好き放題やる回です
クー子の発は酒のカロリーも消えるご都合能力とする
(おつまみは除く)
「でね!でね!そこで私が服を燃やしちゃう訳ですよ!これもう防ぎよう無くないですか? 魔物は服なんて着てませんからねー、人間様の服なんて、こんなん燃やして下さいって言ってるようなもんじゃないですか!?」
「おーそりゃそうだ!燃やせるんなら燃やすよな!そりゃあ最強戦術だぜクー子さんよ!これから毎日服を焼こうぜ!」
レオリオさんと同じく、すっかり出来上がってる会話であるが、私は元気です。参加者とのホームコード交換はさっさと済ませているので、もう安心とばかりにくつろいでいる。
既にお察しかもしれないが、魔法についてと異世界については隠さずガンガン話してる。試験が終わり手の内を晒すリスクも下がったし、少なくともこの場にいる人には話す価値があると判断したからこその開示である。
秘諾しないと駄目な決まりは無いし、事情を知ってるプロハンターとのコネなんて、いくらあっても良いからね! もちろん、念についてはこの世界のルールに従ってきちんと秘諾しているので問題無い。
「あれは正直僕もキツかったね…♦ でも対策だってあるから、君も慢心しちゃあ駄目だよ? どうにも君は勝ちが決まったと思うと油断する癖があるからね♣ 今までは誰かがフォローしてくれてたかもしれないケド、いつでもそうとは限らない♠」
「分かってますよぉ…でもしゃーないじゃないですかー師匠?」
「弁明があるなら聞きたいね♥」
「私は本来ソロ専じゃないんですよ!そもそも!燃やされてるのに元気に動ける方がおかしいんです!」
いや本当におかしい。流石異世界人。人体の構造からして違うのかもしれない。いやいや私の世界の紫位級も大概化物ばかりだから、対人戦だともしかするとこれが普通なのかも?
(さっきから思考が適当でしっちゃかめっちゃかな自覚がある…だけどそれが良いのだ! シラフしかない堅物にはそれが分からんとです…)
運ばれてきた熱々の鳥串をゆっくり食みながらも手元の麦酒を飲み干す。これで8杯目だっけ…? 普段ならもう苦しくなる頃合いだが、まるで3〜4杯目くらいの状態で固定されているかのように余裕がある。
(うんうん…ちゃんと能力は機能してるね。まだまだ常識的な範囲とはいえ、検証自体は成功と見て良いはずだ)
「どう思いますかレオリオさん! 火で駄目なら雷ですかね!? でもなんかそっちは効かない人がいるらしくてですね! なんかいい案ありますかレオリオさん!」
「滅茶苦茶固くするのとかどうだ! 服をそのまま拘束具にしちまえば動けねーぞ?」
「それ採用!!」
▽ ▽ ▽
「こんなんに兄貴が負けたのか…奇襲ありとはいえ情けねーぞイルミ…」
「いやあ実際に戦闘を観てれば、君も情けないとは思わないと思うよ? その辺はゴンがいれば説明してくれたと思うけどね♠」
独り言で愚痴っていると、先程までクー子と談笑していたヒソカがこっちに来る。正直鬱陶しいが、こいつはあのクー子の師匠だ。この際こいつで良いだろう。
「あーあの時の地震がクー子の魔法で、馬鹿でかいクレーター作って沼地作って燃やしてとか言う話だろ? かなりぶっ飛んだ話だし、負けたのが嘘だとまでは思わないけどさあ…」
キルアとしては、自身が内心恐れていた身内が、あそこで呑んだくれている
正直滅茶苦茶隙だらけだし…少なくとも今なら確実に殺れる。ファンタジーど真ん中な魔法を扱う異世界人で、三次試験で空を飛びながら見せたあの異様な圧力、そして天空闘技場の200階闘士であることまでを鑑みれば、かなりの力を持っていることは認めざるを得ないのだが…それとこれは別物である。
「ゴンがバラしたとはいえ、魔法のことも異世界のことも、ここまで開放的に語れるのも大したものだね♥ まあ適性が無いと使えないみたいだし、知っていても対処が難しいからこそというのもあるのだろうけど…♠」
「逆にあんたもよくアレを弟子にしたね…育ててもいずれ元の世界に帰っちゃうけど、それで良いの?」
最早クー子の師匠がヒソカであることより、ヒソカの弟子がクー子であることの方が特異に思えてきた…。弟子が弟子なら師匠も師匠である。
「まあね♣ 惜しいとは思うけどそういう契約だし。僕としてはあと一回…夢のような思い出をくれればそれで十分かな? 彼女はその一回を嫌がりそうだけど♦」
「…まあ、そっちが納得してるなら良いんだけどさ…。はー、俺はどうしよっかなー。一応興味ある程度だったハンターにはなれちゃったし、ゴンの親父探す旅にでもついていこうかなー」
「…やることが無いなら一度家に帰るのも良いかもしれないよ? イルミも心配してたしね♠ これからもゴンと仲良くするつもりなら、家族には説明しておいた方が良いんじゃないかい?」
「はぁー!? ヒソカがそれ言うのかよ?
いや…うーん…でもなあ……」
「まあどうするかまでは君の好きにすれば良い♠ 因みに、本気で家を潰したいなら手伝うよ? それはそれで面白そうだからね?」
「……それは止めとくよ。一回帰るかどうかは後で決める。」
「残念♥」
▽ ▽ ▽
その後にレオリオさんと飲み比べをやって完勝(当然)したので、今度はハンゾーさんの近くに移動する。どうやらクラピカさんと話していたようだ。
「…そちらは随分と派手にやってるな。それで、その両手の酒はどういうことだ? 悪いが俺は…」
「あー分かってます分かってます! これ全部私が飲むんで…」
「冗談だろ!? もう一升瓶三本は空けてるぞ…どんだけ酒豪なんだお前!?」
「…レオリオとの飲み比べを含めれば軽くその倍だ。落ち着けハンゾー。きっと二次試験の大柄の試験官のようなものだ。」
うーんこれは流石のクラピカさん。ブハラ試験官は食の限界突破(予想)であったが、私の場合は酒の限界突破だ。お恥ずかしながらお小水には何度か足を運んでいるが…アルコールが原因で私が倒れることは無いと断言させて頂こう。いや、初運用なのに凄いね『
「ハンゾーさんも大変ですねえ。忍者ってあれでしょう。分身の術~とか、変わり身の術~とか、そういうの。確か雲隠れの上忍でしたっけ? そういうのも沢山使えるんですか!?」
「雲隠流の上忍だ。…残念ながらそういった類のものはまだ使えねーんだ。上の忍びの中にはそれらしきものを使えるのがいるようだから、もし『隠者の書』を見つけだせたら、そういったものも教わるのかもしれんな。」
(多分念でそういう『発』を再現するんだろーなー)
「そうなんですね! 夢が広がりますねえ!」
「お、おう。まあなんだ…お前も頑張れよ。もしオレの国に来ることがあったら、観光の穴場スポットくらいは案内してやるから」
そういって名刺をくれるハンゾーさん。最近の忍者ってオープンなんだなあと思いながらも大切にしまい込む。…実はこれが二枚目だったりするので、案外抜けてる人なのかもしれない。
「クラピカさんもお疲れ様です! ハンゾーさんと何話してたんですか?」
「…私は最終試験でキルアに敗れただろう? 敗北自体は受け入れているが…今後を考えるともう少し白兵能力を上げたくてな。受験者の中でもキルアに匹敵する程の体術で、しかもキルアのような家伝ではなく体系立てられた鍛錬法というものに興味を持ってな…勿論一朝一夕で修められるものではないが、さわりだけでも聞いておきたいと思ったのだ。」
なるほど…これは真面目なクラピカさんらしい発想だ。忍びの養成はそれこそ血の滲む鍛錬の賜物だとハンゾーさんは言っていたが、それでも一定数の人間をまとめて養成するためのカリキュラムというものが構築されている時点で、一定のノウハウが蓄積されていることは間違いない。そこに目を付けるとは…やはりクラピカさんは切れ者と評する他ない。
「って思いますよ?」
「そ…そうか、過分な評価、痛み入る。」
何度か手酌してたらハンゾーさんとクラピカさんが交互にお酌してくれるようになった。そんなに物欲しそうな顔してたかな私?と思いながらも、持ち込んだ二本をきっちり空にしてから次の席へと移動した。
「…意外だな、そちらは結構お喋りな印象だったが?」
「仕事柄、酔客はな…相手する時は大体殺るときなもんで、どうにもな。」
「確かにそれでは対応に困るだろう…私としても、普段の彼女が品行方正な佇まいなだけに、その落差に困惑している。」
<<フタリ ノ ヒョウカ ガ 1 サガッタ!>>
<<ショウゴウ "酒豪" ヲ エタ!>>
▽ ▽ ▽
今度はスパーさんの方に近寄る。この人は静かに飲みたいタイプのようなので、こちらのテンションも抑えめだ。私も落ち着いて飲みたい時は一人かヴァルク、騒いで飲みたい時はリディアかラナとか使い分けてるしね。
…ヴァルク相手に散々愚痴った時もあるが…あれは例外中の例外だ。
「お疲れ様です、スパーさん。本日は急な申し出にもかかわらず、参加していただいてありがとうございます。」
「……それが素で良いの? というより公私をきちんと使い分けてる感じね。まだ若いように見えるけど、働いて長いのかしら?」
スパーさんは大人の女性らしく、ウィスキーをロックで傾ける。うーん渋い!私も落ち着いた雰囲気のバーではよくやるので分かる。あの固いようで柔らかい、アンニュイな空気と低速な時間の流れが最高のスパイスなのだ。
「一応…働いて六年目ですかね? 今は講師と探索者の兼業ですけど、最初の数年は講師一本でやってましたし…あっ今は…天空闘技場の闘士でしたね…。うう…元の世界の役職が語れない…」
「いや…そこまで真面目に答えなくて良いわよ。やっぱり結構酔ってるのね…」
気を効かせてくれたのか、チェイサーとして水を差しだしてくれた。能力のお陰で不要ではあるが…折角の好意を断るのも失礼なので、ここは有難く頂戴することとする。自分も今までの飲みの席では、水はしっかり飲んでたからね。
「ありがとうございます。そういえば…スパーさんはハンターになったらどうするんですか? ネテロ会長にも聞かれたとは思いますが…どんなことするのか気になります。」
「…実はライセンスを取るのが目的で、そこから先というのは無いのよね…。どちらかというと腕試しに近いから、そういう意味ではここで御終いなんだけど…。」
そこでスパーさんはサングラスを外して私を見る。…それは金色の髪によく合う、綺麗な翠色の瞳だった。
「あんたとか…最後まで残った他の受験者を見てると、こんなとこで止まるのが馬鹿らしく思えてね。ハンターになれば行ける国も増えるし、やれることも広がる。だったら、好きなようにこの腕を振るってみようかと思えて来たのさ。世界を股ごうとしてるあんたからしたら狭いかもしれないけど、自分のやれることを精一杯やってみるつもり」
「いいですね!目的なんて一々用意しなくても問題ありません。それにきっと、世界は広いですよ? 異世界なんて、この世界を探索し尽してからでも遅くありません!」
まあ、私の場合はきっと仲間が待っているので…早く帰りたいんですよね。と最後に補足して、スパーさんとの一杯分の会話を終えた。
スパーさんからはこれ以上は語ることはないという空気を感じたので、お礼を言った後にまた別の席へと移っていく。
▽ ▽ ▽
「ふふふ…♦ それで最後は僕のところに帰って来るんだね♥ もしかして、誘ってるのかい?」
「冗談は顔のペイントだけにしてください。それ外したら普通にカッコいいと思いますよ? つけたままだとどこまで行ってもピエロです。」
「…外そうかなあ♣」
師匠がしょんぼりとしているように見える…途中で『あっこれ本当にしょんぼりしてる奴だ』と気付いたので、慌てて追加でフォローを入れる。
「いやですねえ、ほんの可愛い弟子ジョークですよ! 私、今日は朝まで飲むぞと張り切ったんですけど、付き合ってくれそうな人がいないんですよねー。レオリオさんはちょっと調子乗り過ぎて潰してしまったので…ゆっくりチビチビ付き合ってくれる素敵な殿方がいないかな~~なんて?」
「…君がどんなものを
(あっ…しまったこれバレてる…)
「あーえっと…その…ハイ。そろそろお開きにして寝ようかなと思いマス」
「怒ってないよ? 僕も趣味で作った能力はあるしね…こういうのはフィーリングが重要だから、誰かが強制したりするようなものじゃあない♠」
流石は念能力者として長いだけある…
――こうして計四時間にも及ぶ、第287期ハンター試験合格者による宴会はお開きとなった。
▽ ▽ ▽
『
「あっキルア…ごめんね夜遅くまで付き合わせて。今日はもうお休みなさい。」
「ん…ああ。クー子か…お休み……」
特に何をするでもなく、ただ立っていたように見えたが…考え事だろうか? どうにも歯切れが悪そうだったので、「なにか悩み事?」と聞いてみる。
こういうのは聞かれることで初めて言葉に出来ることというものがあるのだ。
「…俺さ、家を継ぐのが嫌で家出したって言ったじゃん?」
「うん。言ったね。殺し屋なんて真っ平なんでしょ。」
「ああ…それは今でも変わらないんだけど、一回家に帰ってみようかなって…変かな?」
ふむ…何か心境の変化があったようだが、私の答えは最初から決まっている。彼の家庭の教育方針問題があるのは事実だろうけど、きっとそこには『愛』があった。普通の尺度で考えれば大層歪んだものであれど、生まれた家の特殊性を考えれば最低限の強さは必須だ。聞いた話では写真一枚にすら億の懸賞金がつくような家庭なのだ。『普通』に育てることが不可能な背景もきっとあっただろう。それに加えてキルアの才能…親としては厳しく育てたくもなるだろう。そして何より…
「キルアは家族を殺したいほど憎んでる訳ではないんだよね?」
殺し屋の家で生まれ育ったにも関わらず、この子は『全員殺す』ではなく『全員捕まえる』と言っていた。本人が殺し屋なんて継ぎたくないと言っているのだから当然のように思えるが、そうではない。殺しが当然の家庭に生まれた人間が、本気で憎んだ相手を殺さないのは逆に特殊な事例なのだ。きっと今のキルアは反抗期の子供のように、自分が信じる正しさと、親が教える正しさをぶつけている段階。自己を確立するために必要な、順当な成長過程にある。
「…ああ。俺は…殺しなんてもう真っ平だってそう伝えて…普通にゴンと友達になりたい。普通に遊びたい。そうできるのが…一番いい。」
「うん…そうだね。私もそれがいいと思うよ。」
それが素直な気持ちなら、きっとこの子は真っ当な道を歩めるだろう。
「確かお母さんとお兄さんを刺して家出したんだったよね? まずはそれを謝って…自分の本心を伝えてみたら? それでも駄目ならもう一度家出しちゃえば良い。キルアはもう、自立できるプロのハンターだし、ゴン君はもう友達だよ。少なくともゴン君は絶対そう思ってる…それは私が保証するよ。」
実際、あそこまで距離が近い同年代の純粋な子が、キルアは友達じゃない等、言う筈がないのだから。
「私は試験後、暫く天空闘技場に戻るからさ。何かあったら来ると良いよ。200階以降の先輩として、色々レクチャーしてあげる!」
ヒソカの試合間隔の問題もあるし、少なくとも一月程は滞在する予定だ。
それ以降はネテロ会長からの話やロードが開発中の能力とやら次第ではあるが…その程度の世話を焼くくらいは良いだろう。
私は私の目標の障害にならない程度に動ければそれでいいのだ。
「ありがとう…クー子」
「どういたしまして! …じゃあもう遅いから、お休み。キルアも早く寝るんだよ?」
その言葉を最後に私達はそれぞれの部屋に戻る。
ハンター試験最終日の騒がしい夜は、こうして静かに更けていった。