はい、夏風邪となり登校遅れた病み上がり野郎です。
また頭痛酷くて、小説書く気も起こんなくて、読むだけにしてましたけど、結局それも苦痛で、まじ辛かったです。
まぁ、後今回は主人公死にます。
あ、ガチで死にます。
___別に、俺は正義のヒーロー気取りじゃ無い。
何処か遠い記憶で、彼女達に冷たく放った言葉を何故今になって思い出すのか些か疑問であるが、これが俗に言う『走馬灯』なる物だと『死の間際』で理解する。
不死の男が何を今更と言う者達も居るが、こればっかりは本気でやばいと、長年の経験がそう知らせる。
久しく感じた事の無い『死の感触』に今だけ己が人間であった事を思い出すが、あれ程死に続け、狂人にも似た男が死の最後で人間を取り戻すのは、なんとも皮肉な話だろう。
___あぁ、どじったな。
腹部は貫かれ、目を背けたくなる程の出血に倒れ伏す周囲には血の泉が作られ、果てしない喪失感が溢れ出す。
すずめの涙の様に、唯一機能し、皮一枚の状態で繋がる左腕で腹部を抑えるが、肩から抉られる様に消えた右腕の影響か、しっかりと腹部を抑える事は叶わず、血も止まらない。
そもそもこれ程の傷ならば、どの道俺が助かる道筋は途絶えてある様な物で、虚な目で、己が文字通り命を賭けて守り抜いた紫色の衣装に身を包む少女を見つめる。
本来の救う者とは違うが、勝手に足が動いたのなら仕方が無いじゃ無いか。
けど、何処か紫色の少女に助けたい人物の面影が重なり、口内に広がる鉄の味を噛み締め、喉から迫り上がる血色の源を吐き出しながら、僅かに微笑む。
___こんな筈では無かった。
正直に言えば、俺の命の使い所は彼女達が危険な時に使うと決めていたし、まだ道半ばで、るるかの事も、くれあの記憶も、何も何もかもが中途半端な所。
けれど、うじうじ言って何かが変わるわけでは無く、大人しく迫る確かな『死』へと何処か期待を膨らませる。
___なに言ってんだか?
紫色の衣装に身を包む少女が、その相貌にそぐわない悲痛な表情で涙を浮かべ、必死に俺の体を揺さぶり、声を荒げているのを見るが、肌の感触は消えて、耳も良く聞こえない。
紫色の少女の背後には、驚愕の表情と吐き気や罪悪感を募らす酷い表情で絶望し、紫色の少女へと手を伸ばすが、その手は空を切る。
俺のすぐ近くには、二人のお供妖精と思われるピンク色の妖精が、苦痛な表情で倒れ伏し、この場にいる者全てが満身創痍、俺を除く者だが。
___やべぇ、眠くなってきた。
瞼が重くなり、次第に視界が暗闇へと塗り替えられ、直感が瞼を閉じるその時が俺の最期と知らせ、意地でも瞼を閉じ無い様にするが、途轍も無い気怠さが、意地を穏やかに解かす。
死ぬ時って、大体なんだ?やっぱり定番は、最期の言葉って奴?
恐ろしく全ての感覚が極楽浄土へと向かう再通行に感じ、酷く能天気な考えが浮かび続ける。
最期の言葉と考え、最初に浮かび上がるのは両親の謝罪だった。
別世界の過去へと飛ばされて早一年、元の世界ではどれ程の時間が経過しているのか定かでは無いが、仮にこの世界と同じ時間軸で元の世界も動いているのなら、一年も音信不通についての謝罪を浮かべる。
___命を軽率に扱って、ごめんなさい。
___ちゃんとご飯を食べれなくてごめんなさい。
___真っ当に生きれなくて、ごめんなさい。
断罪は続くが、やはり最後に浮かぶのは彼女達の顔。
心配を投げてくれて、俺を心から愛してくれた名探偵の彼女。俺に暖かさを教えてくれて、人を助ける事を教えてくれた『きらめき』を宿す彼女。
最期の瞬間に、彼女達がどれ程己の中で最も大切な物だったのかを再度確認でき、久しく満面の笑みを浮かべる。
きっと、彼女達は俺の死で涙を流してくれる。が、その涙がどうしようも無い俺へと流されるのなら、彼女達の記憶から跡形も無くユウトという存在を消し去りたい。
___けど、忘れ無いで欲しい、
酷く傲慢で、酷く強欲な考えが巡り続け、俺は全てを投げ出す様に、瞼を閉じる。
家族に謝罪、彼女達に謝罪、結局は最期の時まで後悔に満ちた十六年の決算はあまりにも短く、幼い物。
ユウトという存在は常に、常人の歩むべき運命とは大きく外れた異なる物を歩み続け、それ相応に相応しい最期だと思う。
後悔も無念も何もかもを置き去りにし、重い瞼を閉じる俺は最後に聞こえた紫色の少女が己の名を呼ぶ声に背を押されながら、ユウトという人間はこの世から完全に消え去った。
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「……ポチ?」
「…あ。ごめんね、ポチたん。」
肩から吊り下げられ、可愛いらしく声を上げるお供妖精『ポチたん』の声で我に返った私は、歓喜の感情を必死に殺し、みくるへと声を掛けた口を塞ぎ、片手で持つ傘を下げる。
分かっていた事だ。
私はこの世界の特異的な存在、未来から突如として現れ、運良くみくるとジェット先輩に拾われただけ。
無論、この世界ではみくるには行くべき学舎があって、会いたい友達が大勢いるのも知っているし、ジェット先輩にもやるべき事がある。
けど、何処にも私の居場所が無い。
数日前で、ユウトさんに言われて久々にみくると向き合って、距離が縮まったと思っていた。
みくるの名探偵を志すキッカケや家族の事、私も家族の事や未来の事を話して一気に心の距離は近づいたと思う…否、錯覚していたのだ。
「……寂しい、よ。」
私の居場所って、何処なの?
みくるにはいるべき場所があって、ジェット先輩には没頭し、叶えたい夢があるのに、私はただ恐怖と寂しさに溺れ、哀れな少女を演じている。
___演じてる訳が無い。
___誰か、助けてよ。
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「…んで、なんで俺はてめぇに呼び出されたんだ?ジェットちゃん。」
「いちいち癪に障る喋り方とてるヘンテコな愛称を呼ぶもんだ。けど、今だけはお前を頼るしか無い。」
「おいおい、そんな苦渋を飲んだ決断みたいに言うんだよ?こう見えて、俺ってば何でも屋の端くれでな。」
「対して営業利益も出せ無い穀潰しが営む店なんて、碌でも無いだろ。」
ジェットから呼び出しを喰らい、我らがキュアット探偵事務所へと足を運ぶ俺は、入り口で仁王立ちをする彼へと軽口を飛ばせば、鋭利が効いた鋭い言葉と棘がある持続的な言葉を投げかけられ、心身ともにノックダウンする。
「…で、早速だが本題に入っていいか?」
「はい、穀潰しができる事ならなんでもやります。…なんでもやります。」
「いや、別にそんな重く捉える物では無いんだが、ただあんなに傘を届けて欲しいだけだ。」
顔を上げ、ジェットがそう言えば、彼はその小柄な体を歩かせ、奥の部屋へと消えれば、ピンク色の傘を持ち出し、俺の前へと差し出す。
明智ちゃん。久しく、二人だけの密会以来から特に話す事は無く、軽く音信不通状態が数日も続いたが、まさかこの様な形で彼女と再び邂逅する事になるとは思ってもいなかった。
が、些か疑問が生じる事がある。
「つか、明智ちゃんは何しに外に出たんだよ?別に学校って訳じゃ無いんだろ。」
「あんなは、うちのもう一人の居候の小林みくるって奴に傘を届けに、まことみらい学園に向かったんだが、自分の分の傘を忘れていってな。…一応すぐ帰るとは思うけど、念には念を入れ無いとな。」
「つまり、その小林に傘を届けにいった明智ちゃんが自分の傘を忘れてて、一応帰りに雨が降るのが心配だから傘を届けて欲しいと。」
本筋は理解したし、別に断る理由は無い。
まぁ、距離が恐ろしく遠い以外を除けば特に問題は無いお願いだが、学園、学舎へと足を踏み入れるのなら、その場に適した物を身に纏うのが常識。
が、今の俺の格好は、正に場違いのそれで、早朝のトレーニング後なだけあり格好は黒をベースにし、白のラインが入ったジャージに上着は袖を捲って着こなしているが故に、何処かスポーツマンの様な印象を与える。
恐ろしく場違い。いい具合に緩和が出来る格好なら良かったが、平日の真っ昼間に同じ年齢の男が学校へとジャージで足を踏み入れるのは何処か訳ありに思われる懸念があるが、今更なにを状態だ。
この時代では、国籍も金も衣食住すら無かった時期もあった地獄を経験した道からすれば、今更周りの目など周囲を飛ぶ蚊と同然。
更には、学校にすら通って無いオマケ付き。
「…なら、雨が降らねぇうちにそそくさ行ってくるわ。」
「……なぁ、少し待ってくれ。」
「…あ?」
背を翻し、扉のとってを掴んで早速まことみらい学園へと向かう筈の俺の足を、彼の声が呼び止め、彼へと向き合う。
妙な神妙で俺を見つめる彼は、穏やかで口下手な雰囲気が無くなり、代わりに感じるのは覇気を孕んだ、疑問の視線で、彼はいつにも無く重い口を開け、言葉を紡ぐ。
「お前はプリキュアを、明智あんなをどう思ってる?」
「…それは、俺が彼女をlikeかloveの方で好きかどうかの質問か?」
「違う。純粋に、お前はあんなの事をどう思ってるのか気になるだけだ。」
「どうもこうもねぇけど、にしたって急にどうしてそんな事。」
「…分から無いんだ。あんなとの距離が、何処か遠く感じて、消えてしまいそうに感じるのに僕は声を掛ける事も、寄り添う事も出来てるのか分から無いんだ。」
彼は己の気持ちを俺へと投げ掛ける。
ジェットは確かに優しい事に変わり無く、困っている人が居れば陰ながら手を伸ばすが、決して表立って手を伸ばす事せず、一歩引いて手を伸ばしている。
彼の優しさを否定はし無いが、彼の少し口下手な所や、本心をそのまま伝える尖った言葉の数々は、確かに聞く者を選ぶ優しさ。
故に、彼は常に一歩引いて手を伸ばすしいたが、明智あんなという存在は、手を伸ばすだけでは足り無い事を彼自身も理解している筈だ。
突如未来から過去に飛ばされ、恐怖も不安も感じる間も無く、彼女自身を置いて、世界は、時間は進み続けている。
だが、彼女だけが取り残されているのもジェットも、それこそ彼女の相棒を務める誰かも知っている筈で、無論俺もそれを感じている。
同じ境遇でも、進み方も捉え方も違えば、幸福感も何もかもが違う。否、彼女はきっと、変わるキッカケを既に持ち合わせていながら、キッカケに気付けないでいるだけだ。
それを教えるのは、俺の役割では無い。世の中は適材適所、寄り添うべき相手が明智ちゃんにいて、ジェットは明智ちゃんの進むべき道の手助けをする。
___三人が欠けても、彼女は救われない。
「なんとか、なってんじゃねぇか?」
「…おい、僕の話を聞いてたか?」
「聞いた。その上で俺の意見は変わらず、なんとかなってるだ。…そもそもな、寄り添う寄り添わない以前の問題にな、助けるって、そう動いた時にとっくに明智ちゃん自身は救われてんだよ。」
「けど、そんな確証なんて。」
「ある。今は、ただ自分の歩くべき道が曖昧になって、闇雲に歩いてるだけの状態に明智ちゃんはなってるだけだ。…彼女は、救われる道筋はあっても、その手段が無い。」
「だからな、お前達がいるんだ。」
とっくに救われ道は出来上がっている。後は、ちょっとの声と有言実行に移せるだけの行動力をジェットと彼女の相棒が起こせば良い。
俺は、彼女自身を救う事には賛成だが、俺では完全に彼女の心を救う事は出来ない事は重々承知で、仮に救えたとしてもそこに残るのは歪な繋がりと、強い依存だけ。
ならば、俺が出来るのは彼等の起爆剤となる事だ。
「…お前達が巡り合った事が、彼女自身が救われる道筋なんだよ。この巡り合わせをよ、奇跡って言うんだ。お前らなら、奇跡を起こせんだよ。」
「俺だって、絶望の淵で奇跡が巡り巡って、俺を助けてくれた。…奇跡信じるぜ、俺。なんせ、この世界で一番奇跡に救われた男と言っても過言じゃ無いからな。」
事実、あの時の奇跡が俺と彼女達を巡り合わせてくれた。『奇跡』とは偶然と偶然に重なった事象が、近代科学の理論を打ち破り、言語化不可能な何かを引き起こす事だと俺は思う。
「…僕は、あんなに直接的に何かを言える事は出来ない。…寧ろ、変に口を滑ってあんなを追い詰める事だけはしたく無い。」
「そりゃ、言葉選びってのは慎重だよな。」
「でも。僕は、きっとあんなとみくるなら、その奇跡って奴を必ず手繰り寄せる事が出来ると信じてる。」
何処か、色が宿らぬ彼の瞳には、『まこと』にも勝らない輝きを宿す。
「…僕が信じて、手を貸したあの二人が、奇跡の二人だって、僕は信じてるからな。」
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より一層、空を支配する灰色が存在感を増し、雨を予感させる曇り空の下を歩く私は、お供妖精のポチタンを探している。
本当は、傘なんて必要無くて、普通に帰れば良かった。
けど、どうしても困ってる人に手を伸ばさずにいられなく、心よりも先に口が開いて、自らも驚く程に素早く決断をしていた。
良い意味か悪い意味か分からないが、きっとあの人の影響も少なからずあると思う。
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依頼主の北村真理子さんの依頼を解決する為、ジェット先輩の発明品であるプリキットで自らの姿をこの学園の高等部の生徒へと変え、潜入調査を行う私は、交換留学へと向かった依頼主の妹である北村恵子さんを探していた。
依頼の受理の旨をみくるへと連絡しようと、プリキットボイスメモを手に取る私は、あの瞬間、友人達と仲睦まじく話すみくるの姿を思い出し、プリキットを懐へと仕舞う。
___申し訳無いよね。
心にそう必死に結論を投げ付ける私は、何処か胸に生まれた理由の無い重みに、自然と押し潰されそうになる。
理解はしていた筈だ。でも必死に理由を持たないと、心が押し潰されそうになって自分が自分じゃ無くなる恐怖に陥ってしまう。
誰かの不幸を享受している訳じゃ無い。
けど、出所の無い悪意の声が、私の心の声が嫌な想像を掻き立てる、身勝手な言葉を呟き続ける。
___私だけが必要でしょ、みくる。
うるさい、私だけに優しさを配るみくるなんて私は見たくない。彼女の良い所は、分け隔て無いあの優しさだ。
それをポッとでの私が独占して良い訳が無い。思い上がって、自分だけの相棒と、勝手に烙印を押し、強い依存と独占を抱えていた私は、あの人のお陰で少しは、変われたと思っていた。
けど、実際は全然違った。
彼女が居なくなれば、塞がら無い心の溝が生まれて、強く彼女を求めてしまう。
それは逆も然りで、同じ程にあの人の事も強く求めてしまい、あの時と微塵も成長はしていない自らの心に、嫌気が指す。
変わろうとして、けど結局はこのザマなら私は、一体なんなの。
___ねぇ、誰か教えてよ。
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灰色の空の下、私は今みくると合流し、針を刺す様な痛い沈黙に苦痛の顔を浮かべながら、彼女の双眼を見つめる。
いつからか、お供妖精のポチタンすら姿を消し、一人になる不安の焦燥に駆られ、流浪の民が如く、芯も無く、目的も定まらない覚束ない足取りでポチタンを探し続けて、偶然にも私はみくると再開した。
再開の時、私の顔はこれ以上に無い程歪んでいたと思う。
嫉妬、独占、依存、負の激情が渦を巻き、その心が己の顔すらも蝕み、真顔も笑顔も一度忘れてしまう程に酷い有様だった。
沈黙の中で、一呼吸も命を削る様な苦しさの中で、先に口を開いたのはみくるだった。
「あんなは、どうして此処に?いつもなら事務所にいる筈じゃ無いの?」
「……み、みくるに傘を届けようと思って、ポチタンと一緒に来たんだ。けど、ポチタンが迷子になっちゃって。」
「…そっか、あれ?けど傘は。」
「依頼主さんに渡しちゃったんだ。…みくる、傘、必要無さそうだったし。」
「待って、あんな。依頼って?……もしかして、一人で依頼を引き受けたの!?」
事の顛末を話す私に、みくるの驚愕の声が腹の沈黙を破り、今度は何処かピリついた雰囲気が周囲を支配し、選択を間違えれば、全てが崩れ去る恐怖も生まれる。
更には、みくる自身も私の知らない所で、個別に依頼を引き受けていたらしく、何故相談を持ち掛けないのか、沸々と何かが湧き上がる。
「依頼を受けるにしても、相談ぐらいは私にしてよ。…一緒にやれば、簡単に解決できるんだし。」
「だって、みくる学校だし。悪いかなって。」
「…何言ってるの。私にとって、探偵業も学校も秤にかけられないぐらいに大切で、両立させたい物なの!あんななら、分かるでしょ?」
「一人で身勝手に進んで、依頼主に迷惑も掛けて、解決出来ない可能性だって……。」
「けど、みくるだって、一人で依頼…引き受けたじゃん。」
「一人でって、私はボイスメモで連絡したんだけど。」
「…調査中で、ボイスメモを開く余裕が無かったの。だったら、私がみくるに直接言えば良かったの?」
「そういう事じゃ無い!」
「だったら、どうすれば良かってみくるは良いの!」
互いにヒートアップする言葉の嵐に、怒りの歯止め効かなくなった私は、自身の発言一つ一つに疑問を覚える前に、自然と口が有りようの無い針の言葉を彼女に突き刺す。
訳が分からないぐらいに、怒りと言葉をぶつけ合う私とみくる。もう、どちらが悪いか結論を付けなければならない空気の中で、私は最悪の言葉を紡ぐ。
「大体、みくるはどうしたいの!私に手を伸ばして、友達になれるって期待させて、でも依頼ってなれば私の事なんてどうでも良いんだ!」
「…だから、聞く耳持ってよ!私はそんな事思ってないし、あんなの事も大切に思って…。」
「大切なら、常に私を一番にしてよ!学校に行く時も手を繋いで、学校から帰ったら一緒にお話して!」
「それが出来ないなら、私を期待させないでよ!」
___言っちゃダメだ。
この言葉は、簡単に口に出せるけど、これを口にした瞬間に出来上がった関係も、みくるも全部を壊してしまう。
でも、もうブレーキが無いこの空間で、言葉を濁せと理性を働かす行為は無意味で、喉からすんなりその言葉を放つ。
「…みくる、なんて。……みくるなんて、大嫌……。」
「お〜と、ストップ。それ以上言うお悪い口は俺が塞いじゃうぞつって。」
喉から出た言葉を遮る様に、私の口に、聞き慣れたあの人の声が響くと同時に、手が開かれる。
私なんかよりも大きな手に、鍛えているのか手の平はマメが出来、皮は所々破け、逞しい印象を与える手に、場違いな場を和ませる様な腑抜けた声。
私と同じ境遇の人、ユウトさんは頭にポチタンを乗せながら、私とみくるの雰囲気を静止させ、言葉を遮っていた。
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___危なかった。
ピリついた雰囲気に己のふざけた性格が功を無し、一時的とは言え、全ての言葉を静止させ、沈黙を運んだ自分の性格に今だけは花丸皆勤賞を与えたいが、そうも言ってられない状況は空気の読めない俺でも常々理解している。
明智ちゃんに傘を届けに、まことみらい学園に足を運んだのは良い俺だが、物の見事に土地勘が働かない新天地で迷子となった俺は、亡霊が如く学園内を彷徨い続けた。
場所は一転二転もするが、同じ様な光景が広がるだけで、進展は無く、ほぼ諦め掛けていた俺に転機が訪れた。
それが頭に乗っかるピンク色の妖精、名は存じ無いが、ポチと鳴くのを由来に、勝手に『ポチ野郎』と名付けた俺は、目尻に涙を浮かべるポチ野郎と偶然にも出会い、今に至る。
まさか、ポチ野郎の背を追いかける選択を取ったのが正解とは思わず、この場に居合わせた事に奇跡が湧き上がると同時に、俺の寝癖を弄るポチ野郎に感謝を心で述べる。
思わず背を追ったが、あの涙を見れば、追い返す気も見捨てる気も起きず、渋々ポチ野郎の背を追った俺の善はしかと徳を手繰り寄せた。
更には少し前、学校のシンボル的なツザメの銅像を眺める少女に、ツバメが低く飛ぶ時雨が降ると言う逸話を伝え、雨の予報を伝えた俺の徳は最高潮に至り怖い物など一つも無い。
___まぁ、ちょっとあの子の独り言も気になったけど。
「…貴方は?」
「えっと、初めましてだな。俺の名前はユウト。お前らの二個上の高校一年生、だと思うけど、宜しくな。」
「貴方が、ユウトさん。」
「…え〜、何何?俺ってそんなに有名人?」
「いえ、ただ、あんなが良く貴方の名前を口にしていたので、小耳に挟んでいた程度でしたけど、案外普通なんですね。…まぁ、口調は気に入らないですけど。」
「…い、いきなり辛辣。」
初対面の異性にきつい言葉で初めましてを行う、己が舐められた態度に嫌気が指すが、改善を行えば、俺のアイデンティティが殆ど消える為、直す気は無い。
しかし、目の前の少女は明智ちゃんの言う相棒の女の子である事は直感が理解するが、何故此処までピリついた空気となっているのか疑問が生じる。
「そう言えば、こちらも名乗らないのは駄目ですね。私は小林みくるって言います。」
「分かった。みくるちゃん、ね。…で、この状況は何だ?」
「……別に、ユウトさんには関係ないですよね。」
「関係あるに無いにせよ、側から見ても喧嘩って思われる討論が目の前で起こったら、誰でも真意を問いただすだろ。」
明智ちゃんの口を抑える手を離し、身動きを解放させた明智ちゃんに、俺の頭に乗っかるポチ野郎は、目尻の涙は綺麗に消え、満面の笑みで彼女の胸に飛び込み、明智ちゃんは優しくポチ野郎を抱き止める。
ピリついた空気に俺とポチ野郎の介入は、僅かに話せる空気を自ら生み出し、俺は口を開こうとする。
が、その瞬間、第三者の新たな声がこの空間に響き渡り、俺と彼女達の視線が、声の主へと向く。
声の主は、俺がツバメの逸話を話した赤髪の少女で、彼女は学校のシンボル的な銅像へと無遠慮に立ち、鋭い視線で俺達を射抜いている。
「ポ〜チ!」
有無を言わさん、射抜く自然の中で、ポチ野郎が突然と泣き出し、ポチ野郎を首から吊り下げる明智ちゃんは凄まじい力でポチ野郎と共に引っ張られ、みくるは察した様な顔で進む明智ちゃんの手を取り、赤髪の少女の元へと向かう。
赤髪の少女は、明智ちゃん達を前にし、そのに 服へと手を掛けると、中から少女では無く、悪知恵働く美青年へと姿を変え、俺は間抜けな声を溢す。
更には、明智ちゃんとみくるが手を取り合ったその瞬間、紫色とピンク色の眩い輝きが彼女達を包み込み、俺は思わず腕で目を覆う。
「……消え、た。」
光が止み、視界を開放すれば、明智ちゃん達とツバメの銅像に淡い緑色の髪に、全身を怪盗の様な衣装で包み、悪知恵働く美青年の姿が痕跡ほど消え、同時にツバメの銅像も姿を消した。
騒然とする俺は、思考を放棄し、足を止めるが、凄まじい轟音と大地を揺らす程の振動が放棄する意識を無理矢理繋ぎ止め、考えるよりも先にその足は動き出した。
度重なる振動に平衡感覚は崩れ、倒れ伏しそうになる体に根性の熱を注ぎ、必死に地面と足を接地し続ける。
衝撃に耐え続ける足腰は、激痛で悲鳴を上げ、両膝は度重なる振動でまともに機能せず、上手く足を動かせなくなった体を必死に引き摺り続け、俺は、なんとか目的の場所へと辿り着いた。
が、目の前の状況は防戦一方の酷い有様だった。
ツバメを模した巨大な化け物二体が、紫の少女とピンク色の少女を袋叩きにしており、その様は鳥類に逆らえず、餌にされるだけの昆虫を彷彿とさせる。
二人の少女は、必死に迫り来る攻撃を回避しようと、左右に飛び跳ねるが、両者が同じ方角へと飛び、額と額がぶつかる鈍い音と共に、その場に痛みでしゃがみ込んでしまう。
「馬鹿、避けろ!」
直感が危険を知らし、喉から必死に声を張り上げ、少女達へと声を上げるが、その声は翼の音に掻き消され、少女達は、ツバメの化け物の突進を喰らい、遥か後方へと吹き飛ばされてしまう。
あまりにも別次元の戦いに、割り込もうとした筈の両足はすくみ、その背には不快感を覚える冷や汗が大量に湧き上がり、次第に絶望が劇的に空間を伝染する。
少女達は壁にめり込み、激痛で動けない。ツバメの化け物達は悠々と己の優位性を確信し、弱気を挫く猶予ある足取りで彼女達へと迫る。
その時、紫の少女は、震える足取りで立ち上がり、立っているのが不思議な程に疲弊した体で、彼女は懐から何か小さな物を取り出した。
「……オープン!」
小さな物を天に掲げ、オープンと唱える紫の少女だが、目立った何かは起こらず、紫の少女は諦めず何度もオープンと、オープンと言うが、現実は非常に沈黙を貫いてしまう。
少女達の姿は既に満身創痍で、土汚れや擦り傷が目立ち、痛々しい姿を見せ、再びツバメの怪物達に襲われる彼女達。それを横目に意気揚々と嘲笑う美青年。
もうどちらに勝利の天秤が傾いているのは、言わずとも分かり、勝敗なんて既に喫している。
絶望に打ちひしがれる少女達、勝ちを確信し、その相貌に愉悦を宿す美青年と化け物達を眺めるだけの俺は、何故自分が此処に立っているのかと疑問に思う。
___なんで、立ってる。なんで、此処にいる。なんで、動けない。
自問自答が心の渦中で生まれ、行動も思考も何もかもを手放す出来損ないは、存在意義なんて無い。
理由が無ければ動けない俺に、価値は無いだろ。俺の命は消耗品で、命の価値も常人よりも遥かに軽くて、俺の命で誰かの命が助かるのなら、命の優先順位なんて一目瞭然。
___動け、動け動け動け動け動け。
涙を見た、ピンク色の妖精の涙を見た。彼女達の表情が絶望に染まり、彼女達の目尻には雫が生まれる。
それを見た瞬間、俺の体は、疲労も恐怖も置き去りにして、自然と彼女達の前に立ち塞がっていた。
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「………。」
胸騒ぎが治らず、弾かれた様に寝床から状態を起こす私は、全身に凄まじい汗を滲ませながら、荒い息を吐いて、必死に鼓動する心の臓を宥める。
「嫌な、夢。」
「…あら?るるか、どうしたの!その汗!」
「別に大丈夫だから、マシュタン。」
穏やかに開けられた木製の扉から姿を現すお供妖精のマシュタンが、私の悲惨な姿を見るや否や、大慌てで声を荒げるのを抑え、汗が染み込んだ寝巻きを脱ぎ捨てる。
夢は夢でも、明晰夢や予知夢の様な、一存に起こらない物と捉える事の出来ない夢という不確定な物。
私が見た夢は、夢でありながら、あまりの解像度にそれが本物だと錯覚し、らしく無く取り乱した事を夢の中で思い出す。
頬に飛び付いた愛しい彼の血、そして、目の前にある彼を構成していた肉と、何かをその胸に抱き抱え、啜り泣く様に涙が肉に伝わる。
今に思い出しても、酷い吐き気と身体の不調を感じ、ふらつく体をマシュタンが支えると、私は装いの衣服へと裾を通す。
「…るるか、貴方。顔でも洗った方が良いわ。」
「そんな時間は無い。一刻でもユウトとくれあの為に出来る事はしないと。」
「…はぁ、るるか。今、自分がどんな顔をしているのか分からないの?」
「どう言う事?」
「………貴方、泣いてるわよ。」
✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎
___人にとって、死なんて必ず起こる事象の一つだ。
『本日未明、まことみらい学園の敷地内で人の物と思われる、血痕の様な物が発見され、在籍中の生徒達は不安を募らせています。』
___誰?
『警視庁は、事件の可能性も視野に入れ、捜索を続けています。…更には、血痕の周囲には、被害者と思われる男性の右腕が発見され、事件との信憑性が高まっています。』
___どうして、約束を破ったの?
因みに、表現のあやもありますが、ユウトはちゃんと紫の少女とピンク色の少女を明智あんなと小林みくると認識している感じです。