割と丁寧に進めたからか、思いの外長引いたハンター試験編もそろそろ終わりです。
長かったなあ…
そして私の作品の醍醐味?
宴会ステンバーイ
『第四試合 キルアVSクラピカ』
純粋な戦闘能力だけなら間違いなくキルアが上…クラピカさんにもそれが分かっているのだろう。試合開始の前に『先に有効打を与えた方の勝ち』というルールを提案した。
地力で上回るキルア側にそれを受けるメリットは薄いため、恐らく駄目元での提案だったと思うが…キルアとしても先ほどのゴン君のように下手に耐えられても面倒だと判断したのかこれを了承。こうして、三次試験中に協力し合った仲間同士の決闘が開始された。
(クラピカさんは間違いなく強い…天空闘技場でもいずれは200階に到達するだけのセンスと力があることは疑いようがない)
しかし相手は8歳の時点で200階に到達した、正真正銘の怪物である。変わった足運びをしたかと思えばキルアの姿がブレ、幻影…というより残像?が無数に出現する。そんなとこまで氷雨に似てるなあと能天気に考えていたところ、キルアの手刀が背後からクラピカさんを襲った。
それを間一髪で察知して躱してみせたのは見事であったが…回避を優先して体勢を崩してしまったところをキルアが追撃。腹に拳の一撃をまともに受け、片膝をつく程のダメージを受けたクラピカさんは、敗北条件を満たしたことを認め、そこで降参した。
(ヒソカといいキルアといい…クジ運悪い人だなあ…。いや、ネテロ会長が組み合わせを決めたのだから、別に運ではないのか…言うなればそういう天命なのかもしれない)
「まあそっちの都合を聞いてる分、ちょっと悪いとは思うけどさ…今の躱せたクラピカなら、どこかでは勝てると思うぜ? それじゃお先に」
合格を勝ち取ったキルアはそう言い残し、今度は既に合格済みの私…とヒソカのもとまで近寄ってきた。
「よっ、これで俺もゴンもプロハンターってね。クー子もヒソカもおめでと」
「ええ、キルアも合格おめでとう」
「やっぱり君はすごくイイね♥ 僕の目に狂いは無かったよ♠ イルミよりもずっと才能あるんじゃないかな?」
「…ん? ヒソカって兄貴のこと知ってるの? 友達作るタイプじゃないと思うんだけどアレ…」
話の流れでそのままギタラクルがイルミであることをカミングアウトしたヒソカが、キルアの様子を見に来ていたことや、四次試験での私との死闘を嬉々として語りだす。キルアは何度か信じられぬものを見るような目で私を見るが…ちょっと恥ずかしいのでやめて欲しい。
次の試合が始まるから、せめて声は落としてねとお願いしたが、キルアの
「兄貴だっさww 仕事でライセンス必要で受けに来といてボロクソに負けて落ちるとかwww これネタに10年は笑えるわwww」
という発言は少々いただけない。
もし彼が最終試験に残っていれば、組み合わせ次第ではキルアが不合格になっていた可能性もあるのだ。
「あまりお兄さんを悪く言っては駄目だよ?」
とは叱っておいたが…家庭が家庭なのであまり強く言えないのが現実である。
(家出するくらいだし…兄弟仲も悪いのかな?)
『第五試合 ハンゾーVSスパー』
キルアとヒソカの二人と会話していたため、しっかり観戦することが出来なかったが…どうやらハンゾーさんが勝ったようだ。スパーさんは狙撃銃で武装していたが、決闘は屋内の拓けたスペースかつ真っ正面からスタートする都合上、ハンゾーさんのスピードに対応出来ずに組み伏せられてしまっていた。
それこそ4次試験のような環境であればスパーさんが勝つ可能性も十分あり得たとは思うのだが、流石にこの決闘スタイルでは一片の勝ち筋すら残ってはいなかったようだ。
ひとしきり兄を嗤い終えたキルアが落ち着きを取り戻す頃には第五試合も終了しており、彼もまた次の第六試合の観戦に意識を切り替えていた。
そう、次の試合はクラピカさんとレオリオさん…四次試験中にゴン君経由で話を聞き、最終試験前の待機時間にも詳細を聞いたが…ハンター試験中、殆どの試験で行動を共にしていた二人組である。私としても二人とは交流があり、仲間だとも思っているので、この試合は真面目に見届けたいと思っていた。
『第六試合 クラピカVSレオリオ』
レオリオさんの格闘能力は意外にも高い。本人は医者志望とのことで…いったいどこでそれ程の能力を? と気にはなるところだが、それについては一旦置いておこう。
方や木刀の二刀流、方や折り畳み式ナイフを得物としての決闘…互いに残りの合格機会が少ない二人、特にクラピカさんは既に二回も機会を逃しているのだ…ここで半端な妥協をすることはないはずだ。
戦いは一見互角のように思えるが…明らかにレオリオさんの方が体力の消耗が激しい。我流の喧嘩殺法と体系立てられた武術に通ずる動きであれば、前者の消耗が激しいのは必定。双方の得物のリーチの差もあり、戦いはクラピカさん有利に進んでいた。
「緋の目のときはもっと強かったぜ? 理性を飛ばさないとなれないみたいだから、まだ制御出来てないってことなんだろーけど、素の状態でもクラピカが上かな?」
「レオリオには伸び代を感じるケドね♣ とはいえまだまだ青い果実…♥ クラピカに勝つには、些か練度が足りていない♠」
体力が切れかけていたところを、脛に2発、頭に1発…木刀が強く打ち据えられて、ついにレオリオさんがダウンしてしまう。
「お前の夢は、私にも尊く思う…しかしそれが、私の使命を諦める理由にはならない!」
クラピカさんのこの言葉を受け、レオリオさんは「まいった」と宣言した。これで負け上がりが確定し、彼の残りの機会は1つだけだ。
目を伏せて複雑そうな表情を見せるクラピカさんに対して「心配すんなよ、次できっちり合格して見せらあ」と胸を張って励ますことが出来るレオリオさんは、大した大人だと私は思う。
…私より年下なんですよね? レオリオさん?
『第七試合 スパーVSボドロ』
この試合は衝撃の試合であった。試合開始直後に距離を詰めるボドロさんに対し、スパーさんが斜め後ろ方向にロール回避、そのまま間髪入れずに発砲したのだ。
(この距離で本当に撃った! 当たりどころが悪ければ即死…流れ弾が誰かに当たって死んだとしてもそれで失格というリスクを負ってでも、ここで本気で勝ちに来たんだ!)
対戦相手を死に至らしめれば失格…しかしそれは裏を返せば致命の前に負けを認めさせれば良いということ。熟練のスナイパーであるスパーにとっても、このようなアクロバティックな銃撃はそこまで慣れたものではない。100%命中する保証などどこにも無かったが…
放たれた銃弾はボドロの右足ふくらはぎに命中。老齢の武術家であるボドロは痛みにも強く、倒れ込むことこそ無かったが…それでも戦闘の継続は難しそうだ。太めの血管を傷付けたのか、銃創からは止め処なく血が溢れ、治療が遅れれば出血多量で死んでもおかしくない程の重体である。
反射的に試合を止めろと叫ぶレオリオさんであるが、それはこの試験を取り仕切る試験官…並びに運営を担う審判を含む協会員が許さない。…何故ならボドロさんが負けを認めていないからだ。
実は
それについては言わないようにする。あまりにもあんまりな結末だからだ。
(救命行動を取った結果、相手を不合格にさせて自分が合格するとかレオリオさんは絶対怒るしね…)
実はこのルールを第三試合の途中で聞いた時から、その戦法についてピンとは来ていた。…ただ、内緒にするだけの自制心が私にも存在したのだ。
(適当に劣勢になった人を助けると騒いで乱入すれば、それだけでその人(助けると言われた方)以外は全員合格出来るってのは、ちょっとルールに不備があり過ぎるよね…。ネテロ会長が考えた試験らしいし、その辺は後で指摘しておかないと)
ボドロさんがそれに気付いていたかまでは定かではないが…打算無しで己の身を案じるレオリオさんを手で制し、この試合の敗北と残りの試合の棄権を宣言。
この瞬間…ボドロさんを除く残り2名、スパーさんとレオリオさんの合格が確定した。
第287期ハンター試験
合格者8名(内新人6名)
▽ ▽ ▽
ハンター試験合格後の講習会は明日とのことだったので、私達は暫く自由時間。私の個人的な話の方も、ネテロ会長に「講習会が終わった後」と言われてしまった…ライセンスの有無によって話せる範囲が違うということなので、まあそれもそうかと納得する。まだライセンスは未発行だからね。
因みに最終試験は協会が運営しているホテルで実施されていたため、食事にも寝泊りにも不自由しないし勿論タダだ。
治療の為に運び出されてしまったボドロさんと、絶賛気絶中のゴン君は残念ながら不参加確定だが、私は今このタイミングで、同期のプロハンターとなった皆さんにこう提案をするのである。
「合格を祝して宴会しませんか!!」
と。
▽ ▽ ▽
「参加者7名!実質全員集まりました!ありがとう皆!この日のためにハンター試験受けました!!」
「折角のお呼ばれだから来たけどよ、テンションたけーなおい…」
「あの子、普段からあんな感じなの?」
「知らねー。なんか頭のネジ外れてるのは事実だし、これが素なんじゃねーの?」
上からハンゾー、スパー、キルアである。特にキルアからは失礼なことを言われた気がする…素ではあるけどさ。
ハンゾーさんは他人から渡された食事は喉を通らないとのことなので、持ち込みの食事だけで楽しんで頂くように配慮することでご参加頂き、スパーさんには唯一の同性ということでしつこく頭を下げることでなんとか参加して頂いた。
(さ、流石に男6女1の酒の席は後で仲間に怒られそうだからね…うちのパーティは女5男3で普段は女の割合のほうが高いし…)
「ゴンには悪いが…まっどうせ酒飲めないしな!折角だからこのレオリオ様が二人分飲んでやるぜ!」
「お前も頭に木刀を受けているのだ…程々にな」
「おう…ていうかぶつけたのお前じゃねーか! 普通に滅茶苦茶痛かったぞおい!」
クラピカさんとレオリオさんは始める前から楽しそうだし、特にレオリオさんは集まったメンバーの中で数少ない『酒を嗜む同士』として仲良くしていきたい。
「師匠も実はイケる口ですよね? 普段は飲まないですけど、何度か食事中にペアリング勧めたら結構飲んでくれてましたし?」
「そうすると君が嬉しそうだったからね…♥ 実は僕は、尽くすタイプの男なのさ♠」
「ふっふっふ…分かってるじゃないですか! 今日はとことん付き合ってもらいますよー!」
料理もお酒も制限などつけない。重体かつ不合格のボドロさんは兎も角として、本当はゴン君にも参加してもらいたかったが…いつ目覚めるかが分からないのだから仕方が無い。こういう宴会は開催時の熱量こそが一番大事なのだ!
「はーいそれじゃあ287期ハンター試験の合格を祝して、同期飲み会開催しまーす!!」
「おー!」
元世界とはどうにも周囲のテンションが違うが…酒好きそうなのが私除いて1人か2人くらいしか居ないのだから仕方ないかな? まあ…お酒飲むだけが宴会じゃないし、折角の集まりなのだから同期同士で楽しく交流して欲しいものである。
そして私は今日、朝まで飲み倒すと決めている!
そう、今日こそが真の意味での初運用。心地の良い酔いだけを残し、嘔吐や寝落ち、危険な前後不覚と不快な二日酔いを防止することに特化した私の究極の発!
無敵の『
▽ ▽ ▽
『
能力発動者の肉体に「発動者にとって有害なものを無害化する状態」を最大12時間継続する。主にアルコールの分解によって生成される有害物質の無害化に特化しており、逆にそれ以外への効果はそこまで強くない。酔いが過度に周り過ぎないよう、適度にストップする親切設計付き。
劇毒や、条件を満たすと即座に支配権を奪うタイプの操作系には多少のレジストが限界である一方で、弱毒や、徐々に影響を与えて最終的に支配権を奪うタイプの操作系には強い。酒のついでの割にはそこそこ役に立つ能力である。実は風邪を含む病気にも効果があるのでお仕事にも安心。
誓約:他者を害する目的では使えない。
解釈次第では化学兵器を用いた自爆特攻(己は無事)が出来てしまうためそれは誓約で封じている。お酒特化なので実際は不可能なことには目を瞑る。
制約:月に8回まで使用可能。
回数のリセットタイミングは月初の0時とする。
1回の最大継続時間は12時間で、それを過ぎると強制解除されるが、任意のタイミングでの解除も可能。
任意強制を問わず、解除された時点で『酔いが飛び、素面の状態』になる。これは飲んだくれてまともに生活しなくなる己を危惧しての戒めであり、緊急時に即座に仕事に入るための探索者としての覚悟である。
ボドロさん…乙。
完全にとばっちりで殺された原作よりは遥かに救われる決着だと思います。ネテロから格闘能力レオリオ以下とされた人が、銃のエキスパートに勝てるとも思えませんしね…。
そしてクー子の2つ目の発の詳細情報開示。酒好きにとっては健康被害と二日酔い無く際限無く好き放題飲めるとかいう神の奇跡みたいな能力です。
飲食についてはライセンス発行前ということもあり、お代はホテル側(協会側)を想定してます。