ニンジャが あらわれた!  ▶︎しょくむしつもん  むし   作:ケツアゴ

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わずかにですが、ブックマークとか増えてますし、嬉しいな 


義務があるから権利があるのもわかっているが、ちょっと納得はしづらい

 疾風の如き勢いで人を転ばせ、傷付け、そして薬で癒す。結果残るのは切り裂かれた服だけ。

 

 それが三位一体の妖怪である【鎌鼬】。だけれど、私の前で不安そうにしているのは二匹。

 

「それで息子さんが攫われた時の状況を教えて下さい」

 

 椅子の上に乗って視線の高さを調整した鎌鼬の夫婦に対して私は話を聞く体勢になっていた。

 

 ……誘拐、それも妖怪相手だなんて部署違い所の話じゃ無いけれど、此処で探偵さんが横から耳打ちを。

 

 動く人体模型や吸血鬼を逮捕しようとしたのだろう? なら、責任だけではなく権利も求めんとな。

 

 そう言われたら反論出来ない。特に一度逮捕してしまった手前は。

 

「まあ、その子供が戻ったとして……」

 

 ……え? それ、一体どんな意味なのかしら?

 

 気にはなったけれど事情を聞くのが先決。鎌鼬の夫婦は私に向かってゆっくりと話し始めた。

 

 

 

 

「昔は人間を襲っていた私の種族ですが、何世代か前からはそういった事もなくなり、時にレジ袋を切り裂いて落ちた食べ物を……警察の方の前でする話じゃないですね」

 

 ええ、その辺りは後々じっくりと話を聞くわ。警察に相談するのなら罰せられる事も受け入れないとね。

 

 

 その日、夫婦は漸く走れる様になった子供に風と一体化する方法を教えていたそう。

 でも中々風に乗れなくって、どうしたのか匂いを嗅いで確かめようとした瞬間に息子が消えたという。

 

 

「一瞬だけ見えたのは金の腕輪を嵌めた赤黒い手。そして本能から総毛立つ神仏の匂い。間違いありません。犯人は……韋駄天(いだてん)です!」

 

 

 

 韋駄天について少し調べれば直ぐに出て来た。寺院や仏法の守り手である護法善神、天部とも呼ばれる存在。

 お釈迦様の遺骨を盗んだ悪鬼を追い掛けて捕まえたともされる高速の足の持ち主。

 

「また足の速い相手なのね……」

 

「百キロババアと天部を一緒にするな、罰当たりめ」

 

 下の子供の世話もあるからと帰って行った夫婦を見送った私は捜査教育を頼もうと探偵さんの方を見るけれど、何故かやる気がなさそうにしている。

 

 椅子の背もたれに体を預けて力を抜いて天井を見つつ、私の発言に視線だけ向けて咎めるだけで、何か知っている容姿なのに教えてくれそうもない。

 

「それで貴様は調べる気か? 言っておくが連中に人の道理は通じんぞ?」

 

「そりゃ神仏に人の法を向けても効果は薄いでしょう。でも、貴女だって見た筈よ。子供を心配する親の姿を。あれを見て知らない振りは出来ないわ」

 

「分かっておらんな。それよりも私はこっちの方が……七文字で複数の競技のレースって何だ?」

 

 クロスワードパズルやってないで、見せようとした新聞を渡しなさい! トライアスロンだと教えながら引ったくった新聞には轢き逃げや引ったくり犯が連続して襲われるというニュース。

 

韋駄天 車は横からの力で横転し、それ以外で逃げる犯人は転ばされた上で足を()()()()()()()()

 アスファルトに足跡が残る勢いで踏み付け天部犯人の足をグチャグチャにするみたいな事件なのに誰も犯人を目撃していない。

 

 透明人間とか次元がズレた場所の存在だってネットでは騒がれているけれど、もしかしたら犯人は……十中八九は韋駄天だろう」

 

「そう。探偵さん、韋駄天さんとの連絡は着くのかしら?」

 

「韋駄天の内の何人かならな。私はオオカムヅミノミコトの神徒で神教関連、韋駄天は仏教だ。今回の襲撃事件、上の者に相談して即解決とやらは期待するなよ」

 

 未だ何処か面倒そうな様子のが彼女は一瞬だけ夫婦が居た椅子の辺りに視線を向けると鼻を鳴らして店から出て行く。

 

 あんなにやる気が無さそうだなんて、探偵さんは妖怪には興味が無いのかしら?

 

 

「そうですね。彼女の嗜好と云うよりも……いえ、今は止しましょう」

 

 思円さんも何か言い難い事がある様子で言葉を詰まらせる。好き嫌いじゃない? だったら何故……」

 

 私が絵本で読んだ桃姫は困っている相手を見捨てず、時に鬼すら助けたって逸話も残っている。

 それが相手によって彼処迄やる気に差を見せるだなんて本当に何があるの?

 

 

 そんな風に思ったら扉が開いて探偵さんが顔を覗かせた。

 

「おい、言い忘れていた。いちおう足跡から靴のサイズを測っておけ。必要となるからな」

 

 靴のサイズ? そんなの一体何に使うのかしら?

 

 

 

 

「それにしても凄いわね……」

 

 アスファルトの刻まれた足跡。犯人の足を文字通りに粉砕する踏み付け。

 足の肉は潰れて骨は粉々になって突き刺さっていたらしい。

 

 車を横転させられた犯人も悲惨な状況で、死んでいないのが不思議……いえ、自力では不可能だった筈の脱出をしていなければ車の炎上によって死んでいた。

 

 なのに誰かが引っ張り出して助け、結果障害を残しながらも生きている。

 それは韋駄天らしい相手には犯人達を殺す気だけは無いって事よね?

 

 

「まあ、良いわ。今の私がすべきなのは傷害犯を捕まえる事。取り調べによって動機はちゃんと聞き出すわ」

 

 前回の都市伝説の化け物なんて、比較にならない相手。神仏、それを相手にする事に恐怖がないわけでもないけれど、それでも私は警察官。

 誰かが困っているならば、動かなければならない。

 

 さて、探偵さんも、良い情報を手に入れたら助かるのだけれど。

 

 

 

 

「韋駄天一族の知り合いのところで聞いた話だが、二名程職場を放棄して行方をくらませた連中がいるらしい。矢彦(やひこ)矢の介(やのすけ)、それがこの2人の名前だ」

 

 出されたのは写真ではなく人相書き。写真じゃないのね、と感想を口にすれば普段から忙しく走り回ってるから写真を撮る余裕なんてなく、似顔絵名人に書かせたらしい。

 

 ずいぶんと仕事熱心な感じなのね、此処二人。

 

 片方は髪を背中まで伸ばした少々目つきの悪い男で、もう片方はモヒカンにした少し陰気そうな目つきの男。

 どちらも20代前半に見える容姿で、服装は、腰のあたりに布を巻いた感じなだけ。

 

「それにしても、普段からお仕事で走り回っているような真面目な神仏が、どうして妖怪の誘拐や犯罪者への過剰な暴力を?」

 

「さてな。どうせ警察には任せてられない。俺たちがさっさと犯人を捕まえてやる。そんなふうに思ってるんじゃないか」

 

「……そう。そりゃ天部からすれば私たちみたいな警察官がちゃんと働いてないみたいに見えるんでしょうね。でも、犯罪者がちゃんとした方で裁かれるべきであり、あんな両親から子供を引き離すべきではないわ」

 

「……」

 

「それで探偵さん。そんな真面目な人を呼び寄せる方法何かあるのかしら?」

 

 

 

 

 

 

 

「最新式のスニーカーだな。足のサイズ調べただろう? なら、さっさと用意しろ」

 

 

 うん? 靴で寺院の守り神を誘い出すの? えぇ……。




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