独自設定を入れた理由はこの為に、あんなちゃんって度が過ぎて優しいし、気持ちが強いから耐えてるけど、普通の女の子が、しかも中学二年がね金も戸籍も持ってない状況で放り込まれる不安で絶対に心病むよねって感じで書きました。
因みに、もしかしたら若干物語と違う話になる可能性があるかもしれないので、俺の執筆力に注意して下さい。
激動を終え、静かさが酷く心地良い我が事務所へと舞い戻った俺は、疲労で碌に立つ事も儘ならない肉体を引き摺って椅子へと座り込む。
訳が分からない。
彼女らが俺に固執する理由なんて考えても分からない。独りよがりで傷ついて、それでも立ち上がって彼女達を守り続けただけで、探偵業では足手纏い。
特段に身体能力が高い訳でも無い凡庸な男を何故好いてくれるのか、与えるのは簡単でも、受け取るのは何処か忙しなくなってしまう。
第一に、俺は彼女達を幸せにすると誓い、るるかは俺の存在しないは幸せでは無いと語った。
だが、交際や結婚、最悪の場合は監禁の事例も考えられ、その先の生活で文字通り太陽の下を歩けなくなる未来に怯え、良い加減に対策を講じなければなら無い。
が、タイムスリップから僅か一年。狭過ぎる交友関係では、頼れる間柄はごく少数に限られ、るるかへと馬鹿正直に原因解決の為の手段を原因そのものに聞く馬鹿はいない。
くれあは、『ある一件』で記憶を忘れ、自身が探偵事務所に居た事や、るるかの事は勿論、俺の事も完全に記憶から忘却され、赤の他人へとなったが故に頼る事は不可能。
脳内を思考の糸が埋め尽くし、最も頼りになって、プリキュアの存在を認知し、凄まじい頭脳と発明品を開発する『知人』を手繰り寄せ、早急に行動を取る。
知人と言っても、立場上では仕事仲間の間柄だが、彼の性格的に頼み事の類いは断る事をしないと彼の善性を利用する様で心苦しいが、背に腹は変えられん。
「…いくか、キュアっと探偵事務所。」
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私、明智あんなは2027年から1999年にタイムスリップした未来人である。
誕生日パーティーの当日、母さんからの贈り物の時計型のペンダントを握った瞬間、喋る妖精ポチタンと共に1999年のまことみらい市にタイムスリップ。
そこで出会った友達の小林みくる、基みくると共に謎の戦士『名探偵プリキュア!』として此処、キュアっと探偵事務所の探偵となり、今日も依頼人の困ったを解決している。
けれど、楽しい事ばかりでも無い。
訳も分からず過去に飛ばされましたと言われ、お金も何も持ってない状態で、家族から離れ、親しい友人とも出会い無いとなった時は、一人嗚咽を殺して泣いた。
けど、みんなの前では強い探偵として振る舞い続けて、いつの間にか『頼りになるあんな』という仮面をつけ始めた。
感情を自然と殺して、『最適解』を選ぶ様になり始めた私は、いつからか懐かしい口癖すらも忘れて、今を生きている。
___気持ち悪い…うるさいうるさい。
___会いたいよ…会える訳無い。
___私は、何?…完璧で頼りになる明智あんな。
「………って。」
自我が生んだ言葉に惑わされ、目の前に佇む人に気づかず、私は慌ててぶつかった人へと謝罪の言葉を投げる。
「ご、ごめんなさい!」
「あ〜。いや、別に気にしてねぇからそんな畏まんなよ。…で、一つ聞きたいんだけど、君って此処の事務所の子?」
おちゃらけた口調でそう尋ねる目の前の男性、否、青年はなんでも、事務所へと用がある様で、ジェット先輩の名を口に出した。
私は、ジェット先輩の関係者という事もあり、特に疑う訳でも無く青年を事務所へと入れ、青年は気怠そうに事務所の奥へと向かっていく。
「……変な人。」
印象は変な人。少なくとも、この事務所と関わりがある時点で同業者の類であるのは確実でも、立ち振る舞いや言葉遣い、身なりから清潔感は無く、何かを終えた後の様な見た目。
人との接触が絶えない職業で、身なりに気を配らず、言葉遣いは横暴な青年を、私は奇妙な人として『記録』し、彼が出るまで待つ事を選んだ。
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「てな訳で、俺にプリキュアの事を詳しく教えてくれ。」
「断る、お前と関わってたら碌な目に遭わないからな。そもそも、プリキュアな事を知ってお前の何になるんだよ?」
「大事な男の意志を守り抜く事が出来る。」
「ほらな、やっぱり下らない。」
キュアっと探偵事務所に居座る我らがジェット先輩へと、日本古来から伝わる、誠意と謝罪の意を込める土下座を繰り出しながらジェットへと知識を授かろうとする俺だが、下らないと一蹴される。
「…あのな。大体、お前は過去の名探偵プリキュアと面識があるだろ。彼女達から詳しい話は聞いてないのか?」
「いや、聞こうとしても教えないの一点張りでな。なんか、こう俺を遠ざけてた様な、遠ざけてない様な感じだったんだよな。」
「まぁ、お前の性格から紐解けば、無理に首を突っ込むのは明白だからな。」
出し渋るジェット、しかし無策で功を興じるのは愚者のやる事。俺は出来る男な故に、策はすでにある。
「けどな、お前に教える時間は非常に無駄だ。僕は早く新しい発明品の開発に取り掛かりたいんだ。」
「………はぁ、分かったよ。」
「そうだ。…って、物分かりがやけに良いな?」
「お前には言葉では無い方法で口を割らすだけだ。」
馬鹿め阿呆が、俺が今から前に差し出す物を見た瞬間、否、俺が策を興じた瞬間から貴様の敗北は決まっている。
ワイシャツの懐から取り出すのは、朝から長蛇の列が出来る程評判が良く、一口その物を口にすれば二度とその味が舌に残り、脳が繊細に味を記憶するレベルの代物。
加えて、営業時間が極端に短く、営業時間は僅かと聞く。そんな中を必死に並び続け、手に入れた至高の一手を披露しよう。
___お前の負けだ、ジェット!
「ジェット先輩、紅茶の場所って分かりますか?」
「………あ。」
俺の勝利は揺るがず、懐から取り出した至高の品をジェットへと渡そうとその手を伸ばした刹那、背後の扉が開かれ、扉が俺の背に直撃すれば、水っぽい音を立て品は地面へと落下した。
一時の静寂。
だが、静寂を破ったのは扉を開けた張本人である少女。
「……あ、あはは。ご、ごめんなさい。」
「いや、あんな良くやった。」
「…………む、無念。」
気力を失い、絶対的策を失った俺は、静かに倒れ伏し悔しさを噛み締めながら、最後の言葉を呟いた。
「…で、終われる訳無いだろが!」
「うるさいのは勘弁してくれ。」
「ま、まぁお茶でもどうぞ。」
此処で倒れるのは男が廃る。なんとか根性で立ち上がった俺達は、研究室を後にし、依頼受託スペースへと移動すれば、俺を案内した少女が2人分の紅茶を置き、再びジェットへと向き合う。
「マジで頼む、ジェット。お前だけが今、頼みの綱なんだよ!」
「…だから、何度も言ってるだろ。僕はお前の所の面倒事に巻き込まれるのは御免だ。」
「……はぁ。」
なんと無くは分かっていたが、ジェットからの俺の好感度は何故こうも低いのだろうか?
唯一の同性の友人という事もあって、研究室で色々と遊んだり、よしみでお菓子をほうばったりと、別に悪い事はしていない筈だ。
この固い意志は墓場まで持って行こう。……まぁ、死なんけど。
「…あの。」
「……?」
時には諦めが肝心。
折角入れてもらった紅茶を一気に飲み干し、2人に背を向けてその場を後にしようとする刹那、紅茶の少女の声が俺の足を止めさせる。
「私、明智あんなって言います。…もし良かったら、お話しを聞かせてもらえませんか?」
「…んにゃ、良いよ。俺みたいな奴に割く時間も勿体ねぇだろうし。」
「そんな事無いですよ。…困ってる人が居たら手を差し伸べるのは普通の事ですよ。だから、私達の事を頼って下さい。」
少女の言葉が、過去に貰った『想い』を思い出させる。
確かに、ここ最近は人に頼った思い出は無く、がむしゃらに動き続けて、るるかには心配を掛け続け、自分の感情にいつしか蓋をしていた。
___偶には、こういうのも悪く無い。
けれど、目の前の少女の瞳に、否、生き方に何処か違和感を覚えてしまう。
何処か似ていて、合わせ鏡を見ている様な不思議な気分になるが、今は考えるべき問題は別にある。
「じゃあ、依頼って事で俺の困り事を手伝ってくんないかな?勿論、報酬は弾むぜ。」
「おい、しれっと私達って言ったなあんな!僕まで巻き込まれてるじゃ無いか!」
「大丈夫だよ、ジェット先輩。…それで、ユウトさんの困ってる事って?」
「…そうだな、とりあえず順を追って説明するか。」
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「……もう、るるかったら。またあの唐変木の為に夜更かししちゃって、若いうちは肌に毒よ。」
「別に、ユウトの為なら、一分一秒も無駄じゃ無い。」
「…それなら良いけれど。」
夕暮れが静かに艶のある肌を照らし、美しい美貌は夕日の光で更に妖艶さを増し、美しい絵画からその姿を現したかと錯覚する。
___あの日から、彼女は笑みを忘れた。
騒がしい男に、それを見つめ、くれあと共に紅茶を嗜む下らなくとも、当たり前だった日常に今だ彼女は囚われている。
罪作りな男と女、必死に彼女が手を伸ばそうとも彼等はその手を安易に取らない。
寧ろ、彼女だけの宿命を自らも背負うと、無作法にも彼女の懐に入って共に戦う始末。
けれど、彼等がお節介でも彼女を孤独から連れ出したからこそ、今の彼女がいる事に対する感謝で、感情の板挟みに合う。
「…ほんとうに、やになるわね。」
「どうしたの?マシュタン。」
「良いえ、今日もるるかは可愛いわねって話よ。…所で、またあの異能の解明をしてるのかしら?」
「そう。ユウトの不死について、とにかく情報が欲しいから。」
心に折り合いをつけ、るるかへと向き合うマシュタンは彼女が机へと広がる書物のそれぞれに軽く目を通す。
るるかの目的は、主に二つ。
一つ目は、『キュアエクレール』が持つマコトジュエルをウソノワールから取り戻す事。
二つ目は、ユウトに授けられた呪い『不死』の解明。
一つ目の問題は、自身の身を削る覚悟で怪盗団ファントムへと入団し、内部状況や構成人数と構成員の名を覚えつつ、いつかウソノワールの手からマコトジュエルを取り戻す最高の瞬間を待ち望んでいる。
が、二つ目の問題ははっきりと言うが、現状では解明は愚か、何故力が与えられたのかすら不明の状態。
まず、彼自身が2026年から迷い込んだ未来人で、相応にこの世界では歪な存在。
歪が故に、彼の力の異質さは困難を極め、発展は無し。
「…マシュタンはどう考える、不死の力。」
「分からない事だらけね。お供妖精の力と言っても、彼には妖精のお仲間は居なかったし、マコトジュエルの力と考えるのならプリキュアにならないのは違和感しか無いわ。」
「……。」
「そんなに気を張っちゃ駄目よ、るるか……るるか?」
「此処まで来たのなら、いっそ快楽漬けで閉じ込めてしまおうかしら。けど、ユウトの意思を尊重すればそんな事は許されないけど、ユウトの性格で言えば必ず異性を陥落させる。優しさは毒と言うけど、ユウトのは猛毒。…最悪、年下の子を陥落させたら結婚を前提に婚約を結ぶかもしれない。それは駄目、彼の隣は私とくれあと決まってる。他の異性が入る隙間なんて…、」
「る、るるか?帰っていらっしゃい。」
突如と飛躍的に話が飛ぶるるかは、広がる白紙の紙一枚に戦慄を覚える程の文字を休憩無しで、瞬時に書き込み、あまりの繊細な動きに恐怖を覚える。
と、同時に唐変木が余計なホラを吹いた際、目に光の無い状態でティアアルカナロットを翳す、るるかと今の姿が重なりマシュタンは身震いする。
(…あの唐変木、とんでも無い物を目覚めさせたわね。)
だが、るるかの真意には一理ある。
死の経験とくれあの事で、いつからか彼の性格は温厚とは掛け離れた物になったが、その人間性は腐っても変わる事は無い。
何処まで行っても、彼は与え続けて、貰う事を躊躇う度が過ぎたお人好しの少年。だからこそ、手の届く場所でるるかは彼を守りたいと思うのは仕方無い事だと思う。
最近は、変に毒されてきた気分だ。
ワタシ自身は、るるか、彼女だけが無事で居てくれるならそれだけで充分だった。
けれど、彼等達に出会って、優しい毒に侵されてから変に周りにも心配の目を向けてしまう様になったし、自ら困っている人に手を差し伸べてしまう。
「ワタシも、変わったって事ね。」
「…マシュタン?」
「いえ、お互い、苦労する性分って事が分かったってだけだわ。」
「どう言う事?」
「るるかは、気にしなくて良いわよ。…そんな事より、あの愛しい唐変木を気にしなさい。」
「それを持ち出すのは、ずるい。」
「…ふふ。」
可愛らしく頬を膨らます彼女へと笑みを向ければ、あの唐変木の為へと意識をそちらへと向かわせる。
「まだまだ、ワタシも悪いって事よ。」
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「んじゃ、そろそろ俺はお暇させてもらうわ。」
「分かりました、色々と役に立てれて良かったです。」
窓辺を照らす光が、眩い物から穏やかなオレンジ色へと変わった事を皮切りに、流石に長居をした俺は明智ちゃんに感謝の言葉を述べながら、事務所を後にしようとする。
ジェットの下で時間は割いたが、それをチャラに出来る程の有益な情報を得れた事に満足し、意気揚々と二人に見送られる俺は、今回の礼を兼ねて、明智ちゃんの連絡先を交換しようとする。
決して、決して、分かった事に年下で、俺の好みドンピシャの容姿に成長性を感じられる美貌に魅了されて、近づきになりたいと思った訳では無い。
「…そうだな、一応明智ちゃんの連絡先ってあるかな?今回の件で個人的にお礼がしたいんだが。」
「あ〜、すいません。私、自分の連絡先持ってなくて。」
「……あ、そりゃそうか。まだ、スマホなんて無い時代だからな。」
「………え?」
悪い事を聞いた気分になったが、当然だ。この時代での同世代や後輩はスマホなんて存在せず、更には連絡先など持っている訳がない。
あるとすれば、明智ちゃん家の固定電話に掛ける以外に連絡手段は無いが、それをすれば娘に縋り付く奇妙な男と認知され、将来的に不利な状況となる可能性が高い。
___先を見据えなければ、見れる物も獲れる物も無い。
非常に、非常に非常に残念だが、今は指を咥えて待つのみだ。
「じゃ、また会おうぜツンデレ博士ちゃんと明智ちゃん。」
「言葉の意味は分からないが、何故か馬鹿にされている気がするけどな。…まぁ、じゃあな。」
「は、はい。……また。」
何処か浮かない明智ちゃんに、いつも通りのジェットに見送られながら自身の事務所へと戻る俺は、鋭く、刃物の様に突き刺す視線を背に受けながら、歩き出した。
「…あんな、どうした?」
「あ、ジェット先輩。……あの、ユウトさんについて、教えて貰っても良いい?」
「……は?」
彼が去った事務者で、飲んだカップや食器を片付ける私は、ジェット先輩にユウトさんについて尋ねた。
呆気に取られ、腑抜けた声を出すジェット先輩。こんなジェット先輩は中々お目に掛からず、無闇に『人に近づく事を避ける』私が、他人に近づく事が珍しく、それ故に声を出したと思っていた私は、次に投げられたジェット先輩の言葉に漠然とする。
「…なんだお前、あのほら吹きに気でもあるのか?」
「……え?いやいや!?全然そんなつもりは無いよ!?」
「いや、お前が誰かの事を聞くのが珍しいのもあるけど、それ以上にあいつの事を尋ねる奴の方が驚きでな、因みにどうしてだ?」
「…実は、最後にユウトさんが言ってた言葉が気になって。」
「あぁ。確か、すまほ?って言葉だろ。…あいつはそう言う奴だ、時々意味不明な言葉を言って僕を困らせるんだ。最近だと、スイッチってゲームを作れとかなんとか。」
___確定だ。
『それ』を理解した瞬間、一生の宝物を得た様な幸福感が全身を駆け巡って、思わず頬が緩む。
ジェット先輩が彼に気があるのかと聞いたが、実際は確かにあるのかもしれない。これはただの『賭け』で、依存にも近い心情なのかもしれない。
___けれど、千載一遇のチャンスを逃す訳がない。
「…ジェット先輩、お願い。ユウトさんに、もう一度に合わせて下さい。」
「………だぁ!分かったよ、一応あいつの事務所の連絡先は教える。けど、ここから先はあんな、お前が決めるんだぞ。分かったな?」
「…うん!ありがとう、ジェット先輩!」
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ぽた、ぽたと水が滴る音が暗闇に響き、そこに俺は佇んでいた。
しかし、手首に自ら切れ込みを入れた傷口からは、夥しい程の血液が流れ、俺の足元に血の泉を作り上げ、出血多量か意識が覚束なくなり、血の泉に顔から倒れる。
___べちゃ。
顔から倒れた弊害か、鼻は砕け、前歯を支える歯茎は硬い地面との激突で潰れ、前歯が歯茎の付け根から折れる。
明確な死が、俺の魂に刃を向けるが、『何か』に引っ張れる魂は、再び俺の肉体へとへばりつき、復活を促す。
切りつけた手首、正確には動脈が一つ一つの線が繋がり、外へと垂れ続けた命の水を補って、綺麗に傷口は新たな皮膚が塞ぐ。
次に、折れた前歯は歯茎の根本に残る毛細血管から、純白に輝く新たな歯を作り出すが、刹那、歯茎の穴という穴に溶岩を流し込まれた様な激痛が走り、無理矢理に意識が覚醒する。
「…ぁが!?」
痛みで目元に涙を浮かべる俺は、足元に残る血痕から『理解』をしてしまった。
___また、やった。
憤りが、心に注ぎ込まれ、乱雑する室内を他所に俺は、横に鎮座する机に拳を振り下ろし、やり場の無い憤りをぶつける。
狂っている自覚はある。この行いが、非常に狂気的な理由で行われ、己の価値を見定める様な、狂った命の使い方をしているが、俺自身の存在が歪で狂っている。
___泣いてくれるかな。
顔も、名前も知らない都市で、金も戸籍も無い俺に確かに彼女達は、るるかとくれあは俺に手を差し伸べてくれた、あの瞬間は確かに救われたと思っている。
だが、どうしても信用出来ないと、弱い俺の部分が自然とこんな行いを意思とは無感動に行われる。
分かってる、自傷や死をやらなくなって彼女達は俺を信じてくれる。が、ふとした瞬間に言い表しようの無い不安と恐怖が降り積もり、疑心暗鬼を生む。
だから、俺みたいなのが死んで本当に、彼女達は泣いてくれるのか、無意識に『試している』。
何処の立場から、狂気的な発想が浮かぶのか、脳の解像度が狂気的殺人犯に似てきている俺の思考に、俺自身の心が否定をし続ける自己否定。
___誰も何も、俺を知らないのなら死ねば誰かの記憶には残るのだろうか?
死にたくは無いけど、誰か死で俺の事を覚えて、刻んでくれるのならそれ相応に死ぬ価値もあるのではいだろうか。少なくとも『今は』この力が彼女達の幸せに辿り着くまでの時間制限付きの力なら、利用はしてやる。
なら、その先はどうなる。
誰かに泣いて貰いたい、覚えて貰いたい。
けど、俺みたいな、死ななくて、不気味な奴に涙を流す人達がいるのなら、存在ごと無かった事になりたい。
彼女達の為にぐちゃぐちゃになるまで死んで、彼女達の記憶から、人生から全てのユウトという存在が跡形も無くなるまで死に続けても彼女達を助けろ。
___お前には、死ぬ以外の価値は無い。
「………?」
思考の渦に呑まれ、己の輪郭すらも曖昧になりかけた所に、突然と鳴り響いた固定電話が意識を手繰り寄せ、震える足取りで受話器へと手を伸ばす。
「…はい。」
『あ、もしもし。』
「………明智ちゃん?」
『はい!明智あんなです。ユウトさんの事務所の電話で間違い無いですよね?』
驚いた。
まさか、彼女の方から連絡をくれるとは、なんやかんやで異性との電話は十六年の人生で初であり、声色の調整やら、死の直後な事もあり感情の浮き沈みは激しいが、モーマンタイ。
が、彼女から電話を掛ける要件とはなんだ、事務所への忘れ物とは考えられ無い為、何か伝え忘れた重要な話があると考えるのが妥当。
「てか、明智ちゃんはどうして俺に電話を?要件ならもう済んだと思うが?」
『…実は大事な話があるんです。』
「大事な話か…分かった、言ってみろ。」
俺は明智ちゃんの言葉の重みに身構え、何を伝えられるのか予想する。
考えれる線は、プリキュアについてのマル秘情報だが、明智ちゃん自身がプリキュアという事もあって、得れる情報全て貰った筈だ。
『…その、良かったら明日、二人で何処かに出掛けませんか?』
___ふぁ!?