ポケモン、彼らはそう呼ばれている   作:燐2

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五日目【黒き災い、白き願い 前篇】

 

 

 黒い。

 森の影に紛れているから、そう見えるのではない。

 

 日廻の隣にいるアブソルと、輪郭そのものはよく似ていた。

 頭から伸びる鎌のような角。四足の身体。首元を覆う長い毛。

 なのに、目の前の個体は明らかに違う。

 本来なら白いはずの毛は、光そのものを吸い込んだような黒に染まっていた。赤い瞳だけが、舞い上がった土煙の向こうで異様なほど鮮明だった。

 

 だが、その目もおかしい。

 

 こちらを見ている。

 確かに見ているはずなのに、何も映していないように見えた。

 焦点の定まらない、虚ろな赤。

 口元は僅かに開き、覗いた牙の隙間から細い唾液が垂れている。呼吸のたびに、喉の奥から低い音が漏れた。

 怒っているとも、威嚇しているとも違う。

 ただ身体だけが、操られる人形のように動いている。

 

『アブ……』

 

 隣から漏れた声に、日廻は視線を向けた。

 アブソルが固まっている。

 前脚は地面についている。けれど、いつでも飛び出せる構えではない。

 

「アブソル?」

 

 思わず、その名が口から零れた。

 黒い個体がこちらを見ているが、声に反応したわけではない。

 いや、日廻ではない。

 その虚ろな視線は、真っ直ぐ前へ出ていたチラーミィへ向けられていた。

 

『チラ……』

 

 チラーミィが身を低くする。

 普段の無邪気さが消え、青い瞳が黒いアブソルを見据えた。

 

「……狙いはチラーミィか」

 

『たぶんそうロト。さっきから視線がずっとチラーミィに向いてるロト!』

 

 黒いアブソルの頭が、僅かに傾いた。

 その動きに不穏な感覚を覚えた。

 考えているようには見えない。首だけが遅れて動いたような、不自然なぎこちなさ。

 次の瞬間、黒い身体が沈んだ。

 

「コジョンド!」

 

『コジョ!』

 

 呼ぶより早く、コジョンドが前へ出た。

 黒いアブソルが地面を蹴る。

 

「――っ」

 

 日廻の身体が強張った。

 速い。

 そう思ったときには、もう距離が消えていた。黒い角がコジョンドへ迫る。

 映像で見たものとは違う。ロトムに見せてもらったポケモン同士の戦い。

 技。タイプ。相性。

 画面越しなら、それを知識として眺めていられた。

 しかし、今、目の前には、映像では伝わらない生の闘争があった。

 

『コジョ!』

 

 コジョンドは退かなかった。

 片足を斜め前へ滑らせ、身体を薄くする。

 黒い角が胸のすぐ脇を抜けた。腕から垂れた長い毛が、その風圧に煽られて跳ね上がる。

 近すぎる。日廻が息を止める間にも、コジョンドは動いていた。

 突進する相手の肩へ片手を添え、その勢いに合わせて腰を捻る。もう一方の掌が、がら空きになった横腹へ突き込まれた。

 

 空気が破裂したような鈍い音がした。

 黒いアブソルの身体が横へ弾かれる。踏みとどまろうとした爪が土を削り、落ち葉が扇状に飛び散った。

 コジョンドの足は、もう次の場所にあった。

 掌を引き戻す動きで肩を回し、相手の正面から外れる。黒いアブソルが角を振ったときには、その先端は長い尾を掠めるだけだった。

 避けた先で、膝が持ち上がる。

 脇腹への蹴りが黒い身体が浮き、地面へ転がった。

 

「……!」

 

 日廻は、ようやく息を吐いた。

 コジョンドが何をしたのか、全部は分からなかった。

 角が迫った。避けた。掌が当たった。

 そこまでは見えた。

 けれど、それぞれが別の動きに見えない。避け終わる前に次の一撃が始まり、打ち終わる頃には、もう相手の攻撃が届かない場所へ移っている。

 腕の毛が、遅れてふわりと落ちた。

 黒いアブソルが四肢を立てる。

 痛みを堪える仕草がない。脇腹を打たれたはずなのに、そこを気にする様子さえなかった。

 

「いける……」

 

 思わず漏れた言葉に、自分で違和感を覚えた。

 何が、いける。

 今、目の前で生き物同士が本気で殴り合っているのに。

 

 黒いアブソルが頭を低くした。

 コジョンドも膝を緩める。片手を前へ、もう片方を胸元へ引き、相手の動きを待った。

 赤い目は、コジョンドの肩越しにチラーミィを捉えていた。

 黒い身体が走る。

 今度は正面からではなかった。コジョンドの脇を抜け、小さな灰色の身体へ一直線に向かう。

 コジョンドが横へ跳んだ。行く手を塞ぐように片足を着き、その足を軸に身体を回す。もう片方の脚が低い弧を描き、踏み出された黒い前脚を払った。

 

 体勢が崩れても、角は止まらなかった。

 落ちてくる黒い刃の下へ、コジョンドが自分から潜り込む。地面すれすれまで身を屈めた頭上を、角が唸りを上げて通り過ぎた。

 

 短く畳んだ肘が、相手の肩口へ入る。

 黒いアブソルが傾いた。その横をすり抜けながら、コジョンドが振り返る。

 振り返りざま、片膝を引き上げた。

 伸ばした脚を、胴を押し返すように蹴り込む。

 黒い身体が数歩分、後ろへ滑った。

 

『コジョ!』

 

 着地したコジョンドが、すぐに追う。

 軽い足音に続いて、鋭い蹴りが頭の横を薙いだ。

 黒いアブソルが身を捻る。一撃目は外れた。

 日廻には、コジョンドまで体勢を崩したように見えた。

 蹴った脚が大きく流れ、背中が相手へ向く。

 危ない。声にするより早く、コジョンドが地面へ片手をついた。

 腕が身体を支える。長い尾が逆側へ振れ、浮いた腰の下から、もう片方の脚が跳ね上がった。

 

 追いかけてきた黒いアブソルの脇腹を、踵が捉える。

 重い音とともに、黒い身体が地面を滑った。

 コジョンドは手を離し、跳ねるように立ち上がった。乱れた毛を払うこともなく、再び片手を前へ出す。

 その位置は、さっきとほとんど変わらない。

 チラーミィと、黒いアブソルの間だった。

 

『相性はこっちが有利ロト! アブソルはあくタイプ! かくとう技なら抜群ロト!』

 

「コジョンド、そのまま……いや、無理に詰めるな!」

 

『コジョ!』

 

 口から出た指示に、遅れて怖さが追いついてくる。

 もし間違っていたら。

 今の一言で、コジョンドが踏み込みすぎたら。避け損ねたら。

 その結果、傷を負うのは自分ではない。

 

 乾いた喉に本能が水を求める。

 怖いと思った。

 逃げたい、とすら思った。

 本気で傷つけ合う生き物を目の前にして、平然としていられるほど日廻は慣れていない。

 

 それでも目を逸らせなかった。

 自分がここにいて、何ができる。

 二匹の動きに、目さえ追いついていない。

 それでも、相手が誰を狙っているかは分かる。

 黒いアブソルは速い。だが、狙いはほとんど変わらない。

 

 チラーミィ。

 

 そこへ至る最短距離を選んでいる。

 

「チラーミィ、コジョンドの後ろから離れるな!」

 

『チラ!』

 

 チラーミィが頷く。

 黒いアブソルはまだ健在のようだった。

 赤い目だけがチラーミィを向く。

 次の瞬間には。

 

「右!」

 

 日廻が反射的に叫んだ。

 黒い姿が掻き消える。

 コジョンドの右側。爪が振り抜かれた。

 

『コジョッ!』

 

 素早く上体を反らす。

 黒い爪が胸元を舐めるように掠め、毛が散った。

 

 その一瞬に舞うコジョンドの毛を目にして日廻の背筋が冷える。

 今、ほんの少し深ければ、どうなっていたのか。

 

 黒いアブソルは止まらなかった。着地した前脚で土を掻き、反らされた胸元へ角を薙ぎ払う。

 合わせてコジョンドが後ろへ足を引いた。

 一歩。もう一歩。

 それでも黒い角が空を切るたび、腕の毛が裂けて舞った。

 

 押されている。そう思った日廻の目に、コジョンドのすぐ背後に迫る太い幹が映った。

 これ以上、下がればぶつかる。

 黒いアブソルが踏み込む。

 コジョンドの身体がぶれる。

 小さく弧を描くように左右に体を揺らして、一瞬で横へ身体を滑らせた。

 片手が地面を掠め、頭上を抜けた角が背後の樹を切り裂く。

 木片が飛び、コジョンドはもう相手の横にいた。

 掌が顎の脇を押し、こちらへ向きかけた頭を逸らす。続けて踏み込んだ足が、黒い前脚の外へ入った。

 

 肩がぶつかるほどの距離。

 そこで、腰が回った。

 短い肘打ちが横腹へ沈む。

 

 黒いアブソルの四肢が踏ん張った。その身体がこちらへ向き直るより早く、コジョンドは身を離していた。

 追って振られた角の先を、長い毛がひらりと逃れる。

 空振りで流れた黒い斬撃。

 その向こうへ、コジョンドの視線が先に回った。

 

 軸足が返る。

 尾がしなり、全身の回転に引かれた脚が大きく弧を描いた。

 蹴りが胴を捉えた瞬間、低い音が腹の底へ響いた。

 黒い身体が横へ吹き飛ぶ。

 木の幹へぶつかり、枝から落ち葉が降ってきた。

 重い音が森へ響いた。

 

「……っ」

 

 勝っている。

 たぶん。

 なのに、少しも安心できない。

 

『コジョ!』

 

 コジョンドは構えを崩さない。

 以前とは違った。

 怯えて暴れているのではない。呼吸は荒い。それでも相手を捉え続けている。

 チラーミィの位置。日廻の位置。逃げ道。

 全部を確かめながら戦っている。

 

「よし……すごいぞコジョンド!」

 

 声を掛けると、コジョンドがこちらを見ないまま、相槌を打つように頷く。

 黒いアブソルが立ち上がる。

 日廻から見れば、立てるのかと疑いたくなるほど強く打ちつけたように見えた。

 実際、その前脚は一度、体重を支え損ねた。

 肩が沈む。顎が地面につきかける。

 だが、黒い個体は足の置き方を変えなかった。同じ脚で土を押し、傾いた身体を強引に持ち上げる。

 赤い目は、もう一度チラーミィを見据える。

 

『チラ!』

 

 チラーミィが前脚を振る。

 黒いアブソルが踏み出す寸前、その足元の土が不自然に盛り上がった。落ち葉ごと地面を押し上げられ、黒い身体が横へ流れる。

 

『サイコキネシスまで使うロト!?』

 

「驚くの後!」

 

『それはそうロト!』

 

 コジョンドが距離を詰める。

 黒いアブソルが崩れた足場を蹴った。

 土が砕け、身体が跳ねる。低く突き出された角が、踏み込んだコジョンドの胸へ向かっていた。

 コジョンドは、その手前で足を止めた。

 腕を大きく振る。

 長い毛が鞭のようにしなり、黒いアブソルの顔の前を横切った。赤い目が一瞬、白い毛の向こうへ隠れる。

 

 その間に、身体が入れ替わった。

 

 コジョンドが斜めへ踏み出し、空中の黒い身体を脇へ通す。振った腕を引きつけた勢いで、反対の掌が胴へ打ち込まれた。

 黒いアブソルの身体が捻れる。

 着地しようとした前脚が、地面を捉え損ねた。

 コジョンドは追いついていた。

 一歩目で腰を落とす。

 二歩目で、地面を踏みしめる。

 短く吐いた息とともに、伸ばした脚が黒い胴を斜め下へ蹴り抜いた。

 黒いアブソルが土へ叩きつけられ、そのまま何度か転がる。

 舞い上がった落ち葉の中で、コジョンドが片足を下ろした。

 

 追撃はしない。

 

 構えを保ったまま、肩越しにチラーミィを見る。

 小さな頷きが返った。

 示し合わせた言葉などなかった。

 それでも、チラーミィが崩した体勢を、コジョンドは逃さなかった。日廻が何を指示するか考えている間に、二匹はもう互いの動きを繋いでいた。

 

 今なら。

 そう思った瞬間、すぐ隣で土を掻く音がした。

 

「……アブソル」

 

 まだ動いていなかった。

 黒い個体から、一度も目を離していない。

 最初は、怖いのだと思った。

 けれど違う。怯えているなら、もっと後ろへ下がる。

 

 しかし、アブソルは、むしろ前へ出ようとしていた。

 前脚に力が入っている。牙を見せている。

 それでも、一歩目だけが出ない。

 

 傷つけたくない。

 

 その言葉が、唐突に頭へ浮かんだ。

 日廻には、黒い個体が誰なのか分からない。

 それでも、ただの敵を見る目ではなかった。

 

「……知ってるのか?」

 

『フォッ……』

 

 か細い。これまで聞いたことのない声だった。

 問いを重ねる前に、黒いアブソルがまた起き上がった。

 赤い目が、ほんの一瞬だけ白いアブソルへ向く。

 

『……フ、ォ…』

 

 喉の奥で音が鳴る。

 声とも呼べない。

 けれど、アブソルの耳が大きく震えた。

 

『アブソル……?』

 

 黒い個体の瞳が揺れた。

 ほんの僅か、そこに何かが戻りかけたように、日廻には見えた。

 だが、赤い瞳の奥を、黒い靄のようなものが走った。

 焦点が外れ、瞳の光が消える。

 口が開き、唾液が糸を引く。

 次の瞬間には、もうチラーミィだけを見ていた。

 

『チラ!』

 

 黒い身体が走る。

 コジョンドが割り込む。

 衝突。

 弾かれる。

 また立つ。また襲う。

 

 今度はコジョンドの掌が、黒い角を横へ逸らした。

 がら空きになった胴へ、再び蹴りを入れて距離を取る。

 

 着地した黒いアブソルの前脚が折れ曲がった。

 傷ついた肩が地面を擦る。

 それでも、そのまま身体を捻り、角を振った。

 

「何なんだよ……こいつ」

 

 痛みを感じていないのか。

 それとも、感じることすら許されていないのか。

 立ち上がるたびに脚が震え、身体を持ち上げるまでの間が長くなっている。それでも、同じ脚へ体重をかけ、無理に踏み込んでくる。

 効いていないわけではなかった。

 身体は、確かに傷ついている。

 なのに、その身体を守ろうとする仕草だけが、どこにもない。

 

『日廻……あいつ、傷ついた脚も腹も全然かばわないロト』

 

 ロトムの声から、先ほどまでの勢いが消えていた。

 コジョンドが相手の足元へ目を落とす。次の踏み込みを避けたあと、追いかけずにこちらとの間へ戻った。

 

 アブソルの喉から、細い声が漏れた。

 あの傷が見えているのだ。

 呼びかけにも戻らず、傷を増やしながら向かってくる姿を、ずっと見ている。

 

 ぞっとした。

 その身体は生きている。

 けれど、この相手は、どこで戦いをやめるのだろう。

 痛くても退かない。

 脚が支え損ねても、また走る。

 このまま攻撃を重ねれば、いずれ動かなくなるのかもしれない。

 それは、本当にただ気を失って倒れるだけで済むのか。

 

「……このまま傷つけて、大丈夫なのか」

 

 問いというより、口からこぼれた不安だった。

 ロトムは、すぐには答えなかった。

 黒いアブソルが、再び身を沈める。

 前脚が小刻みに震えていた。

 それでも、体重を逃がそうとはしない。赤い目はチラーミィだけを捉えている。

 

 自分では止まれないのではないか。

 身体が動く限り、何度倒されても起き上がる。

 

 それこそ、死ぬまで。

 

 そこまで考えて、日廻は息を呑んだ。

 

 黒い角が迫り、コジョンドの蹴りが、迎え撃つようにもう一度入った。

 黒いアブソルが地面へ倒れる。

 今度はすぐには起き上がらない。

 

『……コジョ』

 

 コジョンドも息を荒げている。

 構えたまま、横たわる相手を見つめていた。そこへ踏み込もうとはしない。

 

「もういい、無理に――」

 

 言い終わらなかった。

 空気が変わった。

 

『……ロト?』

 

 黒いアブソルの身体が痙攣した。

 一度。二度。三度。

 四肢が地面を掻く。

 ゆっくりと顔を上げ、虚ろな赤い目には、もう何も残っていなかった。

 口元が開き、涎が落ちる。

 そして、その身体から、黒い光が溢れ出した。

 

「……何だ?」

 

『これは――』

 

 ロトムの声が強張る。

 

『―――暴走、メガシンカ、ロト』

 

 黒いアブソルの身体から、光が噴き出した。

 傷ついた四肢も、土を掻く爪も、瞬く間にその輝きへ呑まれていく。最後まで見えていた赤い瞳が消え、光は丸く閉じた。

 

 そこに、黒い光の球が浮かんでいた。

 内側は見えない。

 ただ、その表面を走る明滅に合わせて、周囲の落ち葉が震えていた。土煙が押し退けられ、日廻の頬を熱を帯びた風が撫でる。

 光の球が、内側から何かが押し広げているように脈打った。

 そう思った瞬間、表面に亀裂が走った。

 裂け目から、凄まじい光が迸る。

 

「――っ!」

 

 光の殻が力の奔流によって砕け散った。

 解き放たれた力が森を駆け抜ける。落ち葉が一斉に舞い上がり、日廻はあまりの光に腕で顔を庇った。

 

 踏みとどまり、目を開く。

 砕けた光の向こうに、黒い影が立っていた。

 

 先ほどまでとは、違う姿で。

 濃い藍色を帯びた黒い体毛。顔の片側を覆う長い前髪。露わになった側からは、稲妻のように折れた角が鋭く天を指している。

 首元から胸を覆う毛は幾重にも重なり、背後には長い房が広がっていた。その先端だけが、不穏な赤に染まり、まるで赤黒い悪魔の爪のように見えた。

 

 その変化自体は、美しいとさえ言えた。

 だからこそ、余計に気味が悪かった。

 あれほど傷ついていた身体が、まだ立っている。

 神秘的な光の中で姿が変わっても、赤い瞳には意思を感じられない。

 

 動けるようになった身体を、すぐに前へ向ける。

 白い牙の間から、粘ついた唾液が糸を引いて落ちた。喉の奥では、荒い呼吸が断続的に鳴っている。

 気高い姿を残して、その中身から理性だけを削り取られてしまったようだった。

 

『メガアブソル……?いや、違うロト』

 

 ロトムの声が震える。

 そして。

 

「何が」

 

『反応が違う。ゴーストタイプが混ざってるロト……!』

 

 コジョンドが深く息を吐き腰を落とした。

 チラーミィがその背後で身構える。

 隣のアブソルは、食い入るように変わり果てた姿を見つめていた。

 

 倒しても何度も起き上がる。

 傷ついても止まらない。

 その相手が、さらに力を増してしまった。

 

 黒いメガアブソルが、ゆっくり顔を上げる。

 首が不自然な角度で止まった。

 虚ろな赤い瞳が、チラーミィを捉える。

 

 次の瞬間。

 黒い影が、消えた。

 

 




感想、評価、よろしくお願いします。
後編は……頑張ります。
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