とある付与師の帰還録   作:さくさくの森

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 狩人の酒場とかいうアドレスは自分で見つけないといけないハンター専用サイト…クラピカが見つけた千耳会もそうですけど、あの世界ライセンスだけだと足りないことが多すぎる…。

 逆にライセンスなんて無くても知ってる人は知ってるので、あれば便利程度の扱いなんですかねやっぱり。



34.付与師怒りの情報収集

 

 アイジエン大陸に飛ばされたその翌日。私は天空闘技場には戻らず、グリードアイランドの情報収集を続けていた。理由としては怒りが冷めやらぬ内に、最低でも尻尾くらいは捕まえてやると躍起になっていたからだ。

 

(私と友達になりたいと本気で思ってくれたメンチさんのためにも、そして私自身のためにも! ゲームマスターのレイザーとやらは絶対に許さん!)

 

 とはいえ集まった情報は大したものではない。ゲームの在庫がどこにも無いこと。製造会社も既に解体されていること。少量生産でまともには市販されていないこと。そしてその定価が58億J(ジェニー)であったことくらいだ。……いや、最後の情報は大(・)し(・)た(・)こ(・)と(・)あ(・)る(・)情報か。資金集めの方法にはいくつか心当たりがあるため、58億程度であれば恐らくは問題ない……しかしこれが五倍十倍となると話は別。加えてそもそもの入手経路も分かっていないので、お金だけあれば良いという問題でもない。まだまだ情報が必要だ。

 

 グリードアイランドはレイザーほどの念能力者が関わる、現実の島を舞台にした大規模なゲームだ。それこそ国家レベルの権力や財力を背景にしていることは想像に難くない。念のため調べてはみたものの、普通の情報網で手に入る範囲の情報では、まるで手に負えないと既に確信できている。

 

(一旦落ち着こうか……ここからはハンターライセンスを活用した情報収集に切り替えた方が良い……)

 

 熱くなった頭を冷やしたことで、少し視野が広がった感覚がする。そういえばハンター協会に草稿を送付してから既に数日が経過しているはず……そろそろ届いて目を通してくれただろうか? と期待して自身のアドレスを確認すると、既にあちら側から連絡が入っていた。

 

(昨日の段階で届いてたんだ……気付かなかったけど。……ふむふむ。内容については問題無さそうという話と、早急な執筆に対しての感謝、既に副会長を中心にプロ・アマ問わずに二千人のサンプルを用意して実証試験に入った話、そして最後に謝礼の振込連絡ね)

 

 学術書の草稿として、我ながら中々のものを執筆できたと思っているので、謝礼についてはしっかり受領したい。大体15万文字くらいだから……本の頁数的には250~300頁。挿絵や図解の割合にもよるけど大体400頁くらいの厚みになるだろうか?

 

 製本はまだまだ先だろうし、実証試験の結果によっては最悪製本されない可能性も残っている訳だが……草稿完成までに130時間は掛けたのだ。最低でも390万、出来れば1300万…いやいや欲を言えば6500万…と勝手に期待して口座の残高を確認する。

 

『1,903,503,069 J(ジェニー)』

 

 …………ん? 

 あれおかしいな? 

 カンマの位置を見間違えたかな? 

 

 いやそれだと逆に減ってるじゃーんと思い直して再度確認するが、何度見ても表示されている金額に差異はなかった。

 

(15億振り込まれてるー!!?)

 

 急いでネテロ会長……正確にはそれに取り次いでくれる秘書のマーメンさんに電話する。驚く程にすんなりと会長に繋いでくれたので、振込額についてを確認させてもらう。

 

「うむワシじゃ。謝礼の振込についてと聞いたぞい。ちと足りんかったかの?」

 

「多いんですよ!? 口座確認して吃驚しました!」

 

 私の言葉は確かに伝わったはずであるが、特に変わりがない声色で朗々と返答される。

 

「そうかの? ワシも一通りサッとは読んだが、もしあれらが全て実用化されるなら、間違いなく人類史を変える著書の草稿となる。仮にこの世界にも魔法が広く浸透するとして、その時には既にお主はおらん可能性を考えれば……ある程度の報酬の前払いは至極当然。ただまあ、流石に実証前ということでかなり差っ引かせてはもらったがな。実証まで確認できれば、個人でその五倍は支払うと言うとったぞあの副会長(発案者)」

 

「そ……そうですか。まあ……確かに……? そう言われれば妥当……なんでしょうか?」

 

「そこはもっと自信を持って欲しいのぉ。まあまずは実証結果を待つのが吉じゃ。副会長(パリストン)もワシへの嫌がらせも忘れて生き生きとしてたからの……盛大な前準備な気がしてどうにも休まらんが……」

 

 最後のは会長への嫌がらせを生き甲斐(?)にしてるような人を副会長に据えた会長が悪いのでは? と思わなくもないが、イエスマンだけで固める組織運営というのもまた健全とは言えないので、きっとこれもまた一つの正解なのだろうと納得する。現状私にとってはメリットしかないしね……現副会長の存在。顔も見たことがない訳だが、とりあえずそちらにも感謝しておこう。

 

「とにかく振込の件はこちらも納得しました。働きに対する正当な報酬として、ありがたく受取るように致します。……実はそれとは別件で一つお願い、というより調べたいことがあるのですが……」

 

 折角だからグリードアイランドのことを直接聞いてみようかと思ったが、流石に会長の自分がそこまで手助けするのも新米ハンターの教育に悪いと言われ、ハンター専用の情報サイトである『狩人の酒場』のアドレスだけを教えてもらった。ライセンスを所持した上で、アドレスを知る限られた人間しかアクセス出来ない特別なサイトらしい。

 

「そんなサイトがあったんですね! ありがとうございます! 助かります!」

 

「な〜に、何れは知れることよ。感謝はいらんぜ」

 

(会長としては彼女にはもう暫くこちらの世界に居てくれた方が都合が良いでしょうしね……尤もらしいことを言って支援を最低限にしつつ感謝も得る……。これで結構なやり手なんですよね……会長って)

 

 電話口の向こうにいるマーメンさんの思考を私が読めるわけもなく、ネテロ会長に多大な感謝を伝えた後、ホクホク顔で通話を終了したのだった。

 

 ▽ ▽ ▽

 

 国営ホテルのラウンジの端末を利用し、ライセンスを認証させてから教わったアドレスを入力。幸い今は人が少なく、ほぼ貸し切り状態なので快適である。

 

 サイト上では少し古臭いタイプの酒場が展開され、そこのバーテンが情報屋として色々と教えてくれる形のようだ。

 

 ただサイト全体から何やら異様な雰囲気を感じるので念のため『凝』をしてみると……あれよあれよと酒場に雑多なコメントが浮かぶ。

 

ぼったくり→

ここで凝使わない奴はよくこのサイトに辿り着けたなw あっもしかして使えないのかな? w

↑乙 それなw

←こいつ10回高速クリックしてみろ

 

「えーと……これは書(・)き(・)込(・)み(・)ってやつかな? 特定の手順でサイト上に『隠』機能付きで好きに文字が入力できるみたいだけど……まあ、いいか。今は一旦使う必要ないし」

 

 ぼったくり扱いされてるのでちょっと嫌な気がするが、他に検索できるところは無さそうなので仕方なしにバーテンにカーソルを合わせてクリック。情報欄から『グリードアイランド』を選択する。

 

『グリードアイランドか、2000万頂くぜ?』

(多分ぼったくり!)

 

 叫んでも仕方が無いので、2000万を入金……すると様々な情報が表示されるが……ここで一旦『凝』は切る。まずは普通に表示される情報だけを確認して、まとめていくつもりだ。

 

(うーん成程。念能力者が複数人で作ったゲームで、起動するとゲームに引きずり込まれる……まあ要はあの島に転移するってことだよね? 多分それがレイザーが言っていた正しい入島ルート)

 

(ゲーム内で死んだら現実でも死ぬ…のはまあそりゃそうだ。現実の島なのだから逆に死なない方が大変だしね…)

 

(ヨークシンシティで開催されるオークション……おっ!? ここに七本も競売申請がある!! しかも最低落札価格は89億……うん。この程度ならまだ希望はあるかな? 仮に魔法の実証に失敗しても、私個人への融資を含めればギリギリ届くお金のはず。他(・)の(・)人(・)ま(・)で(・)巻(・)き(・)込(・)む(・)必要はない)

 

 こんなとこかなぁ……う~ん…

 今の時点でもう色々と怖いけど、折角お金払ったからね……使うかぁ…『凝』。

 

ジンの馬鹿が作ったクソゲー

バッテラが悪いよーバッテラがー

いうてバッテラ買い占め前からのプレイ組も全然クリアできてない定期

 

 益があるような無いような……そんな書き込みばかりが多数散見される。というかジンってもしかしてゴン君が言ってたお父さんだったりする? 

 

 もっと有益な追加情報は無いかと『凝』を維持しつつ確認を続けるが、そこに変なマスコットのような顔をしたキャラクターが<有益情報!>と看板を持っているのを見かける。目も変な方向を向いていて頭にPeの文字が入っていたりともの凄く怪しいが……見つけてしまったからにはクリックしてみる。

 

ゲームクリア報酬を教えてやんよ! 500万と交換しねェ?

 

(ぼっ……たくりでは、無いね)

 

 正直かなり重要な情報で、既に2000万払っていることを考えると500万は安く感じる。騙されてる気もするが……今は情報が欲しい段階だ。ここで渋るのも違うだろうと、躊躇わずに500万を入金する。

 

OK! よく聞きなァ! ゲームのクリア報酬は、ゲーム内の指定ポケットカード、3種類の持ち出しだ!! 治癒、若返り、精力増強までなんでもアリの豪華ラインナップだぜ!!

……指定ポケットの意味? そんなもんゲームやりゃ一瞬で分かるからどうでもいいだろ!

 

「カードの…持ち出し…」

 

(レイザーが発動していたカードは人を別の場所に転移させる力を有していた。確かあれはゲームマスターだけの特別呪文という話だったから、同じものが手に入るとは思えないけど、似たような効果を持つカードが存在していたとしてもおかしくはない。それこそただの転移ではなく、例えば…人(・)の(・)願(・)い(・)を(・)叶(・)え(・)る(・)よ(・)う(・)な(・)…そんなカードが指定ポケットカードとやらの中にあれば、より優先度が高い。……とはいえ仮にそんなカードがあったとしても、ゲーム内での挙動確認が先に必要だね。必ずしも、クリアしての持ち出しが必須だとも限らないから、無駄に苦労をすることになってしまう。)

 

 

 ――ここで一旦報酬についての思考を打ち切り、ゲームの入手に必要な情報の収集だけに注力する。

 既に帰還の達成率は95%だと答えが出ているのだ。それが何かまではゲームを始めてからいくらでも考えれば良い。

 

 ▽ ▽ ▽

 

 あの後も色々なことを調べたが、兎に角もっとお金が必要だということがよく分かった。ゲームを買い占めているバッテラ氏という大富豪がいて、彼はクリアデータに500億の懸賞金を懸けてプレイヤーを募集している。

 

 どうやら9月のオークションでも同じことをするつもりであるため、こちらが対策を練らなければ出品される七本は全て彼に落札されてしまうだろう。

 

 彼が求めるクリアデータとは、ゲームのクリア報酬についてのことを指しているのは間違いない。バッテラ氏はその為に、既に数千億単位のお金を投じているのだ……きっとそれは、金や権力、数多の念能力者達でも叶えられないような、大きな願いを叶えるため。

 

(私だって同じだ。普通では叶えられない願いのためにクリアデータが要る。もしかするとそれはゲーム内からであっても叶うのかもしれないけれど……『ゲームをクリアして持ち出す』という特大の制約は、決して無視できない要素のはず。だからこそ、クリア後に初めて願いが叶う前提で考えて動くべきだろうね)

 

 

 以下に私の今後の方針とその前提情報を示す。

 

■バッテラ氏の推定個人資産

 4600億

 内500億はクリア報酬用なので実質4100億

 

■出品ゲーム数

 7本

 

■今後の方針

 ・4100億/7を明確に超える、600億を目標として資金調達し、競売で落札する。

 

 バッテラ氏が追加の資金調達を始め、法人資産の切り崩しをされてしまうと前提が崩れて勝負にならないため、こちらが一本落札することにだけ心血を注いでいることを相手方に伝えるべきかは要検討。上記は実質的な宣戦布告と成り得るため注意されたし。

 

 宣戦布告とする場合、プロハンター最大4名の連名、及びフロアマスター(予定)の名声を活用した資金力アピールを視野に調整予定。

 

 





 当時のゴンキルは疑わしきは『凝』なんて意識は一切ありませんから、実は掲載されていた情報を見落としたという扱いにしています。というかそうでもないと酒場の情報が色々と足りてないので…

 カード報酬三枚はモブプレイヤーでも知ってる情報なのできっちり載せてます。(旅団組が拷問で聞き出してる)というよりここで知っておかないと、原作と同じルート(カードGETが唯の棚ぼたなのでクー子的にNG)になってしまうからです。

バッテラ氏の個人資産についてはG.I七本落札時の「そのかわり今回のオークションで個人資産の半分失ったそうだ」というモブの台詞から推察。
落札額(305+280+???+???+???+278+602) ???が全て280と仮定すると合算2305。それを二倍で4610億⇒約4600億。
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