中指の長姉兼アビドスの一年生、見鷹アリサ   作:柚子古豪二千

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黒い服の大人には気をつけろ


見鷹アリサとラーメン、あと黒服

しっかり休息を取って重たいカバンを持つ私がいるのはアビドスの外郭。

半ばブラックマーケットに足を踏み入れているそこは私が唯一の「中指」として名を轟かせている。もちろんバレるといけないから顔はしっかり隠してあの目立つ紫のコートも脱いでるけど。

都市の中指と共通点があるとするならば義理の鎖と昨日は忘れたが白いシャツとズボンくらいだ。徹底的に私と気づかれる要素はなくしたからバレてはない…はずだ。感がいい人は気付けるかもしれない。

ま、今日は眼を売りに来ただけでアビドス生徒の姿だけど。

 

「…見たこと無い金貨に銀貨…こりゃあなんだい?」

「私だって詳しくは知らない。何かのメダルかもしれないし旧時代の遺物かもしれない。でもそんな事はどうだって良いでしょ、いくら?」

「あ、あぁ…質も高いから…最低限でもこのくらいだ」

 

猫の獣人の出した価格にほくそ笑む。やった。これがあれば学校の借金がかなり返済できるぞ!ふふ、嬉しいな。

都市のお金だとは言えこれをお金だと分かるやつはいないだろう。せいぜいコインだと思うくらいだ。

たださすがは本物の金と銀と言うべきか売ったらかなりの金になる。

いやぁ、家族たちに請け負って少しお金を貸してもらってよかった。いつか全員に盛大なパーティをしてやらなくちゃな。私も眼を持っているといえどそれは基本的に全部家族に使ってるからな。

それにお金を貸してもらってるんだ、パーティ位は妥当だろう。

そう思いながら引き取られていく金貨を見つめ、そして手元に積み重なった札束に目を見開いた。

数字として出されたらあまり実感はなかったけど実物を見ると少し驚く。

ワオ…これいくらあるんだ?このままいけば9億円の借金なんてすぐに返済だ!

思わず小躍りしそうになりながらもバッグにお金を詰め込んで鼻歌交じりにブラックマーケットを歩く。

何人たりともこの気分を害すことはできないだろう。

 

「ふふふん〜…ふんふふん〜…ん?」

 

先生からだ。なになに、午後になったらラーメン屋さんに行こう、か…セリカちゃんがバイトしてるとこじゃん。

……え、私の言葉聞いてうざ絡みした結果バイト先に行った?

その可能性は…あり得る。大いに有り得る。

 

「紫関ラーメンか…」

 

私が目覚めた時、ヘルメット団を殲滅した後に食べた。皆大きく変わった戦闘スタイルと服装に少なからず恐れを抱いたらしい。

まるで前の私がどこかにいることを確かめるかのように。大将も常連さんも皆が私のことを心配してくれていてラーメンは美味しかった。…美味しかったんだと思う。

ただ私から美味しいと感じる機能が失われたというだけで。

 

“あ、アリサちゃん!”

「あ、先生。どうしたの、こんな所で」

“いや、ちょっとコンビニ行った帰り。朝ごはんまだだったし”

 

確かにおにぎりとかがあるしそうなんだろう。

セリカちゃんにダル絡みしたら突き放されてそのまま…って感じかな。

 

“アリサちゃんはどこ行くの?”

「目的は果たしたし学校行こうかなって。先生はセリカちゃんにストーカーした後?」

“違うよ!仲良くなろうとバイト先聞いただけ!”

「つまりストーカーと…」

“違うよぉ!”

 

ま、先生はストーカーか否かはさておいて…早く学校行ってこのバッグを置いてこないと。

流石に邪魔になるサイズだし。

 

“…アリサちゃん、大丈夫?”

「大丈夫って何が?至って普通の健康体だけど…」

“あ、いや…ほっぺたに血が…”

 

…え?

恐る恐る頬を擦ると確かに赤い跡が手の甲を走っている。昨日落としきれなかったか…なんでこんな目立つ所に…

鏡でしっかり見ればよかった…

 

「あ〜…いつの間に…どっかぶつけたのかな〜私は大丈夫だよ、先生」

 

目をそらしてなんとか誤魔化す。これで騙されてくれれば良いんだけど、と願いを込めて先生をちらりと見る。

…不思議そうな顔をしているけどごまかせて…そうか?

 

“アリサちゃん…本当に大丈夫なの?”

「だから大丈夫だって!心配性だな――」

“だって…辛そうな顔してるよ?”

 

…辛そう?誰が?…私なの?

ペタペタと顔を触る。私は笑っている。なんともないように、困ったように笑っているはず…だ。

でも私の顔はなぜか口角が歪に歪んでいた。

はは、と自嘲する。こんなところを見られたらまた心配されちゃうな。

 

「うん…教えてくれてありがとね。…できたら忘れてくれると助かる」

 

そう言って学校に向かいかけた足をブラックマーケットに進ませる。

たぶんこのまま皆に会ったら酷いことになるのは明白だし。

 

「じゃあ、またラーメン屋でね。先生」

“アリサちゃん!その…何かあったら私に言ってね!”

「そうするよ」

 

どうやら先生は物好きだけとずいぶん優しい人らしい。

 

◼️◼️◼️

 

「これが依頼のやつ」

「あぁ…確かに確認した」

 

ちゃちゃっとブラックマーケットで依頼を済ませる。アビドスではなく中指として。

白いスーツにヒースを真似てつけたサングラス、そして義理の鎖に仕返し帳簿。

ちょっと力を誇示してやったらポンポン依頼が舞い込んでくるがいかんせん依頼数が多い。

猫探しに敵対組織の制圧…今のこれは盗まれた製品の回収とついでに組織の殲滅依頼。

ただこれでも小銭(金銭感覚が少し壊れたアリサ目線では)稼ぎができるし繋がりは作っておいて損はない。

さて、小銭もすこしは手に入れた所だし後は真っ当じゃないけど一応信頼はできる銀行に預けておこう。

 

「じゃあ、この講座に頼む」

「はい。承知しました。毎度ありがとうございます」

 

中指の登場でピリつく銀行内から用事を済ませ早々に後にする。

依頼を数件こなしたおかげで小銭と言えどもかなりの額が手に入った。この調子で眼を売って依頼をこなしているとすぐに返せてしまうかもしれない。

先生のおかげでヘルメット団も最近大人しいから依頼をこなせる時間も増えた。

 

「ありがたいなぁ…」

 

鎖を学校のカバンにしまって白い服も畳んで保管しておく。一張羅だから大事にしたい。

 

「あ、アリサちゃ〜ん!ここだよ〜」

「やっほ〜ホシノ先輩。遅れてごめん」

 

柴関ラーメンに到着すると私以外は全員揃っていてあとは私のみだった。

 

「たのも〜」

「あの~☆六人なんですけど~!」

「あ、あはは…おつかれ、セリカちゃん…」

「なっなんで皆も!?……先生!?」

“どうも!”

 

ニッコニコのノノミに苦笑いのアヤネちゃんの声に笑いながら目を先生に向ける。

セリカちゃんは見知った人物×6の登場にすっかり顔が赤くなってる。

 

「まったく〜まさかストーカーするなんてね〜先生も隅に置けないなー」

「でもセリカちゃんのバイト先って言ったらそこでしょ?」

 

いやはや、こういう意味で言ったんじゃないんだけどな…言葉って難しい。

騒ぎを聞きつけたのか奥から大将が顔を出した。

 

「あぁ、アビドスの生徒さんか。こちらの大人は…?」

“最近設立されたシャーレの先生です。よろしくお願いします”

 

…なんでこういう時はちゃんとしてるんだ?

 

◼️◼️◼️

 

「じゃあ私は…お腹空いてないし柴関ラーメンの普通盛りで」

“えっと、これって何がおすすめ…?”

「おじさんのおすすめは味噌ラーメンのチャーシュートッピングだよ〜」

 

ホシノ先輩はいつもこれしか食べてないような気がするな…ま、それは良いとしてセリカちゃんはどうやらバイト服でバイト先を決めるタイプのようだ。うんうん、よく似合ってる。

 

「な、何よその目!」

「いや?うちの後輩はやっぱりかわいいなって」

「か、かわ…!?うぅ……」

「この姿のセリカちゃんで一儲けできそうだよね〜写真一枚買う?先生」

“いくらでもだ「変な商売はやめてください…」…そんなぁ”

 

…その写真私も欲しい。

手持ちはあるし5枚くらい…だめ?そっか…残念。

 

「ところで皆、お金は大丈夫なの?またノノミ先輩におまかせ?」

「いや、ここは私が…」

「アリサちゃんはお金ないでしょ…」

 

と思ったらなんと数時間前にはぎっしり札束の入ったバッグを担いでブラックマーケットを歩いていたのだ。

あとはいつ出すか、だな…次の会議にでもだすか?そんなにない(金銭感覚のバグったアリサ感覚で)けれど。

 

「いやいや〜ここは先生が出してくれるでしょ。ねっ、先生?」

「ごほっごほっ…えっ私!?”

 

先生が驚いてむせた音で現実に引き戻される。

 

“だが…私には再販のプラモデルが……!”

「え、なにそれ…?」

“くっ…!いいでしょう、先生が払ってあげましょう!私の月末が炒めもやしになるだけですから!再販は命より重いんですから!!可愛い生徒のためなら私のことなどどうなろうとも…!”

「えっなにそれ…?プラモデル…?」

 

ん〜、なんか雲行きが怪しくなってきたな?

再販?プラモデル…?……挙句に炒めもやし……?この人は本当に数時間前のあの先生と同じ先生なのか?中身入れ替わってたり偽物だったりしない?とても一人の成人女性かつ教育者とは思えない言葉だ……

おいだれだこんなイカれたやつを先生として推薦したやつは。

 

「先生〜!?あの、私のゴールデンカードがありますから!」

“いやここは先生として大人のカードを…!”

「ん、ここは斜め45度で手刀を……狙いが…動かないで先生」

「……大将、ここは私が払っときますから…その…すみません店の中で…」

「い、いやいいんだよ…でもお金大丈夫かい?」

「たんまりありますので、お気になさらず」

 

あ〜でもまずは先生を止めないと……

 

◼️◼️◼️

 

そしてなんとか5人がかりでなんとか狂人1を宥めすかす。

疲れた。気分はマティアスの娘の話を耳に流し込まれた時と同じくらい酷い。こんなにも狂人を殺さずに鎮静させることが難しいとは……あの娘の話も延々と続いたが……

 

“ご迷惑おかけしました…”

「あっ正気に戻った。ほらラーメン」

“ありがとう!”

 

狂人もとい先生はよほどお腹が空いていたのかラーメンを啜り始めた。

それを見て私も目の前のラーメンに口をつける。

妙にしょっぱく感じるスープにバラバラになった小麦粉の塊みたいな味がする麺を啜る。

不味いわけじゃないんだろう。ただ私の舌と頭がおかしくなってしまったと言うだけで。

 

「……美味しい」

 

微塵も思っていない言葉をほざいて目の前の光景に目を向ける。

これだけは守らなくてはいけないな。

 

「だれかラーメンいる?私そんなにお腹空いてなくて…」

「じゃあおじさんが食べていい?」

 

まだ食べるんだ。おじさん言う割に結構食べるな…

 

「ご馳走様」

「美味しかったです〜⭐︎」

「も、もういいでしょ!?みんな帰って!!」

“また来るね〜”

「うわああぁぁ!!みんな死んじゃえー!!」

 

これが俗に言うツンデレか…いじりがいあるなぁ。

 

「アリサちゃん、これ食べる?」

「いらない…なにこれ?」

「チョコミントパン」

 

それは美味しいのか?チョコミントなんて歯磨…おっとこれ以上はチョコミント狂信者が来る。これ以上はいけない。

 

「あとで食べる…まさかホシノ先輩、自分が食べれないからって人に押し付けてるんじゃ……」

「………」

 

なんか言って?

 

「私こっち方面だから。また明日〜」

「は〜い⭐︎」

「またね〜」

 

私も手を振って1人で廃れたアビドスの住宅街を歩く。

ここもまた随分と道が少なくなって…

前なんて干からびたカラスの死体が転がってこともあったし不気味だ。

 

「で、さっきから見てるお前はなんのつもり?」

「おや…バレてしまいましたか」

 

丸わかりだわ舐めんな。

銃口を目の前の黒い服の化け物に向ける。都市でもああ言うのは見たことがあるがあれらは理性を失ってたから…そもそもこれは都市のものなのか?

油断しないようにしよう。

 

「申し遅れました。私は黒服、と申します」

「…ご丁寧にどうも」

「クックック…そんなに警戒なさらないでください。私はあなたを害す気はありません」

 

信用できるわけないがすぐには手出しできない…はずだ。

 

「私は見鷹アリサさん、あなたと友好的な関係を築きたいのです。アビドスの生徒に手を出すことはしません。お約束しましょう」

「信用できるとでも?」

「私は約束だけは守りますので」

 

その顔に当たる部分に白い亀裂を入れている大人は言った。

 

「では簡潔に言いましょう。私達はあなたをスカウトしにきたのです」

「は、実験台の間違いだろ」

「そうとも言いますが…ものは言いようでしょう?早速ですが貴女にはアルバイトとして少し治験に協力して欲しいのです。もちろん報酬は弾みますよ」

「…そこまで私の身体を調べたいの?きも…」

「辛辣ですねぇ…貴女の身体に関しては私の同僚であるベアリーチェも気にしていますので。私が…いえ、ゲマトリア全員が貴女に注目していることでしょう」

 

やっと所属組織の名前が聞けた。ゲマトリア、か。

私は目を細め、背中の剣に手を回した。何か怪しいことしたらすぐに切り裂いてやる。

 

「一カ月。一カ月の間貴女は昏睡していました。そして一週間前目覚め反転しているようでしてない不安定で歪な状態に変化しました。前にはなかった武器、服……貴女に一体何が……」

 

何を言ってるんだコイツは…意味のわからないことをぶつぶつと……

気色悪いし実験台にすると言ったから仕返し対象にしなければな。

 

「前にお前みたいな奴に会ったことがあるんだよ。自分勝手にぶつぶつ言う奴。…ま、殺した時は一際いい声で鳴いてくれたからそれだけはよかったかな。で、おまえは殺したらどんな声を出してくれるんだ?」

 

一気に近づいて遺物を喉に突きつける。

 

「殺した、ですか…一ヶ月も昏睡していた貴女が?」

「…あ」

 

そこで私は己の失敗を悟った。口滑らした…クソ、めんどくさい事になったな。

他の奴らに言いふらしたりはしなさそうだし黙っておくか……

 

「気になることはありますがこれくらいにしてきましょう。もし私の話に興味があるのならばこの住所にお越しください。それでは……」

「…中指は忘れない」

 

住所が書かれた紙を一応受け取ってやりながらもその不気味な背中に声をあげる。

 

「どう言う意味でしょうか?」

「言葉通りの意味だよ。もし私に手を出したら中指はどこまで行ってもお前を追い続ける。それだけは覚えとけ」

「…ええ、了解しました。肝に銘じておきましょう」

 

黒い背中が夜の闇に消えていくのを見て私はため息をつき、紙を破り捨てた。

誰がお前の戯言なんて聞くかよ。

異世界と言えども中指に脅迫をしたんだからこれはきっちり帳簿に書き留めないとな。ええと…黒服、だっけ?

あとゲマトリア。143条6項C列5番目…中指の構成員に対する人体実験。

関係者全員の足首手首をねじ切ったのち…処刑だ。




眼が紙幣なのか硬貨なのかは知らんが少なくとも硬貨型として流通はしてるやろってことで
アリサ「ただのそこら辺で偶然拾ってきたコインなのでセーフです」
ほんとかなぁ?
あとここから投稿ペースが落ちると思う俺はそういう人間
そしてゲマトリアが中指にロックオンされました

アリサの一人称視点か三人称視点どっちがいい?

  • アリサの一人称時点のまま
  • 三人称視点
  • 視点変更したりしなかったり
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