天空闘技場に戻ったビスケさんを除く私たち4人は、思い思いに行動を開始する。一応私の方で戦力のツテがあるわけだが、ゴン君とキルアにも別途探してもらうようにお願いした。
勿論探すのはレイザーに対抗できるだけの強者、もしくはドッジボールに有用な念能力や魔法を持った人材である。ルールが決まったスポーツである都合上、有利不利を根底から覆すようなメタ能力が存在していてもおかしくはない。探す価値は十分にあるだろう。
私は私で競技ドッジボールの詳細なルールを確認しつつ、道具持込ありという特殊ルールにも照らし合せて持込物を厳選するが…なかなかどうして奥が深い。
(考えることもやれる事も山程あるね。ドッジボールなら投げる前に手元のボールにがっつり付与をかけられそうだし、能力の組み合わせ次第では完封だって出来るかも? こういうのを考えるのは、ちょっと楽しいね!)
とはいえ取れる手段はこれから集められる人材次第、先の事を考え過ぎては鬼に笑われるというものだ。人材を探すならば協専ハンターにでも募集をかけようかと思案していたところ…ふとニュースサイトの見出しが目に入る。とはいえ最新のニュースという訳でもなく、既に二週間程前の記事がたまたま表示されただけ…いや、確か優先表示のアルゴリズムがあるんだっけ?
『事故から○年、奇跡の目覚め 療術師ピオスが昏睡患者を治療』
(……ピオスさん?)
ニュースの詳細をよく読むと、二十人からなる療術師チームを率いたピオスさんが昏睡患者を目覚めさせることに成功したようだ。患者の情報は伏せられていたが、この数の療術師のチームを長期間動かせる御仁となるとその存在は限られてくる。恐らく…目覚めた患者はバッテラ氏の縁者の誰かだろう。
(これなら私がゲームクリアしても、恨まれはしないかな? まあ仮に恨まれても止まる気は一切無いけど…それこそ『大天使の息吹』を使ってでも治療したい大切な人が、こうして治療出来たのなら私としても万々歳だね。それにしても凄いなあピオスさん…あと数年もすれば、それこそ紫位級の療術師になれるんじゃないかな?)
心の中で彼女に賞賛の念を送りつつも、今度はより新しい日付の記事が目に飛び込む。
『療術師ピオス、ハンター試験合格を目指す』
(えっ!? いやいやいや危険だよ! がっつり死人が出る
もし万が一にでも彼女が亡くなるようなことがあれば、誇張抜きでこの世界の損失である。記事によると次の288期ハンター試験を受けるようで…しかもその理由が『憧れのクーデリア様に少しでも近づくため』って…そう言われてもなあ。憧れてくれるのは嬉しいけど……うう、なんだか胃がキリキリする…辛い…でも流石にここで止めるのはお門違いだし…ある種の侮辱でもある。
ヒソカの腕やイルミの脚の件でお世話になったピオスさんとは当然連絡先を交換しているが、この件で連絡をするのはどうにも躊躇してしまうのだ。
(激励するにも危険過ぎるし…でもそうなると、黙って無事を祈るしかないなあ……)
▽ ▽ ▽
――1999/12/31
今日はリールベルトさんのフロアマスター挑戦の日ということもあり、仕事はお休み。ヒソカはふらっとどこかに行ってしまったので一人で観戦と思いきや、なんとキルアが一緒に観戦してくれた。
やはりキルア的にも一度自分を完封してみせた相手というのは少々特別な意味を持つようで…本人は否定していたが、やはりその去就は気になるようだ。
(愛用の充電用スタンガンのツテも結局リールベルトさんみたいだったし……私の知らない間に二人の間で交流があったんだね。ちょっと面白い組み合わせかも?)
二人の関係としては、どうにも普段からキルアが一方的に色々と要求する立場のようなのだが…その要求の中には高価なものや希少なものも含まれるようで……それらの対価について気になって聞いてもみたが「元手タダだからよゆー」とだけ言ってはぐらかされた。
(そういえば何枚か写真撮らせてってキルアにお願いされてたなあ…? なんかヤケにポーズ指定も細かったし…う〜ん……自意識過剰か? でもなあ…私の隠れファンだとか実況ちゃんも言ってたからあり得るなあ…)
そうこうしていると試合開始も間近となり、上がり続けるボルテージに応えていつもの実況節が炸裂する。暫く見ない内に髪を染めて私そっくりの髪色になり、どことなく私に似てきた実況ちゃんであるが、なにやら両選手紹介の内容はリールベルト寄り…というよりどこか好意的だ。実況の機会が無くなった私の代わりとして既に一年以上専属実況しているようだし、推しが同じということもあってかこの二人には通じるものがあるのかもしれない。
(…まあ、リールベルトさんならいっか。知らない仲じゃないしね。)
▽ ▽ ▽
試合開始直後、いつもの『
盾を構えた上で『周』で強化。更にオーラを前面に集中することでガードを固め、一歩また一歩と着実にリールベルトさんとの距離を詰めている。
「あー確かにあれなら防げるな。リールベルトは制約で動けねーし、『
「何か中距離での攻撃手段があるのかも……油断は出来ないよ。」
念弾は届くが鞭はギリギリ届かない絶妙な位置に陣取った盾男(仮称)は、その状態で一度大きく足踏みをする。
動作としてはただそれだけ、しかしその直後、リールベルトの車椅子がある位置の石畳から――
巨大な炎柱が吹きあがった!!
「フロアマスター舐めんなよ鞭使い! 噛ませは噛ませで終わってやがれ! 位置固定の相手なんざ、俺の『
フロアマスターの割には随分と器が小さい盾男であるが、扱う念能力は非常に強力だ。しかも魔法適正まであるようで、初級レベルとはいえかなり実用的な火焔魔法まで組み合わせているのだから大したものである。まずは《
(流石は天空闘技場闘士の頂点が一人…フロアマスターってとこだね。少なくとも彼の戦略に瑕疵は無いし、私も
「やっぱ強いよなーアイツ。接近戦も普通にいけるっぽいから、あの時仮に接近出来ても負けてたなオレ」
私とキルアの視線の先には、男の真上まで
そして落下と同時に、渾身の力で振るった鞭の一撃が盾男を捉える。その一撃で意識を奪われ、場外まで弾き飛ばされた男を尻目に――リールベルトさんは己の両足で
▽ ▽ ▽
「見事な勝利でした!
リールベルトさん。フロアマスター昇格、おめでとうございます!」
「ぶっちゃけ初見殺しの結果だけど、勝ちは勝ちだぜ? おめでとさん。」
ちょっと素直では無いキルアだが、祝福の言葉は最後に添えているので、これが彼なりの向き合い方なのだろう。まあ実際に初見殺しではあるからね…私も『リールベルトさんの脚が治った』と聞いた時は腰が抜けるほどに驚いたものだ。
(下半身不随って脊髄の損傷が原因なことが多いからね…‥私の世界ですら完治の事例は殆ど聞かないくらいだから本当に驚くべきことだ。医療系の念能力者と療術師が手を組んで、打倒ピオスを掲げる二人組とやらに治療してもらったらしいけど……どうしてそっちはあまり有名じゃないんだろ? 大口じゃなくて小口で動いてるから?)
リールベルトさん曰く中々お金に煩いそうで、手持ちのお金では足りずに少々借金をしたとのこと。メディアは大衆受け意識してそういうの嫌がるよね……。
先月あたりに借金可哀想と快気祝いを渡した時は断られたが、今度はフロアマスター昇格祝いである。有無を言わさずに押し付けつつ、ついにグリードアイランドも攻略間近でこれから
なんにせよ、攻略パーティに二人目のフロアマスターが加わった。
彼なら本気のメンバーを求めていたレイザーからしても文句は無いだろう。
▽ ▽ ▽
――2000/1/7
12/30の昼に島を出たので、ここに滞在可能な残り時間はあと18時間程。
ゴン君とビスケさんはとっくにゲームに戻っており、そちらの方で人材を探してもらっている。キルアは私と一緒に勝負に使えそうな道具の厳選中であったが…そこに一本の電話が掛かって来る。
どうやら電話の相手はイルミのようで、試験に合格したからライセンスを返却したいとのこと。
「早えーよ! まだ初日だろ!?」とキルアは驚いていたが、私はこの瞬間に血の気が引く思いがした。
(今回の試験、ピオスさんも受験してたよね!? そういえばイルミも今年受けるって…いやでも"取引"があるから少なくとも命までは…それ以上に脚を治療してもらった恩があるはずだし…ああいやそもそも会場に辿り着けていない可能性も…)
明らかに余裕のない私の心境を知ってから知らずか、キルアは直ぐに"取引"をきちんと遵守したかをイルミに確認する。しかしそれを受けての彼の答えは、私たちを揃って驚かせた。
「俺が"取引"を破る訳が無いだろう。……ああ、あと今回の合格者は二人いてね。俺と、もう一人は俺の脚を治療したピオスって人。キルも当然知ってるよね? 今、俺の隣にいるよ。」
ドッジボール参加の8名と不参加の7名は既に確定しています。
■追記
『
放出系能力
足踏みをすることで周囲一帯の地面からオーラを激しく噴出させる。敵がリア充である(と勝手に認定される)ほど威力が増大し、その最大火力は『
影響範囲が無差別であるため天空闘技場かテロ以外に使い所が難しい能力であったが、《