俺の幼馴染が俺の親友に寝取られました。社会的に抹殺するから今に見とけ。   作:αβ-アルファベータ-

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第2話 静かなる包囲網

 

 

翌朝、鏡の前に立った俺の顔は、驚くほど普通だった。

 

昨夜、あの現場を離れた後、俺は一睡もせずにノートを書き潰した。感情を排し、蓮と結衣、そして彼らを取り巻く人間関係を全て「資産」と「負債」に分類した。

 

 

「おはよう、湊! 今日も早いな」

 

登校するなり、蓮がいつものように爽やかな笑顔で肩を叩いてくる。

 

その手。昨日、結衣の肌を這わせていたその手で、親友の振りをされる。反吐が出るのを通り越し、もはや滑稽ですらあった。

 

 

「ああ、おはよう蓮。昨日は遅くまで自主練だったのか? 疲れてるみたいだけど」

 

「はは、バレたか。ちょっと夜更かししちゃってさ」

 

嘘を吐く時の、わずかな口角のピクリとした動き。今まで気づかなかったのが不思議なほど、あいつの表情は「演技」に満ちている。

 

遅れて登校してきた結衣は、俺と目が合うと一瞬だけ怯えたように視線を逸らしたが、すぐにいつもの甘ったれた声を出した。

 

 

「湊くん、おはよ。……ねえ、今日の放課後、図書室行くのやめてどっか遊びに行かない?」

 

「ごめん、結衣。今度の全国模試に向けて、

 どうしても外せないカリキュラムがあるんだ。終わったら連絡するよ」

 

「そっか……。湊くんは、本当に勉強ばっかりだね」

 

 彼女の瞳に浮かんだのは、失望ではなく「侮蔑」だった。

 

『やっぱりこの男は、私よりも教科書の方が大事なんだ』

 

そう思い込ませる。それが俺の第一歩だ。

 

彼女が俺を軽んじれば軽んじるほど、俺の動向への警戒心は薄れる。

 

 

◇◆◇

 

俺が最初に向かったのは、学園の屋上でも図書室でもない。「茶道部」の部室だ。

 

そこにいたのは、九条 (りん)

 

この学園の影の権力者であり、藤堂家とビジネスで競合する九条グループの令嬢。そして、彼女はかつて蓮に告白し、公衆の面前で「地味な女はタイプじゃない」と切り捨てられた過去を持つ。

 

 

「佐藤くん? 生徒会の優等生が、こんな風情のない場所に何の用かしら」

 

凛は茶を点てながら、冷ややかな視線を向けてくる。

 

 

「九条さん、単刀直入に言います。藤堂グループの次期後継者……藤堂 蓮を、引きずり下ろす手伝いをしてくれませんか」

 

凛の動きが止まる。

 

 

「あら。親友ごっこは飽きたの?」

 

「親友ごっことは……そうですね。信じた俺が悪かった」

 

「ごっこ遊びは、向こうが先に壊しました。俺はただ、ゴミを掃除したいだけです」

 

俺はスマホを取り出し、昨日撮影した動画の「一部」を彼女に見せた。

 

凛の瞳に、暗い愉悦の炎が灯る。

 

「……面白いわね。でも、これだけじゃ決定打にはならない。藤堂家は不祥事をもみ消す力があるわ。学園内での人気も根強いし」

 

「ええ、分かっています。だから、まずは彼の『集金能力』と『人望』を根元から腐らせます。そのための『鍵』を、九条さんに握ってほしいんです」

 

 

◇◆◇

 

俺が凛に提案したのは、蓮がキャプテンを務めるサッカー部の「裏会計」の暴露だ。蓮は部費を私物化し、お気に入りの部員たちと夜の街で豪遊しているという噂がある。

 

俺はその確かな証拠——蓮が部費決済に使っているタブレットのパスワードと、裏帳簿の保管場所——を、生徒会の立場を利用して既に特定していた。

 

 

「これを九条さんのルートで週刊誌と、何より学園の『匿名掲示板』に流してください。タイミングはこちらで指定します」

 

「協力の報酬は?」

 

「藤堂家が失墜した後に空く、学園理事会の席。そして、結衣の実家が経営する建設会社への融資停止。それらは全て、九条グループの利益になるはずです」

 

凛はくすりと笑った。

 

「佐藤くん、あなた……思っていたよりずっと、悪い男ね」

 

「ありがとうございます。褒め言葉として受け取っておきます」

 

 

◇◆◇

 

その日の放課後、俺は結衣に短いメッセージを送った。

 

 

『勉強が早く終わったから、生徒会室で待ってる。合鍵、持ってるだろ?』

 

案の定、やってきたのは結衣一人ではなかった。影から見守っていると、結衣が蓮と一緒に、誰もいないはずの生徒会室へと忍び込んでいく。

 

 

「湊は?」

 

「まだ会議室だって。あいつ、真面目すぎて笑えるよね。今頃、先生にペコペコしてるよ」

 

蓮の嘲笑が聞こえる。

 

二人は、俺の机の上で、俺が彼女に贈ったブローチを弄りながら、密会を愉しんでいた。俺はそれを、生徒会室に設置された隠しカメラ(防犯用と偽って俺が設置したものだ)で見つめていた。

 

 

「いいよ、もっと壊してくれ」

 

俺はモニターを見つめながら、静かに喉を鳴らした。二人が調子に乗れば乗るほど、落下の衝撃は大きくなる。

 

その時、蓮のスマホに一通の通知が。

 

それは、サッカー部の後輩からの「部費の件で先生に呼び出された」という悲鳴のようなメッセージだったはずだ。

 

蓮の顔から余裕が消える。

 

 

「……っ、なんだよこれ」

「蓮くん、どうしたの?」

 

チェックメイトへのカウントダウンは、もう始まっている。俺はタブレットを閉じ、九条凛に最後のアクションを指示するメッセージを送った。

 

「さて、次は『純粋な幼馴染』の化けの皮を剥ぎに行こうか」

 

 

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