日本国召喚二次創作 オルビスの旗、異世界にて翻る 作:仮称5419号艦
―――中央暦1639年1月27日―――
Side:<蓮の庭園> クワ・トイネ政治部会
公都クワ・トイネにあり、年中美しく蓮が咲き誇る<蓮の庭園>。もし地球の研究者が見れば「開花時期はどうなっているんだ」と頭を抱えそうなその場所はクワ・トイネ公国の政治部会の会場でもある。
国の代表が集まるこの会議で、首相のカナタは悩んでいた。3日前の事、クワ・トイネ公国の防衛と軍務を司る軍務郷から、正体不明の飛行物体がマイハークへ領空侵犯し、町上空を旋回して去っていったとの報告が上がったためだ。
情報によればワイバーンが全く追いつけないほどの高速で、高度もワイバーンがたどり着けないほど高い空域を侵攻してきたという。所属部隊や国籍は全くほの不明、機体には国旗と思われる赤い丸が描いてあったとの事だが、過去の記録を含めても赤い丸だけの国旗を持つ国などこの世界には存在しない。神話の言い伝えとして知られる太陽神の使いを描いた壁画にはそれらしき物が描かれているが、それは実際にあったことではないだろう。
頭を捻りたい気持ちに駆られながらも、カナタは首相として口火を切った。
「皆の者。この報告について、どう思う?どう解釈する?忌憚なき意見を聞かせて欲しい」
すると、情報分析部長が手を挙げ、先陣を切った。
「我が部内の分析担当班によれば、今回の飛行物体は西方にある第二文明圏の大国『ムー』が使用しているという飛行機械に似ているとのことです。しかし、彼の国の飛行機械は最新鋭の物でも最高時速が350kmほどらしく、今回の飛行物体の目測である600kmには到底足りません。ただ………」
「ただ………なんだ?ムーでないならミリシアルで何かあったか?」
「いえ、ムーからさらに西側、文明圏から外れた西の果てに自らを『第八帝国』と名乗る新興国家が出現したと諜報部から昨日報告がありました。圧倒的武力にて第二文明圏外の国家を侵略し猛威を振るっているとのこと。彼らの武器については全くの不明ながら驚異的な速さで征服しており、このまま第二文明圏の大陸国家連合にも宣戦布告するのではないかと分析しています」
会場にわずかな笑いが起こる。第二文明圏には五大列強のうち2つが存在している。過去の記録からして宣戦布告はあり得そうだが、今までも失敗例しか存在しないため、無謀な戦いであるからだ。
「しかし、第八帝国はムーから遥か西。ムーとの距離でさえ2万kmを越えている以上、第八帝国の技術力が不明だとしても今回の物体が彼らのものであるとは考えられません」
会議は振り出しに戻ってしまった。結局解らないということに代わりはないのだ。ただでさえ現在はロウリア王国との緊張状態が続いており、準有事体制にある。その状況下で起こった今回の一件が不確定要素が多すぎるため、首脳部が悩む結果になっているというのに。
味方であるなら普通に接触出来る。わざわざ領空侵犯という形を取った以上、こちらとしても敵対行動と受けとるしか無く、警戒せざるを得ないのだ。
場の空気が重たくなったその時、会場に外交部の若手幹部が息を切らしながら飛び込んできた。明らかな緊急事態の発生であろう。上司にあたる外務卿が声を張り上げ問う。
「何事だ!!ロウリアが宣戦布告してきたか?!」
「報告いたします!現在、第二艦隊が臨検中の大型船が転移国家を名乗り、マイハークへの領空侵犯を公式に謝罪したいのとのこと!」
若手幹部が報告を始める。少々神経質になっているためか所々で過激な声も出たものの、ノウカ司令の文書も彼らに行き渡り、これの検討を始めることにした。要約するならば、次の内容だ。
本日朝にマイハーク北の海上に大型船が現れる。
臨検を行ったところ、大日本帝国という国の外交官が乗っており、敵対の意志は無いとのこと。
また、いくつかの事項が判明。
○大日本帝国(以下日本)は突然この世界に空間転移した。
○元の世界の友好国や隣国と連絡不能になったため状況確認のため飛ばした哨戒騎が陸地を発見した。
○状況確認のため意図していなかったといえども領空侵犯を行ってしまったことについては、深く謝罪する。
○国交開設の可能性を模索するためクワ・トイネ公国と会談を行いたい。
ということだ。国家転移など神話に登場する内容であり、現実にはあり得ない(ムーは自国は転移国家だと主張しているというが)話だ。あまりにも突拍子の無い話で、政治部会に出席している誰もが信じられない思いだった。
しかし、都市上空に侵入した不明騎やマイハーク沖の巨大船は事実として存在するものだ。接触してきた相手も礼節を弁えており、事項を事実として置いた場合謝罪や会談の申し出にもおかしな所は存在しないだろう。
現状の周辺状況も、同盟国のクイラはワイバーンこそいないものの岩山で出来た天然の防塁とそこで行動することに特化した獣人種で構成された山岳部隊があり難攻不落、仮想敵国ロウリアはここ最近軍船を大増強しクイラではなく此方に対し圧力を強めている。このような状況でさらに敵国を増やす余力はクワ・トイネ軍には存在しない。
まずは謝罪を受け入れるためにも、その外交官を官邸へ招致することを満場一致で決定した。
Side:公都首相官邸 首相カナタ
首相カナタは緊張していた。目の前にあるのはこれから顔合わせを行う異国の者達の待つ応接室。通常の事例ならば外務局の者が先んじて交渉や会談の打ち合わせを行い、外務局のトップである外務卿が国交締結を取り仕切る。さらにそこから根回し等を行った上で政務元首である首相が相手国の元首と条約宣言を行う。これが決まりだった。
しかし現在はロウリアとは緊張状態、国は準有事体制。首相が一外交官に緊張するのは情け無い話ではあるが、力のある国とは少しでも友好を結んでおきたいのが本音であり、今見えている技術力では此方が完敗している以上、もし大日本帝国なる国がロウリアのような覇権主義国家だった場合は理不尽な要求や不平等条約を回避しなければならないのだ。
カナタが覚悟を決めて入室する。応接室には一足先に日本の外交官を通していたが、彼らはカナタ達が中に入るとすぐに席を立ち、深く一礼した。
「初めまして。大日本帝国外務省所属の田中と申します。本日は急な訪問にも関わらず、国家の代表が対応してくださると聞き及んでおります。光栄の至りです。どうかよろしくお願いします」
日本側の外交官は挨拶をした田中を代表に計3名からなるようで、この一瞬からでも彼らの礼儀正しさ等が伝わってくる。カナタらも挨拶を返し両者が席について会談が始まった。
「本日の進行を勤めます、クワ・トイネ公国外務卿のリンスイと申します。よろしくお願いします。早速ですが大日本帝国の皆様、今回の貴国の来訪目的をお伺いしたい」
リンスイは先ほどの会議でもやや過激な意見を出した側だ。クワ・トイネを愛する心は今回の外交の席にいるなかでも人一倍強い。早く相手の要望を聞き出し、安心してもよいのか不安なのだろうとカナタは思った。
「はい。まず、我が国の哨戒機が貴国の領空を侵犯しましたこと、お詫び申し上げます」
「公に謝罪を受け入れます。その上で、貴国について、誠実な説明をいただきたい」
「はい。『不確かな情報による誤解は双方にとって損失となる』、わが省のモットーとなっていますから。そこで、本日は我が国に関しての資料を作成してきましたので配布いたします」
各人に資料が配られる。紙はとても白くさらっとした手触りで、この紙だけでも産業国家として成立するのではと感じるほどだ。その資料を見た外務卿がふと気付く。
「すみませんが、この文字、我々には読めませぬ………」
「なんと!失礼しました。言葉が通じたので文字も読めるものとばかり………よく考えれば、ここまでの道中にあった看板も我々には読めなかったというのに、配慮が足りませんでした………」
「いえ、口語と文語は違う発展をすることもありますから。言葉が通じるだけでも良かったと思いましょう」
「お気遣いありがとうございます………では、口頭でご説明いたします。私たちはこの国から北東方向約1000km付近に位置する、大日本帝国と言う国から参りました。国土は約38万㎢、人口約1億5千万人の島国です。………単位は通じますでしょうか?」
「無論、だが、あの海域に国などなかったはずですが。確か群島があり、海流が乱れるため一部の島に集落がある程度。その上そのような形の島などなかったはず………」
「細かい原因は解っておりませんが、各地の記録装置や測定器の情報を精査した結果、
クワ・トイネの面々は唖然とする。人口や国土面積に面食らったと言うのもそうだが、まるで
「国ごと転移など………どれほどの魔力がいるのか想像もつかない。失礼ですが、あなた方が御伽噺を元にしたホラ話を吹聴しているようにしか聞こえぬのだ」
リンスイは頭を悩ませながらも発言する。彼の目からも日本の外交官が嘘をついているとは思えない。かといって神話や御伽噺でしか聞かない国家転移と言う事象を受け入れるわけにも行かなかった。
「ええ、我々の大多数も土地の転移現象と言うものは知らず、ある方からの情報がなければそれの精査すら行っていなかったと思います。だと言うのに貴国へは言葉だけで信じて欲しい、というのは筋が通りません。そこで、です。我々日本は貴国の使節団をお迎えする用意があります。直接我が国を見ていただいた方からの報告であれば、貴国も信じることが出来ると思います。ご足労おかけしますが、お願いできますでしょうか?」
リンスイはふたたび頭を悩ませる。たとえ危険な地に赴く外務局の職員で公務であるとなっても、愛する公国の国民の一人であることに代わりはない。得体の知れない相手の元へ派遣し、問題が発生したり、最悪の場合死亡してしまう、というのが受け入れがたかった。そのような、返答しあぐねるリンスイを見かねてカナタが口を開いた。
「私は良いと思います。日本の方々の話しぶりは誠実で丁寧、礼節も弁えておられる。あのような竜や船を持ちながら威嚇することもない。国交を前提に付き合っても問題ないでしょう」
「………日本の方、国交を開設した場合、そなたらは我らになにを望むのだ?それを聞かせて欲しい」
リンスイは絞り出すように言う。彼なりに折り合いをなんとかつけようとしているのだ。それを感じ取ったのか、田中は改めて姿勢を正し発言した。
「第一は食料、次いで資源、この世界の情報を。………我々は食料自給率が良好とは言い切れない。あなた方が自国の国民を大切に思うように、我々も自国民を飢え死にさせるわけにはいかないのです。無論、一国のみで賄えるものではないのは承知の上。他国とも調達交渉は行うつもりです」
カナタは少し感心した。普通ならば食料自給率の情報など国家の根幹に関わる情報だ。そう簡単に他国に話すものではないが、その情報を開示してきた。これは、「それほど信頼をおいている」という証明にもなる。横目でリンスイを確認すると明らかに顔色が良くなっていた。
「貴国は我が国が転移して初の外交、と仰られていましたな。貴国は運が良い。いや、神に祝福を受けているのやも知れませぬな。我が国は緑の女神から祝福を受けている。穀物や野菜が特段手入れせずとも生えてくるのだ。我が国からかなりの部分を応じることが出来るでしょう」
日本の使節団の顔が明るくなる。田中の肩からも力が抜けたのだろう、息苦しそうな顔ではなくなっていた。
オリジナル要素がまだ薄いなぁ………
いつ出せるかな?