試合後。面会が許可されてからとはなったが、リールベルトさんのお見舞いに行った。カードが刺さっていた腕の傷はそう深いものでもないようで、あと半月もすれば十分動くようになるとのこと。
試合結果については受け入れているようであったが、試合展開についていくつかの反省があるようで…
『ヒソカが無傷であるのはブラフだと、途中から気付いてはいた。ただその頃には既に相手の攻撃への対処で手一杯で、そのまま押し切られたのが敗因だ。…もしくは、立ち上がった時点で飽和攻撃を仕掛けて一気に決めていれば、少なくともポイント上は俺の勝ちだった』
と、己の敗因と勝ち筋を分析していた。分析内容については私としても異論がない。
(あと1敗するまでに3勝…フロアマスター戦まで含めれば4勝する必要があるから、ここからが正念場だね)
とはいえあのヒソカが生かしておいたのだ、それはつまりまだまだ伸び代があるということに他ならない。そのようなことを伝えつつも、昨日話そびれてた魔法のことや、ハンター試験のことなどを共有する。流石にまだ入院中の相手なので、お供にお酒が使えないのが少々寂しいところだが…話すべきことを一通り話したあたりで、面会時間の限度がきてお別れとなった。
――そこから数日は平和に時間が過ぎた。
具体的には執筆したり鍛錬したり執筆したり酒飲んだりだ。途中、これも修行とヒソカと一緒に私の全試合ディレクターズカット版を視聴するのは恥ずかしかったが、非常に編集の出来が良く映像作品としても試合映像としてもレベルが高かったので、心なしか満足している。
ヒソカ戦の途中から、隣が何度か不審な動きをするのが怖くて、最後の方はまともに視聴出来なかったが…あの出来なら自分でも買って良いかな? と思い始めてもいる。出来ることなら元の世界の仲間にも勧めたいくらいだ。勿論元の世界にこの規格の再生機器などある訳もないのだが‥その辺は王都の技術者に丸投げしよう。駄目で元々だ。
(ハンター試験が終わってから二週間ほど経過したけど…ゴン君達はまだまだ来ないね? 連絡も繋がらないし…やはり何かトラブルにでもなったのだろうか?)
家出した子が帰ってきたと思ったら、複数の友達を連れてきた。一般家庭ならそこまで拗れる話では無いとは思うが、ご家庭がご家庭である。キルア以外は敷地を跨ぐことを許されず、追い出された可能性すらあるだろう。
(とはいえこちらからやれる事はないし、もう少し待っても良いのだけど…)
実は先日、船の手配をお願いしていたメンチさんからついに返信があったのである。流石に件の島への渡航経験は無かったようだが、メンチさん自身が船舶免許を持ち、船も所有しているとのことなので、島までの往復、及び島内の探索までの依頼を快く受け入れてくれた。
依頼料は破格も破格の500万。プロの一つ星ハンターを、準備含めて最低でも一週間は拘束するのだ。ここまで来るともう半分ボランティアの域で、非常に恐縮だったのだが…
「合格祝いみたいなもんよ♪ それに美食ハンターとしても、未踏の島の食事は気になるからね!」
とのお言葉が返ってきたので、ここはありがたく受け取らせて頂く。
…とはいえ万が一、不可抗力でそのまま私が元の世界に帰ってしまうようなこともあるかもしれない。メンチさんには出発を三日だけ待ってもらうようにお願いし、そこからは怒涛の一日16時間の執筆である。想定していた100時間は少々超えてしまったが、どうにか草稿が完成。一応何部かコピーを残したあと、ネテロ会長にも連絡し、完成した草稿をそのまま協会宛てに送付した。
ヒソカには完成した草稿のコピーを手渡し、私の不在中にキルアやゴン君が来たらきちんとフォローしてあげるように言い含める。有難いことに快諾してくれたので、これ幸いと私は出発の準備を進めた。
(これで今後の心配事は片付いたかな…ロードが示した島には私とメンチさんの二人で行こう。まあなに、示されていた危険度はそこまで高くはないし、念を使えるプロハンターが二人もいるのだ。メビウス湖の内側でまで、即死トラップのような理不尽が控えている可能性は低いだろう。)
▽ ▽ ▽
飛行船と列車を乗り継ぎヨルビアン大陸の東の果てへ。
待ち合わせ場所の港には、既にメンチさんが待ってくれていた。
「お待たせ致しました。突然の依頼にも関わらず、快くお受けして頂き、誠にありがとうございます。」
「あーいいの、いいの。もう試験官でもない同僚のハンターなんだからさ! 歳も近いし、もっと砕けた感じで話なさいな」
「さ、流石にそういう訳には…あっ実は私、先日21になりまして…確かメンチさんもですよね?」
「え!?マジ?同い年だった!? そっかー…もうそれならいっそタメで良いわよ。メンチって呼んで。こっちもクーデリア…99番からはクー子とか呼ばれてたっけ? 私もクー子でいい?」
随分ぐいぐいと距離を詰めてくる…もしや同年代の友達にでも飢えていたのだろうか?
とはいえ彼女からは好意を強く感じるので、決して悪い気はしない。
「はい。勿論クー子でいいですよ! ただ…どうしてもメンチ…と呼ぶのは少し抵抗があって…ごめんなさい。私の中ではメンチさんは、どうしてもメンチ『さん』なんです…!」
「うーん……そっかあ。まあ無理強いは良くないし、難しいならそれで良いよ。同年代の女ハンターてやっぱ少なくてさー。いるにはいるけど交流なんて滅多に無いし…そういう意味でもタメで話せる相手が欲しかったんだけど…」
「自分でもよく分からないんですよね…目上の方でも呼び捨てに抵抗が無いこともあるのですが、どうにもメンチさんには『違う』って気持ちがどこかから湧いてくるんですよ…こればかりは本当に謎です。」
なんでだろーね? なんででしょう? とお互い首を傾げながらも、話し方と呼び方の問題はこれで決着。その後はモーター搭載の船に乗り込みいざ出港とした。
目的地は、ヨークシンと呼ばれる都市の真東にある島である。メンチさんが事前に調べたところ、潮流の関係で波にまかせるだけでは絶対に着けない島のようだ。そのためにも帆船ではなくモーター搭載の船が必須とのこと。
「あーあと詳しくは聞いてなかったけど…どうしてクー子はその島に行きたいの?」
(まあそりゃ聞くよね…心苦しいけど、これから協力して頂く以上、本当のことを話さないと…)
――クーデリア色々と説明中。
「そ…そんな…折角同年代かつ同性の友人ができたと思ったのに!? しかも異世界人で魔法使い!?」
「本当にごめんなさい…あと魔法使いじゃなくて付与師です。広義の意味では魔法使いでも間違いではないのですけど…」
異世界のこと魔法のこと、元の世界に帰るための何かがこの島にあることなど、航行中に可能な限り説明したが、これでは急に梯子を外したようなもの…やはり彼女は少なからずショックを受けたようである。
「あーもー! それならそれで異世界の料理を一つでも多く教えなさいよね! さあほらこの世界には無さそうな、料理やレシピをどんどん言いなさい! それで許してあげるから!」
……メンチさんのこの切り替えの早さにはどこか救われるなあと内心ホッとしながらも、少なくともこの世界では見かけなかった様々な料理や調理法、レシピについてを提供していく。
とはいえ所詮は専門家でもない素人の知識。メンチさんが完全に初耳のものなど殆ど無かったが…それでも彼女は楽しそうに私の話を聞いてくれた。
そんな調子で船に揺られて半日近く…私たちはようやく目的の島らしきところまで到着した。
▽ ▽ ▽
「…侵入者? それは本当かイータ? ……………そうか」
海賊の根城を仕切る海賊頭…という役職で動いていた男の名はレイザー。
その真の役職は『グリードアイランド』と呼ばれるハンター専用ゲームの、ゲームマスターの一人である。
「おい。お前らは留守番をしておけ、もしプレイヤーがここまで来たら待たせとけよ」
「はい…ボス」
ゲーム内での仕事への従事を条件に恩赦をやってる屑ども…下っ端海賊の役割の男どもに留守中の指示を出してから、管理者権限を行使し、侵入者が到着するであろう浜辺の近くまで一気に飛ぶ。…どうやら今回の侵入者は二人、モーターボートを使ってこの島まで到達したようだ。招かざる客など数年振りであるが、来てしまったからには応対しなくてはならない。…実は久々すぎて少し緊張している。
(女二人か、それも中々の腕を持つ念能力者。やれやれ、それだけの実力があるなら、正面からこのゲームをプレイして欲しいものなのだが…)
「あっ人がいますよ! 第一村人発見ってやつです! 早速話を聞きましょう!」
「そうね。調査の基本は聞き込みってのは同意するけど…」
俺を前にしてまるで警戒していないように振る舞う一人と、あからさまに警戒するもう一人…。纏うオーラから感じる練度的には、後者の方が先達と言ったところだろうか? ただ前者もまた能天気そうな言葉とは裏腹に、乱れが少ない『堅』をして、明らかに警戒しているのが見て取れる。
「念のため聞くが漂流者じゃあないだろう? 潮流の関係で波にまかせるだけでは絶対に着けない島だしな。」
「はい。確かに私達は漂流者ではありません。あなたも念を使える人…それもかなりの使い手みたいですし…敢えて隠しませんが、私の仲間の能力で探査した結果、私が探しているものがどうやらこの島にあるみたいで、それを探しに来たんです!」
…つまり故意の侵入であることがここで確定した訳だが、どうにもここがゲームの舞台の島であることまでは知らなそうだ。預言や探査系の能力でこの島が引っ掛かることはない訳ではない。なにせ現実に存在する島を舞台にしたゲームなのだ。公共交通機関の航路等から除外することはできても、能力の条件に引っ掛かったり、能力によって言及されたりすることまで防ぐことなどできない。彼女らもそういった経緯でここに辿り着いた来訪者ということだろう。
「そうか。ここは『グリードアイランド』と呼ばれるゲームに使用されている私有地でな。俺はそのゲームマスターの一人、レイザーという者だ。わざわざ来てもらって悪いが、今回のルートでは外法扱いの侵入者だから、俺は君たちを排除しないとならない。今後、君たちが正しく入島するなら歓迎するけどね?」
一応ゲームの名前は公表したから、あとは自分で調べるなりで概要くらいは掴めるだろう。ゲームそのものを入手できるかまでは知らないが、そこから先についてはそちらで頑張ってもらうしかない。
「ゲームマスターだけが使える特別
ポケットから『
(『私はいせ』…と言っていたな…。伊勢? 流石にこれだけでは分からんが…事情があるなら彼女が正しく入島した時にでも、改めて聞けばいいだろう。悲しいことに今のところ、誰一人として俺に会えたプレイヤーはいないがな……まあ機会が根底から消し飛んだ『一坪の密林』の方のゲームマスターよりはまだマシか)
さあ排除したからにはイータに報告してからさっさと根城に帰ろう。ここに辿り着くために使ったであろう船の持ち主には申し訳ないが、生成した念弾をバレーのスパイクの要領で叩き込むことで処分しておく。
「イータ、終わったぞ。今回の侵入者はゲーム知識なしで分類しといてくれ。」
▽ ▽ ▽
――アイジエン大陸のどこか
(どこここ!? メンチさんもいない! 助けてロード!)
(我は我が対象に含まれるかどうかに冷や冷やしたぞ…どうやら転移魔法の類のようだな。正確にはあれも念なのだろうが…
(ペットに冷静さで負けた!?)
……現在地の情報だけでも集めた後、メンチさんと連絡を取り合い情報共有。メンチさんもまたアイジエン大陸に飛ばされていたようだった。船については諦めるとのことで、何度も平謝りしたが…
「気にすんな!初ハントなんてそんなもん!」
と笑って許してくれた。弁償も不要、むしろ拘束期間が減ったのだから、こっちが悪いと思うくらいだと言われてしまえば、こちらとしては黙るしかない。
(許さん!許さんぞレイザー!! 言ってくれればそのまま船で帰ったのに…強制的に飛ばしてメンチさんの船を喪失させるなんて! もしあれがメンチさんの思い出の船だったらどうしてくれる!!)
この日、私は打倒レイザーを心に誓った。
原作のレイザーは「招かざる客は数年ぶり」と言ってましたが、順番的には団長⇒旅団員の順でGIの島には訪れているはずなので、団長の対処はレイザー以外がやったはずです。
持ち回り制なのかな…?
⇒149話までの流れをよく読むと旅団⇒団長の順番も普通にあり得ました。
なんにせよレイザーと団長のやり取りも見たかったなあ…
レイザーは旅団の船壊してましたけど、団長の船も誰かに壊された?
罪のない船舶達「訴訟も辞さない」
飛行船チャーターして飛び降りみたいなアクロバティックな侵入経路もありそう。