父さんの真似したら俺の事見てくれる?   作:HIGU.V

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20年前の作品だけど書きたくなったので初投稿です。

今年6月頃、なんと上下巻の総集編が電子版で出たから読み直したら再燃しました。そのため昔個人的に書いてた作品をしっかり仕上げてたのですが

なんか本家作者様による続編の連載が始まりました・・・なろうで公開されてます・・・嘘でしょ?
「しん・いぬかみっ!~マスター・オブ・ハイアスト編~」 
というらしいです

本当は書き溜めてから投稿するつもりでしたがこの祭りを逃さぬべくパイロット版の1話を編集して投稿します。


1話 お姉ちゃんと一緒 あるいは未来のある日の話

破邪顕正

 

それが川平家とそれに付き従う犬神達の金科玉条

邪を破り正しきを顕す

 

読んで字のごとく人や民草を陥れようとする邪悪なるものこの世ならざる者を祓い、正しきものとするのが彼彼女らの使命としている。

 

江戸時代の川平家の開祖、川平慧海との約定により始まった北日本を代表する霊能力の大家の川平家

 

そこの本家筋にあたる現在の当主にして御年87歳の刀自の3人の孫の一人、川平空太にとってもそれは変わらないことであり。

 

犬神と契約すらできないで半ば勘当扱いで放逐されたが尊敬すべき大事な兄と、ぽっと出の癖にいい子ちゃんぶりやがった恐らく隠れサド野郎の80年ぶりの7人憑き従兄弟と比較して、体質的に当主を継ぐのは望ましくないとされお気楽に生きていても、本質的な使命を忘れたことなどなかった。

 

 

巫山眩君(ふざんげんくん)の名において命じる! 蒸気よ楼をなせ!」

 

耳にかかる程度の長さでジャギーが入ったレイヤーカット黒髪と、目尻が垂れているのに強きな力を感じる目。高校生ほどの────それにしては少々小柄な少年は────そう叫びながら小さなポッドのような、金属性で携帯用の水煙草のパイプを左手で振り煙をまき散らす。同時に腕の勢いそのまま獣のように体を屈めて飛ぶように後ろに走る。

 

その場に残った白い煙は、大げさな呪文のような言葉に対しただその場に揺蕩うだけで、もしその場がオタクの聖地やイベント会場ならば何かのコスプレかモノマネかと思われたであろう。

 

だがここは近くの街から少し離れた小高い丘の上にある一軒のホテルの裏庭であり、そんな彼の前にいるのが、エクトプラズム。この世に明確な悪意をもってホテルの宿泊客を呪う女の悪霊であったのならば、そこにあるのは違ってくる。

 

高校生にして霊能力者。そんなあらゆる出来事が科学で解決するこの平成の時代に、人々の閉ざされた心の闇にはびこる魑魅魍魎を退治するのが彼の使命だ。

 

「螂ウ縺ョ謨オ�√け繧ス逕キ�∝、画�諤ァ逋厄シ�!!!!!」

 

「何言ってるかわかんないぞ!」

 

その女の霊は一目で言えば遊女のような様相だ。着崩れした派手な着物と半透明の霊体でもわかる崩れた鼻。このホテルは明治から大正頃までは近くの鉱山開発の労働者向けの歓楽街跡に建てられたものであり、その正体は推して知るべしというそれだ。

 

ある日に宿泊客が近くの鎮魂の石碑でも砕いたのだろうか?そんな原因はどうでもよくてただ彼の使命は、泣きついてきた人の好さそうな支配人の依頼をただこなしや恐怖におびえる従業員を安堵させることだけ。

 

脱兎のごとく霊に背を向けて逃げる少年を、女の霊は親の仇が如く追いかける。彼女は盲目的に男の利用客を呪いこの世の民に迷惑をかける悪霊であった。霊験あらたかな坊主であれば話を聞き祓うこともできたであろう。苦しまずに成仏させることのできる霊能力者もいたであろう。

 

「っておい!ポルターガイストは聞いてないぞ!」

 

滑るように少年を追いかけながら彼女は周囲の石や木の枝、落ちているごみを浮かして飛ばしてくる。ただの遊女崩れの霊がそんな能力を持ったのは「投げて飛んでくる価値なきもの」への何らかの強い正負問わない思いがあるからであり。これもまた彼女の背景を知る手掛かりとなりえたであろう事柄なのだ。

 

だが、空太少年は。普段なら綿密に彼の得意とする調査や聞き込みなどをすることなく。到着したその夜にいきなり遭遇戦をする羽目になった彼は。場当たり的に診える対処でただ雑木林のような裏庭を走っていた。

 

陸上部員のような健脚と、まるで背中に目があるような回避で、飛んでくる礫にあたることなく、一度も振り返らずに真っすぐ走りに逃げる彼は、少し開けた月明かりが差し込む場所へと転がるように飛び込んだ。

 

そこは使わなくなったホテルの備品、すなわち回収に出せば金がかかる粗大ごみなどを一時的に置いておくようなボロボロの倉庫代わりの東屋が置かれた場所であり。

先ほどからゴミを飛ばす悪霊からすれば武器庫。逃げ惑う少年から見れば処刑場であった。

 

「豕ィ譁��螟壹>陲ォ陌占カ」蜻ウ縺ョ螟画��√→縺」縺ィ縺ィ豁サ縺ュ�∵ュサ縺ュ�∵ュサ縺ュ��!!!」

 

「うお、とんでもない怒り具合だけどっ!」

 

女の悪霊がまるで雨でも降らすように、そんな廃材の山を浮かせて彼にたたきつけんとする。身を隠す場所もないこの場で雨霰のように四方八方より襲い掛かるベッドや椅子に座布団。ラゲッジカートや壊れたオーブンまで。雑多なゴミが空太を押しつぶした。

 

「縺悶∪縺ゅ∩繧搾シ�!」

 

土煙が舞う中、悪霊が狂ったように笑う。憎むべき男がまた一人この世から消えたことへの嘲笑かあるいは────

 

「やれ!」

 

「破邪走行!」

 

そんな悪霊の真後ろ。月明りに照らされて輝く銀色の髪をなびかせた。この世の者と思えないような美しさの女性が、逃げ惑っていた少年の声に合わせて踊り出ると同時に、手に纏った炎を指さすように霊へと向けた。

炎とは、それすなわち浄化であり悪しきものを焼き清めるイコンである。そしてその女性は人ではないが破邪顕正を掲げる存在、すなわち

 

「犬神使い相手は初めてか? 悪霊女!」

 

「空太様、油断なさらずにまだ終わっては────」

 

「いや、終わりさ」

 

いつの間にか香木の香りが漂う煙が、金属のパイプより漂う。先ほどまでゴミに押しつぶされたように見えた少年、川平空太はどんなトリックを使ったのか、額に軽い汗こそかいていたが傷一つなくその場に立っている。

そして彼を守るように銀髪の女性は残身を解かずに斜め前に構えていた。

 

悪霊は仕損じたことを理解しすぐさま、いつから使えるかわからないが便利な力を持って邪魔な二人を仕留めようと念を送る。しかし

 

「縺ェ繧薙〒��シ溘↑繧薙〒繧茨シ�シ�シ�!!!」

 

「だから、オレ達は犬神使い。本物の霊能力者なんだって」

 

「……どうか安らかに」

 

周囲を漂う煙が彼女を包む。そして先ほどの炎も消えることなく彼女を燃やす。そう少年が焚いていたのは水煙草ではなくほんものの除障香の煙。そして女性から受けた炎は邪を払うもの。

ただの場末の遊女の100年かそこらの恨みつらみなどかき消すそれであり。ボロボロととけるように体が薄くなっていく。

ひたすら男が憎いという怨念によって動いていたその存在はまるであっけなく。まるでもとより無かったかのように、ただただ炎と煙に包まれて霧と消えた。

 

「よし、仕事完了!! 風呂入って寝るぞ」

 

 

完全に消え去ったのを見て少年はすぱっと切り替える様にそう叫びながら伸びをする。本来は時間をかけてじっくり下調べして簡単に終えるはずだった除霊が、外に出てすぐの遭遇戦の様相を呈した為に疲労感は多いにあった。

 

「はい、お疲れ様です空太様」

 

それを苦笑しながら労わる女性は、最も人に近い人妖が一人である犬神であった。すらっと伸びた手足にやや小柄な背丈と、知的な印象を感じる落ち着いた服装、銀の髪の隙間からは上品な耳飾りが見える美女。見れば人でないことがわかるが、その在り方は善良なもの。

川平家はそんな人と寄り添う犬の性質を持った人のような妖と共に戦う一家であり、空太は3人の犬神をつれたれっきとした犬神使いだ。

 

そんな犬神使いとして脂の乗ってきた主人を彼女は認め……否、その向こう側に見えるとある影を見て静かに笑う。

 

元より自分を囮にすることは川平家の基本戦略。

なにせ犬神使いを相手にする側からすれば、指揮官たる犬神使いは犬神よりも先に狙うのが道理故に。ならばこそ、こちらから自ら主人で指揮官を囮にする、そんな攻めっけのある運用をするのだ。その為その戦略を実現するために川平家の人間は過酷な修行を義務付けられているが。

彼女の主人は既に、それをそつなくしかも安全に囮の役目を【囮】を用いてこなしているのだから。

 

向こう見ずで攻めっ気があり一本の戦略を通す度胸。それはまるで────在りし日の宗太郎様のようで────

 

「では、私はあの二人がきちんとホテルのスタッフを守ってくれたと思いますが、念のために確認をして参ります」

 

そんな、主人を見てそれでいて主人でないものを見てしまった事に、幾ばくかの座りの悪さと恥じらいを覚えてしまった彼女。

誤魔化すように、逃げるが如くそう言って空へ飛ぼうとする犬神の腕を。

 

そうるとわかっていたかのように空太はパシッと軽快な音を立てて掴んだ。

 

「今オレの前の主人(父さん)と比べたでしょ────ごきょうや?」

 

「……っ!」

 

先ほどまでの快活な少年のような振る舞いを捨て、いきなりじっとりと粘着質な声で自らの犬神の名前を呼ぶ空太。好青年然とした立ち振る舞いから、じっとりと緑の目をした男のように、まるで蜘蛛が獲物をその巣でからめとる如くつかんだ腕に少しずつ指の力を加えていく。

 

「も、申し訳ありません。決してそのような、いえ」

 

「……いいよ、ごきょうや。大事な前のご主人様なんだから」

 

ニコニコと人好きするような笑顔なのに、握られた腕に感じるのは熱と若干の冷や汗。ごきょうやはそう、焦っていた。

もう契約しそろそろ3年になろうと、彼女の中でまだ消化できていないのに。いや消化できていないからこそ、大事になっているこのお互いの思いは。

 

そう、彼女川平空太の犬神にして、まとめ役のごきょうや。

彼女は200年以上生きている犬神だが、その以前にして初の主人は空太の父親である川平宗太郎だった。

 

とても優秀な犬神と犬神使いの関係であり、ともに青春を駆け抜けた中で芽生えた、彼女の中で未だ燻ぶるうら若き少女のような瑞々しい気持ちと。

宗太郎が結婚するにあたって、やきもち焼きな奥方のため。ごきょうやを筆頭とした犬神達4人全員────全員美少女であった────との契約を破棄して山に返した主人のことを思う苦い思い出。

それは未だ昇華されずに胸を焦がす痛みと安らぎであり続けているのに。

 

「どう? 今日の僕……いやオレは父さんっぽかったかな?」

 

「それは……その、はいでもありますし、空太様は空太様ですが同じ家系で学んだ親子ですのである程度は」

 

しどろもどろになりながらも、最早何度目になるかわからないやり取りを返す。普段のクールな大人の女性であり、自認が主人の乳母であり姉足らんとしているごきょうやはそれが思い出せないほどにペースを乱される。

この場に他の二人が居なくてよかった。とくに「あの子」がいると余計に面倒なことになると頭の隅で思いながら。

 

そう彼女はかつての主人であり、自分を選ぶことなく最愛の人を選んだ昔の男の息子から────どうやら並々ならぬ感情を向けられているのだ。

 

「……まぁ、いいや今日はせっかくだからね?」

 

彼女の今の主人である川平空太から複雑骨折したような、思いを感情を向けられている自覚はしっかりとあるごきょうや。

だからこそ上手く言葉を返せず答えに困ることが多かったが。どうやら今日は機嫌がいいのか主人からの詰問はひかえめだ。

否、これは詰問ではなく、そんな立体交差も驚きの歪んだ思いのやりとりすら、ただの楽しいおしゃべりの様に思っている節のある、自身の新たな主人に若干以上の恐怖すら覚えながら。

 

「ほら、今日は一緒にお風呂入って寝てくれるんでしょ?」

 

「なっ!! 何を仰いますか!!」

 

「ほらさっき、風呂入るぞに「はい」って言ったし背中流して添い寝してくれるのかと?」

 

「────っ!! 全く貴方って人は!! そういうずる賢いところはお父様に似ませんでしたね!!」

 

いまでこそ働く妻のために主夫として支える優しき父親であるが、現役の頃は強気で一直線だった宗太郎。

その所作をどこから覚えてきたのか年々真似してくる息子の空太。だが素の彼はもう少し優しく柔らかくそれでいてさみしがり屋な少年だ。

急に甘えるような所作をしてこちらを誘ってくる悪い子であり、時折本当にただの寂しさで寄ってくる。と思えば揶揄うように接してくるので、ごきょうやからするとかなりの困ったものなのである。

 

彼女の同僚にして親友たちからすると「そこが可愛いんですよ~」「……うん」と帰ってくるがとにかく悩ましいのだ。

 

「まぁ、今日は流石に疲れたしまた元気なときにお願いする」

 

「勝手に既成事実化しないで下さい空太様」

 

ただ、これは彼女からしたら絶対口には出さないのだが。

自分を一番にいつでも優先してくれる。そんな優しい主人に。心を半ば止めていた親友すら溶かし始めている主人を。

【際限なく甘やかし自分が思うが儘に好みの男性に育ててしまおうか】そんな欲望がチロチロと心の奥底から覗いてくるのだ。

それを悟られることなく蓋をして、ただらだ立派な犬神使いにあわよくば次代の川平家当主になるようにと育てる。それが彼女の自認が乳母であるようなごきょうやのスタンスだった。

 

若干白み始めた東の空を背に二人はホテルまで歩きながら軽いやり取りを続ける。

遠くで手を振る同僚の二人の犬神に軽く手をあげて返すごきょうやと、大きく手を振りながら走り出す空太。

 

これはそんな、初恋相手が親父が振った女性だったからバキバキに歪んだ少年と初恋を忘れられないまま相手の息子からアプローチを受けてぐちゃぐちゃになってる女性。そしてそのやり取りをニコニコ楽しみながら割り込んだり邪魔したり応援したりする同僚たち。そんな群れのお話である。

 




現在の二人はこんな感じだよ!から始めるアニメリスペクト構成

なので、ここからしばらく過去編です、戻ってくるまでだいぶあります。

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