父さんの真似したら俺の事見てくれる?   作:HIGU.V

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なるべく原作知らなくてもわかるようにねっとり書いたら設定説明がくどくなる……



2話 運命の出会いあるいはバキバキに曲がる癖の音

彼、川平空太(かわひらくうた)が生を受けたとき、周囲の人間は大いに喜んだ。昨年生まれた長男で第一子の啓太(けいた)に続く年子で二人目の男児、これで川平家も安泰だ、と。

 

それは若くして死神を退治し、ただ一匹の犬神を連れて、孫が出来て還暦を迎えてなお宗家の座にある川平家の現当主、川平 (かやの)からしても当然の事であった。

 

宗家の二人の息子は、どちらも犬神使いの道に進むことはしなかったものの、彼らの子供――つまり孫の世代に関しては、どちらかが後継者にふさわしいものになってくれればよい。

刀自とよばれるような年にはまだ早いが、それでも彼女は肩の荷が下りたものである。

 

 

古来より霊能力には様々な形がある。神通力から始まり、化生を祓うもの、怪異を使役するもの、調伏するもの。中にはイタコなどに類する、超自然的存在を自身の体に降ろして霊能力を行使するシャーマンなる者たちもいた。

犬神使いは、霊視は勿論、霊力を操り術法をつかいこなし。鍛えた肉体と体術で攻撃を躱しあるいは仕留め、そして犬神を使役する器と指揮能力。複合的な素養を全て持つこと戦闘や荒事の心霊問題に強い霊能力者である。

 

そんな日本有数の霊地の近く、由緒正しい犬神使いの家、北日本で五指に入る霊能力家である川平家に生まれながらも、川平空太はその資質、霊的形質が非常に歪だった。

元来、霊的な資質ということ一般の社会においてはオカルトや迷信扱いされる。霊が見えるなどと嘯く人がいようとそう相手にはされないだろう。しかし、霊能力者からすると決してその素養は無視できないものだ。

なにせ「変態に好かれやすい」「運が悪く貧乏になりがち」などといった不幸の星の下に生まれたことで、霊能力者としては周囲から軽んじられる霊能力者もいるほどだ。

 

空太が生まれて、小柄な母親に抱かれ退院した日。その帰りの道すがら、低級霊が一斉に彼らを乗せた車を追いかけまわした。普段は自我どころか存在すら虚ろな声さえ発しない霊たちが誘蛾灯に魅かれるかの如くだ。

 

結婚に際して犬神との契約を解していたが、霊能力者としては優秀な父、川平宗太郎によって事なきを得たが、何かそういった霊障を呼ぶ子であることは傍目にはあきらかだったのだ。

物心がついたころには周囲の霊、特に害意がなく祓われなかった低級の動物霊や浮遊霊とおしゃべりしたりするほどであり、人と霊の区別があいまいで、それでいて悪霊を招きやすい面倒な子供だったのだから。

 

そんなこともあり、親類縁者が集まった生誕記念の集いでは、方々の縁の薄いただ顔つなぎで来ただけの霊能力者たちより、まだ乳児でありながら「魂をいくらか置き忘れて生まれてきた鬼子」などと嘯かれることとなる。

基本田舎の霊能力者は陰湿なのだ。

 

とはいえ、陰湿な霊能力者の意見も道理にのっとるもので、空太は人よりも悪霊や霊障が寄ってくる。まるで弱った魂に群がるようなものが、常に彼の周りに漂っているのだ。

それは霊的資質を蝕んでいるのかのようで、霊能力者からみれば、おくるみに包まれた空太は明日をも知れない未熟児が如くであった。

 

 

しかしながら、元来明るいきっぷうの良い者たちの家系である川平家において、そのような些事はことさら気にするべきことではない。

事実、その血による生まれなのか、体はすくすくと育ち、別段病弱というほどでもない。むしろ霊感のない医者から見れば多少内向的なきらいはあれどとても健康優良児いった風情で。

 

「待ってよ兄さん」

 

「なんだよ空太もう疲れたのか?」

 

そんな就学前の自由な少年は、今日も年子の兄である川平啓太の背中を追いかけている。

体質の事もあるが、なにより多忙な両親のことと犬神使いとしての修行もあり定期的に山奥の川平家の実家で生活している二人にとって、広い庭や迷路のような古い日本家屋、周辺の山々はたいそうな遊び場なのだから。

 

空太が近づくと、木端な魑魅魍魎ですら油をまかれた炎が如く、活気をもらったかのように血気盛んになる。

川平宗家の戦後の日本のあまりにも多くの霊的事件を解決したことで持った膨大なコネクションを用いて、高名な眼を持つ修験者に霊的に診てもらったところ

「霊的存在、霊魂や怨念などと親和性が高い魂」のようで。空太が墓地の近くまで遊びにいけば1つ2つの霊がついて帰ってくるほどだ。

だが、それを除けば普通の少年にすぎなかった。

 

 

しかしそれは、【悪霊を鎮める】【道の外なるものを調伏する】そんな霊能力者の第一線にあたる仕事の犬神使いには、資質として向いていないとも見える。鎮めるべき霊を騒がせてどうするのだと。幼い彼の耳には入らなかったが、当然ある風説である。

 

だが、重ねて言うが当主で祖母でもある宗家からすれば些事である。二人目の孫を疎むこともなく、健やかに育てば「これもまた良い」と優しい目で見守っていた。

 

空太の持つその素質は、弱き霊を満たすもの。いずれ鍛えていけばその場に残された集合霊の声を聞くこともできたりもする、所謂【霊視】に近いもの。

【破邪顕正(はじゃけんせい)】を主とする犬神使い、川平家の本流にはなれずとも、霊に困る人々の多い末世のこの時代、ひとかどの霊能力者にはなれるであろう、と。

もっと言えば、女の尻と自分の知的好奇心で欧州に飛んだ長男と、好いた相手のため犬神使いをやめた次男がいる彼女からして、孫の進路などなるようになるとしか思わないものである。

 

むしろ、誰に似たのかあまりに享楽的で、いたずら好きな兄の啓太の方が大きな問題になりそうだと、祖母は頭を抱える始末であった。まあ、その予想は半分正しく、半分は不正解だったのだが。

 

 

「兄さん、そんなところ危ないよ」

 

「声を出すな! お前は見張ってろ」

 

大きな川平本家の集まりの際に抜け出して、立派な檜作りの浴室にある、高い換気用の小窓に外から張り付き、招かれていた霊能力者の若い娘の入浴を覗こうとする兄啓太と。

周囲を見張るように兄に言いつけられて、子分の様にきょろきょろとしている弟空太がいると己の犬神「はけ」に聞かされた宗家は孫の将来を案じたものである。

 

 

とは言え空太は聡明な少年であった。不在がちな両親にむけて泣き言も言わず、定期的に本家に呼ばれて修行やら挨拶やらでも文句を言わず。それをお利口さんと呼ばれてはにかむように微笑む。そんなどこにでもいる名家の次男坊。

だが価値観は彼の主観ではいつもいる周囲のおしゃべりな魑魅魍魎に囲まれ育ったからか【いたって普通】だったのだ。

 

「お父さん、お母さん……」

 

川平家の人々は太陽に様に明るく、物理的な距離を気にせず精神的な近さを分かち合える者ばかりだ。

兄である川平啓太を筆頭に、将来両親が海外に行こうが気にすることなく、かと言えば偶に会えば抵抗なく話が弾む。良くも悪くもドライな人たちだ。

 

だが空太はとても寂しがり屋だった。母の仕事の都合で生まれた場所より引っ越した時も彼だけは幼き友人との別れを嘆いた。それはとても普通の子供ならよくあることであったが。

 

「ほら俺が一緒に寝てやるから泣くなって」

 

兄弟ともに一時的に祖母の家に住むことになった時も時折夜泣きだしてしまい兄に慰められることがあった。

それを見た時川平宗家につかえる犬神の「はけ」は驚いたものだ。

ああ、5歳の少年は両親がいないと不安になるのだと当たり前の事に気づいたものである。

 

 

 

「兄さん、だから言ったのに…」

 

「いてて、ばあちゃんなにもグーで可愛い孫の頭を殴るか!?」

 

だからこそ、北日本の霊能力者の重鎮である忙しい祖母を除いた唯一の肉親である兄についてまわった。

破天荒で行動的な兄と落ち着いた内向的な弟。生来の趣味嗜好でいえば、あまりにも活動的な兄の遊びにはあまり合わないような空太だったが、それ以上にさみしさが勝ったのである。

 

 

「よし!空太!今日は雨だからビデオを見るぞ!押し入れに入ってた大叔父さんの動くビニ本だ!」

 

「兄さん、ビニ本って何?」

 

啓太も別段、年子で一つしか違わない弟を友人のように連れまわした。彼からすれば一人で遊ぶのも、二人で遊ぶのも大差なく嫌でもないのだから当然ともいえた。

即物的で欲望に目が染まりがちなせっかちな啓太と、一歩引いて注意はするけど声にするだけで止めない弟は、良くも悪くも相性がよかったのである。

 

ビニ本とビデオテープを当然のようにげんこつと共に取り上げられて、仕方なく流行りのテレビの録画を二人で見ていた仲の良い兄弟を、世話役となっているはけはこっそり写真に収めていた。

それは日常の一コマとして二人は仲良く遊んでいるのが常だったからこそ。

 

 

とはいえ特に啓太の方は長男で1年早く生まれたものとして【犬神使い】の、そして川平家を将来的に継ぐものとしての教育もあり、四六時中とはいわなかった。

なにせ啓太と空太から見た父と伯父、一つ上の世代の川平家の男達は、二人とも女の尻を追いかけて犬神使いをやめたのだから。

祖母や周囲の教育に力が入るものだ。

 

最も残念なことに川平兄弟もまたその例に漏れず、血を感じるような成長を遂げるのだが。

 

 

「っへ!やってられるかー!児童虐待はんたーい!」

 

閑話休題、ある日そんな詰め込み教育に嫌気がさした兄が、何もない田舎でもできそうな遊びを思いついて、珍獣ハントなどと称して修行を一人こっそりフケて、いくつもある川平家の山のひとつに虫かごと虫取り網を持って逃げて行ってしまう。

 

不真面目なきらいのある啓太のいつもの事ながら、その日はすぐに連れ戻されることなく無事脱走し(見逃されているとも言う)束の間の自由を謳歌していた。

 

「兄さんもう行っちゃった!僕も行かなきゃ!」

 

そこそこ真面目な空太はしっかりと、簡単な瞑想や体作りの体操に近い、兄に比べまだまだ軽めなやるべき修行を終えると、今日は「とある事情」で騒がしい周囲に黙って、兄を追いため麦わら帽子をかぶって走り出す。

 

────アッチ! アッチ!がニギヤカ!

 

「裏のお山? わかった!」

 

今日は何か騒がしい「行ってはいけないお山」の方に冒険しに行ったであろう兄を探して、通りすがりの霊魂が指さす方向にこっそりと家を後にした。

 

 

そう、その日兄弟は別々の方向へと出かけて行った。

特段約束をしていたわけではないのだから当たり前だ。

しかしもしかしたらその日は川平家にとって数奇なめぐりあわせの日だったのであろう。

 

なにせ、兄である啓太は本家から少し離れた山の開けた場所へと意気揚々と歩いていき、そこで「大きな黄色い珍獣」と、啓太の運命と出会うのだから。

そして弟の空太も────

 

 

 

 

川平の者は入ってはいけないといわれる犬神達の住みかである裏山へと近づいていく空太。珍獣ハントにはまっている兄の事だからこっそりと犬神達の山に行ったのであろうと、そう幼い彼は考えたのだ。事実先ほどまで霊は騒がしかったのでそれを辿ったのである。

 

大きな川平の屋敷からぐるりと回りこんで裏手にあるおおきなお山。そこには決して超えてはならないとされる人と犬神の境界の赤い鳥居がある。

それは犬神の住処である裏山を丸ごと覆うように囲う強力な結界の唯一の通り道である。

どれだけ霊力があろうと、ここに住む犬神も犬神使いも、出入りにはこの鳥居をくぐる必要があり、だからこそこの鳥居は超えてはいけないものと耳にタコができるほど言われていた。

 

空太はきちんと裏山には入ろうとする鳥居を潜ることはせず、参道をそれて山の周囲の小道から続く藪へと入っていく。ちょうど子供なら潜れそうな隙間があったからだ。兄が好きそうな冒険できそうな場所を求めての事だ。

 

「兄さんー? いるー?」

 

空太にとって裏山は、時折やまの犬神達が宴会をしている声などが響いてくるところであり、行ったことも詳しく聞いたこともない。しかしそれでも、販売中育ちの少年として、山は今日はどこか騒がしく落ち着かない様子ということは感じ取っていた。

なにせいつもはまとわりついてくる周囲の霊がきれいさっぱり消えていたのだから。

 

ここは犬神の住む山であり、一級の霊地である。何かあればむしろ山の奥から匂う「何か」に魅かれて無限に寄ってくるのに、なにもいないのだ。そう、まるで今しがた掃除を終えた後のようにきれいさっぱりと。

 

冷静に考えられる年であれば、それは既に「何か」が起こり対処された痕だとわかるものだが、片手で数えられる年齢の空太にはまだそんなことは見当もついていない。

ただただ静かだなと、なんか変だなと、なによりも兄さんがいるかなぁと考えながらてくてくと、藪を進んでいった。

 

左手のお山には結界があるため、少しずつ右にどんどん道からそれ薄暗い藪の中。普段の彼ならば動物霊や浮遊霊に囲まれるであろう人の通らない道を少し歩いたところで。

 

偶然にもこの周辺で補修中の結界の様子を見に、空を飛んで警らしに来ていた一人の犬神と空太少年は出会ってしまった。

 

「……君は!……いや貴方は……」

 

「お姉さん誰? 」

 

 

空からひゅっと降りてきた犬神は女性だった。背は大人の女性としては少し低く、殆どの山の犬神が来ている和服でなく洋装に身を包んでいる。

銀色の髪は短く肩程まであり、どこか知的で人を寄せ付けない冷たい空気を纏った犬神である。

すらっと伸びた手足に、透き通るような肌。蒼い目はどこか遠くを見ているようで。祖母の犬神であるはけのような人外の美しさを携えた女性。

 

それは空太少年が見た中で最も美しく、そしてどこか懐かしさを覚えるようなアヤカシで。そんな彼女がふらふらとゆっくりと近寄ってきて、帽子があるからか、かがんで彼の顔をのぞき込むように顔を寄せてきた時には、彼の中で何かが灯るようなそんな衝撃を覚えた。

さらに悪いことに、そのまま止まらずに彼女は、まるで人懐っこい犬がそうするかのように、空太の匂いをかぐように旋毛から首のあたりでしきりにすんすんと鼻をならしているのだから。

 

 

「え? あっ? 」

 

「……あぁ、やはりそうでしたか……そうか……もうあの人と……あれから10年近く経てば……」

 

首元に顔を近づけて匂いを確かめるような仕草を、大人の女性からされた空太は突然のことに目がチカチカしてくらくらとした酩酊感に包まれる。母親とも祖母とも違う血のつながらない女性からのあまりにも突然のボディタッチ……否、スメルチェックを受けてしまったのだから。

 

「……私はここの犬神です、川平家の嫡男が来るにはまだ早い。送って行きましょう」

 

初めて香ってきた女性の空気とその感情を言語化できないまま、さっと優しく抱き寄せられ、軽く抱え上げられ。彼女が飛び上がったと感じた後、気が付けばもう、いつもの本家の門の前だったのだから。

距離としては子供の脚で家の裏手の山に行ったのだ、大したものではない。だからそれを急ぐように、何かを振り切るかのように飛ぶ女性の速度からすれば当然の帰結だ。

 

だから空太は知らなかった、その時の女性が受けていた衝撃と感情の嵐のような混乱を。

狂おしい程の熱と後悔とある種の怒りや、悲しさと寂しさがないまぜになったものを、必死に飲み込んでするべきことを必死に冷静になしたことを。

 

懐かしい大好きだったあの人とよく似ているけど、明確に違う匂いと仕草と顔つきに、彼女が泣きそうになりながら川平家の前に空太を届けたことの意味を。

 

 

なので空太はその日、帰宅した後すごい珍獣と出会ったと興奮する兄の言葉は頭に入ることなく。兄と翌日は一緒に珍獣を見に行くことを上の空で約束していながらその女性のことだけを考えていた。

 

そう、所詮空太も、川平家の人間であったというだけだ。

 

 

 

 





犬神:もっとも人に近しい人妖。人をこよなく愛し、幾多の障害を乗り越えてどこまでも人についてくる。向こうからすると面倒を見てやってる感覚。破邪顕正。(EXわん!より)

寿命が長い人の見た目の犬の妖怪。デフォルトで飛べるし透明(霊能力がないと見えない状態)になる能力を持ってるし、物体透過もできる。そして美形。価値観は犬だったり人間よりだったりするし、大きなもふもふワンコから人に変身している感じでもある。
人間より圧倒的に強い霊力を持つ……わけではなく割とピンキリ。犬神使いに使役されることで何倍にも何十倍にも強くなる。

犬神使い:犬神と契約して破邪顕正をなす人間のこと。主人公たちは川平家という日本2大家の1つ。ついてる犬神の数で優秀さが決まるという風潮がある。

いぬかみっ!:日本のライトノベル。可愛い女の子がたくさん出る萌え系作品……ではなく数多の変態と筋肉と変態の見本市。アニメは第2話から、筋骨隆々の褌男の集団にじゃれつかれ舐め回される話「まっちょがぺろぺろ」である。
作中の時代描写は昭和ぽかったりしつつ、2005年より後ぽかったりする。イベントもサザエさん時空に近いので、雰囲気でよろしく。
作者はアニメですら今年で20年前という事実に立ち眩みを起こした。

川平啓太:原作主人公 落ちこぼれの犬神使い。女の子大好きで趣味がナンパのスケベな男子高校生だけど、女性の秘部を見ると鼻血がでるような古き良きラブコメ主人公。作中では大抵変態関連のひどい目にあい尊厳がない。アニメではCV福山潤で作中何度も~~が命じる!〇〇せよ!してくる。



ですのであとがきで簡単解説をする必要があったんですね
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