「それにしても、ロフ・ラエストスってなかなか不思議な会社ですよね」
「まあ確かにな、いろいろな方向でとんでもない水準の技術を持っているのは明らかだ。その点だけでも興味深い」
「ああいや、僕が言いたいのは持ってる技術じゃなくて事業内容の事でして」
「へえ、どういう?」
「いえね、描写されている限りでは通信事業と郵便事業やってるじゃないですか。なんというか、ドムシアッドで言えばクロネコヤマトや郵便局が携帯電話とかの事業もやってるような感じだなって。もしくはdocomoとかが宅配もやってるとも言えますか」
「まあ、確かに違和感感じるかもだが、実のところ歴史的に見ればそうおかしな話でもないと思うぞ。お前さん、docomoの親会社知らないって事はないよな」
「そりゃそうですよ、NTTドコモって言うくらいですからNTTでしょう」
「じゃ、そのNTTの前身は知ってるか?」
「えーと…確か電電公社、でしたっけ?」
「正解だ。で、そいつをどんどん遡っていくと、『逓信省』という国家機関にたどり着く。じゃあ今度は郵便局を遡って行こう。今では日本郵便株式会社だが、ちょっと…民営化される前に遡ると何になる?」
「確か、日本郵政公社だったような」
「正解。で、そいつから遡ると郵政事業庁に、さらに戻ると郵政省になる。で、もっと戻ると…『逓信省』にたどり着くのさ」
「あ、さっきのdocomoと同じですね。ってことは、郵便事業と通信事業、どっちも同じ組織がやっててもおかしくはない、ってことですか」
「その通り…まあ全部が全部そういうわけでもないがね。今のソフトバンクは逓信省ルーツじゃなかったはずだし、アメリカなんかじゃ郵便と大手通信会社は別々のルーツだったはずだ」
●サイトに書いてあるやんけ
「………」
「………」
「公式サイトに、書かれてたな。ルーツ」
「ええ、完全に見落としてました」
「『古代は知識の守り人として、近代では郵便会社として、そして現代では電子情報通信企業として皆様の生活の近くで活動してきました』か」
「まさしく日本の逓信省みたいな経緯だったみたいですね。少なくとも、近代から現代は」
「『知識の守り人』というのが今ひとつわからんがね。字面通りに解釈するなら、図書館とかそういった系統のモノのように思えるが…」
「創設者だという『偉大なる指導者アシュエカルヴァ』というのも気になりますね。単なる営利企業だったら創業者をそこまで持ち上げますかね…?」
「ひょっとするとアレかもなあ。ルーツは宗教団体というか、そういった感じの組織だったりするのかもしれない。聖職者というのは大抵知識人階級に属しているものだし、宗教団体が修道院なり教会なり寺院なりの中に書庫とかを抱えていることもある。チェコのプラハにあるストラホフ修道院図書館なんかが有名だな。日本で言えば金沢文庫も仏教寺院が管理してた時期もあったはずだ」
「なるほど…?」
「それに宗教だって俗世で活動する以上、金が必要だ。テンプル騎士団は銀行みたいな事もやっていたし、ロフ・ラエストスの前身だった団体もそんな感じで郵便事業とかに手を出していったのかもしれない。そうそう、知識の守り人、というからには遠くにいる人間に蔵書を送ったりすることもあったかもしれんし、その辺でノウハウもあったのかもな」
「ははあ…」
「同じくらい可能性があるのは、アシュエカルヴァなる人物は日本で言うところの公家なり大名なり豪商なりみたいな、社会的立場のある人物だった可能性だな。そういった人物はいろいろコレクションしてる事もあるし、その辺から『知識の守り人』と言われてた可能性もあるかもしれん」
「加賀前田家なんてすごかったですもんね…」
「お、さては今年やってた百万石展でも見に行ったか?」
「ええ、国宝や重要文化財がごろごろと…」
「まあ代表例が前田家だし、さっき言った金沢文庫も元々は北条氏の傍流だった金沢氏が立ち上げたものだったらしい。静嘉堂文庫も、ルーツは三菱財閥の総帥2代のコレクションだ」
「錚々たる人々ですね」
「なのでまあ、『知識の守り人』と言われてはいるものの、実はそっちは副業で、本業のほうを郵便事業とかにシフトさせていった可能性もある…かもしれない」
「まあ、絶対ない話じゃないかもしれませんけど…」
「ま、何言ったところで別に根拠はないからな。よく言って推察、正直に言っちゃうと妄想だな」
●なぜ、巨大組織のまま存続しているのか?
「それにしても、今でも逓信省みたいなものが存続している、と考えると、なんだか大きな話ですよね」
「まあな…ただ、その辺は遷移圏ならではの事情があるのかもしれん。俺が思いつく可能性はそうだなあ、2つってとこかな」
「どんな可能性なんです?」
「1つ目は単純に需要がそこまで大きくないからなんとかなってるという可能性。遷移圏は、正直なところ少なくともドムシアット軸では知名度はそこまで高くない。他の軸でもまあたぶん似たり寄ったりってとこだろう」
「需要が少ないから、その分組織の規模が大きくなくても済む。だから巨大組織のように見えてその実そこまでロフ・ラエストス社は大きくない…って可能性ですか」
「その通り。まあ遷移圏全体の人口すら俺らはわからんから、実は全然的外れな考えかもしれんがね」
「で、もう1つは?」
「分割したくともできないという可能性だな。ユガミ警報の動画はもう見たか?」
「ええ、いろんな意味で恐ろしい動画でした…」
「で、その中で遷移嵐下では、ロフ・ラエストスの回線も最終的には無力化される、と言及されてたわけだが、これは裏を返せばそんな異常事態であっても最後まで生き残るのはロフ・ラエストスって事になるだろ?」
「それは確かに」
「つまり、よその有象無象よりもはるかに頑丈で、高度な技術を持っているというわけだ。それの維持管理やら何やらもあって、そうそう分割できないのかもしれない」
「実は裏で、その辺の中小企業じゃ負担できないようなとんでもないコストや技術をかけて、高度な通信・運搬技術を維持してるかも、ということですか…」
「そういう事だ。そういえば、ロフ・ラエストスの通信料とか運送料とかって、どんなもんなんだろうな」
「一般人で、目が飛び出るような大金持ちってわけでもなさそうなナカムラさんが気軽に使ってるあたり、そこまで高価でもなさそうな気はしますけど…」
「まあなあ。特殊なやつだとガッツリ取られるのかも」
●遷移圏での通信事情
「ところで、最新(2026年8月2日現在)の動画で、ロフ・ラエストス以外の通信についても言及されてましたね」
「カテニエ氏が言うには『回線が特殊で難解』、『そもそも契約が億劫に』『地方電波のほうが使える』だったな」
「確かに、荷物や手紙を送るのと、インターネットとか電話を契約するとでは随分話違ってきますしね…」
「だな。つまるところ、ロフ・ラエストスは広く浅く、地方は狭く深く、ということになるのかねえ」
「有事の際がどうなるのか気になるところですね」
「どうしても嵐の時は弱いから、平時の情報収集用と割り切ったほうがいいんだろうな、地方のは」
「…ナカムラさんたち、万が一キャンピングカーで移動中に遷移嵐に遭遇したらどうするんでしょうか」
「やめろそんな不吉なこと言うのは」
「ま、今回語るならこんなもんか」
「いろいろ面白い世界ですから、ネタはまだいくらでもありそうですね!」