中指の長姉兼アビドスの一年生、見鷹アリサ   作:柚子古豪二千

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ないよぉ!剣(の名前決まって)ないよぉ!!
だから遺物としか表現するしかないんですよね
あと今回から先生のセリフ枠を変更しました


唐突にやってきた便利屋を名乗るものとアビドス高校の戦いについて

“……あれっ!?なんで紫関ラーメンに!?会議は!?”

「先生が正気を失っていたから置いていくわけにもいかず泣く泣く、ほんっとうに……しょうがなく連れてきた所…」

“ア…その…申し訳ございませんでした”

「そんなに給料無いなら上に頼んでシャーレの給料増やしてもらえばいいじゃん。そんな…頭おかしくなるくらいなら」

 

柴関ラーメンに昼食を食べるために到着して数分後、ようやく先生が正気に戻った。

本来ならきっと怒ってたであろうアヤネちゃんのちゃぶ台返しが炸裂していたところだがその前に先生が発狂したことで怒りも消えた。

あれは先生がおかしかった。お金は人を狂わせるのだ……

大人なんだし自分の管理くらいちゃんとできると思うから自制とかしてほしい。無計画にお金使うバカじゃないはずだし。

……そのはずだと信じたい。

 

「あ、あの…このお店で一番安いメニューっていくらですか…?」

「ん?580円の柴関ラーメンですけど…」

 

一瞬紫の子が顔を出したと思ったらまたすぐ引っ込んでいった。

なんだ?

そしてまたすぐにさっきの子含む4人組がラーメン屋に入ってきた。オドオドしてる紫の子、白髪に黒いメッシュと私と少し似ている髪のロックが好きそうな子、あとはニヤニヤしてる大きなバッグを持っている子に意味深な表情を浮かべてる赤髪。

うーん、服装からしてゲヘナから来たのかな。ゲヘナはこう言っちゃあれだけど危険人物の温床だし警戒はしておこうか。

ゲヘナ学園…自由と混沌を謳っているが実態は生徒会が意図的に制御を放棄し暴れ者を自由にしている所。その皺寄せは全て風紀委員会に回っている。

有名どころで言えばところ構わず地面に穴を開けたり飲食店を爆破してる奴らだろう。できれば会いたくない。

そんなのがいるこら杞憂だとしてもこいつらも警戒して置くことに越したことはないだろう。

 

「いや、一杯しか頼まないからいいよ」

「ごめんなさいっ!!お金なくてすみません死にます!!!」

 

うわうるさ……早く黙ってくれないかな。

だが願いは虚しく自虐は止まらない。

 

“大丈夫だよ!人間お金なくてもなんとかなるから!!”

 

うるさいのがもう一人……ま、さすが先生というべきか…説得力が違うね。

実体験の上にある言葉は重みが違う。…気がする。

 

「やっぱ先に生きるものの言葉は違うねぇ。完全なる自業自得でもやし炒めを食べる羽目になる人間の言うことは聞いといたほうが良いよ?そこのゲヘナの人」

「もやし炒め…?」

“違うしー?月末になるだけだしー!?”

 

いやまだ買う気でいたのかよ。やめときな?無理な出費は自分を滅ぼすよ?ここまで来ると人として大事な尊厳も矜持もゴミ箱に捨てているな。

そして彼女たちを見る私たちの目はやけに生暖かい。先生、ゲヘナ、対策委員会。

貧乏人が柴関ラーメンに一堂に会したのだった。なんもめでたくねぇな。

 

「うぅ…お金なくてすみません貧乏ですみません死にますぅ…」

 

まだ言ってるよこの子。…あ、でもお腹いっぱいになりそうだ。

セリカちゃんが大盛りのラーメンを運んできてくれた。

 

「はい、柴関ラーメン並盛です。お熱いのでお気をつけて!」

「え…えっ!?超大盛りくらいありますけど…!?お、お金ふっかけられたりとかしませんよね…!?」

「ざっと10人前くらいはあるね……注文ミス?」

 

流石に動揺して動きが止まっているゲヘナの子に大将が言う。

曰くすこしミスって分量を間違えたらしい。間違えたんなら仕方ないか。

歓声を上げてさっそくラーメンを啜り始めるゲヘナの人を見ながら私も水を一口飲んだ。

こんな事をしてもあの人が多く金を払うわけでもないのに、なんて思うのは私がおかしいだけなのだろうか。

 

「アリサちゃん、もう食べないんですか?」

「…お腹いっぱい…いる?」

「アリサちゃん、最近ご飯残すこと多いですよ?ちゃんと食べれてますか?」

「うん。あ、でも後で食べるかも」

 

ここはいったん誤魔化しとこう。ノノミも地味に感が鋭いからな。

なんでそんなに私なんかのことを気にしたりするんだろ。もっと大きな問題に目を向けようよ。私じゃなくて。

……?白髪コンビがなにか話してる…嫌な予感するとちょっとお話聞かせてもらおう。

 

「連中の制服…アビドスだよね?」

「うん」

「どうする?社長たちに言うべき?」

「できれば…言わないでくれると助かるけど?」

「……!?」

 

会話に乱入して二人の肩を掴む。ビクッと肩を揺らして振り返った二人の顔には冷や汗が滲んでいるように見える。

そんなに私…アビドスに聞かれて困る話ならここで言わなきゃいいのに。

 

「うーん…ゲヘナの制服だし大方指名手配犯の一人って所?まぁ今は皆もいるし見逃すけど」

「あはは…何の話かな〜?」

「とぼけないでよ〜あそこのバッグを取ろうとしてるの分かってるし白黒髪のほうは銃を撃とうとしないでよ、まったく…で、お前ら誰?」

「ただの一般ゲヘナ生だよ〜!」

 

嘘だな…ゲヘナの一般生徒は大抵指名手配犯か問題児だから。私は前者の可能性に賭ける。そしたらまた金がもらえるからね。

で、連中の制服って言ってたってことは私たちに用事があるのか?でも用事がある人の制服くらい覚えてて当然だし違うのかな。

流石に覚えてないバカは居ないでしょ。

 

「ま、今騒ぎを起こさないのならなんだっていいけど」

「?私たちに話があるんじゃないの?」

「そうだけどなんか良いかなって。お前らが来るんなら後で正式に矯正局送りにすればいいだけだし。だって君ら弱いし」

 

社長…あの赤髪のやつか?紫髪はボスって感じの風格じゃないもんな。いや…白髪が真のボスで赤髪は表向きのボスなのか?

なんだっていいや。今ここで手を出したら私が悪者になる。もうちょっと泳がせてこっちに手を出したら仕返しで矯正局送りにする。かんぺき〜ってやつだ。

 

「アリサちゃん?なんの話ししてるの?」

「ここの子らと親睦を深め合ってる所〜」

「ムツキとカヨコが仲良さそうで良かったわ!」

 

うん、赤髪はボスじゃないな。この能天気さだし。間違ってもブラックマーケットで生き残れるとは思えない。

性格も良さそうだし赤髪だけ別の学校じゃない?

 

「ラーメン伸びちゃうよ〜?もったいないよ?」

「……じゃあ食べる〜」

 

ホシノ先輩に促されて渋々その場を離れる。こいつらが何をするであれ私たちに手を出していない今は見逃そう。

疑わしきを罰せよ、と言うけどそこまでじゃない。…あれ?罰さず、だっけ?

 

「いや〜ここのラーメンは美味しいね!味がしない

「そういってくれてありがたいよ」

「そういえばあのゲヘナの人ら、何してると思う?」

「え?うーん…経営ですかね…?」

「それか何でも屋みたいな…」

「多分うちの襲撃だよ」

“へぇ、襲撃…襲撃!?”

 

先生が飲んでた水を吹き出してアヤネちゃんが箸を取り落とす。え、そこまで驚く?

 

「え、そうなの…?」

「いつ来るかとかは聞いた?」

「そこまでは流石に」

 

もっと聞きたかったんだけどね、無理だった。

まあ脅しはかけた事だしこれで来ないことを祈るしかないだろう。

来てしまったら迎え撃つまでだ。

 

「アヤネちゃん、ゲヘナの指名手配犯のリストか何か調べといて。どうせ指名手配されてると思う」

「ど、どうせ…」

 

苦笑いするアヤネちゃんに首を傾げながら大将にニコニコでお礼を言って帰って行くゲヘナを見る。

 

「そんな悪い奴じゃないのかも?」

「アリサちゃん、色眼鏡で人を見るのは良くないよ〜?」

 

それもそうだな。願わくば何も起こらない事を祈ろう。

 

◼️◼️◼️

 

「ぐっ…」

「やっぱり…」

 

学校の校門を挟んで向かい合う。便利屋68と言う指名手配犯は後ろに傭兵と戦車を従えているが表向きのリーダーはまだ戦う気になれてないのか顔を歪めている。

 

「そこのバック持った白髪、誰の差し金でここにきた?」

「アルちゃんに聞いてよ!あとムツキちゃんってよんで!」

「いや赤髪は祭り上げられたか表向きのリーダーでしょ。こんなアホな面しててブラックマーケットで生活できるわけない。白髪か白黒髪のどっちかがリーダーだと思うのが妥当だと思うけど?」

「あっ、あいつアル様を表向きだなんて……!」

 

狂信者にロック、白髪と見栄を張る赤髪。

こんなことするよりもっといいバイトあるでしょ。

金がこっちから舞い込んでくるから来てくれる分にはいいけど。

 

「アリサ、一旦落ち着いて。まずは情報を引き出すだけ引き出してから戦う」

「シロコちゃんは何言ってるの?」

「それもそうだね」

 

後ろを向いてアビドスのところに戻ろうとして背中に当たる銃の感覚に顔を顰めた。

 

「よくもアル様を……許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない!!殺してやります殺してやります殺してやります!!!」

 

狂信者がキレた。

 

「シロコ…情報、聞けなさそうだね」

「じ、じゃあいこうか?指揮お願いね。先生」

“う、うん…それじゃ、戦闘開始?”

 

先生の声に覇気がないように感じるのもきっと気のせいじゃないはずだ。

 

◼️◼️◼️

 

「死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んでくださいぃ!!」

「落ち着きなさいハルカ!味方にも当たってるから!味方にしか当たってないから!!」

 

狂信者とその手綱を握る表向きのボスの声が響く中私は少なくない旋律を覚えた。簡単すぎる。

都市だと一応の見方に当たらぬように工夫をしていたが構わずに攻撃する奴がいるが…それでもこんな敵の中に紛れるだけでいいのか?

 

「ちょ、味方!私たち味方だから!!みぎゃっ!?」

「こいつ見境なしかよ!?うぎゃっ!」

 

この間にもフレンドリーファイヤは起こり続けている。

悲しいかな、真の敵は言う事を聞かない味方なのだ。

 

「うへ、ちょっと静かにしててね」

「ん、さっさと諦めて」

 

先輩達も狂信者が撃ち漏らした敵を狙っている。

イベントだな。以下にして同士討ちを起こさせるか考えるイベント。

 

「さっさと…失せろ!」

「ムツキ!?」

 

バックから爆弾を何個も取り出して投げている爆弾魔に詰め寄って頭を殴りつけ腹を蹴って砂塵の向こうに消える爆弾魔を追う。

 

「うえー…アルちゃん、私もうダメー後よろしくねー」

「えっ、ムツキ!?」

 

まずは一体…だけど狂信者は未だ敵も味方を関係なく攻撃している。

あいつだけ中立だったりしない?

それに赤髪を倒したら強化されるタイプだしめんどくさい。

 

「社長、後ろ!」

「チッ、バレた」

「ナイスよカヨコ!」

 

スナイパーライフル…?こんな前線に出て使うのがこれなの?

とりあえずライフルを避けて驚愕してるスナイパーを狙う。

 

「アル様っ!!」

「よそ見するならくたばれよ!」

 

よし、狙い通り。飼い主が狙われていると犬は必ずそちらを狙う。

よそ見する隙があるなんて随分と余裕だな?

 

「アリサちゃん、ナイス〜」

「がっ…!すみません…アル様…」

 

やっと狂信者を落とせた…楽にはなったけどうるさかったからな…

とにかく、相手は同士討ちで壊滅必死、便利屋も2人がくたばってる。

 

「はっ、早く帰ったほうがいいんじゃない?ほら、もう5時だ」

「あ、定時だ。上がるぞお前ら」

「えっ、まだ倒れてないでしょ!?」

「5時まで戦うと言う話で契約したんだが?」

 

戦車は壊れ、傭兵はたった今引き上げいなくなった。

後には気絶してる便利屋と立っているけどボロボロの2人だけ。

 

「ん、さっさと降参して帰るべき」

「勝ち…でいいんですかね?」

「いや、捕縛してお金もらおうよ」

 

せっかく資金源が自分からノコノコ歩いてきたのに見逃すなんて勿体無い。

そう思っている間にも敵は三流的な安っぽい陳腐な決め台詞を吐いて去っていってしまった。あぁ、お金が……

 

「お疲れ様、アリサちゃん」

「ホシノ先輩もね。なんだったんだろ、あいつら」

「ところで頬っぺた、また汚れてるよ」

 

あ、また化粧取れてるのか。新しいの後で買わないと。

 

「……でもそれ、汚れじゃないよね」

「…なんでそう思ったの?」

「それに一週間であんなにお金を稼いだのも指名手配犯を捕まえただけじゃ稼げない。アリサちゃん…アリサちゃんってもしかして……」

 

疑問を口にするホシノ先輩を睨みつけて言う。

 

「先輩、誰にだって知られたくない事の一つや二つ、あるものでしょう?先輩だって隠してるくせに」

「あはは、それもそうだね。これはおじさんが悪かったや、ごめんねアリサちゃん」

「怒ってない。早く戻ろう」

 

やはり顔の汚れを心配されながら校舎に入る。

いい化粧品まだ家にあったかな。買うのめんどくさいな……

 

◼️◼️◼️

 

“今日はいろんなことがあったなぁ…”

 

生徒がほとんど帰って静かな廊下を歩きながら先生はごちた。

定例会議で迷惑をかけてしまったり便利屋なる子が襲撃してきたりと今日も話題に事欠かない日だった。

だが精神的疲労は減ったように思える。何割かが肉体的疲労に変わっただけなんだろうけど。

 

「誤魔化さないて。ホシノ先輩」

「いや〜おじさんはアリサちゃんの恥ずかしーい秘密はバラさないって約束したからね〜シロコちゃん相手でも言えないよ」

“シロコちゃんとホシノちゃん?”

 

話している内容はアリサのことらしい。

便利屋との戦闘後、確かにアリサの頬には汚れらしいものがついていたが……

 

「先生?いるんでしょ?怒らないから出てきてもいいよ」

“もう怒ってない?”

 

簡単にバレてしまい苦笑しながら部室の中に入る。

夕陽に照らされた室内ではシロコが鋭い顔でホシノの目を見据えている。

 

「でもこれはアリサちゃんには内緒にしてね。知られたら怒られちゃう」

「分かってる」

「うんうん、それでおじさんもセリカちゃんのほっぺた触ってみたけどあれは古傷だった。大将のより深い傷痕。お化粧してたから見えなかったんだと思う」

“古傷…”

「そう言えば先生は中指について知ってる?」

“中指…?”

「数日前から急にブラックマーケットで有名になった傭兵だよ。今まで音沙汰なかったのが急に有名になり出したこととタイミング……アリサちゃんはもしかしたら中指なのかもしれない」

 

もしかしたらあの傷跡はその時に…いや、銃弾が当たっても傷がつかない生徒があんな切り裂かれたような傷痕を作れるわけがない。

きっと別の要因があるんだろう。

2人はそう考えていたが再びホシノが釘を打つように話す。

 

「でも私がその事を聞こうとしたらアリサちゃん、とても怖がった顔してた」

「怖がった…」

「だから秘密にしてね。ほんとはこうやって憶測で話されることも嫌なんだろうけど…言っておきたくて。2人とも、秘密だよ」

“分かった。口外しないようにする”

 

夕陽が傾き、やがて夜がやってくる。

まだ明るいはずの室内はアリサの秘密で暗い影を落としているように見えた。




キヴォトスの肉体に強化入れ墨入ったらそりゃ強いよね
そしていよいよアリサの秘密がみんなにバレ始めています
完全にバレたらどうなるんでしょうね
次回、おそらくブラックマーケット編
もしかしたら飛ばすかも

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