、ドンキホーテ」
「やっぱ厳しいか…」
「……一つだけ知ってる」
ヒントはないかと落胆しかけた所に苦々しい顔でヒースが小さく呟いた。肩を掴みたくなる気持ちを抑えて振り向く。ヒースの顔は昔を思い出しているのか、もう戻らない日々を懐かしんでいるのか歪んでいた。
「え、そうなの?でも天候を操作するのってすごく高かったはずじゃ…」
「オレもなんであそこが…ワザリングハイツがいつも嵐なのかは知らねぇよ。でも…いい天気なのは稀だった」
ワザリングハイツは知らないが、常時嵐だというところは有名だ。調べたら見つかるだろう。
ヒースの実家なのか、それとも雇われた先なのか。現時点だと私の協力あっても尚少ししか文字が読めないヒースを見るとワザリング・ハイツもいいところじゃなさそうだ。
「アビドスの砂漠を操作するには流石に私でも無理だから…ハァ、手がかりなし、か」
「悪かったな、姉貴。あそこのことを思い出すと…チッ」
「兄貴…よし、今日の帳簿は俺達に任せといてください!」
「あ?お前らに任せっきりには出来ねぇだろ。オレは大丈夫だ」
「しかし顔色が悪い者を無理に働かせるわけには行きませぬ!大人しく眠っていてくだされ末兄様!!」
そして私が見ている間に、あっという間にヒースはベッドに転がされ毛布をかけられていた。
まぁカイザー殲滅に付き合わせちゃったし私もあとでヒースの好きなものを奢ろう。
「さて、私は私の仕事をしなきゃね」
呟いて私も帳簿とティルフィングを持ち、都市の闇へと溶けていった。
⬛️⬛️⬛️
“ふぅ、これで今できるお仕事も終わり…もう暗いなぁ……帰ったら額に青筋浮かべてるリンちゃんとさらなるお仕事が待ってる…”
「うへ、大丈夫?」
“あれ、ホシノちゃん?どうしたのこんな時間に。もう子どもは寝る時間だよ”
月明かりがピンクの髪を照らす室内で私とホシノちゃんは偶然遭遇した。ホシノちゃんもここには誰もいないと思っているのか最初びっくりした顔をしてたけど。
そのまま成り行きで私達はいつかの日のように校舎を歩きながら話をした。
“いつもそうしてるの?パトロール”
「ん?まぁ、そうだねーいつも寝られなくてさ…暇つぶしにやってるんだ」
“そっか。ホシノちゃんは強いから心配いらないけど注意してね?私も心配だし”
「うへ…それはうん、注意するよー」
答えにくいのか私から目をそらして頬を掻くホシノちゃんから視線を外して相変わらず砂まみれの校舎内を歩く。
校舎を改築すればこの砂もなくなるんだろうか……
「それにしてもアリサちゃんが一気に借金をなくしちゃうとは……」
“まさかカイザーに契約を結ばせるなんて…あっちも契約は破れないだろうし…それに、カイザーも…”
そう言って二人黙り込む。思い浮かぶのはあっさりと理事を殺したと言ったアリサちゃんの顔と強奪してきたであろうカイザーPMC内にあった貴重品のこと。
確かにアビドスに滞在した数週間の間だけでもアリサちゃんは風紀委員会やカイザーを殺さんばかりの勢いで怒っていたことがあったがまさかそれを実行してしまうとは…
“私達もオートマタを倒してきたし、そう考えるとアリサちゃんのやったことも私達のやったことも変わらないんだろうけど…こうすると罪悪感がすごいね…”
「だねぇ…一応聞くけど私達が倒したオートマタってどうなったっけ?」
“えっと…たしか理事に回収されたような?”
私達は殺さないように、というか壊さないように関節部分や銃をできるだけ狙った。もちろん狙いがズレて壊れるとこも少なくなかったがそれでも最小限に収められたと思いたい。
それに理事はバックアップを取っているのかアリサちゃんが壊しても何度も私達の前に立ちはだかってきた。
立ちはだかってくるといえば……
“結局ヒースクリフさんにお礼言えてないなぁ…”
「あの筋肉ムキムキの人?たしかに変な人だったね〜」
どこにいるのか探してみても見つけられず、謎ばかりが積もっていく。そういえばアリサちゃんはヒースクリフさんに長姉って言われてたっけ…長姉ってどういう意味何だっけ?
アロナに調べてもらうと兄弟姉妹の上で一番上の姉を表す言葉らしい。だがあの二人は血縁関係には到底見えない。ヒースクリフさんにはヘイローがなかったし。そもそも…
“そもそもキヴォトスに男性っているのかなぁ?”
疑問がつい口をついて出る。流石にアリサちゃん関連でも謎が多すぎる。仕事終わりの頭にこれは結構効く…
砂まみれでザラザラしてる屋上に寝転がって満天の星空の夜空を見る。寒いがD.Uやシャーレでは見られない光景だ。キヴォトスには他にも似たようなところがあるのだろうか?
「……でもさ。やっぱりアリサちゃんは変わったよ。服のこととか、性格のこととか…先生は知らないと思うけど前のアリサちゃんはお花が好きだったんだよ」
“花?でもあれって全部枯れちゃってたけど…”
「うん…花のことなんて気にせずに借金返済に駆け回るようになっちゃって…それに何も話してくれないし…おじさん、どうにも心配でねぇ…」
ため息を付きながらアリサちゃんを心配するホシノちゃんの目には借金がなくなった喜びと恐れがあった。
その恐れはアリサちゃんにも向けられているように見える。
“ホシノちゃん…怖いの?”
「怖い…そうかもね。おじさん、先生が来てくれてから…アリサちゃんが目覚めてから一気に状況がいい方向に進んで怖いんだ。だってこれまで何も変わらなかった。連邦生徒会は私たちのことを無視するし、借金は減らない。でもアリサちゃんが目覚めて少しで借金が消えちゃった」
“……”
「それに先生は私達のことを支援してくれてるし…もうおじさんの頭はパンク寸前だよ、うへへ」
そう言って大の字になって寝そべりながら夜空を見つめるホシノちゃんの顔には無理をして貼り付けた笑顔が浮かんでいた。それをみてなにか言わなければならないと思ったが私には何も言えなかった。
それをみて少しだけ笑いながらホシノちゃんは私に抱きついてきた。驚いて顔を動かした拍子に額同士がゴツンと勢いよくぶつかる。
いたた…女子高生は元気だなぁ…私は敵わない……
“…そろそろ帰る?”
「うん、そうしよっか。寒いし…くしゅん!」
“これ、羽織って”
「え?そうしたら先生のジャケットが…?」
“私は強いから!子供の頃は風邪一回も引かなかったからね!それよりホシノちゃんのほうが心配だよ”
うへ、だとか私は大丈夫、だとかそういう言葉を顔を赤くしながら呟くホシノちゃんに首を傾げながら手を振り別れた。そして姿が見えなくなった所で送り届けたほうがいいだろうか?という考えが頭に浮かんだ。
それと同時に平気そうに見えるがそれを無意識下でごまかして笑っているアリサちゃんのことも。
“…くしゅんっ…!うう、私も早く帰んないと…”
だがその考えは寒風に攫われて砂漠の星空へ消えていった。
そしてホシノちゃんは風邪を引かなかったらしいが私はしっかり風邪を引いてしまった。無念…うぅ、病気には強いはずなのに……
⬛️⬛️⬛️
「おらぁっ!」
「ぐっ…!」
最後の断末魔を聞いてから私は地面にティルフィングを突き刺した。今回選んだのは一介の研究組織。
研究員は脆く、わざわざ私が出向く必要もなかった。生命保険もなかったし、ただ首を潰して内臓を引きずり出すだけとは……ドンキちゃん達に任せても良かったな、これ。
「ん?そこの、誰だ」
「…おかーさん?」
え、と思わず口の動きを止めてしまう。子ども?こんな研究所に?…いや、被験者か関係者だろう。
殺さなきゃなぁ…は〜、長姉まで上り詰めても子どもを殺すのは荷が重い。ヒースが羨ましいような、そうでないような……大人とか義体は容易にミンチにできるんだけど。
「いや、私はアンタの…てか、アンタは誰だよ」
「わたし…?」
…どうやら分からないらしい。仕方ないので、私の後を追ってくる子を無視しながら血まみれの書類を漁る。
阿頼耶識計画…蜘蛛の巣…聞き覚えのある名称がちらほらだがこの子の名前も、この施設の目的も分からない。
そもそも私が撒き散らした血で名称を読むのすらギリギリだったし、研究員が暴れまわったのか破れているものもある。、それにこの子は殺すことになるんだ、無駄な情を抱く必要もないだろう。
「わたし…おかあさん探してるの。知らない?」
「私に言われても知らないよ。ハァ…一気に殺したほうが楽か?」
蜘蛛の巣は確か家族殺しの疑いがかけられた元長兄とその娘がいる場所だ。あとは親指とかが色々。
あんなのに関わりたくないから外部講師の件も必死で断ってる。マティアスの野郎なら教えている間に私のことを殺してティルフィングを奪うまでしかねない。
キョトンと首を傾げる子供の肩にティルフィングを置く。これが終わったらもう一周施設を回って殺し遺しがいないか確認しないと……
そう思いながら腕を動かした後に感じるであろうタバコの不味さと、夢見の悪さにため息を付いた。
そして腕を水平に動かし、何も知らないであろう子どもの頭が砕け散るのを見つめる。下半身しか無事な部位が残っていないそれを見ないように、必死で目を背けながら辺りを捜索する。
全員死んでいた。味は変わらないはずなのに数段まずくなったタバコを踏みつけながら、研究所を出る。気分は悪いがそれを皆に悟られるわけにはいかない。特に鋭いホシノ先輩とおせっかいな先生には。
「あ〜…今日は寝られなさそう……血も付いたし…なんで子どもって殺したら気分悪くなるんだよ…」
今日はタバコじゃなくて酒の気分だな……取り敢えずは帰ろう。明日の体調は明日の私に任せよう、うん。
でもまずは着替えて血の匂いも落とさないとな。血が固まってベッドから起き上がれなかったあの日を再現するのは避けたい。
そして後日、しっかり体調を崩して動けない私に、心配のメッセージと同時に水族館のお誘いが来たが私はどうにも動けずに返信ができたのは結局8時頃となったのだった。
・アリサ
理事を殺してカイザーPMCを壊滅させた。ついでに契約を結ばさせて借金問題を解決した
本人は理事を殺したことも皆のためにやっているので悪いことだとは思ってない。っていうか悪いことではない
バレて大事になったら少しの罰は食らうことになるけど中指の仕返し対象だし残当である
・アビドス高校のメンバー達
先輩が遅れてきたと思ったら借金問題を解決してきたと知り驚愕してる
結局アリサの話を何も聞けていないので近々アリサのことを巻き込んで水族館に行こうと計画している
・先生
まだキヴォトスに馴染みきれていない異邦人
生徒がとんでもないことをやったことに驚き半分、感嘆半分
そして仕事に悩殺されている
そろそろアリサと腰を据えて話すべきではないかと思っているがアリサが話しかけるなオーラを無自覚で出しているためなかなか踏み込めない
・ヨシヒデ
研究所に来たらなぜかもう壊滅させられているし痕跡は中指の親方の一致してるしでよくわからないまま帰宅
アラヤが殺されたおかげで救いの道は絶たれたことが確定している。
次回はアビドスメンバーと行く楽しい水族館回かIFルートの続きです
IFルートの方が先出る確率が高いです。サボらなければの話ですが
お試しでAI使って文章の校正などを行いたいけどAI使って許せる?
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誤字直し程度なら
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全然使って良い
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使うのは嫌だ