悪の組織のライバルキャラ転生〜「お前を倒すのは俺だ」と言いたいだけの男、鬱展開をぶっ壊して愛される〜   作:む〜べ〜

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第20話 悪の組織の幹部たちあるある

 突然だが、悪の組織あるあるといえば何か。

 

 ミスしたら容赦なく首を切られる(物理)ブラックなところ?

 

 崖から落ちた主人公のトドメを刺さずに見逃した挙句死んだと嘘の報告をする報連相の不徹底?

 

 明らかに組織内の連携が成り立っておらず、個人の戦闘力による属人化が極まった不健全な経営体制?

 

 どれも正しいが、どれも違う。

 悪の組織にありがちで、ロマン溢れるイベント。

 

 そう、幹部同士の会議だ。

 

「ケッ。招集の命があったから来てみりゃ、いつもと変わンねェしみったれた顔が揃い踏みかよ。一人くらい死んでりゃ面白かったのによォ」

 

「あらぁ、しみったれた顔なんて酷いこと言ってくれちゃうわね。このお化粧に何時間かけてると思ってるのかしら」

 

「言わせておけばいいんじゃなーい? どうせ最下位の雑魚雑魚わんちゃんの遠吠えなんだしさ」

 

「ンだとテメェ!!? ぶっ殺すぞ!!!!」

 

「キャハハハハハ!! なに、本当のこと言われちゃって怒った? ねぇ怒ったぁ〜???」

 

「殺すッッッ!!!!!!」

 

「ほう、なんだ喧嘩か? いいじゃねぇか、オレも混ぜろよ。最近温ぃ闘いばっかで退屈してたところだ。楽しませてくれ!」

 

「貴様ら、じゃれあいもそこまでにしておけ。ここは決闘場ではなく会議の間だ。喧嘩がしたいなら他所でやれ」

 

「オデモ、ケンカ、ヨクナイトオモウ……」

 

 いかにもなオラオラ系チンピラキャラを皮切りに、大人な雰囲気を醸し出すオカマキャラ、他人を小馬鹿にした態度のサイコロリキャラ、筋骨隆々な戦闘狂系キャラ、それらを嗜めるクールな女教官キャラ、そして追従する「オデ、オマエ、コロス」系キャラ……。

 

 どこかで見たことのあるような属性を一纏めにしたかのような人種の宝石箱だった。

 

「ハ、ンなの知ったことかよ。大体俺様ァ今の順位にも納得がいってねェンだ。丁度いいから全員纏めて今すぐこの場で、」

 

「──アスモダイオスの言う通りだ……獅子王様も直にお越しなられる……戯れも程々にしておけ……」

 

 そして、見慣れた男が口を開いた。

 白髪混じりの男、スイゲツは荒れ放題だった場の空気を一瞬で萎縮させる。

 重苦しいまでの剣気に、その場の誰もが息を呑み、否応なしに緊張せざるを得なかった。

 

 しかし、そんな暴風のような殺気の中で自然体を保てる人間もいた。

 

「そういうならオマエがオレと戦ってくれよ、スイゲツ。強ぇ奴と闘れるっていうから手を貸してやってるのに、これじゃ契約不履行もいいとこだ」

 

「…………」

 

 戦闘狂キャラと、今の会話に一切反応せず沈黙を保っていた謎の仮面キャラだ。

 彼らは第三位以上の強者であり、幹部の中でも別格の強者として扱われていた。

 

「考えておこう。それより……お越しなられたぞ」

 

 スイゲツが『会議の間』の入口の方へ視線を動かす。すると示し合わせたかのように、響く足音が聞こえてきた。

 

「お早う『十剣(シュヴェルト)』諸君。いい雰囲気で何よりだ」

 

 純白の長髪をなびかせながら、魔人は側近であるミラを引き連れて、緩慢な足取りで唯一備え付けられた玉座に向かう。

 そして当然のように腰を下ろすと、

 

「さて、本題に入る前に……先ずは茶でも淹れようか」

 

 獅子王は側近のミラに命じて各員に茶を渡していく。創作物だと都合よく間はカットされるからいいが、現実だとこうお茶を配ってる間の空気がひたすらにシュールだった。

 

 そして全員に行き届いたところで、ようやく会議の本題が切り出された。

 

「今日、君たちをここに呼んだのは他でもない。これまで空席だった第十位(ツェーン)第九位(ノイン)の座が漸く埋まったからだ。新たな同僚を十剣(シュヴェルト)全員で温かく迎え入れてもらいたい」

 

「あら、それは喜ばしいことねぇ」

 

「オデ、カンゲイ、スル」

 

「ハッ、何かと思えば俺様以下の雑魚が増えたってだけかよ」

 

「そんなこといって、自分より下の人間が現れて喜んでるんでしょ? 雑魚ちゃんだもんねー」

 

「死ね」

 

「そいつァいい! 強けりゃもっと最高だ!」

 

 戦闘狂の男は豪快に笑い声を上げたあと、

 

「で──さっきから隠れてる奴らはいつになったら顔を見せやがるんだ?」

 

 猛獣の如き鋭い視線を、それぞれ柱の陰とスイゲツの『影』に向けた。

 

「なにィ……?」

 

「あら、柱の陰の方は気づいていたけれど……オジサマの影にもいたのね」

 

「ああ、気配を隠すのが上手ぇ。結構楽しめそうな奴だな」

 

「ねぇねぇ、いつまでも隠れてないで出てきたらー? じゃないと殺しちゃうよー?」

 

 姿を見せるよう脅迫、もとい要求される。

 頃合いだろう。俺は指を鳴らしてセツカにも合図を送ると、『影潜』を解除してスイゲツの影から外界へと浮上した。

 

 そう、今まで俺はずっとスイゲツの影に隠れて様子を伺っていたのだ。

 何の為か。そんなのは決まってる。

 ──全ては理想のライバルキャラとして、かっこいいラゴウになりきるための演出だ。

 

「流石は『十剣第三位(シュヴェルト・ドライ)』、分かりやすい餌に惑わされず、この俺の気配を見抜くとはな」

 

 ゲームで幾度となく見た顔ぶれに、思わず興奮してしまう。

 好きな有名人を前にして生〇〇だと騒ぐファンの心理がイマイチよく分からなかったが、今なら分かる。

 

 生『十剣(シュヴェルト)』だ……!

 ゲームで見た悪の組織の幹部一同が目の前にいる……! しかも俺はその一員……!

 

「あぁ? んだよガキンチョじゃねぇか。しかもヒョロっちい奴だな、ちゃんと肉食ってんのか?」

 

「ゼンゼがいるのにそれ言っちゃうー? ゼンゼより全然歳上じゃん」

 

「グブッ、ブフフッ」

 

「うわっビックリした」

 

「こらクンバカルナ、カイナちゃんが驚いてるじゃない。今のは別に意図したギャグじゃないわよ」

 

 ……ああ、『ゼンゼより全然』ということか。

 

「……想像以上に緩い雰囲気。貴方たち、本当に『十剣(シュヴェルト)』? 仲良しこよしのお遊び集団に見える」

 

「あら、言ってくれるじゃない銀髪のお嬢ちゃん。あなた、お名前は?」

 

「『十剣第十位(シュヴェルト・ツェーン)』御上雪花。この国風に言うなら、セツカ・オカミ」

 

「……そっちの影野郎ォ、テメェの名は」

 

 第八位から鋭い視線と共に誰何を問われる。

 待ちに待った質問だ。この自己紹介で、これからの人生の大半が決まるといっても過言ではない。

 幹部陣に対するキャラ紹介として、万感の思いを込めていざ参る。

 

「──我が名はラゴウ、ただのラゴウだ。獅子王様より『十剣第九位(シュヴェルト・ノイン)』の座を賜っている。……だが」

 

 起唱を呟かずに魔剣を鞘から抜き、その場の全員に鋒を向ける。

 

「それも現在(いま)だけだ。いずれ俺はそこにいる『十剣第一位(シュヴェルト・アインス)』を下し、最強の名をほしいままとする。覚えておけ」

 

 それは紛れもない宣戦布告だった。

 紅の瞳で十剣(シュヴェルト)たちを、獅子王を見る。

 

 原作のラゴウは裏切りを勘付かれて殺された。

 無策のままでは同じ轍を踏みかねない。

 ならばどうするか。

 

 徹底的に組織に媚を売るのだ。

 今し方の宣戦布告は十剣(シュヴェルト)への牽制というよりは、獅子王に対する所信表明だ。

 

 新入社員が上司に向かってやる気をアピールするように、獅子王に向かって「トップの成績出せるよう頑張りますぜゲヘヘヘ」とゴマをする。

 そして物語中盤で獅子王に見限られ後ろから刺される死の運命(デッドエンド)を回避していくのだ。

 

「……フッ」

 

「…………」

 

「イキがいいな若ぇの! 気に入った! ラゴウっつったな、今からオレと仕合わねぇか!?」

 

「やめんか馬鹿者。獅子王様の御前だぞ」

 

「ヤルキ、アルノ、イイトオモウ」

 

「キャハハハハハ! 雑魚ちゃんの癖に偉そうなこと言うじゃーん!」

 

「若いっていいわねぇ。あたし、そういうの嫌いじゃないわよ」

 

「クソ影野郎が、調子乗ってんじゃねェ」

 

 幹部たちが思い思いに発言していく。

 そして最後、獅子王は薄く笑みを浮かべた。

 

「血気盛んでよろしい。是非その気力を保ったまま精進してくれたまえ。黒十字の……私の為に、ね」

 

 今のうちに笑っておけばいい。

 ここに来るまでに味わった苦痛の一切合切全て、いつかラスボス(おまえ)に支払わせてやる。

 

「さて、二人の紹介も済んだところで次は君たちの自己紹介といこうか。新入りに分かりやすく、各々の位と名前を教えてあげてほしい」

 

 獅子王からの命を受け、それぞれが名乗りを上げていく。

 

「チッ……『十剣第八位(シュヴェルト・アハト)』エアフォルク・アハトゥングスだ。覚えとけ新入り、十剣(シュヴェルト)最強になるのは俺様だ」

 

「あたしは『十剣第七位(シュヴェルト・ズィーベン)』コル・マクアルトよ。よろしくね、可愛らしい子猫ちゃんたち」

 

「ゼンゼはねぇ、『十剣第六位(シュヴェルト・ゼクス)』ゼンゼ・モルスっていうんだー。子供だからって舐めた口聞いたら殺すからね?」

 

「オデ、『十剣第五位(シュヴェルト・フンフ)』クンバカルナ、ヨロシク」

 

「ワタシは『十剣第四位(シュヴェルト・フィーア)』カイナ・アスモダイオスだ。同僚としてよろしく頼む」

 

「オレぁ『十剣第三位(シュヴェルト・ドライ)』ベアヴォルフ・ベルセルクル。強ぇ奴と闘うのが趣味だ、よろしくな」

 

「……『十剣第二位(シュヴェルト・ツヴァイ)』カバネ……」

 

 一通りの自己紹介が終わる。ゲームであらかじめ覚えていたからよかったものの、ここが初見だったら確実に覚えられない情報量だった。

 そして最後、見知った姿の男が名乗る。

 

「『十剣第一位(シュヴェルト・アインス)花鏡水月(かかがみすいげつ)だ。……大言壮語を述べた以上、必ず拙の背を超えてみせろ。ラゴウ」

 

「無論、そのつもりだ」

 

 一つの幕が下りる。

 それは幼年期と少年期の終わりだった。

 そして──これより始まる、青年期(ほんぺん)幕開けの合図でもあった。

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