なんか先週の日曜か土曜にいきなりお気に入りが増え続けてランキング入りしてみたいな事が起こってプレッシャーで小説書く手が止まってました。本当、すいません。
後は、今回文章長過ぎて読んでる途中に、ん?ってなるとこ多いと思うんですけど、そこは追々修正していこうと思うのでご了承下さい。
「デッチアゲイン。これも、貴方の想定していた事象かしら?」
「…あ、あはは!俺自身も非常に驚いているさ、全くの想定外だよ!彼の力は異質な右腕と不死だけだとばかり考えていたが、どうやら予言も馬鹿には出来ないらしい。」
私は、その相貌から考えられない下劣な笑いを上げながら相応に華やかな装いを自らの血で濡らし、美しい相貌は酷い有様の彼、デッチアゲインを冷めた目で見下ろす。
私には、彼の思考が理解出来ない。
彼が求めた強大な力、特異点として機能し書の未来すら捻じ曲げる存在のユウトに彼は強い興味と希望を抱いていた。
力に固執する理由は定かでは無いが、彼も
しかし、彼も私もユウトの異質性を見誤っていた。
彼に宿る不思議な右腕と不死だけが、書の未来を捻じ曲げるに事足りる。
___そんな訳が無いのだ。
右腕、不死。それはただ彼に宿った力の一端に過ぎなかった。
あの時、右腕が消し飛び全てが終わったと確定した未来は突然と彼の右腕から現れた莫大な有象無象の力によって覆った。
___竜。
肉眼で捉えるには僅かに半透明な
彼の右肩の断面から透明な糸に繋がる様に現れた竜は、私が展開した人払いの結界も、デッチアゲインが放った攻撃全てを薙ぎ払う。
異質な力、物理法則の概念があるか分からない竜の圧倒的な蹂躙。
デッチアゲインは満身創痍の重体。
私は強制的に変身解除まで追い込まれ、万事休すと目を瞑るが、突然と彼の体が不自然と痙攣し出せば竜は蠢きながら、彼の断面へと戻って行く。
___あの力は、彼の意思とは無関係に暴れる巨大な力。
そう感じたのは虚ろな目で私とデッチアゲインを射抜く瞳、その瞳から一雫の液体が流れるのを私は見た。
何せ彼は戦う事に消極的でも、必要ならば私とも肉弾戦を挑む度胸はある。でも、彼は人を殺める覚悟は無い。
仮に、自身の意思とは無関係に人を殺める術を彼が持ち合わせているのなら。
いや、この考えは駄目だ。私があの力に怯え、彼から離れれば、二度と立ち直る事は出来ない。
しかし、あの状態の彼に意識はあるのか。
あの力が仮に彼の命の危険に瀕した場合に現れる力なら、過去に私もくれあもその力を見る機会は少なからずある筈。
ならば一体何が発動条件なのか、不思議な右腕…もしや、あの右腕は力を消す以外に封印と同じ役割を担う物なら説明がつく。
「…やはり、竜王の力は絶大という訳か。俺も半信半疑だったけど、未完成であれ程の力とは。」
「待って。貴方今、ユウトを竜王と呼んだ。どう言った悪ふざけ?」
「……あぁ、そうか。君は、彼の予言だけは知らないのか。」
「答えて!」
「…良いだろう…ユウトという人間、彼も帆羽くれあと同様王の名を冠する存在と予言の書に記された。それも、大王とは異なる竜王と呼ばれる異質な物でね。」
___どうして。
奥歯を噛み締め、今は我を忘れた嘆きを出すのを必死に殺して、私は彼へと詳細を尋ねる。
そして、同時に行き場の無い憤りが私の心を満たす。
___分かっている。
原因は全部私自身にあるのだ。
戦いの渦中にいる私が、守りたい筈の人達を意図せず終わらない戦いの因果に引き摺り込んでいる事ぐらい分かっている。
過去の私ならきっと、不要な物だと簡単に切り捨てられた。でも、私には彼等との別れ程恐ろしい物は無い。
___だから、私は、
「…大体わかった。後は私に全て任せて、まことジュエルも彼の事も。」
「ふ、怪我人は大人しくするのが一番だ。追々、俺も君に全ての事を託す予定だったしね。…だが、この事はくれぐれも他言無用で頼む。」
「別に、言われなくても私はこの事をウソノワールに話す気は無い。…私も、貴方が居なくなる事は困る。」
「…流石は探偵だ。嫌、今は怪盗シャドウと呼んだ方が良いのかな?」
「別にどっちでも良い。でも、今の私には探偵の名は汚名と一緒。」
「確かにね、…っ。」
「早く体を休めた方が良い。」
「そうしようか。…それと一応、使用の有無は君に委ねるが、俺から些細な贈り物を。」
彼は震える手で、ユウトの右腕を飛ばすに至った例の物を私に投げ渡すし、その姿を私の瞬きと同時に消す。
___魔術。
デッチアゲインが突然と作り出したオカルト的な、
その全容は掴めず、私自身も彼に術法を学ぶまでは疑惑の種を植えていたが実際に見れば、信じるしか無い。
絶大な効果は折り紙つき、私とて今回が初めての使用だったが、十分に効果は得れた。
しかし、発動後に感じた強い倦怠感と
魔術の酷使による体の副作用とも考えられるが、
単に隠しているだけか、仮に魔術に熟練度が存在するのなら使えば使う程体は成長を遂げ、同時に魔術の効果も伸びるのか。
仮説が樹形図の様に伸びるが、どれも正確とは言えない。
ましてや、私は魔術に足を踏み入れたのは僅か数日の赤子同然の素人。
だが一つだけ確かな事は、この力もまた
物理法則の域を出る力、プリキュアもそれに通づる物があるが現状は重く捉える必要は無い事項。
が、ユウトに宿る
手に残る、僅かに
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荒い息とは裏腹に、彼の体は衣服以外は全くと言って良い程に無傷だが服の悲惨さは目を背けたくなる。
腹部に空いた不自然な穴、穴の周囲は黒く焦げた色が染色し、真っ白なワイシャツにはそぐわない。
しかし最も目を向けるべきは、右肩から裂けた袖で、既に服の状態は修繕不可と言える代物だが、今の彼には気の止めどころでは無い。
___何が、起こった。
俺は目の前に広がる悲惨な光景に唖然としながら、疑う目で自らの右腕を見つめる。
狭くも無く、広くも無い無機質な白が一面に広がる室内。
華やかな館内とは隔離されたと錯覚する室内は今、一言で言い表せば
白の空間には不釣り合いな何かが暴れ、壁や地面は歪に歪んでしまい、所々には焦土の跡が見える惨状と鼻につく焦げ臭い匂い。
そして最も視線を釘付けにするのは、その歪に歪んだ地面に付着する誰の物か分からない
「……る、るるか。」
最悪の考えが脳裏を過るが、今はこの血が彼女の物で無かろうと、この惨状を作り出したのは他でも無い俺だ。
原因は俺自身も記憶が曖昧で、端的な事しか覚えていないが原因は右腕にある事は確実。
___千切れた、俺の右腕ってのは、単に何かを打ち消すだけの物じゃ無いのか?
今一度、俺は右腕の存在意義を見出す必要がある。
はっきりと姿を見せた訳では無いが、知覚的に俺の肩から現れたのは竜で、それも俺の意識や魂とは無縁の外付けの力。
故に、俺は奴に首輪を付ける事は出来ず、あの時に竜を自らに押し戻せたのは
だが俺に意識は無く、無意識に働いた奴の功績には称賛を送りながら、この力についての助言が無かった事には静かに怒りを募らす。
「…だぁ、とりあえず此処から離れるか。」
「そうした方が良さそうね。…にしても、派手に暴れた見たいね?」
「好きで暴れる訳じゃねぇよ。ちょっと躾のなってない犬が暴れただけだ。」
「…そうね。にしても、竜なんて貴方のイメージとは掛け離れた力ね。」
「そうだろ、こっちは全然点もこんな力しら……あ?」
独り言を呟き、返ってきた言葉に受け答える俺は聞き馴染んだ声に間抜けな声を零す。
声の主は何処だ、顔を至る場所に向けるが奴の姿は見え無いが、突然と俺の衣服が擦れ、穴の空いた箇所から一匹の妖精が飛び出す。
「全くもう、派手に暴れてくれちゃって。お陰でこっちは貴方の服の中で軽く吐きかけてしまったわ。」
「吐いてくれなかっただけ助かるは!…つか、いつから俺の服の中に居た?入る時間なんてあの時無かったろ?」
「…貴方の中に竜が戻っていく瞬間を見計らっただけよ。そもそも、貴方との接触はるるかにも極秘なんだから。」
「どう言う事だよ、それ。」
服から飛び出し、知る者からすれば若干の怒りが湧く表情で俺を見下ろすマシュたんに呆れた口調を貫きながら、内心は疑問だらけだ。
何故、俺に接触したのか。そう尋ねた瞬間、余裕を保ち妖精という立場を利用した笑顔は消える。
「…もうあの子はワタシじゃ救え無い程に、闇の深い所に沈んでいってるの。」
「闇?…まさか、あの変な黒い力の事か。」
「それも十分あるわ。でも、それ以上に彼女が踏み込んだ魔術と呼ばれる代物が大きく関係しているわ。」
「…魔術って言えば、オカルト的な奴か?いやいや、現実的に考えて…いや、あり得るな。」
彼女の口から放たれた魔術と呼ばれる単語。
現実的に考えて、噂話の類やオカルトは空想上の代物だと考えるが変身する少女達に妖精、ましてや
それに、右腕の生前の宿主も魔術の世界に運命的に巻き込まれた人物の一人だ。
だが、詳しい事は点で分からず、魔術に信憑性はあるが実際に経験した事は無いと言った無知に近い状態だ。
「…でも魔術なんて代物を、るるかはなんで扱える?誰かから教わったのか。」
「えぇ、デッチアゲインと呼ばれる男にね。嘘くさい男と警戒していたけど、実物を見れば信じるしか無いわよ。」
「じゃあ、人が突然と居なくなったのも全部魔術の影響か。」
「そうよ…後は、貴方の腹を貫いた代物も同じ物よ。けど、彼はるるかと違って奇妙な物で魔術を使用してたわね。」
「奇妙なもの?」
そうよと、マシュたんは徐に取り出した手帳とペンを使い、突然と手帳にペンを走らす姿を俺は見つめる。
ペンが紙を擦り何度も何度も音が鳴る中、不意にマシュタンは手を止め、肩で息をしながら手帳を俺へと突き出す。
___いや、上手すぎて分からん。
絵のタッチが上手く、無駄のない影の有無に線の一部を濃くしたりと至高の技術が詰まった絵。
形状は細長い棒の様な物だが巻き付かれた紙には見慣れない文字列が並び、見る物には古代の出土品にも思える。
「…分からん。俺には何がなんだがさっぱりだ。」
「やっぱり、貴方にも分からないのね。」
「まぁ、な。魔術って概念は分かるんだが、こんなのは見た事はねぇな。…けど、忘れちゃいけねぇもんだと思う。」
「その忘れちゃいけない物を忘れてるなら本末転倒でしょうが。」
喉から出てきそうな単語は手前で止まり、俺のモヤモヤを募らせる。
描かれた物は俺にとっても因縁ある物で何処か忘れてはいけない物だと直感が警報を鳴らすが、一向に改善は無い。
が、心のモヤと同時に俺の脳には砂嵐が酷い誰かの記憶が何度も何度も、映し出される。
___その男は、少年と同じ特別な右腕を持っていた。
『…世界を
結局、その男が掲げた世界平和に噛み付くのはツンツン頭の少年だった。
男は自らの平和という願望に、人の道を外れた計画を立て、白い修道服の少女の遠隔制御霊装を奪い、ひいては少年の幻想殺しすらも使った。
更に、世界平和を確かなものとする為、人間の底から悪意を集約させ
三つのピースで完成した男の特別な右腕。
それは正に神に最も等しい力と存在を持つ神秘へと至った。
腕を振るうだけで世界の事象を歪め、その力は惑星を容易く破壊し、仮想上の神話を織り成す事の出来る規格外な
だが、それでも目の前の少年を殺すには至る事は出来なかった。
まず、そもそもの根底から男と少年は違うのだ。
身勝手にも世界はそうあるべきと神ならず物が決め、世界の天秤を得ようとした者と人の強さを信じ、必ずや世界は良い方向に行くと願った者。
___勝敗など当に決まっていた。
『お前が、そんな方法でしか世界を救えないって思ってるのならまずは、その幻想をぶち殺す!』
少年は英雄とは到底掛け離れた存在だ。
特別な右腕を持つだけで不幸に見舞われ、一人で強敵に立ち向かえる度胸はあっても敵う訳では無い。
更には記憶喪失と、挙げれば散々な目にしか遭っていない。
けれど、少年にはそれらを一人で踏破出来る程の存在なのだ。
だからこそ、少年は第三次世界大戦を終わらす英雄へと成れたのだ。
「…っが。」
瞬間、意識を記憶に引っ張られていた俺は激しい頭痛で再び意識を我へと戻す。
「ど、どうしたのよ突然。」
___もしもの話だ、
デッチアゲインと呼ばれる男。
断片的な記憶と統合を果たした俺には理解出来たが、奴が魔術を使用する際に用いた物、それは制御霊装。
「なぁ、マシュたん。デッチアゲインって奴が何で俺に発破を掛けたのか、分かるか?」
「分からないわよ、そんな事。ましてや、彼がるるかと貴方の戦闘に介入したのも意味が不明なのよ。」
仮に、奴が俺と同じか、または異なる方法で誰かの記憶を除く術、仮に誰かからの言伝で記憶の断片を知ったのなら、一つの最悪が浮かぶ。
奴も同じ物を知ってるのなら、制御霊装を何処で得たかは不明でも、既にピースは一つ揃っている。
加えて、俺への襲撃。
奴が
けれど、後は人の何かの
デッチアゲイン。
兎に角も俺と同じ物を知る謎の人物が成そうとするのは、仮説が真実とするのなら奴は、
___奴の目的は、奇跡の右腕をこの世界に作り出す事なのかもしれない。
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彼は、苦渋を飲み込む神妙な顔で考えに耽るその横顔をワタシは見つめ続ける。
彼が一体何を知り、何に辿り着いたのか分かる訳は無いが、世界の命運を分ける重大な何かとは分かる。
けれど、ワタシとて彼に近づいた事にも大きな理由があるのだ。
彼の意識をこちらに向かせ、ワタシが語るのはるるかの今までと、彼が無知と語る怪盗団ファントムの事。
ワタシだけじゃ足りない彼女を救うと言う目的に、彼の存在は
分かってる。彼女が直向きに隠し続けた事を、許可なく伝えた事はワタシも罪悪感はある。
彼に伝えた事はるるかがファントムにいる事と主な人物達、予言の書について。
だが、予言に記された大王の
るるかがファントムに居る。それだけで彼は苦悶の表情を浮かべているのだ、きっと大王の正体を告げれば彼はどうするのか、ワタシはそれが分からない。
彼の生きる原動力、引いてはこの世界に執着するのはるるか達の影響が強いのは存じている。
だからこそ、彼はきっと
それが、未来に自分自身が居なくなる事になってもと、ワタシはそれが時折恐ろしく、怖いのだ。
彼の存在は、良くも悪くも大きくなり過ぎた。
今ではるるか達に留まらず、その存在を今の探偵にも強く植え付けてしまった。
故に、彼が消えたのなら世界の天秤は破滅へと傾く事になる。
強い訳では無い、寧ろ息を吐くだけで吹き飛ぶ様な弱者である筈なのに彼の存在は世界の命運を分けるに至る。
それは彼の魂の輝きと生き方が、そうさせるのだ。
だからこそワタシは、彼に賭ける。
___お願い。
筋違いも重々承知の上で、ワタシは何度も彼に懇願する。
___るるかを、助けて。
彼は助けてと、その言葉を聞いた瞬間には苦悶も葛藤を何もかもを手放し、その顔に笑みを浮かべながらワタシに振り向く。
拒絶でも無く、ただ笑う。
状況も望んだ物では無い最悪の結果で、大切な人は悪の組織に事情はあれど関与している。
けれど、彼は誰かの為に笑顔を向けるのだ。
そして、彼は力強くワタシへと向かって宣言する。
「…当たり前だ。」
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犯行は、予告状通りに行われた。
私とみくる。更に殆どの警備を首飾りが展示される部屋に集中させ、準備は万端だった。
でも、突然と発生した停電で私達の注意は首飾りから僅かにずれてしまった事が、運の尽きだと誰かが言った。
電力が復旧し、美術館全体の電気が一斉に灯ったと安堵も束の間、首飾りを囲む強化ガラスに一枚の紙が貼り付けられていた。
内容は、首飾りが既に偽物とすり替えているという内容で、宝生さんは慌てて強化ガラスから首飾りを取り出そうとする。
「待って下さい、それは罠です!…偽物だと思わせ、鍵を開けさせる。でも、中身は本物…、」
「その通り。」
みくるが相手の意図に気付き声を上げるが、既に首飾りの前に立ち塞がる様に警備員に変装した誰かが、悪い笑みを浮かべている。
私も負けじと首飾りの元へと駆け出すが、変装した人は煙幕玉で周囲の視界を奪い、私とみくるは煙が肺に入り、咳き込み視界は黒で覆われる。
しかし、唯一確認出来たのは首飾りが既に盗まれていたと言う事実だけ。
私とみくるは煙が充満する特別展示室を抜け、盗んだ人物の追跡を始める。
長い廊下を駆け続け、私達は屋上か下に繋がる階段へとたどり着き、私は迷わず下の階へと続く階段に向かう足をみくるが静止させる。
___もう、目を見れば分かる。
みくるが考える事なんて目を見れば理解出来る。私は迷わず屋上へ続く階段を上がり、屋上に到着する。
宝石にも見劣りしない美しい星空が浮かぶ夜の空。そこから差し込む月明かりに照らさた一人の人物に私はプリキットで捕縛を試みる。
「…なぜ、ここが分かったの。」
「この美術館の入り口には十台以上の監視カメラが設置され、美術館の外にはマスコミや警官が多く居る。…そう考えれば、屋上の方が逃げやすい。」
みくるが相手の思惑を告げれば、警備員の変装を相手は解く。
「お見事。…でも、私を止めるには不十分。」
同性の私でも美しいと感じる整った容姿と、月明かりに照らされる艶のある長いベージュ色の髪を持つ少女は称賛の言葉と共に懐からある物を取り出す。
「…プリキット!」
「力づくでも私を止めなければ、私はこれを使って街に溶け込み、逃げちゃうわよ?」
「力づく?…一体何を。」
「プリキュアになりなさい。プリキュアとなって、私を止めなさい。」
「…でも、そんな事をすれば貴方が。」
「私の心配よりも、貴方達の心配をした方が良いわよ。…これから始まるのは、先輩として後輩からのちょっとした躾だもの。」
そう告げ、少女は首に掛けられたペンダントを握り締める。
その瞬間、彼女の後ろ控えていた妖精が離れ、私達の視界は紫色の眩い光に覆われる。
「…オープン、ティアアルカナロッド。」
私達は直感した、少女もまたプリキュアなのだ。
私とみくるは瞳を合わせ頷くと、首に掛かった古時計を開く。
「「オープン!ジュエルキュアウォッチ!」」
紫の光と、ピンクと紫が混じった光が重なり合い、あんなから離れたポチタンが小さな腕で目を覆う。
月明かりに照らされ、双方が少女から姿を変えれば、そこに立つのは探偵と怪盗の二人。
真剣な眼差しの探偵。その裏腹に怪盗の少女は探る様な眼差しを向け、軽くロッドで探偵達を挑発する。
「さぁ、来なさい。…今回は、特別に相手をしてあげる。」
挑発を買い、まずは先制と呼ぶべき単調な動きで怪盗へと拳を振るう探偵達を怪盗は跳躍で回避すれば、探偵達の視界からその姿を消す。
突然と消えた怪盗に探偵達は至る所に視線を向ける刹那、みくるの頬に指が添えられる。
あまりにも突然の事に唖然とするみくる。でも、私はそれより早く怪盗へと殴り掛かるが、再び回避される。
「動きが単調、次の一手。答えが透けて見える。」
そう余裕の言葉を話す怪盗でも、私には何処か
でも、私は考えを振り払い、みくると共に空中へと跳躍した私は足を突き出し、そのまま落下エネルギーを足した蹴りを放つも再び怪盗は依然、余裕とした動きで回避する。
「…折角アドバイスしてあげたのに、残念。」
怪盗は軽やかな動きで着地した瞬間、ロッドの先端部分にあるカードを回す。
「アルカナスターレイン。」
凄まじい速度で飛来する紫の光達を無防備に受ける私達は直撃はしなかったものの、その余波で吹き飛び、背を強く地面に打ち付ける。
痛みで視界が白く点滅し、四肢が思う様に力が入らなくとも私とみくるは必死に立ち上がろうとする。
その様子を見下ろす怪盗は、ため息を吐きながら真実を口にする。
「…随分と必死なのね、偽物なのに。」
「偽、物?どう言うこと?」
「私が盗み出した首飾りは、最初から既に偽物だった。…此処のオーナーも随分と意地悪なものね。」
「そんな事は、」
無いと言おうとした私でも、喉から出掛けた否定の言葉が突然と喉の下に戻っていく。
「偽物の、嘘の首飾りが人を惹きつけまことジュエルが宿る…嘘もまんざら悪く無い。」
そう笑みを溢し、私達に伝える怪盗は私には酷く恐ろしく、酷く苦しそうに見えた。
「…そう思わない?名探偵さん。」
どうしてか、私はその言葉を聞いた瞬間、体から力とは別の使命感にも似た何かか湧き上がり、私に立つ力をくれる。
私はこの人を否定しないといけないのだ。
「…それは、違う!」
みくるは今も立ち上がれずとも、私に驚く様な視線を向けるが、私はそれに気付かず怪盗へと声を荒げる。
「嘘をついて、人の物を盗るなんて許される事じゃ無い!」
私は時計の秒針を回し、右拳に力を集約させた一撃を放つ。
が、怪盗はロッド一本で私の渾身の一撃を防ぐ。だが、防戦一歩とは違う初めての一撃に一瞬だけ余裕が崩れた怪盗はロッドに力を込め、私を押し返す。
その時、私の体は想像してたよりも遥か後ろに飛ばされ、私の身は屋上から落ちる。
プリキュアとなっていると言えど、推定は三階から落下と背中からの落下に地面が見えない恐怖が私を支配する。
仮に無傷だとしても、それ相応に痛みを伴い私は直感的にすぐの戦線復帰は出来ないと予感する。
自由落下する体。
怪盗も思わず目を見張り、みくるも焦った表情で私へと駆け出すも間に合わない。
___怖い。
「根、性!」
突然と響き渡る誰かの声、私はその声を聞いた瞬間、どうしようも無い安心感に包まれ、身をその人に預ける。
「…ポチ野郎、頼む!」
「ポ〜チ!」
その人は私の背中と膝裏に手を通し、所謂お姫様抱っこで私を抱えると、何かのクッション性のある物を踏み台に再び屋上へと戻る。
その人は、謝罪の言葉を投げながら私を下ろすと近くにいたポチタンの頭を撫でる。
「やるじゃねぇかポチ野郎。…それとあんなちゃん、怪我は無いか?」
その言葉を耳が聞き入れ、私の心臓を優しく、けれどうるさく鳴らしてくる。
心の何処かで落下の瞬間、この人が助けてくれるなんて考えられない事を心に思っても、ちゃんと助けに来てくれた。
そして、私に微笑みを浮かべるその姿にまたうるさく心臓が鳴る。
本当に、どうしてこの人は何気無い仕草で私の心を奪うのだろうか。ただの笑顔、でも私にはこれ以上に無い安心感を覚える。
「…んじゃまぁ、こっから反撃開始といこうか怪盗さんよ。」
挑発的な笑みを浮かべるユウトさん。
その姿に私も隣へと立ち、みくるも自然と彼の隣へと立つ。
その中で、初めて怪盗の貼り付けた笑顔の仮面が割れた様な気がした。
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きっかけは、偶然に過ぎない。
マシュタンと別れ、不死と言えど右腕と腹部からの出血が酷く、再び意識を失った俺が目を覚ました時、既に館内は混乱の渦に包まれていた。
切羽詰まった声がひっきりなしに飛び交う空間で俺は、必死に貧血で重い体を引き摺りながら屋上へと足を運ぶ。
下の階に原因がある可能性も考えた。けれど、俺の直感はあいつが屋上にいると予感させた。
足を運び、辿り着いた屋上で俺が目にしたのはるるかとあんなちゃん達が戦う光景で、俺はその時迷わず足を動かし、今に至る。
「随分と賑やかになったものね、貴方の周りも。」
「そうだな、賑やかが過ぎて良く眠れねぇよ。…でも、悪くは無いさ。」
「…ユウト。」
冗談混じりにるるかと会話を成しながら、彼女の側に居る妖精から俺の名が溢れる。
助けてと言われたのだ、言われたのなら依頼解決まで持っていくのが仕事人の本望で、俺に託されたたった一つの願いだ。
「…いつまで見下ろしてんだよ。いい加減、俺の土俵まで降りて来いよ怪盗さん?」
「余裕そうなのね。けど、焦りが透けて見えてしまってるわ。」
「生憎と感情に蓋をするのは苦手なタチでな、少々荒っぽいが一曲踊れよ、ピエロさんや。」
「…道化ね、貴方にしては言葉選びが上手なこと。」
俺とるるかに静かな静寂が訪れ、両隣に立つ彼女達は普段見せない明確な怒りを溢れ出す俺を驚く目で見つめる。
るるかは達の前へと降り立ち、静かに杖の先端を突き出し、俺は咄嗟に彼女達の前に立ち塞がる。
戦闘能力は皆無でも、こちらには絶対的な防御力を誇る右腕がある。
それに加え、無意識にるるかが繰り出す攻撃の一挙手一投足を未来予知に似た奇妙な感覚で防ぐ事が出来る。
単に俺の勘違いか、はたまた経験がそうさせるのか、答えは出ずとも好都合。
「後ろをお姫様扱いなんて、私にもしてくれても良いんじゃ無いかしら。…ユウト?」
そう呟いた瞬間、二人の視線が一斉にこちらをへと向く。
「…ゆ、ユウトさん?あの人と、知り合いなの?」
みくるちゃんは驚愕の色を瞳に孕み、機械仕掛けの音を首から鳴らし、光が何処かお留守の黒い瞳で俺を見つめるあんなちゃん。
その表情から震えた声での質問に俺は背筋が僅かに強張り、それを見つめるるるかは水を得た魚の様に赤裸々に俺との関係を語る。
「寂しいわね。一年も同じ屋根の下で暮らし、隠す所も無い程、深く繋がった筈なのに。」
「…ユウトさん?」
「一緒に眠った時も、唇を奪ったのも貴方にとっては軽い愛情表現。…責任から逃げるなんて、酷い男ね。」
無言で古時計の針を回し、危うく右拳に貯めた渾身の一撃を振るい掛けるあんなちゃんに冷や汗を浮かべながら、必死に俺は弁明をする。
「お前な、勝手に人様の事をベットに引き摺り込んだ挙句に勝手に唇を奪った事は忘れねぇぞ。」
「どっちにしろ駄目じゃん!…わ、私はまだ抱かれた事しか無いのに!」
「……は?」
「各々が誤解を招いてどうすんだよ!」
両者の発言が各々の怒りの火に油を注ぎ、俺は両者のボルテージが上がるのを感じ、忙しなく両者を宥める。
「大体、貴方の方こそどういうつもりなの!ユウトさんとどういう関係!」
「…そうね。恋人と言えば、貴方は嫉妬しちゃうかも。でも、彼とは深い関係に堕ちた仲よ、身も心もね。」
「私は認めないから、そんな事!…でも、残念。私はユウトさんから言質とってるもん、ずっと一緒にいる、側に居させてくれって。」
「勘違いも、ここまでくると被害妄想の類い。」
「過去の女性にはユウトさん、興味無いんじゃ無いかな?」
「体つきが貧相な女に、男性を満足させる事は出来ない。…未熟な貴方には、まだ保健体育は難しいかも?」
「……。」
「……。」
(全部貴方のせいじゃ無いですか!)
(仕方ねぇだろ!つか、これは俺が悪いのかよ!)
ついには静寂が訪れ、両者が静かに臨戦態勢を取る胃が痛む状況に俺とみくるちゃんはアイコンタクトで会話するも、非は俺にあるらしい。
闇と闇、探偵と怪盗。相反する二人に共通するのはただ一人、俺という存在。
唐変木の自負はあっても、ここまで好意を出されれば気付かない人間は居ないし、二人が俺に並外れた重い想いを抱えているのは知ってる。
だが、ここまで執着する理由はなんだ。
俺は普通に接している筈だ、普通に接し、困っているなら手を伸ばし、言葉を投げるただこれだけだ。
一体、何が彼女達を掻き立てるのか、俺は結局分からず終いで彼女達を止める以外に選択肢がない中で、突然と荒げた声が俺達を静止させる。
「……い、良い加減にしろし!いつまで続けんのよ、この茶番!」
「ちょ、ちょっと!それはワタシとるるかの首飾りよ!」
「うっさいし!あんたらの痴話喧嘩にこっちを巻き込むなっての、もうぐだぐだするぐらいならアゲが決めたげる!」
美しい相貌を怒りの赤が染め、憎たらしそうにこちらを見つめながら首飾りを握り締める少女はアゲセーヌ。
酷く奇抜な黒の衣装に黄色い花を頭に乗せ、小悪魔な妖艶な少女は敵意ある視線を隠さず、首飾りを握る手からは黒い光が溢れている。
「嘘よ、覆え!チョベリグにしちゃって、ハンニンダー。」
何処からか漂う花の香りに誘われ、視線を僅かに少女から離した瞬間、それは突然と訪れた。
「ユウトさん!」
鳴り響いた己の名を呼ぶあんなちゃん。俺は咄嗟に身を横へと投げ、転がる様に地べたへと体を付ける。
激しい轟音と衝撃、俺がさっきまで立っていた場所に降り立つのは首飾りを模したハンニンダーだが、注目すべき場所は奴の落下地点で、落下の衝撃に耐えられない地面は大きく凹み、凄まじい砂煙が立ち登る光景に俺は背筋がゾッとする。
だが、その油断も命取りとなる。
「…んな!」
体を起こし、ハンニンダーを睨む俺。その時、ハンニンダーの体が突然と眩く発光すれば、凄まじい速度で光の弾が放たれ、咄嗟に右手を突き出す。
硝子細工が割れる甲高い音が鳴り響き、光の弾を打ち消す俺だが、消した瞬間に生まれた隙は大きく、あの巨体が俺の視界から姿を消す。
「ミスティックリフレクション!」
その刹那、俺の側へと駆け寄るみくるちゃんは古時計を回し指で長方形を描き、バリアを張る。
俺は視界を空中へと目を向け、あの巨体が宙に居る事をみくるちゃんへと伝え、瞬時にみくるちゃんはバリアを上へと向ける。
「…っ。」
僅か瞬きの一瞬でバリアとハンニンダーが激突し、激しい轟音と共にみくるちゃんの表情が険しくなる。
幾ら変身をし、肉体強度と身体能力が上がってもこれ程の巨体の重量は計り知れず、流石の彼女でも精一杯が僅かに時間を作る事だけ。
その時、視界の隅で紫に光輝く一線がハンニンダーへと直撃する。
自身に課せられた重い図体が突然と消え、前のめりに倒れるみくるちゃんの体を支える俺は光を発した人物へと視線を向ける。
「…お前。」
「別に、邪魔されたのが気に食わなかっただけ。…後は、好きにして。」
「…待ってくれ。」
ロッドの先端を下ろし、俺を見下ろす赤い瞳に吸い込まれ息を忘れる体。
でも、背を向け夜の街へと溶け込む彼女へと俺は、考えも無しに彼女の背へと言葉を投げる。
「…なに。」
「……俺は、頼まれんだ。お前を助けてって、一人のお節介な奴に依頼されたんだ。だから、俺は土足で踏み込む。」
「お前が隠し続けたファントムの事も、予言の書の事も。」
「……どう、して。貴方がそれを。」
「それは悪いが企業秘密だ。…でも、もう俺とお前を隔てる壁はねぇんだ、だから、一人で抱え込むな、俺もお前と一緒に背負ってやる。」
「勝手に…。」
彼女の瞳が揺れ、その表情に怒りが現れるが、俺は意に返さない。
「悪いが、俺はもう止まらない。…お前が俺を止めようとすんなら幾らでも俺はお前と戦うし、勝手にお前もくれあも助ける」
「…どうして、貴方は守られてくれないの。あれだけ傷ついて、必死に笑顔を浮かべる優しい貴方はもう十分苦しんだ。…だから、もう幸せになって。」
「……幸せね。」
彼女の言い分も一理はある。
確かに俺も痛みを必死に隠し、笑顔の仮面を貼り付け誰かと接してきた。
側から見れば、俺も十分に不幸な人間と思われても不思議では無い。
だが、俺の幸せはもう決まっている。
「なら、俺はまだ幸せになれない。…一人で俺の大切な人が苦しんでんだ、俺はそれに目を向けて到底幸せを感じる事なんて出来ねぇ。」
「…なら、何が足りないの。私にはこれ以外に貴方とくれあを救う事しか出来ない!」
「だから、なんで一人でやろうとする前提でお前は話を進める。今ここに立ってるのは、もう何も知らない守られるだけの俺じゃ無い。」
「その意味が、分かっているの?」
「分かってる。」
「…私が不甲斐ないから、貴方は永遠に傷付く道を選ぶ。」
「不甲斐無いのは俺の方だ、お前はずっと強くて、優しい女の子だよ。」
「……もう、貴方は私と居ない方が、」
「そこから先は言わせねぇぞ、るるか。」
その言葉は絶対に言わせない。
彼女と一緒にいる事を選んだのは紛れも無い俺自身で、彼女が俺との出会いを後悔する必要は無い。
寧ろ、俺が彼女と一緒に居たのだ。
だから、そんな言葉を並べるのなら、そう考える事しか追い詰められているのなら、
「…俺はお前と一緒に居たい。お前とくれあが笑い合えるあの場所に俺はもう一度戻りたい。」
「でも、私は貴方が知る探偵じゃ無い。…盗みを働く悪い人。」
「知った事かよ、別に肩書きが変わろうが俺が知ってる森亜るるかはまだ腐ってねぇ。」
「俺は信じてるお前を、助けてと言ってくれるその時まで俺はお前を信じる。」
「それでももし、お前が一人で全部抱え込むのが正しいって思い続けるのなら、」
「…そんな幻想、俺の右手で何度でもぶち殺してやる。」
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俺は、これが正しいのか分からない。
結局あの後、怯んだハンニンダーをあんなちゃん達が片付け、無事首飾りは依頼人の手元へと戻ったが、その間俺の意識は上の空だった。
なんせ形はどうであれ、俺はるるかと今は対峙する関係へとなってしまった。
稀に顔を合わせ、話す時の温かい時間は尋問に変わり、彼女と普通に接する事が出来ない今後に、胃が静かに痛みを訴える。
だが、俺は依頼を受けたのだ、たった一匹のお節介な妖精さんから。
なら、止まる訳にはいかない。
今はまだるるかの事で手一杯だが、この先も見えない誰かの野望が静かに彼女を蝕むのは明白で、デッチアゲインの目的も魔術の秘密も避けては通れない障害だ。
___でも、
「…まぁ、なんとかなるよな。」
「?…どうしたの、突然。」
「いや、あんなちゃんが居てくれて心強いってだけだよ。…これからも宜しくな、あんなちゃん。」
「ほ、本当にユウトさん!そういう所だよ!」
「いや、実際本当にそうなんだけどな。」
既に夜を深くなった時刻、俺は依頼を終えた二人を彼女達の探偵事務所へと送り届け、みくるちゃんは先に事務所へと戻り俺はあんなちゃんを呼び止め、二人だけで会話をする。
実際、俺はあんなちゃんには彼女自身が無意識でも助けられた事に変わりは無い。
___俺の為に泣いてくれて、側に居ると約束をしてくれた。
彼女にとっては些細な事かもしれない。
でも、俺にとっては生き方を変えてくれたきっかけにもなったのだ。
誰かの為に俺が傷付く選択肢を良しとしない彼女だから、俺は自身を少なくとも無碍にしないと誓えたし、るるかにも力強く宣言出来た。
あんなちゃんが居る限りは、絶対に俺は自分自身も大切にすると決めたのだ。
「まぁ、感謝の気持ちは受け取ってくれよ。そうでもしないとショックで寝込む自信あるぜ俺?」
「…それは、そうかも。」
「だから何度でも言うぜ、あんなちゃんが居てくれて良かった。…ありがとう。」
「…私も、ユウトさんが居てくれて良かった。」
妙に気恥ずかしい雰囲気にそっと、煽る様に夜風が頬を撫でる。
別に、長い別れじゃ無いのだ。明日には笑顔で挨拶を交わし普通に話す彼女との別れが、今は妙に嫌だった。
___何処か、同じだ。
るるかと同じ感情を俺は彼女に抱いている。
これが恋や愛、または友情なのか感情の有無は分からずとも俺は彼女を大切に想っている。
その時、俺の視線を感じ彼女はゆっくりと口を開く。
「ユウトさんは、居なくならないよね。」
「…急にどうしたんだ?」
「…分かってるんだよ、ユウトさんは絶対大丈夫だって。…でも、ユウトさんが助けたい人は凄く危険な場所にいるんでしょ。」
「そうだ、な。…まぁ、絶対に死なないって言えないぐらいには危険だな。そもそも、俺はあんなちゃんみたいに戦う術は腕っ節だけで超人的な物が備わってる訳じゃ無いんだ。」
「…そうだよ、ね。」
静かに彼女の言葉を耳に入れる俺は、言葉一つ一つに嘘偽り無く本心を語る。
一人で戦う訳では無い。俺には奇跡の二人という心強い味方は居るが、それでも俺が無傷で切り抜ける確証は無い。
死ねば傷は癒える
だが、死ななければ傷は自然治癒を待たなければ塞がらないし、一度失った血も戻らない。
深い傷を負い、古傷となった物は死んでも消えない幾分は不便な不死の力でも、無いに越した事は無い。
だが、もうそれを良しとしないと誓ったののだ。
___それに、
「…けど、俺は結構心強いって感じだぜ?」
「心強い?それは、どうして。」
「だって、名探偵と死なない少年…組み合わせにはこれ以上無いぐらい強そうに聞こえるだろ?まぁ、実際俺が弱い事に変わりないけど。」
俺は頬を掻きながらそう語る。
その目を彼女は見つめ、微笑みを溢しながら夜空を見上げる。
もうやるべき事は定まった。
後はそこに向かって彼女達と進むだけだ。
事務所の入り口に続く石階段の段差に腰を下ろしていた俺と彼女。
そして、静かに彼女は俺との距離を詰め、その頭を俺の肩へと乗っける。
俺は、丁寧に手入れされた綺麗なオレンジ色にも似た髪を撫で続けながら頬に籠った熱を誤魔化す。
むず痒くて、少し高鳴る心臓は妙に心地良く俺は静かに彼女の温かさに溺れながら、やるべき事を定める。
___俺がしなくちゃいけない事、
それは、デッチアゲインが持つ制御霊装を破壊し、予言の書の大王の誕生を阻止する事。
そして最後に、森亜るるかをファントムから引き剥がす事、それが俺の解決しなきゃいけない問題だ。