転生したら結城丈二(♀)だったのでプルトンロケットを回避したい! 作:青葱小口切り
テーブルの上へ道路地図を広げたのは、立花さんだった。
「うちで使ってるやつだ。書き込みだらけだが、道は正しいぞ」
その隣に、片桐が鉛筆で略図を描き足していく。デストロンの施設と、それをつなぐ道。正規の地図には載らない線が、薄い灰色で伸びた。
俺は通常手型の右手で鉛筆を受け取った。
「さそり谷を探します」
風見と片桐、立花さんの顔が上がる。幸江さんの手の中では、繕いかけの袖が止まった。
「さそり谷?」
風見が繰り返す。
「プルトンロケットの発射地点です。デストロンにいた頃、そう呼ばれているのを聞きました」
ロケットのことは、この家へ移った夜に一度話してある。都市を丸ごと壊滅させる強力な兵器だと。
嘘は混ぜていない。その名前をどこで最初に知ったのかだけを言っていない。
風見はそれ以上訊かなかった。ただ、地図へ戻しかけた視線が、一度だけ俺の顔を通った。
追及されなかったのではなく、今は置かれただけだと思う。
問題はここからだった。
地図に、さそり谷という文字がない。索引を端から指でなぞっても出てこない。正式な地名ではなく、内部でそう呼んでいただけらしい。
地図というのは、こちらが質問の形を作らないかぎり何ひとつ答えてくれない。文字を入れれば候補地が並ぶ、という気の利いたものは、この時代のどこにもなかった。
なら、名前で探すのはやめる。
「名前ではなく、条件で探します」
鉛筆の先を地図へ置いた。
「ロケットは、隠すには大きすぎます。運び込むだけでも条件がつきます」
大型の建築材と燃料を積んだ車両が曲がれる道幅。重量に耐える地盤。設備を隠せる山間部。地下を動かすだけの電力。そして、上げる方向だけは開けていること。
「補給の拠点から遠すぎるのも駄目だ」
「そうです。運ぶ回数が増えれば、それだけ人目につきます」
条件を一つ挙げるたび、地図の白い場所が減っていく。知らないことを数え直すより、こちらのほうがずっと速い。
片桐が、ある一帯へ指を止めた。
「武装班の大型車が、山間の中継所を二か所使っていました」
片桐が略図の余白へ二つの印をつける。
一か所目は、俺がすぐに消した。谷の向きが悪い。上げた先に山がある。ロケットで地形を壊す趣味の持ち主でもないかぎり、ここは選ばない。
二か所目には、古い採石場へ続く資材道路があった。石を運び出すために作られた道は、最初から重い物を通すためのものだ。
「送電線があります」
片桐が言葉を続ける。
「採石場は、もう十年近く止まっているはずです」
「なら、電気は要らないはずだ」
俺は二か所目へ丸をつけた。鉛筆の芯が、少しだけ紙へ食い込んだ。
「ここがさそり谷かどうかは、まだ分かりません」
「だが、見に行く価値はあるんだな」
立花さんが確かめるように言った。
「はい」
***
風見が立ち上がった。
「なら、行くぞ」
「その前に、確認があります」
風見の足が止まる。自分の声の固さに、言ってから気づいた。
店の裏の空き地へと移る。物干しと、積み上がった木箱しかない。
幸江さんが脈を取り、片桐が胸と脇腹へ測定端子を貼る。俺は測定器の針を見る位置に立った。
「変身の瞬間だけ見ます。異常が出たら、私が止めます」
「分かった」
術後の患者が、自分から変身ポーズを取る。医療現場としての管理難易度が高すぎる。俺の知っている医療に、この工程はない。
風見が腕を伸ばした。
「変身……V3!」
ダブルタイフーンが回る。光が足元から駆け上がって、肩の線を作りかけた。
そこでふっと消える。
風見が片膝をつく。
地面は割れないし、木箱も飛ばない。だけど、風見志郎はV3になれなかった。
ベルトの風車が勢いを失っていく。俺はその動きを見ていた。目の前で起きたことを、頭のどこかが『これはお前がやったことだ』と丁寧に読み上げてくる。
風見が目を覚ました朝、俺は自分の口で言った。あなたからV3を奪ったかもしれません、と。
その可能性が、今、空き地の砂の上で片膝をついている。
謝るのは簡単だった。だが、それでこの人は立たない。
風見が顔を上げる。
「原因は分かるのか」
記録された針の動きを、片桐と二人で追う。回路は切れていない。日常の出力なら問題なく通っている。問題は、出力が跳ね上がる一瞬だけだ。
あの手術で俺は命を優先した。同期の細かい調整まではできなかった。
「回路は生きています。立ち上がる順序がずれているだけです」
「直せるか」
「調整はできます。ただ、全負荷をかけるまでは結果を確認できません」
「原因が分かったなら、先へ進める」
風見は端子を貼られたままそう言った。
俺は測定器へ向き直った。
変身開始の印をつけた箇所だけ、二本の針の立ち上がりがずれている。片桐が記録紙を押さえ、俺は再接続した回路に対応する端子を一つずつ追った。
「遅れているのは、こちらだ。補正を一段だけ上げてくれ」
「はい」
片桐が目盛りを動かす。二本の針は近づいたが、今度はわずかに追い越した。
風見は黙って座っている。俺が脇腹の端子へ手を伸ばすと、自分で上着をさらに開いた。
謝る暇があるなら直せ。そう言われているようだった。
補正を戻し、もう一度測る。二十分後、二本の針はようやく同じ位置から立ち上がった。
もう一度試すことはしなかった。術後の回路へ何度も全負荷をかけるほうが危ない。
「今日は偵察だけです。戦闘は避けます」
「ああ」
***
立花さんの店の車を借りた。俺が運転して、風見は助手席に座った。
ハリケーンで行けば速い。速いが、目立つ。術後の偵察に、いちばん目立つ乗り物を選ぶ理由はない。
採石場へ続く道は、地図で見たときより広かった。
舗装のない路面に、深い轍が二本走っている。乗用車の重さではこうならない。
車を降りて、道の脇を見た。木の枝が同じ高さで削られている。人の背より高い位置で、一直線に。荷台の高い車が何度も通った跡だ。
少し先の路肩に、白っぽい梱包材の切れ端が落ちていた。拾い上げて指で潰す。耐熱材だった。運搬中に角が擦れて、包装が破れたのだろう。
「大型の設備が今も運び込まれています」
風見は答えず、木々の上を見ていた。送電線が谷の奥へ伸びている。途中の変圧器が低く唸っていた。使われていないはずの線が、今は生きている。
車を木立の陰へ寄せて、しばらく待った。
風見は窓の外を見たまま、一度も時計を見なかった。俺は膝の上で地図を折り直し、また広げ、また折り直した。
「結城」
「はい」
「谷の名前だけを、よく覚えていたな」
心臓が半拍だけ余計に動いた。
「忘れられる種類の名前ではありませんでした。サソリは、デストロンの象徴ですから」
嘘ではない。だが、風見が何を聞き取ったかは分からない。この人は、こちらが答えなかったところを覚えておいて、しばらく置いておく癖がある。
「そうか」
それきりだった。
四十分ほどで、大型の輸送車が来た。看板も社名もない。荷台には覆いが被せられている。運転席には、二人。
助手席の男は前を見ていなかった。曲がり角のたび、道ではなく斜面と後方を確認している。運搬の手伝いではなく、襲撃を警戒する首の動かし方だった。
あの警戒の仕方を、俺はデストロンで何度も見ている。
距離を取って尾行する。曲がり角を二つ越えたところで、道が分かれた。
分岐の斜面から、影が降りてきた。
待ち伏せだ。輸送車はそのまま奥へ消え、別の一団がこちらの前後を塞ぐ。
風見がドアを開けた。
「待ってください、まだ実戦で確かめていません」
「だから、ここでやる」
止める言葉が続かなかった。続けたところで、この人はもう降りている。
戦闘員が距離を詰めてくる。
「変身……V3ァ!」
光が足元から上がり、肩の線に届いたところで、一度だけ揺れた。
揺れは、そこで止まらなかった。
光が肩を越えて、頭まで駆け上がる。
次の瞬間には、そこに仮面ライダーV3が立っていた。
息を吐いたつもりはなかったのに、肺の中の空気が勝手に出ていく。
V3の拳が一人を路肩へ弾き、回し蹴りが前を塞いだ二人をまとめて退かせた。踏み込んだ足元から砂利が散る。必要な分だけだ。余計な力は漏れていない。
それでも、測定器なしで安全だと言い切ることはできない。
「行け、結城。車を見失うぞ」
ここへ残るか、輸送車を追うか。迷ったのは一秒にも満たなかった。
返事の代わりにギアを入れた。
***
轍を追って、山道を奥へ入った。
封鎖地点は唐突に現れた。丸太を組んだ門と、その両側へ張られた有刺鉄線。轍は閉じた門の向こうへ続いている。輸送車が通ったあと、すぐに閉じられたらしい。
俺は少し道を戻り、藪の切れ目へ車を突っ込んでから鍵を抜いた。
徒歩で斜面へ入って十分ほどで、後ろから足音が追いついてきた。
変身はすでに解けていた。息は上がっているが、それだけだ。俺は手首を取って脈を見る。
「少なくとも、脈に異常はありません」
「そうか」
二人で低い木を掻き分けながら斜面を登る。
谷の向こう側で、山腹の中ほどが横一文字に削られていた。
自然の崖に見せかけた岩壁から、幅の広い棚が張り出している。棚の奥には山肌と同じ色の格納扉が開き、その前へ足場と発射架台が組まれていた。
白いロケットが、山の中から半身を押し出した姿勢で、斜めに空を向いている。
発射架台の先は谷の出口へ向いていた。その方向だけは山が途切れ、空が遠くまで開けている。
発射台の根元から太い配管が伸び、棚の奥の岩壁へ吸い込まれている。燃料設備は山の中だ。架台の下には、試験燃焼で黒く焼けた溝が斜面に沿って谷底まで落ちていた。
山腹からロケットを撃ち出すなんて、正気の設計ではない。
だが、無茶と不可能は同じではない。デストロンは、できる方の無茶を選んだらしい。
管制施設の窓に灯りがある。技術者と戦闘員が出入りしていた。歩き方が速い。組み立てている速さではない。決められた手順を順番に消化していく速さだ。
運び込まれている荷も、建築材ではなくなっている。木箱と、記録用の紙束。これから作る現場ではなく、これから動かす現場が使うものだ。
足場の上で、誰かが計器の目盛りを読み上げている。距離があるので言葉は届かない。それでも、読み上げのたびに別の誰かが手を挙げて応える形だけは見えた。
地面が低く震えていた。音というより、靴底から膝へ上がってくる振動だ。
本物だ。
「さそり谷です」
そして、その次に、別のものが来た。
あの場所から飛び立つロケットに乗って、結城丈二は爆発のなかに消える。
(……嫌だなあ)
嫌だ。本当に嫌だ。今すぐ回れ右をして、山を降りて、まったく違う方角へ走り出したい。
なのに足は動かなかった。俺はただ、施設の配置を数えていた。
資材搬入口は東側。発射台の脇へ、細い保守通路が伸びている。管制施設はその反対側。
「今夜中に発射できます」
「根拠は」
「配管の状態と、人の動きです。組み立ての段階は終わっています。あとは注入と点検だけです」
計画を繰り上げたのか、もともとここまで進んでいたのか、俺には分からない。あいつらの時間割は、最初から俺のものではなかった。
止める場所は二つだ。管制室の点火回路と、発射台側の燃料供給。両方を、間に合う順番で落とす。
搬入口から管制施設までの動線を目でたどった。足場が三段。保守通路が一本。途中に、足場をつなぐ渡りが一つ。
風見が山を見据えたまま動かない。この人が何を考えているかは分かった。
「今入っても、私は管制室まで届きません」
右手を上げる。通常手型では機械を扱えても、あの保守通路を越えられない。
「なら、届く準備をする」
「はい」
***
立花さんの店へ戻ったのは、日が傾ききる前だった。
テーブルの上に広げた紙へ谷の輪郭を描き、二つの丸をつけた。左が管制施設、右が発射台だ。
「発射は今夜です」
まさか、と言う者はいなかった。幸江さんが立ち上がって、包帯の箱を引き寄せる。
「入口はここです」
風見の指が資材搬入口を押さえた。
「俺が正面の警備を引きつける。そのあと管制施設へ回る」
「お願いします。私は保守通路を抜け、管制施設の前で風見さんと合流します。そこで通常手型へ戻す。私が管制盤を止めている間、風見さんには入口を守ってもらいます」
立花さんが、左の丸を指した。
「管制を止めれば、それで終わりじゃないのか」
「この規模の兵器なら、予備点火系統があると考えるべきです。主回路を切って時間を稼ぎ、その間に発射台側の燃料弁を閉じます」
「エンジンへ燃料が送れなくなるのか」
「はい。少なくとも、通常の発射手順は続けられません」
ただし、燃料は谷の中にある。手順を外れた止め方をすれば、基地ごと消し飛ぶ可能性は残る。
片桐の鉛筆が、二つの丸をつなぐ途中で止まった。その理由に思い至り、言葉を付け足す。
「この渡りを越えるにはロープアームが要ります。ですが、管制盤を開いて回路を測りながら外すには両手が要る。左手で計器を当て、右手で配線を扱わなければなりません」
「自分も行きます。管制室で換装すれば——」
「駄目だ」
返事は、片桐が言い終えるより早かった。
「君まで中へ入れるわけにはいかない」
「ですが、結城さんは一人では換装できません」
「分かっている」
分かっている。それが今、いちばん困っていることだ。
片桐は決して引かない目をしていた。俺に左遷の理由を聞きに来た時と同じ目だ。
だから、置いていくのではなく、渡すことにした。
「片桐」
「はい」
「ここに残れ。退路を二本選び、合流地点を決めておけ。店の車はいつでも出せるようにしてくれ」
「……それは、自分でなくてもできます」
「できない。基地から戻った俺たちの改造部位を調整できるのは、君しかいない」
片桐がしばらくの間、俺を見つめていた。
「分かりました」
そう言って、略図の端へ退路を二本書き込む。
「帰りはどこへ出る」
立花さんがそう訊いてきた。
「西側の林道です。塞がれた場合は、採石場へ戻ります」
二つの退路へ丸をつける。片桐はその横へ必要な医療品を書き込み、幸江さんが包帯と副木を数えはじめた。
それでも、いちばん厄介な問題が残っている。
俺は、自分ひとりでは腕を替えられない。
右手を見る。この五本の指で、地図の上にさそり谷の丸をつけた。管制盤を開くのも、この指だ。
だが、この手のままでは、そこまで辿り着けない。
「ロケットは、科学者として止めます」
それから顔を上げた。
「そこまでの道は、ライダーマンとして突破します」
言ってしまった。
自分の口から出すと、思っていた三倍は恥ずかしい。しかも今、俺は自分の逃げ道に正式名称をつけた気がする。
一瞬、誰も言葉を返さなかった。幸江さんの包帯を束ねる手が止まる。
(無反応なのも辛いな……)
風見だけがすぐに答えた。
「なら、俺が換装する」
俺は思わず風見を見る。
「一度見ただけでできる作業ではありません」
「なら、今覚える」
「本番では、戦闘の最中に肩を開けて動けなくなります」
「片桐を連れていかないなら、ほかに誰がやる」
片桐が工具箱を引き寄せた。
「自分が教えます」
***
幸江さんが、俺の上着とシャツを膝の上へ広げた。
先日、自分で選んで買ったものだ。生成りのシャツと、濃い紺色の上着。洗い替えのために買った、ただの生活着。
「右の肩と袖を、開けるようにします」
「……ええ」
「脱がなくても肩だけ出せるほうが、いいでしょう」
幸江さんが縫い目へ鋏を入れ、片桐が開いた縁へ留め具を並べていく。布の内側で、留め具の位置が接続部の位置と揃えられていった。
着てしまえば、ただの上着に見える。留め具を三つ外せば、肩が出る。
右腕を隠すための服が、右腕を使うための服になった。似合うかどうかではなく、ここが開くことが嬉しい。順序としてどうなんだ、とは思う。
それから換装にかかった。
留め具を外すと、肩の接続部が空気に触れた。
片桐が風見の横についた。
「まず右肩を支えてください。手のひら全体で」
「ああ」
「固定は二か所です。外側から外します」
風見の指が接続部へ触れた。
留め金が外れる小さな音だけがする。布も金属も、どこも裂けない。
俺はその指を見て、すぐに視線を戻した。
固定が一つ外れるたび、右肩の奥で短い痺れが走る。
風見は左手で肩を支え、右手で通常手型を引き抜いた。片桐が床へ広げた布の上へ、接点を上にして置く。
「次はロープアームです。接続部の内側に、細い束が並んでいます」
風見がロープアームを持ち上げる。指が人工神経の接点の手前で浮き、それから外装の縁だけを持ち直した。
俺の肩の中には、俺の設計した配線が入っている。その持ち方を、この人は今日初めて覚えている。
次の工程で、今度は迷いが出た。
ロープアームの固定具へ指がかかった。締める順序が違う。肩の内側に、押される感覚が来る。
「そこではありません。先に内側です」
「……ここか」
「はい」
痛くはない。ただ、噛み合うべきものが噛み合っていないと分かる。
「内側を軽く締めてから外側です。逆にすると位置がずれます」
片桐が横から訂正すると、ようやく金属がカチリと嵌まる音がした。
「出力を上げます。指の代わりに、ロープが出ます」
肩の中で巻き取り機構が回る。ロープが一メートルほど伸びて、また戻った。
「反応、正常です」
「二分二十六秒」
片桐が時計から目を上げた。
「今の手順を覚えてください」
四十五秒。あの日、俺が必要だと言った時間を、風見は怪人の前に立って稼いだ。
今日はその人が、二分二十六秒をかけて俺の腕をつけている。
片桐が携行用のケースへ通常手型と最低限の工具を詰めた。
「逆の手順で戻せます。ただし、焦って接点を潰せば動きません」
「分かった」
***
支度が終わったのは、日が完全に落ちてからだった。
右腕はロープアーム。上着の右肩には、外から見えない三つの留め具。内側に略図。ケースは風見が肩へ提げた。
幸江さんが、上着の襟を一度だけ直した。
「留め具は、内側からでも外せます」
「……はい」
それだけだった。
立花さんが店の入口を開ける。長いことは言わなかった。
「気をつけてな」
「はい。後のことは、よろしくお願いします」
風見がハリケーンのエンジンをかけた。
俺は後ろへ乗って、左手を風見の腰へ回す。今日はどこにつかまるかで迷わなかったし、迷わなかったことに驚きもしなかった。
「今日の戦闘員が連絡していれば、警備の配置は変わっています。見てきた通りに進めるとは考えないでください」
「分かっている。警備はまとめて俺が引き受ける」
風見が前を向いたまま俺に声をかけた。
「行くぞ、ライダーマン」
一瞬、身体が固まる。
(今、俺を呼んだのか)
『ライダーマン』が、そこにある名前としてただ呼ばれた。
「はい」
ハリケーンが走り出した。向かう先は、俺がこの世で一番行きたくない場所だ。
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