葬送のフリーレン短編集   作:風亜

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この命、尽きるまで

 長年パートナーとして任務をこなしてきたメトーデが死んだ。

 

何年経とうとも、彼女の美しさは変わらなかった。

 

彼女の死の理由は、無茶な戦い方ばかりをして重傷を負い、ゲナウを治療し続けた結果、自らの命を削っていた事だ。

 

実際、ゲナウが死にそうになった事は何度もあった。その度にメトーデは彼に自らの命を分け与えてまで癒し続けていたのだ。

 

死の間際、彼女はいつも通りゲナウを女神様の魔法で治療したが、それを終えた途端、力を失ってゲナウの腕の中に倒れ込んだ。

 

「どうした、メトーデ」

 

「ふふ……お迎えが、来てしまったようです」

 

「何を、言って」

 

「ゲナウさん………わたくしはずっと、貴方を愛していました。自分の命を、幾度も分け与えるほどに」

 

「何故、そんな事をしてまで俺を」

 

「貴方はいつも、自分から死にに行くような人ですから………死なせない為に、決まっているでしょう?」

 

 メトーデはまるで、聖女のように微笑んだ。

 

「お前が……お前が死んだら、俺はどうすればいい」

 

「そう、ですね……。わたくしが与えた命の分まで、生きて下さい。ちゃんとした寿命を迎えるまで……」

 

「お前に命を返す方法は、無いのか」

 

「ありませんし、返してもらう気もないです。……これからは無茶な戦い方はやめて、新しいペアの方とちゃんと協力して戦って下さい、ね」

 

 メトーデにそう言われても、ゲナウは納得しない。

 

「お前が居たから、これまでやってこれたのであって……、お前が居なくなったら、俺も死ぬしかないじゃないか」

 

「貴方は死ねません……。わたくしが与えた命がある限り。だからどうしたって、生きるしかないのですよ。それが例え、ゲナウさんにとって呪いになったとしても」

 

「呪い……。そうか、無茶な戦いをするなというお前の忠告を無視し続けて重傷ばかり負った結果、俺はお前を無意識に死に追いやっていたのだな。俺としては、どんな傷を負おうともお前が治してくれるから、いくらでも無茶出来ると勘違いをしていた………余りに、愚かだ」

 

 ゲナウは今にも命の灯火が消えようとしているメトーデを手放すまいと強く抱き留めた。

 

「そうですね……そんなゲナウさんも、わたくしにとっては愛おしいのです。それに、貴方に自分の命を与えた事に一切後悔はありません」

 

「何故言ってくれなかった! 俺が無茶して重傷を負う度、お前が自分の命を俺に分け与えていた事をッ。それを伝えてくれていたら、無茶な戦いだってやめていた。メトーデ……お前が俺より先に死ぬなど、考えられなかったからだ」

 

「これは、わたくしだけの秘密……。ゲナウさんに与えた命となる事で、貴方を生かす事が出来る───単なる、わたくしの身勝手ですよ。だって、愛してしまったんですもの」

 

「そんな身勝手な愛など要らない……。頼むから死ぬな、メトーデ」

 

 抱き留められた耳元で、ゲナウの声は微かに震えていた。

 

「あらあら、おかしいですね……。ゲナウさんに嫌われちゃいました。せめて、ゲナウさんからも愛していたって、言われたかったですねぇ……」

 

「言ってやるものかッ。死なないでいてくれるなら、幾らでも言ってやる。だから────」

 

「ごめん、なさい……。もう、時間のようです。わたくしの与えた命を無駄遣いしたら、許しませんから、ね……。化けて出たりもしてあげません、よ……。どうか寿命まで、わたくしの分まで……生きて、ゲナウ────」

 

 

 

 

 

 …………あれから、何十年経ったろう。ゲナウもそれなりに歳を取った。未だ独り身で現役でもある。新たなペアと何人かと組んだりもしたが、やはりゲナウにとってのパートナーは失ったメトーデただ一人だった。

 

今は森の中を只一人歩いていた。アインザームの出現情報が入った為だ。幻影魔法を操る狡猾な魔物で、狙った人間の大切な人物に化け人間を捕食する。

 

今回は一人で任務を請け負った。無論、無茶をするつもりはない。メトーデとの約束はちゃんと守っている。

 

 

『ゲナウさん………』

 

 

 儚げな声が聞こえた。忘れもしない、愛しい声。

 

目の前に、美しい姿そのままのメトーデが霧と共に現れていた。

 

『わたくしとの約束を、きちんと守ってくれているのですね。嬉しいです。……わたくしは今でも、ゲナウさんを愛していますよ』

 

 ゲナウはその言葉を聴いて、メトーデに微笑み返した。

 

「あぁ………俺も今までも、そしてこれからも、ずっと愛しているよメトーデ」

 

 

 次の瞬間には、黒金の翼を操る魔法《ディガドナハト》で迷い無くメトーデの幻影を一刀両断し、アインザームも共に消し去った。

 

(どうして生きている内に素直に言ってやれなかったんだ、俺は)

 

 ゲナウは虚空を仰ぎ見、一筋の涙を流した。

 

……すると一羽の小鳥がゲナウの肩に止まった。

 

その色合いはまるで、メトーデの瞳のようだった。

 

小鳥はゲナウを慰めるように、頬に擦り寄った。

 

 

「お前……、まさか生まれ変わったメトーデじゃあるまいな」

 

 ゲナウは自分で言った言葉に苦笑してしまい、小鳥は首を傾げ、美しい鳴き声を上げた。

 

「フフ………俺と一緒に、来るか?」

 

 小鳥は返事をするようにひと声鳴いた。

 

「では共に行こう。────あとどれくらいすれば、本物のメトーデに再会出来るのだろうな。寿命が尽きるまでの約束、か。……女神様の元への道に迷ったら、迎えに来てくれるか、メトーデ」

 

 

 

End

 

 

 

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