実は某所で既に完結済みの長編小説の完結後主人公(パラレル)の転移です。
紫華の付与師で検索すれば読めますけど、別に読まなくても全然大丈夫です。
※作者本人だよ(念のため)
固有名詞がちょいちょい出ますが、元の世界にそんな奴いるんだーくらいに流してください。
覚える必要は特に無いです。
『破砕の魔王』という不名誉な異名を付けられて早数日……
いや……私だって仕方ないと思うよ? 『壊』ばっかり使ってたし。
殆どの試合が粉砕破砕爆砕なんだもの……そりゃ誰だってそういった系統の異名を付ける。そもそも私の『紫華』という称号は、国家最高位の紫位に到達した際に、国王から賜った文字である『華』と組み合わせて出来ている。
『現存する全属性での付与を確認。
意志なき魔力に対し、上書きと調和を両立。
実戦下での運用において他の追随を許さず』
私が紫位として認められた際の訓示。
「汝の力はあらゆる属性を束ね、色を咲かせる。
若くしてそれを成したこと、まさに華の如し。
この名をもって、栄誉を示す」
授与式典の際に、王から直接賜った言葉。
要するに「全属性の魔法を付与出来る女性」を称えての号が『紫華』である。
この世界において『壊』一辺倒の女に与えられる称号としては、ぶっちゃけ相応しくないと、私だってそう思う。
とはいえ致死率が高そうな『斬』『突』は論外。その他の魔法属性……例えば『火』『雷』等も武器の持ち込み等を疑われ兼ねない。ある程度手加減が出来て、尚且つ物理的に素手でやったことだと言い張れるのは『壊』くらいしかなかったのだ。
ワタシ ワルクナイ OK?
とはいえここからは念願の200階。
武器も解禁される+そもそも魔法としか思えないような超常現象を確認する階層なので、大手を振って全属性を扱えるだろう。『紫華のクーデリア』に改名してもらうのはそれからでも遅くはない。きっとそう。
あと資金も2億を超えたので万が一、元の世界に帰れなくても生活は安泰だろう……そうなったら泣くけど。アル中のゲンドウさんとやらも真っ青なヤケ酒だけど。せめて元の世界に信号だけでも送れれば、私の仲間ならきっと何とかしてくれる筈。
「特にラナなら何とでもなる筈……」
元の世界への帰還については当然私も全力を尽くすが、あちらもきっと私を探してくれている筈。流石の彼女も異界渡りの経験は無いが、それでも私の体術の師匠であり、そして●●●●である最高の仲間を信ずる他は無い。
「だから、折角なら大きなお土産を渡さないとね」
私には……否、私の所属するパーティには使命がある。転移の経緯を考えれば、もしかするとあれは事故では無く、この世界に
▽ ▽ ▽
200階到達後、ダウナー気味な美人のお姉さんに案内され、受付まで到着。
受付の人に200階の説明を受けるが、特典にはどうにも旨味が薄いように感じる……。
・武器解禁、ファイトマネーは一切出ません。
・一試合ごとに90日の戦闘準備期間が用意されている。期間内であればいつでも試合をすることができ、一度試合をすると再び90日の期間が与えられる
・90日の期間内に一度も試合の申込をしない場合即刻失格となり、登録が抹消されてしまう
(申込しても試合が成立しない場合は失格にはならないが不戦敗扱い)
・4敗するまでに10勝すればフロアマスターに挑戦出来る
・勝ってフロアマスターになれば階層丸ごと住処に出来る
・2年に1回のバトルオリンピアに参加出来て優勝すれば最上階に住める
恐らく時価数億~数十億はするような住居が手に入ると言えば聞こえは良いが、それはあくまでフロアマスターであり続けた場合だけだ。何なら優勝者は2年に1回防衛しなければ引っ越しを余儀なくされる。別荘の一つくらいの扱いで考えれば悪くないのかもしれないが、野蛮人の聖地の頂点への特典としては若干微妙に思えてしまう。
まあ私だって元の世界でお貴族様みたいな生活をしていた訳でも無いし、感覚はこれでも庶民派なのだ。別にお高くも無い雑多な酒場で寝落ちしたこともある(その時は仲間に手間掛けさせたけど)。ここ最近は英雄扱いで国賓待遇ばっかりではあったけどね。
「はい、試合はいつでも大丈夫です。これで良いですか?」
「ありがとうございます。これで200階闘士としての受付及び、試合日程希望の受領を完了しました。もし試合が組まれれば通知致しますのでご自由にお過ごしください」
今までハイペース……というか毎日試合を組んでたので急に暇である。どうしたもんかとウロウロしていると200階闘士の人達が近づいて来た。
一応200階の試合は事前に幾つか視聴していたので、闘士の名前は何名か覚えている。
細目の隻腕の男がサダソ
独楽のような義足の男がギド
車椅子の男がリールベルト
……だったかな?
「やあ? 確か『破砕の魔王』と言われていたよね?
クーデリアちゃんは、見かけに寄らず怖いねえ……」
「サダソさんですよね? 怖いだなんて恐縮です。知性の無い魔獣でも、本能には正直ですから」
「はははは。気を悪くしたらスまないね。僕が知る武術ではあまり見ないような
──そう言ったあたりで『腕が無い方』の空間に違和感を感じた。
(正直、はっきりとは見えない、でも
違和感は悪寒となり、次の瞬間には一足飛びにその場を離れる。直後に爆風。足裏に『風』を付与した全速の回避は果たして成功し、つい先ほどまで私がいた場所に
突然の爆風、突然の退避行動に一瞬面喰ったような顔をしたが、どうやら極端に狼狽えることも無いようだ。
「んーやっぱり君、
「
「使えるからといって戦わない理由も無い……と思うがな」
我 奇襲 失敗セリ
という状況である筈なのだが、彼らはある程度は想定済みのように会話をしている。いや未遂とはいえ男三人で女一人襲ってる時点で大分アウトなのだが……そのあたりの倫理観は無いのだろうか? 色々と言いたいことはあるが、先にこちらの疑問を解消させてもらう。
「一つ良いですか? そうですね、代表してサダソさんにお聞きします。まさか一方的に襲っておいて知らぬ存ぜぬなんて失礼なことはしませんよね?」
「……まあ、そうだね、僕としても何故避けられたのか聞きたいし会話をしようか。そちらの質問に一つ多く答える。これでどうだい?」
「ええ。構いません。ここでは何ですし受付の人の前まで行きましょうか」
そう言って何のこともないように移動する。
乗ってくれるかと一瞬心配したが、三人ともゾロゾロとついて来てくれるようだ。
まあ彼らの目的は薄々察してはいる……どうせ受付には来ることになる筈なので好都合なのだろう。
▽ ▽ ▽
取り敢えず三対一の目撃者無しの状況は脱することが出来たので、落ち着いて会話を始める。万が一に備え、杖には薄く『風』を付与。周囲一帯に大気を循環させて可能な限り違和感を検知しやすくしている。
「まず、一点。貴方は先ほど「使える人」と言いました。詳細は語れませんが、私はきっと
この私の発言に三人は驚いたような顔をして、何やらごにょごにょと相談した後に回答してくれた。
どうやら彼らも完全には理解出来ていないようであるが、それでも貴重な情報である。
・「念」「オーラ」と呼ばれる特殊な力があること
・それらを扱えるものは「念能力者」と呼ばれ、200階以上の闘士は全員がそれであること
・普段は垂れ流しになっているオーラだがそれを留めて纏うことで身体が非常に頑強になること
・使えないままに200階に来てしまうと非常に危険であること
……最後の答えは少し皮肉げであったが、元々は私以上に優れた格闘家であった筈の彼等だ、欠損してしまった身体を無念に想いつつも、それを代償に手に入れた力にもまた誇りがあるのかもしれない。
「さて、ここまで答えたんだ。情報量としては質問二つ分にはなると思う。
こちらの質問にも答えてもらおうか」
その言葉に同意する私。ただ流石に魔法のことを馬鹿正直に話すのは憚られる。元の世界に帰るためにも本当のことを知る協力者は多いに越したことは無いが、彼等への心証は……正直あまり宜しくない。ここは適度に
「君はまるで、僕の『
(……これはある程度正直に答えればいっか)
「単なる違和感です。私にも見えてません。ただ……思い至る理由は二つあります。一つは私の本業が危険地域の探索及び魔獣討伐であることです。それにより超自然的な直観が養われていたであろうことが推測されます」
「……もう一つは?」
「私には特殊な……そう、
「それは後天的なものなのか?」
リールベルトが興味深そうに質問する。習得する余地がある未知の概念なら知っておきたいのだろう。
とはいえ言葉を濁したが磁場とは魔力のことだ。少なくとも私の世界では魔力の検知には適性が必要であり、残念ながら魔法を扱えないものは基本的に魔力の検知も出来ない。
……この世界にも魔力があり、空気中にも極少量とはいえ漂っているのは感じている。大本が同じとは限らないが、似たように扱えることは転移初日に確認済みだ。ただ他人の適性の有無を測るにはそれこそ専用の器具が必要だし、そもそも私は扱ったことが無い。
「いえ先天的なものです。申し訳ありませんが後天的に習得するのは難しいと思います」
────その後も幾つか情報を交換。
出し渋る情報も彼等の元々の目的と思われる「私が三人全員と戦う」という条件を提示することで引っ張り出すことが出来た。私としてはフロアマスターにはあまり興味は無いので、仮に負けてしまってもここまで情報を引き出せた時点で万々歳である。
ただ「わざと負けるのは絶対に了承出来ない」と敢えて大声で宣言することで受付さんを巻き込むことは忘れない。流石に彼らもプライドがあるのかさも当然のように引き下がり、これにて200階初日は平穏無事に終えた。
▽ ▽ ▽
『試合決定 リールベルト VS クーデリア・リーフィス』
後日、掲示を見たクーデリアはにやっと笑う。
「ちょっとだけ、雷鱗龍を思い出す」と。
そして趣味で買ったHardyを軽く1ショット分流しこみつつ、少しだけ気まずそうに補足する。
「偉そうに言ったけど、まあ流石にソロじゃ今でも勝て無いかな……。ダンジョン外の野良ならいけると思うけどね。そも付与師がソロって状況がもう色々と駄目だよね。前衛欲しい。トゥリオ来て」
クーデリア・リーフィス
通称クー子ですが、ちょっと仲間ロスで寂しがってます。
(酒が入ると調子に乗りつつ、抑えてる感情が出やすくなる)