イルミについては「次の仕事の関係でライセンスが必要」と最終試験で明言していたので、16話を少し改訂しました。覚えてるようで結構内容忘れるもんですね…。
地上まで辿り着いた私は、身体に『念』を付与して即座に『堅』に移行。その状態でトリックタワーの外周を散策する。
どうにも周囲の森には多数の生物…恐らく魔獣が生息しているらしく、こちらとしても一々戦闘はしていられない。『絶』で気配を消しても普通に視認されるし、匂いまで消せる訳でもないので、威嚇代わりにオーラを増大させた方が結果的に戦闘を避けれるという判断だ。どうやらそれが好判断だったのか、暫くすると辺り一帯を包んでいた獣の気配は消えてくれたようだ。
(ヒソカが来るかは分からないし…先に出入り口を探そうかな?)
二次試験前の、師匠からの有難い指導もある。折角だからと『堅』の状態での全力ダッシュでトリックタワーの外周沿いを爆走する。『念』の付与ありの状態であれば、今の私は最大1時間までは『堅』の維持が可能…
(あっ扉見つけた! 出入り口がてっぺんだけとか意味が分からないし、そりゃ地上側に正規の出入り口があるよね…まあてっぺんにも出入り口があるってのは現時点では唯の推測なんだけど…それが無いと受験者全員落下してゴールしないといけなくなるし…流石にあるよね?)
扉を叩きながら声を掛けると、どうやら試験官が気付いてくれたようだ。早すぎると慌ててはいたが、想定自体はははされていたのか向こうの対応は割と早い。こうして私はほぼ最速で、三次試験を通過することが出来たのだった。
『43番 クーデリア 三次試験通過第一号!! 所要時間22分』
――1時間後。
……結局ヒソカは降りて来なかった。多分正規ルートでのクリアを目指しているのだろう。彼からすればここは天然のアトラクションのように見えてる筈…。私と違って無駄を楽しめるタイプのようだし、折角ならば楽しまねば損ということだろうか?
(ゴン君とかキルアとか…ヒソカ好みそうな有望な受験者もいるしね…。私も『色んな人と仲良くなるんです』と言った手前、本当は正規ルートでクリアすべきだった気もするけど…不合格の可能性のリスクを取るよりは、確実に合格をもぎ取るという選択もまた、きっと間違いではない筈だ。)
(おい、我はそろそろ空腹だ。食事を用意せよ)
…試験中だとこの子達の食事の用意も難しいかもだしね。
(はいはい。ちゃんとチーズ3切れも足してあげるから、ちょっと待ってねー)
▽ ▽ ▽
最長72時間の長丁場の試験。1階には休憩用のスペースも、ある程度は用意してくれているようだ。私は二日振りにベッドで仮眠。目が覚めてからは、師匠の言いつけ通りに『堅』を維持しながらの動作確認と体力作り、そして『纏』を解除した垂れ流しの状態での様々な形での筋力トレーニングを行った。この世界の人間…の中でも超人と評されるような方たちと比べ、私の素のフィジカルはあまりにも貧弱すぎる。
これでも元の世界の一般男性よりは遥かに鍛えているのだが…それでは明らかに足りていないのが、この世界の上澄み陣のフィジカルである。せめて今の倍程の筋力があれば、キルアは無理でもそれなりの領域には届く筈だと信じて筋トレを続ける。
(まあそんな簡単に倍になったら苦労しないんだけどね…)
――――そんなこんなで15時間後。
1階の中央広場にて、『絶』状態で座禅を組みながらの休息中。
チュー助とまーちゃんを好きに走り回させながらも、じっと疲労の回復を待つ。
そこに ガコンっ と音がしたかと思えば、ようやく合格者第二号が現れた。
「ケツいてーー」
「短くて簡単な道がスベリ台になってると思わなかった…」
声がした方に視線を合わせてみれば、そこにはゴン君にキルア、そしてクラピカさんがいた。流石に三人とも優秀だなあと思って立ち上がったところ、どうやら後ろにもう二人。レオリオさんと一緒にいたのは…なんと私の師匠であった!
「ほら♥ 言った通りだろう? 壁くらいはすぐに壊せるってね♦」
「ゴンが乗るから〇に入れたが、まさか本気でやれるとは思わなかったぜ…」
「『長く困難な道』を選んで壁を壊し、『短く簡単な道』を選ぶ。確かにこれなら短時間でのクリアが可能だ。」
「対戦相手が素手で床や壁を壊してたからさ、それにお姉さんの師匠のヒソカまでいるんだよ? そのヒソカが『出来る』って言うんだから。絶対いけると思ったんだ。」
「試験中もヒソカ(こいつ)のやること大概滅茶苦茶だったからな…。
「くっくっく…それはお互い様だと思うケドね♠ あの心臓を抜き取る技…見ててちょっとドキッとしたよ…♥」
「まあ一応、俺は殺しのプロだからねー。アマチュア相手ならあんなもんだよ」
…なんか凄い真っ当に交流してた。あの
(うーん…こっちの契約を守ってくれるのは嬉しいけど、多分この辺は普通に
「師匠、皆さん、お疲れ様です! そして三次試験合格もおめでとうございます。結構早かったですね?」
「あっお姉さん! やっぱり先に合格してたんだね!」
「ああクー子か。まっそりゃ先に着いてるよな。こっちはクイズとか迷路とか色々と面倒なのはあったけど、全体的な難易度はそこまででもなかったと思うぜ?」
まず先にゴン君とキルアが元気に答えてくれる。落下時に上を見上げた際、キルアだけ茫然としていたように見えたが…どうやら心配は要らないようだ。まあ人が浮遊してそのまま戦うなんて中々に非現実的な光景だし、キルアの反応がむしろ普通なのだろう。
「やあ、待たせたね♥ その様子だと待機時間もしっかり鍛えてくれてたみたいで…師匠冥利に尽きるってやつかな?」
そりゃあ契約相手がきちんと契約遵守しているのだ、私の方から嘘を吐く訳にはいかない。紫位の探索者とは
「ところでどうだい? これから♥ 一緒に食事でも……」
「はい。勿論良いですよ。折角だし皆で食べましょう! 実はここ、ちゃんとした休憩スペースもあるんですよ?」
「嬉しいね♥」
(私も皆の試験の話、もっと聞きたいしね! 師匠を負傷させるほどの『特別試練官』とやらも気になるし…)
話を聞くに、無限四刀流という曲芸紛いの戦い方をする『特別試練官』とやらは、どうやら昨年ヒソカが半殺しにした試験官だったそうだ。本来は長期刑の囚人と戦うべきところを、ヒソカ指名で割り込んだようである。当時は一刀流の曲刀使いだったそうだが…曲刀を四本に増やして、投擲と回収を繰り返す四刀流スタイルに変わっていたとのこと。
まあヒソカに手傷を負わす時点でそこそこ強力な念能力者だったと思われるが、投擲した曲刀を掴まれそのまま敗北。因みに敗北=死亡とのことだが…まあ…何も言うまい。流石の私も「自分を殺しに来た相手を殺すな」とまで言う気は無いし、言う権利も無い。
(私と一緒にヒソカも落下してクリアしてたらどうなってたんだろ?)
難癖付けて結局戦いになったのか、それとも次の試験にでも持ち越しか…既に済んだことなので考えても仕方が無いが、こういった試験はいつだって試験する側の方が立場は強いのだ。やはり無駄に因縁など抱えるものではないなあと思いながらも、残りの約55時間をヒソカとの修練に明け暮れたのだった。
因みに修練にはゴン君もちょくちょく参加してた。随分と好奇心の強い子である。ヒソカもゴン君用のメニューを考えるのは楽しそうだったので、こちらとしても大歓迎だ。
――三次試験合格者 25名(内1名死亡)
常連と思われる合格者達の会話から察するに、ここでトンパと武闘家チェリーとやらが落ちたらしい。私は二人とも碌に知らないが…どうやらこの辺りで来年の本戦参加権が確約されるようなので、ざまあみろという意味合いが強いようだ。そして残念ながら、私が助けた86番の男性は合格者には含まれていなかった。
(出来れば少し話を聞きたかったのだけど…まあ仕方ないか。ここには端末が無いみたいだし…時間が作れたらその時に改めて、いつものサイトを調べよう。『紫華の付与師』の異名で知られてたってことは、実況ちゃんが頑張ってくれたってことだしね! 今度会ったら褒めてあげよう!)
試しの門の片方2トンはとんでもなく重いようで、人間の押す力の強さを考えると実はそこまで超人的なものでもありません。一般人でも1トンを超える乗用車を押すこと自体は可能ですし、何ならTroy Conley-Magnusson氏が11.77トンのトラックを押してギネス記録になっています。彼なら試しの門も2の門(両方合わせて8トン)まで開けれますね。
なのでキルアは別格としても、他の非能力者組と比較するとクー子の素の身体能力はそこまで大きく劣っている訳ではありません。
ぶっちゃけグレイトスタンプを楽々運べる受験者なら、試しの門の1の門くらい普通に開けれるのでは? とも思いますが…当時のレオリオが駄目だったので、きっと押す力はギリギリ足りていなかったのでしょう。二週間後には筋トレの成果もあり、1の門を開け、最終的には2の門まで開けてましたが、最初は純粋に押すのが下手だったのもある気がします。