とある付与師の帰還録   作:さくさくの森

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クー子無双とは言った。
でも修行パートが無いとは言ってない。



44.グリードアイランド編②

 

――懸賞の街 アントキバ

 

 名前の通り、様々な懸賞付きの依頼が至る所に張り出されている街であり、月例で大会が開催される街でもある。指定ポケットカードに繋がるアイテムが入手出来たり、大会次第では指定ポケットカードそのものが手に入るという、スタート地点の近くの割には非常に重要な街の一つである。

 

 とはいえ私たちは今、一文無し(現実の通貨は一切使えない)。その辺で拾えるようなものは特に価値もないため換金も不可と困った状況になった。

 

(あー、ゴン君を悪く言うつもりはないけど…やっぱり何枚かカード奪っておけば良かったなあ…)

 

 と少々困っていたところで、山盛りパスタの大食い成功で無料かつ『ガルガイダー』を入手出来るお店を発見。

 

「絶対パスタ以外は頼んじゃ駄目だよ!」と念押ししてから、大食い挑戦に自信ありげなゴン君とキルアに任せて、私とヒソカは二人の食事中に今後の方針を練ることにした。

 

「ガルガイダーは結構高く売れるみたいだよ♦ それを売って僕たちも食事、その後は地図と食料を買って、マサドラに向かえばいいんじゃないかな?」

 

「そうですね。少々距離がありますが、私たちなら二日も掛からないでしょう。山中から続く岩石地帯には怪物が沢山出るそうなので、それらを狩ってカードを集められます。マサドラに着いたら全て売って、そのお金で呪文カードを買いましょう」

 

 そうこう話している内に、ものの十分程度で山盛りパスタを完食した二人。ぱっと見で軽く5kgはありそうだったのに大したものである。

 

「商品の『ガルガイダー』2枚アル」と渡されたカードを受け取ったキルアに見せてもらうと…どうやら珍味食材のようであった。

 

(メンチさんに渡したら絶対喜ぶだろうな! 何回でも挑戦できるっぽいから、その時にご馳走してあげよっと)

 

 腹ごしらえを終えたゴン君とキルアにも今後の方針を説明。『ガルガイダー』2枚6万Jで売れたので、そのお金で私とヒソカも腹ごしらえ。その後に2万Jの安い地図と、食料と水を合わせて3万J分購入してから一行はマサドラへと向かった。

 

(今はまだ9月10日だから…月例大会があるのは5日後。それまでに何らかの転移の呪文カードを入手するか…最悪諦めるのも手かな? 年に一回、それも一枚しか入手出来ない指定ポケットカードなんて考え辛いし…複製前提にしても違和感がある。この辺りの情報までは入手出来なかったからよく分からないけど、それこそトレードなり何なりで、きっとやりようはあるはずだよね?)

 

 

▽ ▽ ▽

 

――マサドラに続く山中

 

「「「助けて下さい!! お願いします!!」」」

 

 ゴホゴホと明らかに体調が悪そうな山賊が揃って土下座してきた…

 

 情報提供してくれたプレイヤーは普通にこの山賊を無視して素通りしたようなので、もし助けるならば完全に未知のルートを進むこととなる訳だが…これはゲームである。何らかのフラグに関わる可能性もあるので無下には出来ず、苦しそうな山賊たちに付いて行くことにした。

 

 高価な薬での一時的な緩和しか打つ手がない伝染病という、どう考えても詰んでるとしか思えない設定をお出しされて困惑するが、まあ山賊ビジネスなんてそんなもんだと開き直って説明を聞く。

 ゲームに詳しいキルアの解説を聞く限り、『助けてくれればお得なアイテムとか情報とか提供します』というゲーム語らしい。

 

 残った端数のようなお金に、食料に水に上着にと、こちらの経済状況を明確に把握してるとしか思えない要求が続くので、ある意味序盤に発生させるのが一番旨味があるイベントなのかも? と思いつつも、服を渡すのはどうにも我慢ならない。

 

(今のこの服、元の世界からの一張羅なんだよ! 絶対渡せない!)

 

 補修を重ね、洗濯も丁寧に行うことで、解れ一つない綺麗な状態を維持している、元の世界から愛用を続ける大事な大事な実戦用コートである。勿論元の世界では複数替えがあるが、この世界ではこれ一着。気合を入れる時は大体いつもこの格好ということで、ゲーム開始時にばっちり決めていたのが徒となってしまった。

 

 ……と思っていたのだが、ゴン君、キルア、そしてヒソカの上着を遠慮なしに次々と要求する割には、どうにも私の服だけは要求してこない。もしかすると女性を脱がすのはコンプラ的に不味いという理由で、開発段階でストップが掛かったのかもしれない。

 結局最後まで私の服が求められることはなく、若干拍子抜けしてしまった。

 

 食料と水については失ったが、それらも根こそぎ全てという訳でなく二日分くらいは残してくれているあたり、絶妙なところで良心的である。これでアントキバまで戻っても良し、マサドラまで向かっても良しという訳だ。

 

 …結局何も貰えなかったので罠イベントか?と疑いつつ、不満を述べるキルアを宥めながらも再度方針を確認する。

 

「こっからどうする? オレはどっちでもいいぜ? 80km程度、急げば一日もかかんねーし」

 

「うーん…システムに助けられた感もあるし。私はマサドラに向かうに一票」

 

「僕もどっちでも良いかな♥」

 

「俺は早く怪物と戦ってみたいからマサドラに一票!」

 

 ――ということでマサドラ行きが改めて決定。

 山中を超えて、怪物が出るという岩石地帯に到着した。

 

 

▽ ▽ ▽

 

 

 岩石地帯に入った途端、出現したのは一つ目の巨人の群れ!!

 

(でっっっか!! 深層のタイラントオーガでも3mとかだよ!?)

 

 どう見ても10m近い巨人が群れで出現したことに面食らうが、巨人側は待ってはくれない。巨大な棍棒を振り下ろして攻撃してくるので咄嗟に避ける。

 

「いきなり出るレベルの敵か!?これがよ」

「ひーふーみーよーー、すごい沢山だよ!!」

 

 キルアとゴン君も突然の巨人の襲来に驚きながらも、きっちりと攻撃を避けている。ゴン君が攻撃の隙をついて一撃を入れようとするので、その拳に『壊』の付与を重ねる。

 

ドッゴォオ!!!

 

 拳の衝突と同時に、轟音を立てて巨人の顔面が粉々に吹き飛ぶ。すると下半身から煙に包まれるかのように消滅し、そのままカード化してくれた。

 

「ええ!? どーいう威力!??」

 

 どうやらこれで倒せたようであるが…拳を振り抜いたゴン君自身が驚いてしまっている。事前にちゃんと連携訓練もしとけば良かったな…。

 

「コイツらにそこまでの攻撃は不要だよ♦」

 

 そう言って眼に『凝』をした状態で複数のカードを巨人に向けて投げつけるヒソカ。投擲されたカードは全てが別々の巨人の目に突き刺さり、たったそれだけで三体の巨人がカード化してしまった。

 

「自然に『凝』を行うのは戦闘の初歩♣ 昔の君は出来ていたのに…少しなまったんじゃないかい?」

 

「うっ…御免なさい…。最低限の鍛錬は続けてましたが、実戦からは少々離れていたので戦闘勘が鈍っている自覚はあります。これからまたしっかり鍛えるので許してください…。」

 

「頼むよ? このゲームの購入を邪魔するのも悪いと、遠慮した僕に少しは報いてくれないと♥」

 

 巨人の弱点が目であると割れたことで対応に余裕ができ、私たち師弟はこうしてお喋りしながらでも順調に巨人の数を減らせている。ゴン君とキルアの方も、慣れてしまえば十分対処可能らしいので、これ以上の支援は必要無さそうだ。

 

 

 

――数分後。

 

 全ての巨人を撃退し、合計六枚のカードを入手した私たち。四体ほど倒れたままで残っているのは、一分以内にカードを回収出来なかった個体ということだろう。

 

(この個体はこの後どうなるんだろ? もう二度とカード化出来ない個体…になると困るし消滅するのかな?)

 

「ランクはGか…かなりの雑魚だな」

「動きのパターンと、弱点に気付けばあとは楽勝だったね」

 

(ランクG…つまり下から二番目。怪物の中でもほぼ最弱レベル…か)

 

 別に苦戦をした訳では無いのだが、私自身の戦闘勘が鈍っているのもまた事実。ヒソカとの組手もめっきり減っていたし、最後に戦闘らしい戦闘をしたのは半年以上前のイルミ戦まで遡るのだ…今思えば、元の世界ではあり得ない状況である。

 

 それこそ暫く留守番が続いた時期を除き、毎日~毎週のようにダンジョンに潜っていた訳で…いくらこの世界への魔法の普及に伴う対応に追われていたとはいえ、ここまでなまってしまった己に不甲斐なさすら感じて来る。

 

(これは鍛え直しが急務だね…支援する仲間との連携も疎かにしてたし…私の認識が甘かった!

暫くは実戦を増やさないと…打倒レイザーなんて言ってられない!)

 

 

 危機感を覚えた私は三人を集め、今後の方針をまたも再整理する。

 

①食料が心許ないので、寄り道せずにまずはマサドラに向かう。

②怪物カードを売り、十分な食料と備品を確保。

③ここに戻って怪物を相手に実戦訓練。私の付与を前提とした連携も確認する。

④本格的にゲーム攻略開始。

 

 

「…これで行こうと思うのだけど、どうかな?」

 

 こちらにはヒソカがいるし、そこらの念能力者よりは強いはずの私もいる。ゴン君とキルアも決して弱い訳でなく、付与も最初から『念』だけに絞れば、改めて連携を確認する必要も薄いだろう。それらを総合的に考えれば、恐らく現時点でも戦力的に足りていないということは無いはずである……が、他ならぬ私自身が不安になってしまっているのはいただけない。

 

(付与の腕や念の練度自体は上がっている。…足りていないのは鈍った戦闘勘と連携慣れだけ!数週間…長くても一か月もあればパーティ全体の総合力は格段に上がるという確信がある。あとは皆の同意が取れれば……)

 

「即座に有言実行してくれて嬉しいよ♥ 『凝』の習慣化と『堅』の維持、後は『流』を意識した組手も増やすならボクとしては言うことはないかな? 二人はどうだい? ハッキリ言って、今の君たちではお荷物かもしれないよ?」

 

「なんだよそれ! さっきの巨人くらいオレ達だけでも楽勝だったし!」

 

「う~ん。俺としては怪物と戦うのもいいけど、もっとゲームらしいこともしたいなあ」

 

 ヒソカが賛同してくれた上に改善点まで挙げてくれるのは嬉しいのだが、二人への挑発染みた発言により少々拗れてしまった。とはいえ二人とも真っ向から否定したいという訳でも無さそうなので、軌道修正を試みる。

 

「勝手な提案してごめんね…でも①については元々予定していたことだし、その過程で色々な怪物にも遭遇すると思うからさ、考えるのはマサドラに着いてからでお願いできるかな?」

 

 こちらの折衷案…というより先延ばしの提案に反発する理由もないということで、二人も納得してくれた。正直私としては初日から焦り過ぎな気もして来ているので、どこかで一度落ち着きたいところだ。

 

(マサドラで丸一日滞在するのも良いかもね。ゲームの基本は情報収集と聞いたし、その過程で今後の方針を固め直しても良いかもしれない)

 

 等と考えながらもマサドラへの道中を再度進み始めた私たちの目の前に、超巨大な斑点トカゲが現れる。その巨体からの突進には驚いたが、動きが不自然であることが見て取れたので『風』を付与して上空から俯瞰。

 それにより明確に庇っていると思われる箇所を発見したので、そこに向けてナイフを投げたらそれだけでトカゲはカード化した。

 

 …どうやらこの『メラニントカゲ』はランクE。

 

 どれだけ攻撃してもビクともしないトカゲに、勝手にランクAと設定していたキルアもこれには反省である。

 

「まさか俺って修行不足?」…と若干弱気になっていたので、このままイイ感じに怪物に苦戦してくれれば修行ルートに入れるかもしれない。ヒソカは敢えて手を出さず、私も二人には付与を使わないという条件で、道中の怪物の討伐数と、その最高ランクで競ってみようと提案する。

 

 別に勝ち負けでどうこうなる訳でも無いが、二対一での尋常な勝負である。

 こちらとしても全力だ。

 

 人を捕食するワームだったり(適当な壁に衝突させて、装甲が薄い部分を『斬』で討伐)、

 謎の一つ目ふよふよ物体だったり(近づくと目が開き、目が開いてる間は無敵だったので遠距離から討伐)、

 大量の蜂のような生物だったり(女王個体がいそうだったが『土』を付与した地面でまとめて圧殺して討伐)、

 無害なカチカチスライムだったり(極一部の緩い部分が流動しているのが『凝』で看破出来たので『突』で討伐)

 

さっくりとカード化したそれらのランクは、D、G、E、Fとそこそこのもの。

 

 少なくとも私が倒してしまうまでの間にゴン君とキルアは対処方法に気付けず実践出来ていなかったので、私が順調に怪物カードを集める傍ら、ズズーンと音が聞こえるくらいには沈んでしまっている。

 

 二人はめげずにその後に現れた甲冑騎士を『凝』を使うことで即座に傀儡だと看破。甲冑を操っていた『リモコンラット』のカード化に成功していたが、そのランクは最低のH。やっと倒せた喜びよりも、最低ランクの悲しみが勝ったのか、二人とも更に沈んでしまった。

 

 

「「オレたちもっと修行します…」」

 

 それを聞いてか、後方師匠面して頷いている師匠(ヒソカ)なのであった。

 

(怪物と魔物って似たようなもんだし…そういう意味ではちょっと私の得意分野だったからね)

 

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