タイトル通り、エピローグ終わると天空闘技場編は終わりです。次はハンター試験編になると思います。
「えーそれじゃあ諸々清算しましょうか。念の師匠をして頂くのは大前提として……ハンター試験合格までの全面的なサポート、仮に不合格となった場合に備えて試験中のコネ作りへの尽力、試験後も私の目標を達成するための情報収集、及び必要な物品が発生する場合の入手支援……。期間は……そうですね、最長二年で都度更新としましょう。こんなところですかね?」
「くっくっく……随分と散財しちゃったなあ。でも、昨日は最高に愉しかった……。今でも思い出して興奮するよ♥」
──天空闘技場療養室。
左腕をギプスで固定しながらも、
あの試合……契約違反のオンパレードを約束通りに
「師匠の方が完治に時間掛かるくらいですよね……? 本当にこれで良いんですか?」
「いいのいいの♦ 元々長期で組んでた予定が無くなっちゃったから、実は結構暇なんだよね♥」
流石に昨日の今日だ……ヒソカにはまだ私の出自や目的は話せていない。話をするタイミングはまだ決めかねているが……どうせ完治までにはそこそこ時間が掛かるのだ。そこでじっくり
今日はこの後、疲労回復と気配遮断に役立つ『絶』という技術を教えてくれるそうである。どうやら外に出すオーラを閉じる技術らしい。
私達の怪我が完治する頃には、ハンター試験の開催も近いだろう。現在は申込期間中であるが、時期が来ればハンター試験のナビゲーターがいるところまで足を運ばなければいけないので、天空闘技場の試合間隔の90日を超えてしまうかもしれない。まあ……私はフロアマスターには興味は無く、もうここで戦う気は殆ど無いのでどうでも良いことであるが……。ヒソカの方は少々未練があるようなので、不戦敗にならない程度にそちらを優先してくれて良いと思っている。
(確か今『8勝2敗』だから……確かにそれを捨てちゃうのは勿体ないよね。『8勝1敗』のスター選手、カストロさんが失踪したと聞いた時には、ヒソカは少し惜しいような……別にどうでも良いようなどっちなのか判断に迷う絶妙な顔をしていた。多分、本当はカストロさんとも戦いたかったんだろうなあ……)
「うん。これで僕の分の申請は終わったよ♥ 君の分の入力が終わったら、早速『絶』を教えようか……♣ 互いにあまり動けない、今教えるのが都合も良いしね」
「はい、有難う御座います。私の方も『打てば響く』と言った手前、しっかり学ばさせて頂きますよ」
▽ ▽ ▽
──時は試合直後に遡る。
「で? 何なのあの試合? あんな能力見たこと無いし、勝ったあんたの方が損傷酷いし……」
「ふふふ……やあマチ♥ 僕もびっくりなんだけど、あの娘は僕の弟子志望者なんだ♠ 試合前からもう興奮しっぱなしさ♥」
「……そう。可愛い子なのに、随分と奇特な奴もいたものね……」
脳震盪により意識を失ったクーデリアが担架で運ばれていった一方で、ヒソカは酷い損傷ながらも自分の脚で闘技場を去っていた。そしてここは、控室までの連絡通路である。
「色々と語りたいところだけど、今は依頼通りに
「……そうね。まあ、取り敢えず控室まで戻りましょう」
オーラで止血こそしているが、上腕からすっぱり切断された右腕を、これまた折れてる左腕の脇で挟むという痛々しい姿を晒すヒソカ。しかしそれもマチの『念糸縫合』にかかれば、ものの数秒で繋げてしまうだろう。筋肉・血管・骨・神経と……あらゆる全てをほぼ100%、神速の手技で繋げられる彼女の縫合の腕は、世界で最も優れていると言っても過言ではない。そうこうしている内に控室まで到着。備え付きの椅子に座ってマチの動きを待つ。
「………………」
しかしどうにも反応が芳しくない。マチがヒソカに対してほぼツンしかないのはいつものことであるが、こうして控室に辿り着いた後でも一向に仕事に取り掛からないのは少々不自然だ。流石に一度声を掛けようかとヒソカが逡巡したところで、ようやくマチの口が開く。
「あんた、随分綺麗な背中してるね」 と。
──ヒソカの頭の回転は速い。今の己の状況を悟るには、その一言で十分だった。
ヒソカはA級の賞金首集団『幻影旅団』に所属……しているように偽装している。旅団員は全員、入団の際に身体の一部に番号付きの蜘蛛のタトゥーを入れるルールになっているが、ヒソカは自身が持つもう一つの発『
……実のところヒソカからすれば旅団自体はどうでも良く、その旅団の頭である男……『クロロ=ルシルフル』とタイマンで戦いたかったがための潜入工作であった訳であるが……流石にここからの巻き返しは難しいだろう。
(構成員の護衛を引き剝がすため、いずれ危険な策を通す覚悟もあったけど……♣ ここらが潮時かな? ああ……それにしても燃えちゃったんだね♦ 肌の質感を再現して、タトゥーをデザインした上で背中に貼り付けていた訳だけど……服が全焼するような炎ならそりゃあ普通に燃えるか……♠)
「……弁明はしないよ♦ それで……どうするんだい? 流石の僕も、今襲われたら殺られちゃうかも?」
ヒソカのオーラが躍動する。全身に裂傷と大火傷、両腕は使えず、脚も消耗している。敗残兵と見紛う程の悲惨な有様であるが、それでも手負いの猛獣が比較にならない程の戦闘能力を有している……とはいえ流石に相手が悪い。マチもまた、幻影旅団の名に恥じない一流の念能力者である。
(100点あげちゃう最高の女の子(クーデリア)に痛めつけられて、その直後にお気に入りの女の子(マチ)に殺されるのもまた一興♥ 必敗とまでは思わないケド……敗色が濃いのもまた事実♣ まあ、末期の
「は────……ああ、もう、そういうの良いから……。クロロにも言うし、確実に退団だけど、別に私はどうもしないよ。さっさと腕出しな。繋げたげる」
マチは幻影旅団の初期メンバーであり、旅団への思い入れは当然強い。A級賞金首らしく、必要であれば拷問も殺しもする人間であることに変わりはないが、知り合いの死を悼み、自主的にエンバーミングを施そうとする程には優しい子でもある。ヒソカがしたことは確かに裏切り行為であり、メンバーによっては即殺に動くかもしれないが……少なくとも彼がラインを超えた不利益を齎したということはない。一応入団時に構成員を一人殺しているが…それについては旅団のルールの範囲内でのことだ。とはいえ入団自体が偽装であったならばそれを遡及しての処罰が妥当……妥当ではあるのだが……マチとしてはそこまでやる気には成れなかった。藪蛇というかなんというか……とどのつまり勘である。
(むしろこいつが旅団に残っていたら……後で何か、凄い嫌なことが起こってた気がする)
マチの勘は良く当たる。それは旅団の頭であるクロロも認めているところで、作戦立案時の参考にもする程である。殺すかどうか、(能力を)奪うかどうかも決めるのはクロロで良い……。今日はこれを出汁に、5000万は多く請求してやろうと心に決めて、少し拍子が抜けた顔をしているヒソカを他所に、縫合のための準備を始めた。
▽ ▽ ▽
──試合から10日が経過。
私の方は完治はまだだが、日常生活にはあまり支障が無い程度には回復した。『絶』は少し手間取ったが何とか覚え、今は『練』の鍛錬中だ。細胞一つ一つからエネルギーを集めるように意識して一気に放出する……という理屈は分かるのだが、もう少し時間が掛かりそうである。一応『念』を付与した状態であれば、既に応用の『堅』にまで進んでいるのだが……やはり付与無しでも使えるようにはなっておきたいと頑張っている。
因みに……私の出自、そして『元の世界に帰る』という目標、可能な限り叶えたいと考える使命について、既にヒソカには伝え済みだ。
「ん~~~普通なら信じられないけど♦ 他ならぬ君が言うことだからね。信じるよ♥ 正直君の能力は個人の『念』では説明が付かない程にやれることが多すぎるし、誓約が釣り合って無い。本当に魔法が存在する世界なら、世界の壁を超えることだって、きっとあるんじゃないかな……?」
その後に『そもそも眼の精孔が開いてないのにオーラを認識していた時点で、念とは別の力が関わっている以外に説明がつかないよ♥』とまで補足されてしまえば、単に気を遣ってはぐらかしているだけという訳でも無いだろう。
使命の方については流石にノーコメントであったが……転移の経緯を考えれば『それが事故である可能性は低い』ということには同意して頂けた。まあ正直な話、はいそうですかと簡単に解決できる話ではない。下手をすると、世界の壁を超えるよりも難しい問題なくらいだ。一応この世界独自の技術が合わさることで初めて可能になるのでないかと推測は立てているが、現時点ではあまりにも未知数が過ぎる。それ故のノーコメントということであり、むしろ
(と……良くない、集中が切れてた。せめて完治までに『練』はマスターしないとね)
「うんうん……まだ組み手すら出来ないのは残念だけど、やっぱり君は覚えが良いね……♠ 弟子なんて初めてだけど、こうも吸収が早いと助かるよ。それに君の付与とやら……まさかあれ程の効力があるとは思わなかった♥」
「『流』の速度が倍くらいになってましたね。流石にあんなのやられたらまともに攻撃通りませんよ……」
オーラの攻防力移動の技術が『流』であるが、これを完全に極めると究極的には『100のオーラで攻撃した直後、相手の攻撃を確認してから受ける部位を一瞬で100に変更』だったり……『絶でオーラを0にすることで気配を消し、奇襲の瞬間にだけ直撃部位のオーラを100にする』というような芸当が可能になる。実際、あれ程の速度でオーラを移動されると、少なくとも私の技量では常に最大の防御力と攻撃力に晒されながら戦うことを強いられるだろう。
(やっぱりこういうのは、切磋琢磨したり教え合える方が楽しいね!)
元の世界の仲間たちを思い起こしながらも、私は順調に念能力者としての研鑽を重ねていった。
因みに耐火性抜群ルートだと
・蜘蛛バレしてA級賞金首としてマークされる
・流石にガチ犯罪者に師事するのは無理なのでクー子が師弟契約キャンセルする
(幻影旅団のことは知りませんが、騒ぎになれば自力で調べて気付く)
と、結構な悲しみを背負うことになります。
勿論テクスチャを剥がして偽装だと説明すれば納得してくれるかもしれないので、十分持ち直せる可能性もありますが、随分と面倒なことになるのは避けられそうにありません。そもそも普通に考えて耐火性があるとは思えないので、こちらは超レアな幻のルートとなります。