近接戦闘技能は
イルミ>>>>>クーデリアです。
仮にこれが稽古だったら相手にもなりません。
達人の中の超上澄み VS そこらの道場の黒帯みたいなもんです。
土の中に埋まっている人間にとって最も恐ろしい状況は何か?
窒息?餓死?そのどれもが恐ろしいが、より早く、より確実に人を死に至らしめるものがある。
それは……
『圧死』である。
▽ ▽ ▽
「なんだ…これは? どういう状況だ!?」
ギタラクル…もといイルミ=ゾルディックは困惑していた。6点分のプレートを集め、ヒソカと軽く会話をしてから土の中で眠っていたところ、殺気を感じて起きてみれば、周囲の土が急速に硬質化し、己を押し潰さんと迫って来ているのだ。驚くなという方が無理な話だ。
(地震…? いや、それだけでは土が硬質化する理由にはならない。つまり今俺は、何者かによる
ゾルディック家仕込みの身体改造により、腕を
しかしそれは、地面の圧縮速度及びその硬度が、加速度的に増していかなければの話である。
(不味いか? 何とか右半身は出せたが、左足と左腕は埋まったまま
地面の揺れに合わせ、ギギギギギギと鈍い音が断続的に響く。地層の一部に亀裂が生じる程の圧倒的な力が、イルミの強靭な肉体をただ無慈悲に圧し潰していく。
(俺がこの場に来たのはヒソカが居たからだが…まさか謀ったか? いや…あり得ないか。ここで眠る選択をしたのは俺自身だ。任意の場所に誘いこんでの罠という線は流石に薄い)
俺に痛みは効かない。効かないとは耐えられるということだ。…既に左足は捨てている。骨は砕け、肉まで圧し潰されている現状、治療には長い時間が必要だろう。それこそ義足も選択肢に入るほどの重傷だ。
(左腕は手首から先は死んだが…腕自体は無事…ただこれはキツイかもな。流石にこれほどの重傷を負ったのは初めてだ。そしてそれが出来るレベルの能力者を相手に、残りの手足で戦わないといけない。ハンターライセンスは次の仕事に必要だったけど、これじゃあ割に合わないな。)
己に残された戦力の分析は済んだ。
さあ次は…と考えた矢先、地面の揺れと圧縮がピタリと止まる。
そう認識した直後の俺の眼前には、43番の青髪の女…
杖を振りかぶるクーデリアの姿が迫っていた。
▽ ▽ ▽
「杖に『壊』を付与! 死ねえええええええええ!!」
最早蛮族を疑われるようなシャウト…魂の叫びである。「死ね」とか言っちゃってるよ私…とどこか冷静になりながらも、身体の調子は最高潮だ。最近はオーラオーラで魔力全開!って訳にはいかなかったからね。久しぶりに本気で魔法らしい魔法を使ったと思う。『念』の付与も一応魔法に分類されるけどさ。
しかしそんな最高潮な一撃は、あまりにも巧みな体捌きですらりと躱される。残った右足と上半身のわずかな捻りでの最小限の回避であり、思わず見惚れてしまう程に洗練された動きだ。そのまま右手に持った針で私を刺そうとしているようだが…流石にそれは欲張りすぎだと教えてやろう。
私の全身全霊を賭けた『凝』+『壊』の一撃が、足元の地面に衝突。その瞬間、破滅的な轟音とともに発生した衝撃が、私もろともギタラクルの身体を吹き飛ばした!
――残されたのは、人がすっぽりと数十人は入るほどの大きなクレーターである。
片足ながらも、これまた巧みな体重移動で転ばずに着地してみせるギタラクル。イマイチ分かりづらいが、驚いたように目を見開き、初めて私に向けて声を発する。
「君…操作系だよね? なんだいその威力? 確かに操作系なら物に多くのオーラを籠めれる訳だから、不可能ではないのかもしれないけど、これはもうそういう範疇じゃないと思うよ」
「操作系ってのは正解です。あと申し遅れましたが、私は貴方を『狩るもの』です! 持ってるプレート全部くれませんか? そうしてくれたら見逃しますよ?」
「俺のプレートだけじゃなくて? 6点以上に意味はないよ、この試験。」
「それがそうでも無くてですね、一身上の都合であと4点必要なんですよ…。」
完封勝利とまではいかなかったが、相手は明らかに重症。一方的に襲ってなんだが、ここらで手打ちにしてくれるなら、私としてもありがたい。手負いの獣はなんとやら、たった一合の近接戦だったが、それでも体捌きについては圧倒的に私よりも格上だと分かる。…やっぱり強いよキルアのお兄さん…私だったらきっと痛すぎて戦闘どころじゃないもの。
「自分のプレートを失ったってことだね。いや…譲渡もあり得るか。点数的には雑魚を二人狩ったんだろ? 本来ならあと1点で良いのに…俺からすればいい迷惑だよ」
「まあ、それを含めての試験なんで…ただ私の場合は未来への投資かな?」
うーむ参ったな…この人結構頭の回転早くて会話が楽だ。殺し屋だとかターゲットだとかの要素を抜きにすれば、話友達にだってなれるかもしれない。でも悲しいかな…これ試験なのよね。
「ヒソカの弟子なんてやる奴はどこか頭が狂ってると思ってたけど、いやだねほんと。あっプレートは渡さないよ。次の仕事にライセンスが必要でね…これで帰ったらただ大怪我しただけになっちゃうよ」
「大怪我じゃすまないかもしれませんよ?」
「それは無いね。君の攻撃はもう当たらないからさ。」
ムカッとくるね…随分な言い草である。近接戦闘の技術に天と地ほどの差があるのは既に感じているが、私の本職である付与師は、本来支援職。近接戦闘などするべきものでは無いのだ。今度はそれを教えてあげるとしよう。
第二ラウンドの開始は、即席爆弾と化した試験管の投擲から始まった。
▽ ▽ ▽
ゴン=フリークスはただその戦場を見つめていた。
そこに広がるのは、割って入るのが馬鹿らしく思える程の攻防の応酬である。
投擲された試験管は全て途中で針によって叩き割られ、無数の爆発音が環境を支配する。かと思えば今度は土が盛り上がり、ギタラクルの残り一本の足を絡めとるように蠢くが、捕まる前に高く跳躍。そのまま上空から投擲された大量の針を避けるためか、蠢いていた土はピタリと停止した。どうやら操作出来る数には限りがあるようだ。
しかしお姉さんがもう一度杖で地面を叩いたかと思えば、一帯の地面が沼地のように柔らかくなる。これには流石のギタラクルも対処のしようがなく、着地時にバランスを崩すことで立つだけでも難儀する状態へと追い込まれてしまった。
そこに間髪入れずに投げ込まれた4本のナイフについては、全て素手で弾かれてしまったが、今度は弾かれたナイフからまるで旋風のような風が巻き起こり、ギタラクルの身体の周囲を巡る。…この状態ではまともに動くことは出来ないだろう。
「これで詰みです。服に『火』を付与…ヒソカより更に頑丈だと信じてますよ」
服に引火した火は風によって煽られ…即座に肥大化。火災旋風の如く吹き荒れる熱の暴力が、ギタラクルの身体を蹂躙する。あまりの激痛に暴れているように見えるが…火が収まる頃にはこれで勝負はついたと、そうゴンが確信する程に、目に見えるダメージは深刻だった。一部の部位は炭化しているようにすら見える。常人であれば、数分後には絶命していると断言できる程の酷い有様だ。
(これが…付与師。異世界の英雄さん…。こんな…こんなにも強かったんだ…!)
ゴンはクーデリアの勝ちを確信し、一度近寄ろうとした…しかし、何かが引っ掛かった。それは戦場から少し離れていたからこその違和感。ギタラクル自身のダメージは疑いようもないのだから、きっと違和感はそちらではない。…では何か? 一体どこに違和感があるのか?
そう思考したゴンが目にしたのは――
その手の杖で、