日本国召喚二次創作 オルビスの旗、異世界にて翻る 作:仮称5419号艦
さすがにこれ以上引っ張ったらなんの小説かわからなくなるところだった。
―――中央暦1639年1月27日―――
Side:マイハーク海軍基地
経済都市マイハークは岩に囲まれた大きな入り江に面しており、マイハーク港と呼ばれる大きな港も存在する。そこからやや北に離れた場所に存在するマイハーク海軍基地。国民からは『マイハーク軍港』と呼ばれ親しまれている。そのマイハーク基地を根拠地とするクワ・トイネ公国第2艦隊ではいつも以上に緊張に包まれていた。理由は一つ、三日前に発生した国籍不明騎による領空侵犯だ。
公国飛竜隊の防空網をあっさり突破してマイハーク上空に現れた未確認騎による(おそらく)偵察の一件。騎の性能からしてロウリア王国のものではなく、ほど近い位置に存在する第3文明圏の強国パーパルディア皇国すら保有していない。遠く西に離れた第2文明圏には特徴の似たモノが存在するらしいがあまりにも距離が遠すぎる。
公国が偵察を受けた事実以外何もかもが不明という状況が軍内で緊張感を増幅させていた。領空侵犯があってからというもの、海軍と飛竜隊は常に厳戒態勢に入っており第2艦隊は今日も50隻いる軍船のすべてが哨戒任務中、先日は突破されてしまった第6飛竜隊に加えやや東方面を担当する第5飛竜隊も全力で警戒網を張っているうえクイラ国境側の第4飛竜隊を回すという話すらある。マイハーク軍港には海軍と飛竜隊の哨戒情報が定期的に報告されているがまだ異常は発見されていない。
「しかし、本当に『竜』だったのかね……」
「ノウカ指令は国籍不明騎の正体、どう考えておられますか?」
若手幹部に問われた海軍第2艦隊司令ノウカは自分の考えを整理するためにも口に出してみる。
「うむ。おれは実際に見ていないから何とも言えないが、少なくとも目撃情報の多さから実際に存在することは間違いない。そのうえで、東や北東に国はなく群島と集落くらいのもの。北の列強国パーパルディアや対立しているロウリアには今までの記録上当てはまる特徴がみられないし、技術体系的にも新鋭機ということもないだろう。第2文明圏にある飛行機械も縁があって形を見たことがあるが、報告にあった形とはかなり違う。」
「しかしそれでは………」
「ここだけの話なのだが、俺の勘では、例の発光現象が関係あると考えている」
「そうですか………」
経験の浅い若手幹部は不安がぬぐえず肩を落とす。その不安を煽るかのように通信員が声を上げた。
「指令!軍船ピーマより緊急報告!『マイハーク港沖北へ約60km地点で未確認の大型船を発見。これより同船に臨検を行う』とのことです」
「大型船………ほぼ確実に未確認騎の関係だろうが、まだどのような船かは発見しただけならわからないだろう。ピーマといえばベテランのミドリ船長の船だったか。判別次第報告、臨検に当たっては事故防止に十分配慮するように伝えよ。また、当該船は未確認騎との関連が疑われる。技術力はおそらく向こうの方が上だ。近くの軍船と合流後、相手方を刺激しすぎないように配慮するよう厳命だ」
「了解」
指示は適切に伝達され、軍船ピーマは味方の軍船2隻と合流後不明船へ向かっていった。
Side:軍船ピーマ船上,ミドリ船長
第2艦隊所属の軍船ピーマは僚船2隻を伴い大型船に向かって行く。軍船の甲板上には盾や火矢のための油壷などは用意されているが、指令からの刺激しすぎないようにとの命令に従い、戦闘準備までは行わず待機している。向かう先に見える大型船は帆も上がっておらずオールのようなものも見えない。軍船ピーマを任されているミドリ船長は相手は此方が接近していることに気付き、速度を落としたか停止したのだと判断し、船を近付ける判断を下した。彼は傍らにいる副船長ともしもの時の指揮に関して会話しながらも大型船を凝視し続ける。こちらは接近しているはずなのに一向に近づかないように感じていたためだ。そしてそれは、輪郭がどんどん大きくなるにしたがって理由がわかってきた。まるで小島が浮いているかのような大きさに、感覚が狂ってしまっていたのだ。
「副船長。確か君はパーパルディアへ研修に行ったことがあったはずだな」
「はい。しかし、あの大きさは皇国の『100門級戦列艦』より大きく見えます」
「あの青い旗と白地に赤丸の旗に見覚えは?」
「それもありません。しかしあのように旗を立てているということはどこかの国であることは間違いないでしょう」
ピーマ船員達がその巨体に圧倒されるなか、彼ら二人がそのような会話をしながら大型船の近くまで来ると、大型船の上から何人かがチカチカ光るものや手などで合図を送っているのが見えた。初めはすわ攻撃か、とも思ったが此方への被害はなく、観察しているとどうも船尾側に向かってほしいようだと言うことがわかってきた。移動中に逃げられないよう他の船を進路をふさぐように配置しピーマを船尾側へ移動させる。まるで要塞が浮いているかのような船の後方に回り込むと、そこから海に対し口が開いている。そこにも人が何人かおり、ここから乗り込んでくれと言っているようだった。
「これより同船の臨検を行う。2名は私の護衛として同行してくれ。指令からも指示があった通り私の指示か、もしくは攻撃を受けない限りこちらからの攻撃は厳禁だ。また、相手の所属は不明だがどこかの国である可能性が非常に高いため、不用意に高圧的態度をとることも禁ずる。もし破った場合は軍法会議を行い処罰が下される事になると心得よ。船首側のレッドベルとシートゥにも同様の内容を伝えてくれ。わかったな」
「「「はい!!」」」
そうしてミドリは部下二人を連れ船に乗り込んでいった。
Side:大型船
突然同盟国を含む他国との通信が途絶し、バート・ベルカ同盟本部としか連絡の取れなくなった日本。無事だった人工衛星や宇宙ステーションなどの情報からまったく別の星へ転移してしまったことを把握した政府は、日本も所属する同盟の非常事態条項のうち強制転移時に関連する内容に基づいた対応をはじめ、各方面へ複数機種からなる偵察機群を出動させるとともに各種指揮経路の再編を完了させた。いくら技術力があるといっても食料自給率や資源産出が少ない日本は自国のみでは生きていけない。早急に食料と石油の確保ルートを構築する必要があったため、各軍を動かすための特別措置法成立は大半の議員の賛成を持って認可が降りる。一部の野党の状況を見れていない議員からの反対意見はSNSの発展の悪い影響もあり「国の危機なのに反対するとはどう言うことだ」「日本を滅ぼすつもりか」と次々と晒され、彼らの属する政党の支持率が急降下していた。
そんな国内がやや混乱している状況の中、まずは南方向で発見された文明を持つと思しき民族と国交締結の可能性を模索するべく、政府と軍はヘリテージ級ドック型揚陸艦『ラントヴァッサー』(元同盟本部艦隊所属)の派遣を決定。外交官を乗せる船としてこの艦が選ばれたのは、収容力と汎用性に加え、攻撃装備が少ないことから相手を不用意に刺激しすぎないと判断されたこと、そして何よりドック型揚陸艦の特徴である艦尾のドックが現地の人々と接触するうえで技術水準がどの程度でも対応しやすいとされたためだった。
船が近付いて来たのに合わせ錨を下ろし、艦尾のウェルドックを開いて受け入れ準備を済ませた『ラントヴァッサー』へ乗り込んできた現地人を甲板へ案内し、外交官との話が始まった。
船に乗り込んだミドリは困惑を隠せなかった。ここは本当に船の上だろうか。国内で騎馬の模擬試合をする会場とそう変わらないほどにも見える広い甲板。自分の前にいる、おそらく外交のための人間だと思しき人は見たことのない奇妙な服を着ている。仮に彼らを斬れば自分たちは生きて帰れないだろうと内心冷や汗をかきながらも、(ええい、ままよ)と勇気を振り絞り口を開いた。
「私はクワ・トイネ公国海軍第2艦隊所属、軍船ピーマの船長ミドリです。現在、クワ・トイネ軍は厳戒態勢にあります。このまま進めば我が国の領海内。貴船の所属と目的を教えていただきたい」
「安心しました。ここは言葉の壁がないようですね」
相手の担当者が安心したような顔を見せ、話を続ける。
「失礼しました。私は大日本帝国外務省所属の田中と申します。この艦は海軍連合海洋作戦軍所属の『ラントヴァッサー』です。貴国はクワ・トイネ公国という国名なのですね。我が国の政府は、貴国と交流を持ちたいと考えています。状況によっては国交締結も視野に入れております。貴国の担当者にお取次ぎいただければ幸いなのですが」
「となると、貴君は一国の使者、というわけですか。しかし、大日本帝国という国名は聞いたことがない」
「それも当然の反応でしょう。我々日本は約1か月前、突然この世界へ転移させられたのです。先日はその情報収集中の航空機が領空を侵犯してしまいました。大変ご迷惑をおかけしました。この件に関しても、外交交渉とともに公式に謝罪を行いたいと考えています」
転移と言えば神話の話だ。また、『航空機』と言うのも彼等は聞いたことがなかった。ミドリの部下たちは互いに顔を見合わせ困惑している。しかし、長年海軍に所属し様々な人間を見てきたミドリには、彼らが嘘をついているとは感じられなかった。ひとまず、司令部へありのまま報告することにし、田中へもその旨を伝える。
「なるほど、事情は把握しました。本国へ魔信で伝えますゆえ、少々お待ちいただければ」
「通信手段があるのですね」
Side:第2艦隊司令ノウカ
「指令!ピーマからの緊急通信、届きました!」
「読ませろ」
ノウカは通信員から書類を受け取り一読する。大型船は敵対意思がないこと、外交担当者が乗り込んでおり会談を希望していること、大型船の目測での大きさ、未確認騎の領空侵犯の公式な謝罪をおこないたいこと、日本が転移国家であると申し立てていることなどが記されていた。
彼の勘が当たったか、転移国家であるということに少々驚きながらも、ベテランのミドリ船長率いる部隊の全員が幻覚等を見ているとも思えない。少々荒唐無稽でもあるこの事実を伝えるため、ノウカ司令は自身が文書を作り公都クワ・トイネへ魔力通信で清書した内容を送信した。今ならば政治部会が公都で開催されており、自分の立場からして完全に後回しにされることはないからである。
このペースだとロウリア戦役行くまでに冬になってもおかしくないですね。