ニンジャが あらわれた!  ▶︎しょくむしつもん  むし   作:ケツアゴ

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開始日に3話書きました


これは大物ですか? いいえ、ポンコツです

 この子、本当に大丈夫なのかしら? 目的の人物と間違えた金星地下帝国の皇帝だという男に平謝りした後で妖怪探偵を名乗る少女を観察するも、どう見てもコスプレしているだけの高校生だ。

 

 黒髪を後ろで束ねた顔が整っていて、少し背が低く童顔なので子供っぽさが抜けきれず、先程までのやり取りを目にすれば尚更疑いは強まるばかり。

 

「それで何をしに……いや、良い。高速で動く老婆の都市伝説についてだな」

 

「え?」

 

 言い当てられた、それだけならショーや霊能詐欺が予め情報を得て行う手口だからだ。

 声が出たのは別の理由。再びパフェを堪能していた少女の姿が椅子から消え、青に背中を向ける形で立っていた。

 

 指先で自分の制帽をクルクルと回して弄ぶ姿を見れば普通の高校生だなんて呑気な評価は下せない。

 

 この少女は間違い無く超常の世界の住人であると青は判断した。

 

「良かろう。その依頼受けてやる。生憎ここ最近金欠でな。其処の小僧が偶に提供する試食では到底足らぬのだ」

 

 あの店長さんが小僧って、この子一体何歳なの!?

 

 年齢を問い質す言葉が喉の奥まで出掛けるも必死に飲み込み、青は探偵の手から制帽を取り返すと握手を求めるように手を差し出したのだが、彼女はそれを無視して横を通り抜けると椅子に座り、傲岸不遜な態度で全ての指を立てた手を前に突き出した。

 

 

「五百万円。依頼料としてそれだけ貰うとして、前金として二百万円程いただこう」

 

「五百っ!?」

 

 冗談じゃない。警察の予算は勿論の事、そんな大金は青には出せない。貿易商として各地を飛び回っている父に頼れば払える可能性はあるが、流石にそんな大金を借りるなら親子でも説明が必要だ。

 

 高速で走る老婆の妖怪を捕まえるので協力者に払う大金を貸して下さい、なんて言えば頭がおかしくなったと心配して飛んで来かねない。

 

 それは屈辱で、だからと父を騙して借りるには警官と娘の二つのプライドが許さなかった。

 

「払えないなら話はそれ迄だ。おい、小僧。会計だ」

 

 頬杖をついていた探偵は鼻を慣らすと古めかしい財布から小銭ばかりを取り出してカウンターに置く。

 

「まあ、その内に祓い屋が雇われるかするだろう。お前は普通にパトロールでもしているのだな、小むす……」

 

「足りないよ。消費税二百円分」

 

「なぬっ!?」

 

 見下した態度を青に向けていたのが一転、料金の不足を告げられて財布をひっくり返すも一円も出て来ず、慌てた様子で横の雪だるまに駆け寄った。

 

 

「おい、ルル! 二百円貸してくれ!」

 

「僕の直感が告げているのさ。此処で貸さないと面白い事になるってね!」

 

「ポコ!」

 

 金の無心をするも断られた探偵が向かったのは十歳程の少年。この時点で情けないが、財布を出そうとした彼の手を父親であろう皇帝がそっと押さえて制止すると手を繋いでカウンターへと向かって行く。

 

 

「今日も美味かった。私と息子の分の会計だ」

 

「有難うございました」

 

「明日も来る」

 

 そう言って皇帝はポコと共に光に包まれて消えて行き、探偵は慌てて店長の方へと向かって行った。

 

「こ、小僧。いや、思円(しえん)! 私達は貴様が幼い頃からの仲……」

 

「それはそれ。これはこれ」

 

「店長さーん。僕もそろそろ帰るね。はい、お金。お釣りは要らないからお店の皆で美味しい物でも食べなよ」

 

 ルルは何処からか財布を取り出すと五千円札を置いてスキップしながら出口に向かい、開ける前に振り返った。

 

 

 

「お釣りから探偵さんの分は出しちゃ駄目だからねー」

 

「勿論。払えない場合は一週間出禁。ああ、何処かの誰かさんなら依頼料全額を二百円にするなら即座に払ってくれるかもね」

 

「貴様らぁああああああっ!!」

 

 地団駄を踏んで叫ぶ姿は先程までの正体不明の大物っぽさは感じられない。

 木刀を倒し続けて初登場シーンを台無しにした時点でそれは幻にも思えるが。

 

「ふふふ、良いわよ。それで働いてくれるのなら払ってあげる。前金二百万……いえ、全額前払い二百円で良いのよね?」

 

「覚えていろよ、小娘。貴様絶対地獄の落ちるからな! 後悔するが良い!」

 

「はいはい。死んだ後で悔やむわよ。それでお願いね、妖怪探偵さん」

 

 再び差し出された握手の手を探偵は鬱陶しそうに払い除ける。

 

 これが青と探偵の出会いであり、日常と平穏が失われて行く切っ掛けでもあった。

 

 

 

「それで詳しい資料を見せて説明したいのだけれども……」

 

 青は探偵を連れて所属する端宿署まで連れて行ったのは良いものの、資料を持ち出すのは勿論の事、 まさか部外者のコスプレ少女を連れ込んで捜査資料を見せる訳にはいかないだろう。

 

 そんな事、自分の部下がすれば雷を落とす所だ。直属の上司は普段は呑気に茶を啜っているが、そんな事になれば小言で済むとも思えない。

 

「見たいテレビがあるからさっさと行くぞ」

 

「え? ちょっと待ちなさい!?」

 

 悩む青を置いて探偵は署の中へと向かうと一般人は立ち入り禁止なエリアまでズカズカ問い詰めれば足を踏み入れる。

 慌てて止めようと手を伸ばす青の前に課長が現れた。

 

「西宮、今日は上がったんじゃないのか?」

 

「あのですね、課長。その子ですが……」

 

「その子? 一体何を言っているんだ?」

 

 へ? と青が固まる中、探偵はニヤニヤしながら振り返った。

 

「特異な眼を持つか縁が結ばれない限りは私を認識出来ん。私の意思があれば違って来るがな」

 

 つまり自分は誰も居ない空間に手を伸ばして追い掛け、上司に怪訝な目で見られているのだ。

 

 この探偵、安く使われる事への腹いせをする気ね!? と察するも人前で怒鳴る訳にもいかず、仕方無く進むしかない青だった。

 

 本来は管轄外、下手に有能なせいで他の部署にも助っ人人員として派遣されることの多い彼女だが所属しているのは地域課。高速道路での連続事故など、資料の閲覧も早々気軽にできるものではないが、少し気になるからと交通課の知り合いに頼み込んで資料を見せてもらっていた。

 

 普段からいろいろ使われている甲斐があったわね。彼女は資料を探偵に渡し、真剣な顔で読んでる姿を眺めながら思う。

 

 ここ数日で、私の人生変わりすぎじゃない? と

 

 自分が忍者の末裔だったのを思い出したり、妖怪探偵を名乗る少女と、都市伝説の存在の捜査をしたりだ。

 

 

 

「決定だな。お前が予測していた存在でまず間違いないだろう。後はこいつらを呼び寄せて狩れば良いが……特別速い車を持っているか? まぁ若手の貴様ではそれほど期待は……」

 

「ちゃんと持っているわよ。時速300キロ以上で走れるとっておきのをね」

 

 挑発的な言葉に挑発的な笑みで返す。

 

 

 まあ、正確には自分のではなく父親の所有物ではあるのだが、自分も保険の適用内なので別に構わないだろう。今はこの生意気な探偵に意趣返しをしたことの方が大切だ。

 

 




まだまだ反応が薄いので、もう少し頑張りたいと思います
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