誤字報告ありがとう御座います。
毎回非常に助かっております!
ハンター試験編終了までの流れは固まりましたが、後の原作展開が粉々にクラッシュしそうです。
まあヒソカ蜘蛛先行離脱とか、ポックル不合格(予定)とかしてる時点で今更ではあるのですが…
試験編終わったら暫く〇〇編にはならない形で進むことになると思います。
警告はした。
『更地にする』は流石にハッタリであるが、尾行者がいるのは分かっているのだ。これで大人しく出て来てくれれば儲けものであるが……果たして?
(……駄目か。逃げられた)
こちらの警告カウントが終了する直前。ガサッと音がしたかと思えば、黒いスーツを着た何者かが飛び出し、勢いよくこの場を離れて行ってしまった。……あのような服装をしていたのは、受験者の中ではレオリオさんくらいだったと思うのだが……逃げを選んだ相手はどうにも『絶』と『纏』を扱えるようであった。
(んーそうなるともしかして……さっきの人はハンター試験の運営側の人? 無人島での試験だし、今までの試験に比べてまとめての監視は難しいはず。もう人数も少ないし、下手すると受験者一人に一人の監視が付いている可能性すらある)
これはちょっと早計だったなあと反省しつつも、拠点に戻る直前の…
(尾行者は、さっき逃げたのを除いて他に何人いる?)
(1)
拠点の木からその答えを得た直後、今度は一切の警告無しで先ほどの茂みに向けてナイフを投擲。圧を前面に出し、若干ながらも殺意を乗せたその攻撃は、遂に残り1名の尾行者を炙り出した。
「待ってお姉さん! 俺だよ! 」
「ゴン君!?」
茂みの中から飛び出て来たのは、試験中に知り合った仲ではキルアと並んで最も交流が深い、ゴン君だった。
▽ ▽ ▽
彼は己のターゲットが私であることを素直に自白し、プレートを狙うために隙を窺っていたことを含めて話してくれた。とはいえ観念したのかというと、そういう訳でもないようだ。
「えーと……つまりゴン君の主張をまとめると……合格する為にも『私のプレートが欲しい』。だけどまともにやっても奪えそうに無いから『別途勝ち目のある勝負をして、もし勝てたら譲って欲しい』……で合ってる?」
「うん!!」
(阿呆か────!!!)
阿呆である……これは超級の阿呆である。幾らなんでもこちら側にメリットが無さ過ぎる。一応の前提として、私はゴン君に合格して欲しいとは思っているが、その優先度は当然、私自身の合格には大きく劣る。何なら今ここでゴン君を無力化してプレートを奪い、合格ラインの6点としてしまっても良いのだ。中々に破天荒な子だとは思っていたが、それが分からぬ程に考え無しだとも思えないのであるが……。
「……私がそれをやって何か得があるの? それこそ私が不合格のリスクを負うに値するリターンを提示出来ないなら、残念だけど交渉の余地は無いよ」
……これが最後通牒だ。知り合いといえども限度はある。そもそもこの話し合いの場自体が私の善意で成立しているものである限り、決定権は常に私にある。
私が向ける冷えた視線から意図を感じ取ったのだろう。彼の表情からはいつもの人の良い笑顔は消え、覚悟を決めた真剣な眼差しで私に語りかける。
「タダでくれって訳じゃない。勝負に勝ったら譲って欲しいんだ。それに結果を問わずに残りの日数……俺がお姉さんをサポートする」
「駄目。それじゃ弱過ぎる。悪いけど私のターゲットは、仮に今のゴン君が全力でサポートしてくれても、勝率はそこまで上がらない」
「……なら、この試験が終わった後に何でも言う事を一つ聞く!」
「足りないし、履行される保証がない。そもそもまだ最終試験が残ってるよね? 私がそこで「不合格になれ」と言ったら、合格を諦めるの?」
「あ……えーと……ハンター試験が終わった後なら……その……暫くは……」
どうにもこの子は真っ当な交渉には向いていない気がする。年齢が年齢なので仕方がないが、前提をひっくり返すような奇策だけで何事も解決するというものでもないだ。
……とはいえ、私の最終目標を考えるなら将来性が高そうなゴン君を
(問題は私のプレートを渡すと残り4点も必要なところ……流石に追加で4人も狩れるかは分からないし、ギタラクルを狩るのが現実的な選択肢に入ってきてしまう)
正直やりたくないし、かなりの愚策なのも否定出来ない……。ここで話は終わりだと言わんばかりにゴン君に襲いかかった方が、トータルで考えてもきっと幾分か楽なのだろうが……。
「暫くじゃ駄目。きっちり1年間は働いてもらう。働き次第では自動更新ね。後で書面にも起こすから絶対に遵守すること!」
「え! 本当!?」
「まだだよ、私のプレートをゴン君に渡すのは四次試験の終了直前。またその際に私の得点が9点を超えていない場合には、プレートは渡さない。何ならその時点で5点とかなら、ゴン君のプレートを力尽くで奪っちゃうかもね? そんな事態を避けるためにも、君は四次試験中、全力で私をサポートする必要がある」
「うう……はい。あっ……でもそうなると勝負は?」
「勝負は要らない……というより、これは最終試験にでも持ち越させてもらうわ。最終試験で似たような状況になられても困るし……その時こそ、ゴン君にも勝ち目があるような勝負で決着をつけましょう。まあ最終試験の内容は知らないし、やらない可能性の方が遥かに高いけど、一応勝負内容は考えておいて」
きっと情が湧いて話し合いの席についた時点で、私の負けだったのだろう。
こうして奇妙な契約を交わした私達は、四次試験の残り時間、運命共同体…というにはかなり私有利なタッグを組むこととなったのである。
▽ ▽ ▽
折角抱き込んだ有望なハンター候補である。ゴン君にはヒソカと同じく私の出自、目標、使命、そして私の扱う付与の概要を伝えておいた。
途中何度か頭が爆発する音が聞こえたが……可能な限り分かりやすく噛み砕いて説明することで、何とか理解してもらえた。他は兎も角、使命の内容はかなり複雑でややこしいからね……。
「お姉さんってこの世界の人じゃなかったんだ……世界って……実は広いどころじゃ無かったんだね!」
「ええそうね……本当にそう思うわ」
私の話を聞き終えたゴン君は、言ってくれればこんな約束なんてしなくても手伝ったのに……とでも言いたげではあったが、それが私の性格なのだから仕方がない。他者からの善意を一方的に期待するなんて、どうにも私の性には合わない。ただまあその代わりに、こうやって意欲を煽ることくらいは許されるだろう。
「『異世界の救世の英雄を元の世界に帰す』なんて、プロハンターの仕事にしても大偉業なんじゃないかな!」
「お姉さんってそんなに凄い人だったんだね……。まるで物語の主人公みたい!」
正直な話、サーガに謳われるような救世の英雄に相応しいのは、きっと私ではないのだが……それでも英雄の一人というのは決して嘘偽りではない。それに協力者のモチベーションは高いに越したことがないので、この程度の煽りはあって然るべきなのである。
……因みに念については教えていない。試験中に教えるには純粋に危険なことが一つ。私の持つゴン君へのアドバンテージが消えてしまうのが一つ。そしてその辺は全て師匠であるヒソカに丸投げするつもりなのが一つだ。私はまだまだ教わる側の存在であり、人様に教えられる段階にいるとまでは思い上がってはいない。そもそもこれは私の目標の達成確率を1%でも上げる為の契約なのだ。こちらが過剰に世話を焼いて時間を浪費してしまうようではあまりに本末転倒だ。
(ゴン君についてはこれでヨシ……ただ色々と話している内に冷静になってきた。やはり私としてはギタラクルと戦うのは避けるべき話だ。どう考えても無駄に高いリスクでしかない。そう……例えば
『ギタラクルが6点分のプレートを所持した状態で無防備に寝てるところを一方的に発見する』ような……そんなあり得ない程の幸運がその場に転がっている訳でもない限りは、欲を出すべきではないだろう)
「ゴン君にはゴン君の目標があるだろうけど、可能な限りは私の目標を優先して欲しい。勿論どうしても駄目な時はそう言ってくれれば、私の方でもある程度は譲歩するからね?」
「うん。ありがとう……もう知ってると思うけど、俺は俺の親父に会うためにハンターになりたいんだ。ただ、探すにしても手掛かりがある訳でもないし……探すのはお姉さんの目標を手伝いながらってのも良いんじゃないかなって思うんだよね。……だって異世界だよ! 魔法だよ!? ハンターじゃなくても誰だって絶対気になるよ!! むしろ親父の方から近寄ってきても不思議じゃないんじゃないかな?」
ゴン君のお父さんはプロハンターの最高峰……『
(こうやってコネを辿って行くと、どんどんとんでもない人に繋がっていくな……まあ私自身も元の世界であれば大概ではあるのだけど……。ただ子供に自分を探させる父親って、あんまり褒められたものでないのがちょっと気になるかな?)
▽ ▽ ▽
その後もゴン君と互いの生い立ち等を話している内に、どうやら夜になってしまったらしい。
その日は一旦解散とし、明日の朝にまた集合として、それぞれの寝床に戻った。……私にはこの拠点があるが、ゴン君は一体どのように夜を過ごすのだろうか? とはいえ、幼少より森を駆け回って生きた野生児ともいえる側面を持つ彼である。心配する方が野暮というものだろう。
四次試験はまだ初日。本格的に動くのは明日でいいだろう。
私はロードに見張りを頼んで、野宿にしては随分と快適な寝床で、リュックを枕に就寝した。