あの…ゲヘナ編…もう少し手心というか、なんというか…こ、こんなことが許されていいのか
「お待たせしました。変動金利等を諸々適用し、利息は788万3250円ですが……それに加え今月は6021万1200円の返済ですね。全て現金でお支払いいただきました。以上となります」
文字通り笑みを貼り付けたカイザーのロボが毎月見る現金輸送車の中に消えていく。それをみて思わず安堵のため息が漏れた。
「カイザーローンとお取引いただきありがとうございます。のこり借金は総額8億9425万5550円です。来月もよろしくお願いします」
今月も何事もなく、またかなりの量の返済ができた。普段はあとどれくらい残っているかに目を向けて絶望のため息をついている仲間達も今回は笑顔で多額の返済を喜んでいる。
いやぁ、友達が喜んでいる様を見るのは嬉しいな。これを維持できれば……
「あれ以来依頼がどんどん舞い込んでくるんだよね」
「ん、アリサ、一緒に銀行強盗しない?アリサなら追手を倒せると思う」
「やらないし私は囮なの?」
「アリサならきっと大丈夫」
信頼してくれるのは嬉しいけどまだまだやる気らしいシロコの頬をつねっておとなしくさせながらいつになったらこの銀行強盗熱は冷めるのだろうと思った。
きっと冷める日はないんだろうな、とも思いつつ。
「私も指名手配犯の捜索やってみましょうか?」
「ノノミは力仕事の方がいいと思うよ…」
指名手配犯の捜索は私だけで十分だしそれにブラックマーケットにわたしこみで来られると色々困るし。
「いやー今月はほんとにありがとねアリサちゃん。いつもはどんよりしてたのにみんな嬉しそうだし」
「私のおかげだけじゃないよ。犯罪者がいっぱいいるおかげだし先輩達も協力してくれているでしょ?」
家族に手を出す愚か者は多いし、便利屋みたいなやつも腐るほどいるのだから。
それに中指として名を上げたお陰で危険度は高いが報酬が豪華な依頼が来るのでその分小銭を稼ぐ回数も多い。チリも積もればなんとやらだ。
「で、本当のところは?」
「…本当って?」
「指名手配犯の数にも限りがあるでしょ。アビドスだけなら尚更減る。それに気づかないほどおじさんも甘くないよ。シロコちゃんも…先生も気づいてると思う。もし自分に犠牲にしているなら私は止めなきゃいけない」
青と黄色の瞳孔に反射して映る私の顔はどのような顔をしているんだろう。
いや、笑っているはずだ。いつも通りに、なんともないように微笑んでいるはずなんだ。
「先輩…詮索は野暮ってもんですよ。それに…何もなかった。私は大丈夫ですから」
「あっちょっと…!」
「アヤネちゃん〜戦車の事調べられた〜?」
背中にかけられた声には必死で気づかないふりをしてアヤネちゃんに近寄った。
◼️◼️◼️
「今月分の返済も完了という事で定例会議を始めます」
「おー」
「うへー」
ホシノ先輩と二人やる気のない声をあげて机に座る。
便利屋が使っていた戦車の型番も調べられたみたいでどうやらもう生産されていないらしい。じゃあどこであいつらが手に入れたか。
私にはなんとなく心当たりがあるけど……
「このようなものが手に入る場所はブラックマーケット以外にないでしょう」
そりゃそうだよな。キヴォトスの暗部とも言うべきそこなら珍しいものもなんでもあるだろう。
ただ初めてブラックマーケットに行った時はアビドス生の見鷹アリサとして動きすぎたからこのまま行くと間違いなく面倒ごとになるだろう。
一応口を閉ざすように言っているけど…それに変装して中指としていくわけにもいかないし。
うーん、私は中指として動こう。便利屋がどこであれを手に入れたかは気になるし。
「それ、私いけないかも…」
“えっなんで!?”
「どうしたんですか?アリサちゃん」
「指名手配犯を捕まえにゲヘナの方行ってくる。こういうのは早いほうがいいでしょ?」
残念そうにしてる皆の顔を見て立ち上がる。
まずは都市に行って服を回収してこないと。
「まぁいい知らせを待っててよ」
◼️◼️◼️
都市で中指の装備を回収して皆のお詫び兼お土産のチキンを貰ってからブラックマーケットを歩く。
ヒースクリフはいつものところで髪をセットしてるかボサボサヘアーのままいつもの数倍は激しい帳簿執行をしているんだろう。
そんなことを思いながら歩いていると誰かの話し声が聞こえてきた。
聞き覚えのある…アヤネちゃん?
『アリサ先輩ももっと私たちを頼ってくれてもいいと思うんですよ』
「ん、アリサは最近抱え込みがちすぎる」
そうかな…私そんなふうに思われてたの?
ショックなような…
『入学式の時はシロコ先輩みたいにおとなしい感じだったんですよ』
「確かによくお花買ってましたね〜」
“そうなの?”
「アリサちゃんの銃、撃つとお花の香りするんだよ?」
シロコってそんなおとなしいか?雰囲気はおとなしいかもしれないけど。
そんな機能もあったような。戻ってからは銃なんて持つだけかたまに撃つだけだからな……
『それが何か言ってもはぐらかされますし性格も以前とは違いますし…そんなに私たちって信用ありませんかね…』
“いや、アリサはちゃんとみんなのこと信用してるよ。でも話す勇気とかきっと助けてって言えないと思うからその時は私達が助けてあげようね”
『はい…そうですよね!』
その時、私の後ろから声がした。
誰かを追う二つの声とそれから逃げているであろう誰かの声。
多分ヘルメット団だな。こんな時間に生徒がいるわけない。
「待てぇ!!」
「こっ!来ないでくださいぃ〜!!誰か助けて〜!!」
……トリニティ生だ…なんでこんなところに?
まぁ私には関係ないし己の運を恨みながら煮るなり焼くなり……いや、ここで助ければトリニティに恩を売れるか?
「そこの、止まれ」
「あぁ!?誰が私に口を……中指!?」
「マジ!?ちょっ、引くぞ!お前!覚えとけよ!!」
「お前、ね…」
私が声をかけたただけで身を翻して去っていくチンピラの背中を確認して件のトリニティ生を見る。
あ、怯えられてる。私のことを知ってる?
『中指!?』
「どうしたの?アヤネちゃん」
『中指はここ数日で有名になったブラックマーケットの何でも屋ですよ!依頼達成率は100%、敵対組織は一人残らず倒しているあの!』
“そんなのがこの近くにいるの!?”
「こ、こっちにきたりとかしないわよね!?」
おっと、この姿を見られるわけにはいかない。
いまはサングラスをかけただけなんだし簡単にバレてしまうし。
もっとマシな変装すれば良かったな…
「あ、ありがとうございました!あっ、私は阿慈谷ヒフミって言います」
「私は中指。お礼はいいよ。ただの気まぐれだし。そこの大人…いや今日はもう帰った方が……」
「い、いえ!今日はペロロ様の限定人形を手に入れにきたんです!」
「ペ…ペロロ様…?」
目の前に掲げられた白い何かを見ようとそれを遠のける。
なんだこれ…羽らしいものが生えていてアホっぽい顔で…鳥、なのか?
「一応聞くけどこれって?」
「ペロロ様です!!!!」
「うん…そっかぁ」
何を好むかは個人の自由だしね。これは控えめに言って…まぁ、うん。
でもなんでアイスらしい何かを口に突っ込まれてるんだ…ヒフミのセンスはかなり独特だ。
「これは100体限定のアイス屋さんとのコラボ人形なんです!なんと言っても……」
まずはこの子をどう止めようかな…
もう先生に押し付けよう、そうしよう。
「あ、そこの大人だったらいい感じにペロロの話聞いてくれるんじゃない?シャーレの先生みたいだし」
「そ、そうですね。ご迷惑おかけしてすみませんでした中指さん!さようなら!」
「じゃーね……中指さん?」
どっと疲れた…まぁブラックマーケットに詳しそうだったし先生達がいい感じに仲間に引き込むことを祈ろう。
先生は犠牲となったのだ…ヒフミの話、その犠牲に…さて、またお金を引き出しにでも行くか。先生はかわいそうだけど仕方ない。
途中で目的の物が見つかるかもしれない。
◼️◼️◼️
「この型番の戦車について知ってる?」
「さあ…?普通の戦車じゃないのかい?」
だめ、か。ボチボチ聞き込みをしながら銀行に向かう。
あそこならブラックマーケットに詳しいから情報が多少なりとも手に入るはずだ。
あそこなら先生達とも会わないし大丈夫だ。
にしてもここまでは全滅か…私を怖がって避けていくか知らないばかり。やっぱ通行人に尋ねるもんじゃないね。
「う、嘘でしょーーっ!?」
「申し訳ありませんアル様。こちらといたしましてもこれ以上の融資は……」
銀行に入った瞬間に聞き覚えのある声が聞こえた。
便利屋…あの様子だとこれ以上金を借りられなくて困ってるらしい。
自業自得だな。…金に困った奴らがまた無謀にもアビドスを襲ってくる可能性をあるからここで消しておくか?
「中指様、いらっしゃったのに気づかなくて申し訳ございません」
「いやいい。急ぎじゃないし」
「なっ、中指!?」
「有名だけど実際に見るのは初めてだね…ん?なんかどこかで……」
「先にあそこの奴ら静かにさせてくれない?」
何かに気づきかけた奴を睨みつけて外に出させる。
銀行員にすらあんな低姿勢ではいずれブラックマーケットでも居場所を失い路頭に迷うのが目に見えている。ま、私には関係ないことだ。
これで静かになった。二つの意味で。
「中指様、本日はどの様なご用でしょうか?」
「金の引き出しと聞きたいことがある」
指名手配犯を倒す口実だから金はここで手に入れておかないといけない。
「この型番の戦車、知ってる?」
「…いえ、私共ではどうもお力になれそうには…」
ここもダメか…なにかの手がかりくらいはあると踏んでいたのにな。
ただどこかにはあるはずだ。うーん、いい人いたかな?
「ですが軍事関係のブローカーとの仲介ならして差し上げられます」
「じゃあお願い。手数料はいくらかかる?」
「この程度でしたらいただきません」
やっぱ持つべきものは銀行員だな。
さて、後日また訪れるとしてさっさと金を引き出してから帰ろう。
あまり怪しまれるといけない。
「ん、動かないで!」
その時、誰かの声と共に電気が落ちた。
それと同時に外からオートマタの悲鳴が聞こえてくる。
銀行強盗か…はぁ、めんどくさいことになった。騒ぎは起こしたくないんだよ。
「お前が動……」
強盗犯を止めようと前にフードをかぶって飛び出す。
そして殴ろうと近づいたがその動きは言葉と共に止まった。
アビドスだ。強盗犯の着ている服がアビドスの制服だ。
『あれが中指ですよ!シロ…じゃなかった、ブル先輩、無茶ですって!』
「うへー、どうするの、リーダー?」
「リーダーって、私がですか!?」
アヤネちゃんにホシノ先輩…あとヒフミ?
なぜこんなところに…なんで銀行に?
サングラスしておいて良かった。
だがなんだこれは。なんでこんなところにいるんだ…
「ん、私達の目的は銀行の集金記録の回収。それさえ渡せば何もしない」
「ひぃぃ!?わ、分かりました!!」
手慣れた動作で銀行員を脅す推定シロコとそれにあわてて逃げ惑う銀行員、私を警戒してかめちゃくちゃ見覚えのある服装で銃を突きつけるホシノ先輩とノノミ…
せめて服くらいは変えない?ばれるよ?一発でバレるしなんで他校も巻き込んでんの?
やだよトリニティの奴ら相手にするの……
「…酒…いやタバコ吸いてぇ」
「はいはい動かないでねー」
いやシロコはいつかやると思ってたけど本当に初犯か?
なんか…手慣れてるな。怖い。
「本当はパープルもあるはずでしたけどね…」
パープルって私の事…?
「ん、これでいい。それじゃみんな、撤収」
そして何が何やらわからないまま学友達は去っていった。
後に残されたのは混乱が残る銀行内とさっぱりわからぬ私だけ。
「…あいつら追ってくる」
◼️◼️◼️
途中にあった一億円が入ったバッグからお金を半分くらい回収して夕陽が差し込む道を歩く。半分はあそこに残しているけど盗まれていないとを祈るばかりだ。
服はアビドスの制服に着替えている。
しかしなんだったんだ…あれは…
小一時間くらい問い詰めたいけどそれやったら私が銀行にいたことがバレるし…
「あれ、アリサ?」
「シロコ…指名手配犯ある程度捕まえてきたよ…」
バッグを掲げると重みが少しだけ増した。
これで多少は誤魔化せるだろう。
「お疲れ様アリサ」
「ごめんね今日はいなくて。で、なんか情報あった?」
「それが…」
「アリサちゃん帰ってきてたんですね!」
皆もちょうど帰ってきたところらしく校舎の中からアヤネちゃんが、シロコの後ろから先生達が歩いてきている。
互いを労いながらアヤネちゃんの所に戻った。
「あ、これ食べる?なんか売ってた」
「ん、食べる」
犬みたいに飛びついてくるシロコにドンキホーテが置いてくれたチキンを取り出す。
今度ドンキホーテの仕返しにもついていこう。
ヒースクリフから絶賛されている仕事ぶりは気になる所だ。
“アリサ?早く帰ろう”
「あ、そうだね…何があったか後で教えてね、先生」
明日はきっといい日になる。
もうすぐ柴関ラーメンが爆破される
爆破されるとどうなる?
知らんのか、アリサがキレる
アリサの一人称視点か三人称視点どっちがいい?
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アリサの一人称時点のまま
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三人称視点
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視点変更したりしなかったり