消去法で与えられた遺伝子改造チートでどこまでやっていけるか?   作:適当でいいです

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第1話

異世界転生――というやつが、ついに俺の元にもやってきた。

 

……いや、正確には転生じゃなくて『転移』なんだけど。

それにしたって、現実は厳しすぎる。なにせ授かったチート能力が、『一見選べるようで、全く選ぶ余地がない』極悪仕様だったからだ。

 

『今回は転生じゃなく転移ね。向こうの大気成分、地球と若干ちがうから』

 

夢の中みたいな、おぼろげな姿の神様(仮)は確かにそう言っていた。

で、そのまま半強制的に渡されたのが、この能力だ。

 

『はい、これにしなさい。【遺伝子改造】。これから行く環境に合わせて体を最適化できるから。おまけで身体能力も底上げしとくね?……まあ、最強レベルには程遠いけど』

 

ちょっと待て。

大気成分が違う世界に丸腰で行ったら即死だろ。実質それ一択じゃねーか!

 

そんな感じで、俺はほんのわずかな時間で、これからの一生を左右する重大な決断(というか消去法)を迫られたのだった。

 

 

――そして、あの転移から5年が過ぎた。

 

新しい世界で俺がどう過ごしているかというと……絶賛、迷走中である。

 

拠点を求めて場所を転々とし、名前も素性も何度も変えてきた。

ぶっちゃけ、自分でも過去の変遷を覚えていない。

 

「あれ? ホージーじゃん!」

 

街角で不意に声をかけられても、当の俺は首をかしげるばかり。

 

(あれ……? 俺、そんな名前名乗ってた時期あったっけ……?)

 

しらばっくれているわけじゃない。マジで『忘却の彼方』なのだ。

 

【遺伝子改造】。

この能力は、自分の顔も体型も、骨格レベルで自在に変えられる。

 

一気に完全な別人になってしまえば追手からは逃げ切れる。だが、『人間の顔のレパートリー』を使い果たして詰むのが怖くて、敢えて微妙~な微調整に留めているのだ。

 

結果、微妙に面影を残したまま変身を繰り返し――元ネタすら思い出せない顔で、今日も俺は異世界を漂流している。

 

 

この世界は、まあよくある中世風の世界だ。

ただ、『魔法』という便利なものがあるおかげで、そこまで生活は悪くない。現代人の俺でもギリ成り立っている。

 

……まあ、それも『都会の中流家庭以上』に限った話だけどな。おかげで俺は毎日働きっぱなしだけどな!

 

ちなみにこの世界、魔法はほぼ全員が大なり小なり使える。

 

どれくらい当たり前かというと、

「お前、魔法使えるか?」という質問は、「お前、歩けるか?」「走れるか?」と聞かれているようなものだ。

 

もちろん、100メートルを何秒で走れるかに個人差があるように、魔法の規模も人それぞれ。

選び抜かれた『アスリート級』の魔法使いは、国家にとって超重要な人的資源として囲い込まれるのがお決まりパターンだ。

 

「アテト魔王がフルト魔王にやられたらしいぞ。……もう10年も前の話らしいがな」

 

ここは街の冒険者ギルド。

俺は耳の機能をちょっとだけ強化して、酒場の会話にこっそり聞き耳を立てていた。

 

(そうか、また『向こう』で動きがあったのか……)

 

よくファンタジー小説で『魔王』とか『獣王』とか聞くが、じゃあ逆に聞くけど『人間王』って誰のことだ?

現実を見ろ。人間側にだって王国も帝国も公国も山ほどある。

それと同じで、魔族側だって一枚岩じゃない。

 

――だが、この世界の構造は、明らかに人間側に不利(クソゲ―)だった。

 

現地の聞き捨てならない噂によると、この惑星は一定以上南に行くと『魔力枯渇状態』になるらしい。

死にはしないが、人間側の魔法は一切使えなくなるのだ。どうやら魔力の源となる成分が違うらしい。

 

それを聞いた瞬間、俺の脳内にひとつの仮説が浮かんだ。

 

(……待てよ。その『一定のライン』って、もしかして【赤道】のことじゃないか?)

 

地球でも大気は赤道付近で渦を巻き、北と南で循環が分かれる。

それがこの世界では、魔力の源泉である『魔素』の属性にそのまま影響しているんじゃないか……?

 

これが事実だとすると、人間にとっては最悪だ。

 

人間が南(魔族のテリトリー)に突撃した場合、体は動くので剣を振るうことはできる。だが、魔法攻撃も補助魔法も一切使えない完全なノーマッド状態になる。

対する魔族は、素の身体能力で人間を凌駕している上に、向こう側の魔法を使ってくるのだ。勝ち目がない。

 

ただし、裏を返せば北半球(人間エリア)に来れば立場は逆転する。

人間は魔法が使えて、魔族は『ほぼ』使えなくなるのだ。(魔族の中でも魔法特化のバケモノだけはギリギリ使えるらしいが……)

 

結果として、大局的に見れば魔族有利。

それでも南北で綺麗に住み分け(冷戦状態が)されている、というのがこの世界のリアルだった。

 

……だからこそ、10年前の魔族領の国家レベルの大ニュースが、今さら人間に届くなんていう異常事態が起きるのだ。

 

いくら中世文明とはいえ、隣接する敵対勢力の情報が10年遅れとかマズすぎるだろ。

 

原因は明白。情報を得るルートが、地平線付近にある数カ国の緩衝国どうしの情報交換くらいしかないからだ。

一応、密輸のための密航船もあるにはある。だが、成功率は限りなくゼロに近い。

 

海には超大型の魔獣がゴロゴロいるわ、万が一相手の領土にたどり着いても即スパイ扱いされて(実際、情報を得ようとしているからスパイなのだが)拷問確定だわで、リスクが半端なさすぎる。

 

……そんな世界で、俺は自分の顔を変えながら今日も細々と生き延びているわけだ。

 

 

ちなみにこの5年間、俺がどうやって食いつないできたかというと――ぶっちゃけ、一文無しからの日雇い肉体労働である。

 

「せっかくチート能力をもらったのに?」と思うかもしれない。

 

だが、現実は甘くなかった。

なにせこの【遺伝子改造】、まったくもって戦闘向きじゃないことが判明したからだ。

 

まず第一に、発動条件が地味に厳しい。

他者を改良・改悪しようと思ったら、自分の体(基本は手)で直接触れていなきゃいけないのだ。戦闘中に敵にタッチしに行くとか、普通にリスクが高すぎる。

 

そして第二に、いくら改良できると言っても、『生物的な限界』を超えることはできない。

 

例えば、そこらの山に生えているただの植物に、鋭い棘を生やして伸ばすこと自体はできる。

だが、その強度はどこまでいっても『植物の範疇』だ。鋼鉄みたいにカチカチで無敵の刺突兵器……なんてものには逆立ちしてもならない。

 

というわけで、行き着いた答えがこれだ。

 

「自分の肉体を適度に強化して、日雇い現場で無双する」

 

これが一番安全で、誰にも怪しまれず、しかも一番割が良い生活だった。

 

今日も今日とて、俺はほんのり筋力を底上げした体で、現場の重い資材をサクサク運んでいる。

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