ニンジャが あらわれた! ▶︎しょくむしつもん むし 作:ケツアゴ
それでまずどうやって侵入しようかしら?
私が最初に悩んだのは敷地内に入る方法。当然ながら 門は閉じられ、よじ登る所を探すしかないと思った時、田辺さんの腹から大腸が射出された。
そのまま敷地内の木に絡み付くと何とか引っ張って外れないことを確かめ、そのままロープとして登ろうとして私の方を向いた。
「使います?」
「遠慮します」
テラテラと光って本物の内臓みたいの質感の大腸。アレを掴んで塀をよじ登れと? 出来る訳無いでしょ!?
「おいおい、お姉さんは我儘だなあ。そうでもしないと塀を越えられないんじゃないのかい?」
「そうだけれど……あれ? ルルさん、いつの間に塀の上に?」
恋がしたのは、少し上の方。ちょっと目を離した隙に音も無く塀の上に立っているルルさん。
あれ? 忍者? この人NINJA?
「普通にふわっと飛び越えて」
「それって私を抱えても可能かしら?」
「100人乗っても……百貫デブでも大丈夫!」
本当かどうかわからないけど、細い腕で力こぶを作る動作をするルルさんにお願いする事にした。
いや、田辺さんは悪い人……悪い人体模型とは思えないけれど、流石に大腸でよじ登るのは無理!
「それで頼んでおいて何だけれど、言い直す必要あった?」
「え? 有る様に聞こえた? 新鮮な発想だね、お姉さん」
思円さん、全部終わったら問い正させて下さい。何でこんなのを助っ人に寄越したんですかって。
「それでテケテケについてだけれど、どうも他の七不思議に遭遇してからじゃないと見付からないって噂だよ。タンポポさんが調べてくれた。はい、これが校内の地図」
確かに少しは協力してくれるみたいに言っていたけれど、喫茶店のお仕事の合間に此処迄調べてくれていたのね。
ルルさんから渡された地図には何処にどんな七不思議が待っているかが書かれている。
更には警報は切っておきましたって事まで端っこに。
「これは謝罪とお礼が必要ね。仕事の合間に此処までしてくれた友人に高いお酒でも奢ってあげなくっちゃ」
「いや、調査に時間が掛かるって言って臨時の有給貰ってたよ? 直ぐに調べ終わって、本来は未だ仕事中なのにお酒が飲めるー! ってなってたし」
「……そう」
助けてはくれたけれど、素直に感謝するのが惜しい気がして来たわね……。
気を取り直して七不思議を確認して行く。
① 二宮金次郎像が動いて図書室で本を読む
② 一階のトイレから時々女の子の怒声と誰かの悲鳴が聞こえる
③ 音楽室で肖像画から抜け出したモーツァルトがピアノを弾いている
④ 深夜に一階の踊り場の鏡を覗くと鏡に映った自分に引き摺り込まれる
⑤ 体育館で自分の頭でバスケをしている男子が居て、見つかると頭を引っこ抜かれてボール代わりにされる
⑥ 深夜の保健室には口裂け女が居る
⑦ 全てに関わった後で渡り廊下に行くとテケテケがいる。もし外からテケテケを見てしまうと三日後に会いに来る。
「取り敢えず二宮金次郎像まで来たけれど……」
見事に台座を残して不在。噂通りなら図書室に行ってるんでしょうけれど、待ってたら戻って来るのかしら?
「無いねー。台座だけ壊しておいたらどんな反応するのかな?」
「止めなさい。本当にやったら逮捕するわよ?」
少なくともこの小学校に伝わる七不思議では二宮金次郎像は動くだけで、追い掛けて来るとかの噂は無い事だし待ってた方が楽ね。
体力的には兎も角、精神的に疲れ果てそうだから図書室迄探しに行くのは嫌だし。
「あっ、戻って来ましたよ。おーい!」
お化け同士で繋がりでもあったのか田辺さんが手を振れば二宮金次郎像も手を振り返す。
「え? 何しに来たかって? この婦警さん、運が悪い事に見えちゃう人でテケテケを見ちゃったらしいから護衛連れて七不思議めぐりって事に。不法侵入? 緊急事態だし」
不法侵入……反論出来やしない。分かっていながら私は来た。兎に角これで一つ目は解決として……。
「二宮さん。……二宮金次郎像さん? もし動いている所を誰かに見られたら肝試しに大勢が押し掛ける可能性があるので、重々注意して下さい」
一応警察官としては噂を聞いて子供が入り込む可能性は低くしておかないと。
二宮金次郎像さん……そっちの方が正しいと身振りで伝えて来た彼は私のお願いに親指を立てて僅かに笑顔を作って応えてくれた。
七不思議が噂になっている以上、動いた動画でも出回れば絶対に忍び込むのがいるでしょうからね。
「お姉さんも実際に七不思議目当てで忍び込んでいる訳だしね」
「ルルさん、心を読むのは止めて貰えるかしら? プライバシーの侵害よ?」
そりゃ忍者にだって読心術の使い手が居るけれど、この人は何で使えるのかしら? 身軽だけれど多分忍者じゃないわよね?
もう動いて喋る人体模型に比べたら二宮金次郎像が動いても何とも思わないし。
「確かタンポポさんのメモではこの辺の上の小窓の鍵が緩くって揺らせば開くそうだけれど……」
壁に張り付いたら楽勝ですよ! との事だ。出来るか!!
ポンコツ忍者め! 忍者の視点でアドバイスされても困るんだけれど!?
「任せて」
田辺さんはそう言って、自分の腕をもぎ取った。そのまま手を地面に置けば、指が長虫みたいに動いて排水管を掴み例の絵と飛び移る。何度かガタガタと動かせていると鍵が開いたらしく、手が中に落ちてから普通に窓の鍵を開けてくれた。
「成功!」
得意そうに、と評価するには、あまりにも粘着質なニチャアな笑顔の田辺さん。もともと生物じゃないから大丈夫とばかりに、腕をはめ込むと普通に動いていた。
人体模型が動いて喋っているだけでも不思議なんだから、今更腕をもぎ取って動かして普通にはめ込んでってみてもあまり驚けないわね。
少しずつ日常から外れた存在に慣れてきてしまった自分に気づき慌てる心が芽生えるも仕方なしに私は先に進むことにした。
「次はトイレ……今の声はっ!」
確かに、今悲鳴が聞こえた。本当に七不思議の通りの太い男の悲鳴が聞こえ、女の子の怒声まで混じってる。
慌ててトイレの方向へ向かえば、そこでは、奥の個室から、巨大な太く、長い腕を無理矢理引っ張り出して、拳でガンガン叩いている小さな女の子の姿があった。
「まったくもー! この私の目が黒いウチはので子供たちのトイレで好き勝手できるなんて思わないことね」
一瞬花子さんかと思ったけれど、多分違う。高貴そうな着物に幼いのになぜか感じてしまう威厳。
そうしなければ失礼に当たると思った私は腰を落として視線を合わせることにした。
「夜分遅く失礼いたします。詳しいお話をお聞きしてもよろしいでしょうか?」