ゲンスルー戦~クリアまでの動きは好きですけどね。
試合は審判のスローインから開始。
要はジャンプボールであり、より高く飛んでボールを自陣にはたき込んだ方が先手を得られるが…勿論私はそんな生温いことはしない。
「レディーーーーゴー!!」
と審判のNo.0がボールを高く投げた瞬間、室内であるにも関わらず突如突風が吹き、ボールが自陣側に吹き寄せられる。当然私の魔法である。
それと同時にギャラリーのピオスさんから黄色い声援が送られるが…確か天空闘技場では私を称える三傑だかなんだか言ってたね君……実は結構そういうタイプなのかな?
とはいえレイザー側は最初から先手を譲る気だったらしく、既にジャンプボールに参加していた念獣を含めて配置に戻っている。競技ドッジボールらしく、最後列に横並びに構える陣形だ。
「ボール確保!第一作戦開始です。ヒソカ、ツェズゲラさんは準備!」
「いきなり出番だね♥」
「応!」
ツェズゲラがボールにマーキングを施し、それを更にヒソカに渡す。…今回はボールへの付与はお休みだ。序盤の内からこちらの手札を一気に明かす必要は無い。
ボールを受け取ったヒソカはまずは一投……狙うは、内野最弱の13番!
捕球体勢に入った13番であるが、メンチさんの食事バフに加えて、『念』の付与まで加えた今のヒソカの投球の威力は通常時の軽く数倍! まともに捕球できる筈もなく、「ギシェ」という声を漏らして勢いよく倒れ込み――ボールはそのままヒソカの手へと舞い戻る。それは当然『
「おおー!やったぜ!デカブツだったが倒せるもんだな!」
「あれでも内野の中では一番小さいがな…ただこれで『
ケスーさんとゴレイヌさんが解説してくれている通り、『
続く第二投でもきっちりと14番を仕留め、これで既にレイザー側の内野は残り5人。
完封勝利の期待を乗せてのヒソカの第三投は今度は17番に向かうが…そこで17番と18番が合体! 新たに35番となって捕球を成功させる。そのパワーは強力無比であり…ヒソカの膂力を上回っていたためヒソカはゴムを断ち切る。
「さて…流石に35は超えられないか。だったらそろそろ反撃といこうかな?」
「何を言ってるんですか? 反撃するためのボールはそちらにありませんよ?」
「……っ!? 成程、マーキングしたものを手元に転移させる能力…いや、魔法か。」
今回のドッジボールを被害0で攻略するための必勝作戦。その要であるツェズゲラの魔法が、《
(レイザー側からすれば、これを攻略しない限りは勝ち目がないという重要な駒。それ故に、ツェズゲラさんの周りは常に二人以上がガードに入っている。そう簡単に突破出来るとは思って欲しくないね!)
とはいえ合体という手札を切られた以上、このままヒソカに投げさせても敵戦力を削ることは難しいだろう。故に、作戦は第二段階に移行する!
「次!第二作戦!リールベルトさん!お願いします!」
「おうよ」
外野のリールベルトにボールをパス。彼はそれを受け取ることもなく最速で鞭を振るい、音速を遥かに超える速度の鞭状の念弾が、ボールを強かに打ち据える!
『
因みにこの轟音、苦しいのはレイザーだけで、私たちには一切のダメージがなかったりする。その立役者が、この音量依存型の電子耳栓。既に所持していたリールベルトを除き、実は全員分を追加で仕入れて装着済みだったりするのである。
(難聴どころか鼓膜が破壊されかねない破裂音だからね…ケアしないと身が持たないよ…でもそれを逆利用したのが今回の戦法。圧倒的な速度と威力に加え、音による妨害で相手側のボール回収を阻害する隙を生じぬ二段攻撃…私だったら絶対に相手したくはないね)
■レイザー陣営
【内野】レイザー 15 19
【外野】9 13 14 35
既にレイザー陣営の内野は三人だけ。しかもボールは変わらず私達側だ。このまま本当に完封もあり得るのでは? と思わせる程の快進撃であるが…果たしてそこまでうまく行くだろうか?
続いてのリールベルトの第二投…というより第二撃は15番に向かうが、そこでレイザーと15番が急遽位置をスイッチ! 念獣の数が少なくなったことで、こちら側の狙いを早いタイミングで正確に割り出せたのであろう。しかし仮に捕球に成功したところで、それこそ転移の餌食である。ならば残る手段としては――
……ん? 待て。
私は何か大事なことを忘れている。
『付与』とはその在り方を一時的に作り変えるもの。そう唱えたのは私ではないか。
そして、今私が戦っている相手は……
ゾワリ とした。
しまった、そうか…! レイザーは付与師! ならば!
「ボールに『念』を付与。……ふう。これでやっと、反撃が出来るな。」
▽ ▽ ▽
既に何度か言及した気もするが、私はこの世界に転移してくるまでは殆ど対人戦を経験してこなかった。するにしても稽古であり、実戦ではない。それも近接をメインとした稽古が大半だ。魔法職が集まってすることは大体が研究であり、あっても試し打ちくらいで互いにドンパチ戦うようなことはまず無いとすら断言できる。……ましてや私は支援職の付与師。そんな付与師が同じ付与師と対人戦なんて、あまりにもレアケース過ぎて、実のところ想像すらしたことが無かった。
(敵になった
相手が付与師であり、こちらの魔法を上書き可能な時点で、ツェズゲラを要とした作戦は
私がそのように思考している間に、レイザーはボールへの付与を解除し、己に付与をかけ直していた。
「くっくっく…これはやられたね♥ 君も僕らの気持ちが少しは分かったんじゃないかい? 訳も分からず魔法を使われていた時の僕らは、今の君の比では無かったよ?」
「言えてるなー。寝てたらいきなり大地震とか、殺し屋より性質の悪い奇襲だったね。しかも周囲の土が鋼鉄より硬くなるとかいうおまけ付き。それで左脚と左手が壊れなかったら、多分負けてなかったのにさ。」
ここぞとばかりに師匠とイルミがチクチクと責めてくるが、ここは甘んじて受けよう。散々理不尽を押し付けてきた私である、今更この程度の理不尽が返された程度で動揺はしていられない。
「話は後! レイザーからの攻撃が来ますよ!!」
私の言葉に従うまでもなく、全員が素早く臨戦態勢に入る。
ハッキリ言って、今のレイザーが投げるボールをまともに受けることは難しい。ならばせめて、誰かが何らかの形でその威力を減衰する必要があるだろう。
「いくぞ…!」
レイザーから放たれたボールの矛先は……キルア!
キルアは受けきれないと判断して即座に左に回避するが、そこでボールは急カーブしてツェズゲラに迫る!
ガードの配置をすり抜けるような抜群のコントロールであり、標的となったツェズゲラは各種バフにより向上した反射神経によりなんとか回避に成功するも、飛んできたボールを受け流すように超高速で回す外野の念獣の連携に反応できず、背中にまともにボールを受けて倒れ込んでしまう。音からして、何本か骨も逝ってしまっただろう。幸い命に別状は無さそうだが…外野に入ることすら出来ない、プレー続行不可能状態として実質的なリタイアとなってしまった。
(これだけ強化バフがあっても一撃でこれ…メンバーの中ではそこまで身体が強くないツェズゲラさんであることを差し引いても、まともに喰らったらまずアウトだと思った方が良いね。ただ……レイザーの投球そのままよりはかなり減衰しているように見えたから、一度避けるのは戦法としてはありなのかもしれない。)
「レイザーはマーキングを付与で既に無効化していましたが、それでもツェズゲラさんを一番に狙った理由は恐らく、再度マーキングされることに備えてです。レイザーが付与をかけて上書きするのが少しでも遅れれば、当然ボールはツェズゲラさんに回収されてしまいます。それを恐れたからこそでしょう。」
「つまりこっからは、普通にガチンコって訳だな。ボールは俺が確保したから…今度はもっと作戦の段階を進めようぜ? あっちがこちらを上回ったんなら、今度はこっちが上回れば良いだろ?」
こちらは一人リタイアしてしまったが、ボールは自陣に戻って来た。
人数差的にはまだこちらが圧倒的に有利で、手札も複数残っている。
「そうだね。キルアの言う通り。きっちり想定を上回って、度肝を抜いてやろうか!
三四飛んで第五作戦!ゴン君、キルア、前へ!」
ボールに全力で『突』を付与し、キルアの付与を『念』から『雷』に切り替える。
これからキルアがやることは…きっと未来のキルアの到達点の一つ…。
電気を身体の末梢神経に直接流し込む事によって、限界を遥かに超える反応速度や移動速度での行動を可能とする能力。身体が完全に電気を受け入れた状態に加え、キルアの超人的な肉体とセンスがあって、初めて実用可能な最強レベルの『発』。
キルアはこれを、『
――作者がレイザー側も付与による魔法の上書きが可能であることを忘れてたとかいう超ライブ感。たまんねえな!
(あーこれまずいぞ。レイザー側劣勢すぎない?)
てなって初めて思い出すとか酷い話です。
…だって今まで敵側が付与を使ってくることなんて無かったですもん。
クロス元作品を含めても0。
まあ仮に元の想定でもラストの展開や状況はほぼ同じになったとは思います。
マーキング⇒付与は共存NGですが
付与⇒マーキングは共存OKです。
その辺の説明も別途がっつり書いてたのに、それでもレイザーがその設定を活用してくるとは思ってなかった不具合…結局お蔵入りです。