魔改造スパロボ〜混沌の世界へ〜   作:YMDリターン

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第一話 「空(から)の旅人の日常」

窓が無い奇妙な部屋で─ある人物が静かに寝息を立てていた─

 

─────

 

───

 

 

 

 

「んー……んあ…」

 

デジタル時計のアラームが鳴る─

 

ppppp…

 

「音…聞こえる…」

 

ppppp…ppppp…

 

部屋の投影モニターが移動し外の景色を眼の前に映し出す─

 

「あと五分…寝かしてや…」

 

ppppp…ppppp…

 

カチッ…

 

静かになった部屋で俺はゆっくり目を覚ました

 

「ふあ…もう朝か…」

 

時計を見たら…

 

「はー…10時やん、寝過ぎた…」

 

布団から出て洗面台で顔を洗いながら予定を思い出す─

 

俺今日何すんねやったかな…あ、今日は掃除の日や…床拭きと細かいとこの埃綺麗にせんと…

 

「なんかあるか〜?」

 

俺は冷蔵庫を漁る…

 

冷蔵庫を開けるとひんやりした空気が頬を撫でる─

 

「まだ開けてない素麺と…あっ、にんじんしりしりあるやん、食べよっと…」

 

素麺を茹でながらにんじんしりしりを小鉢に盛っていたら足にふわりとしたくすぐったいものを感じた

 

「にゃぱ〜」

 

下からつぶらな瞳をした猫…もといポケモンがじっと見つめてきた─

 

「おはよ、ニャスパー」

 

「にゃぱっ!」

 

俺はニャスパーに挨拶をして小脇に抱えた…それにしてもかわええなぁ…俺、動物やら苦手やったけどニャスパーだけは別やわぁ…

 

「にゃあ?」

 

ニャスパーは不思議そうな目でこてん、と首を傾けた……やっぱ癒される…

 

「ニャスパー♪」

 

「にゃぱっ♪」

 

ニャスパーは自然に膝に乗り、小さな手で俺を目一杯抱きしめる─

 

「腹減ったやろ、すぐ作ったるからね〜」

 

俺がそう言うと、ニャスパーは嬉しそうに頷いて直ぐに俺の席の近くのスペース─いつもの定位置についた

 

素麺を盛り付けて大好きな薬味も小皿に乗せて…

 

「さてさてっと…よーやく出来たよ〜っと…」

 

俺は盆の素麺と小鉢、空いた手にニャスパーの皿を持って机に向かった

 

「俺は素麺と小鉢…ニャスパー、今日はポケモンフードとお野菜やで〜栄養も取っとかんとな」

 

俺は席についてニャスパーと一緒に手を合わせて…

 

「いただきま~す」「にゃにゃにゃ〜」

 

俺はTVのチャンネルを回しながら、頭の中で掃除の予定を立てる

 

素麺をちゅるちゅる食べながら─

 

「素麺うまー」「にゃー」

 

ニャスパーをチラリと見る

 

「ニャスパー…君はちゃうやろ?」

 

ニャスパーはイタズラっぽく舌をペロッと出して楽しそうにしてた

 

「まったく…イタズラっ子なんやから…」

 

身体をコショコショしてやると、ニャスパーも楽しげに笑った─

 

「こんな日が続いてくれれば─俺は十分や」

 

そう言って、食べながら次の予定に頭を切り替える─

 

「まずは天井周りの埃拭いて─棚の裏の埃も綺麗にして…床拭いて終わりやな…昼にはスパッとやったろかな─」

 

あれこれ考えていたらすっかり食べ終わり、ニャスパーも皿をペロペロ舐めて満足そうにしていた

 

「ふにゃお…」

 

「ふふふ…美味しかった?」

 

俺がニャスパーの頭を撫でながら問うと、嬉しそうに頭を手に擦り合わせてきた…

 

「にゃぱ〜にゃふにゃふ」

 

「あはは笑、変な声〜♪」

 

「にゃー!にゃにゃにゃにゃ!」

 

「こらこら、猫パンチやめてや〜」

 

────

 

俺は立ち上がり、着替えた後倉庫から掃除用具とニャスパーの小屋のクッションの換えも持っていく

 

脚立で天井や照明の埃を掃除してゆく─と、少しばかり汚れの多さが目についた

 

「うわ、ちょっとサボり過ぎたかー」

 

…はー…これはちょっとあきまへんわぁ…母さんに弄られはるわ…

 

 

と、くだらない事を考えてたらふと視線が─

 

「じー…」

 

「ニャスパー…」

 

「じー…」

 

凄い目線…どないしょ…

 

「遊ぶのは後!」

 

「うー…にゃあ!」

 

ニャスパーが俺の手を引いて鳴きながらチョンチョンと棚の裏を指す─何かと思って見てみると─

 

「あっ─」

 

そこに落ちていたのは─昔書いた…無くしたと思ってた─ニャスパーと俺の為のレシピ本だった

 

「ここにあったんか…」

 

すっかり埃まみれやけど…中身は普通に読めるな、ちょっと埃払って…っと

 

表紙には昔書いた『ニャスパーといっしょ』と我ながら綺麗な字で書かれてあった

 

かぼちゃとにんじんのキッシュ─

鶏ささみとブロッコリーのほかほかサラダ─

 

「懐かしいなー…沢山作ったなぁ…」

 

「にゃあ〜♪」

 

ニャスパーと膝の上で微笑みを交わし、一緒にレシピ本を一枚一枚めくるたび、少し黄ばんだページから懐かしい匂いがふわりと漂う

 

「……そういや、最初は全然料理なんて出来へんかったなぁ」

 

思わず苦笑いが漏れて─思い出が溢れてくるなぁ…

 

あの頃は包丁を持つのもぎこちなく、野菜を切れば大きさはばらばら。味付けも適当で、自分で食べても首を傾げるような出来だった

 

そんな料理でも、ニャスパーだけは文句ひとつ言わなかった

 

「にゃぱ〜」

 

出来上がった料理を机へ運ぶと、小さな身体を弾ませながら定位置へ駆けてきて、目を輝かせて待っている

 

「まだ熱いで?」

 

そう言っても待ちきれない様子で前足をちょこんと机に乗せる姿がおかしくて、何度笑ったことだろう

 

ある日、張り切って作った野菜スープを盛大に焦がしてしまったことがある

 

「あー……やってもうたぁ」

 

落ち込む俺の足元へ、ニャスパーは何も言わずに近寄ってきた

 

「にゃ」

 

短く鳴くと、そっと俺の足へ身体を寄せてくる

 

「慰めてくれとるん?」

 

頭を撫でると、嬉しそうに目を細めて喉を鳴らした

 

その姿を見ていたら、不思議と「また作ればええか」と思えた

 

失敗したら次はもっと美味しく作って繰り返して、このレシピ本は少しずつ分厚くなっていった

 

ページの端には「ニャスパー完食!」「少し味が濃かった」「次はにんじん多め」なんて走り書きも残っている。

 

「……君のおかげやね」

 

そう呟くと、膝の上にいたニャスパーが顔を見上げた。

 

「にゃぱ?」

 

「俺が料理好きになれたんは、君がおったからや」

 

ニャスパーは意味が分かっているのかいないのか─小さく鳴いて胸へ飛び込んできた

 

その温もりを抱きしめながら、俺はレシピ本をそっと閉じる

 

これからも、この一冊には新しい思い出が増えていくって─そう思うと、自然と頬が緩んだ─

 

「ニャスパー、晩ごはんは久しぶりにレシピ本見ながら作ろな?手伝ってくれる?」

 

「にゃ♪」

 

嬉しそうに返事をすると、ニャスパーはぴょこんと肩へ飛び乗った

 

「よっ、と……相変わらず身軽やなぁ」

 

「にゃぱ〜」

 

頬をすり寄せてくる柔らかな感触に思わず笑みが零れる

 

「ほな、掃除の続きや。今日はピカピカにしたるで」

 

俺はレシピ本を大切に棚へ戻し、雑巾を手に取った

 

窓のない部屋─

けれど壁一面に映る投影モニターには、青空がどこまでも広がっている─

 

その景色を眺めながら床を拭いていると、ニャスパーはサイコキネシスで軽い箱や小物をふわりと浮かせてくれる

 

「助かるわぁ」

 

「にゃ!」

 

「ほんま、君がおると掃除がはかどるな」

 

ニャスパーは得意げに胸を張る

 

「終わったらおやつやな」

 

「にゃぱっ!」

 

元気よく返事をした、その瞬間だった─

 

ピシッ……

 

部屋に軋みが走り─俺の耳に甲高い引っ掻くような音が鳴り響いた─

 

不穏な気配─

空間の振動、『外』が罅割れる─それは、ある時の─多元宇宙の異変だが、その時の俺は知る由も無かった─

 

ニャスパーは既に退避─俺は『システム』を起動させ、急いで逃れようとするが…

 

「ク…クッソ!どないなって…!コントロールが…利かん!」

 

俺は部屋の─『コイツ』を動かす為のコンソールを虚空から呼び出す─

 

─白亜の鉄巨人─俺の相棒が動き出す、だけど…

 

「機体の調子はいい…不調も無い…!やけどおかしい…『引きずられる』…!機体が…丸ごとか…!」

 

防御機構を全開にしてんのに…!どうにもでけへんの…!?

俺が内心で愚痴っても状況が変わらない事を理解していても─否、そんな事はいい─

 

「『ニャスパーだけは守る』─『俺も生きる』─」

 

歯を食いしばる─

 

「それだけや!」

 

必死に抵抗するけど─!ちょっと無理そうやな…!

それなら─

 

「機体と内部防護にあらかた全部回す!…堪えてみろ…お前は俺と母さんの手が加わっとる!誰が造ったか─関係あらへん!」

 

部屋の照明は落ち─コイツと旅をして初めての、機体防護機能を全開に───!!!

 

罅割れは機体を呑み込み

 

漆黒の渦─或いは空間の捻じれか─それすら分からぬ流れに乗り…

 

「ニャスパー!死んだらあきまへん!俺も…俺も…!」

 

─────

───

言葉を伝えようとして

 

ふと─モニターに光が視えた

 

「はっ─」

 

機体─いいや、『俺達』は─見知ったような─

 

青空がモニターに映る

 

知らないような─

 

未確認座標─機体音声が耳に届く

 

そんな世界─『かもしれない』ところへ

 

「にゃー!」

 

「ニャスパー!無事!?」

 

「にゃぱ!にゃぁぁぁ!」

 

「…っ!良かった…」

 

来てしまったかもしれない─

 

「ふぅ…ニャスパー…無事か─」

 

そう言おうとして…警報が鳴った─敵襲だ…!

 

「ちっ!邪魔してくれるやない…!」

 

敵影が見えた─戦闘機…?違う…あれはただの戦闘機やない!

 

しかも…他の連中までぞろぞろと引き連れてやって来た…!

 

戦闘機は人型へ変形して─他の連中もこちらに攻撃を加えてきた─

 

「未確認機確認!」

 

「各機へ通達!目標を撃墜しろ!─我らウィンダミアの為に!」

 

別の敵が叫ぶ─

 

ヘビーメタルが─

「ギワザ様の為に!」

 

ブルーコスモスが─

「青き清浄なる世界の為に!」

 

オーラバトラーが─

「オーラバトラーの力!見せてやる!」

 

俺は攻撃を機体のバリアでいなしながら─つい愚痴を吐いてしまう

 

「まったく─いけずな人やわ…!」

 

「そないに俺が気に食わんなら!」

 

巨人が動き出し─大地を踏み締める─

 

色の無い水晶に白い光が灯る─

 

 

俺は部屋のコンソールに手を置き─気合を入れる

 

「行くぞ─ゼオライマー!」

 

巨人が─相棒が飛ぶ─

─────

───

 

ここに─物語の始まりが動き出した─




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