祝・評価バー稼働!!
それも赤色…出来るだけ維持できるよう頑張りたいです。
皆さんは『付与』と聞いてどういうものだと感じますか?
文字通り、『付加して与えるもの』でしょうか?
それはきっと大筋正解で、私の世界でも多くの人がそのように認識しています。もしかしたら一部の付与師ですら同じ考えなのかもしれません。しかし私は付与師の第一人者として、『それは少し違いますよ』と言わなければなりません。
▽ ▽ ▽
付与とは、永続する術ではない。
その素材が持つ在り方や魔力の流れに干渉し、その性質を一時的に書き換える術である。
「炎を出すのではなく炎が出せるようにする。
雷を流すのではなく雷が通れるように整える」
つまり、付与とは、力を与える技術ではなく、力が通る状態に作り変える技術なのである。……勿論ただ作り変えるだけでは炎も雷も出てこない。そこに魔法のエッセンスが混じることがあるのは否定しないし、その工程こそが『付与』だと言われてしまえば、
しかし、ただ単純に炎を出すなら、本職の魔法使いがいればそれで良い。仮に両者が全属性を扱えるとして、付与師よりもより高出力を期待できる魔法使いの方が、上位互換であるかのように扱われてしまうだろう。だが、現実は違う。100の力で100の現象を引き起こすのが魔法使いなら、20の力を100に出来るように作り変えるのが付与師なのだ。
で……あるならば。
「……念にも同じことが出来るのでは?」
机の上に置いた小さな木箱を見る。中には実験用のマウスが五匹。生物が持つ生命エネルギー。それを、オーラとして発現しやすい状態へ整えることが出来るのか、それを今ここで確認する。魔力と念……オーラが別物であることは、既に理解している。魔力は外部から取り込み、自身の潜在魔力と合わせて循環させる力。対してオーラは内側から溢れる生命エネルギー。少しだけ似ているようで、やはり根本からして違うものだ。私の出身世界でも一部の武術家が扱っていた『発勁』や『硬気功』等の武術気功が、ものとしては近いだろうか。
(『念』は属性……『念』は属性……『念』は属性……)
自己暗示のように脳内で唱え続け、自身が扱える付与の属性と同じものだとカテゴライズする。正直おまじないの域を出ない気がするが……それでもやった方が良いと考えて継続する。実際に触れたリールベルトさんのオーラ、そしてそれが纏われていた感覚を思い出し、それが最大限扱いやすい身体に、一時的に作り変えるイメージ。
精神を集中し、一匹のマウスに杖を向ける。深呼吸を一つ挟んで……言葉を発する。
「『念』を付与! 纏え!」
▽ ▽ ▽
……結果として、実験は失敗した。
五匹いたマウスのうち、五匹ともがオーラを噴出したところまでは良かった。ただ、その状態を維持出来たものは皆無。残ったのは衰弱死した二匹と、死んでこそいないが、見るからに弱ってしまった三匹である。体内の生命エネルギーが噴出してどんどん流出していくのだ。自身の肉体に循環するように纏えなければ、数分でこうなることは想像に難くない。……というか実際に尊い犠牲が出てしまっている。
(うーん……あの時の感覚はちゃんと覚えてはいるんだけど……他人のオーラを身体の一部で触れただけだからね。『全身でオーラを纏う』『オーラが外に漏れ出ないようにする』という経験が一切無いんじゃ、流石に無理があったかな……)
今私がやったことは、外部から身体にオーラを強くぶつけるのでなく、内部のオーラを刺激することで気持ち優しめに目覚めさせたようなものだ。勿論その上でオーラを纏いやすくなるように循環機構も調整した。しかしサンプルの少なさもあるとはいえ、マウスの知能ではオーラを纏うまでには至らなかった。
ここでふと思い至るが、リールベルトさんもサダソさんもギドさんも、恐らく欠損や後遺症が出る程の大怪我をした後に念を覚えている……つまり彼らが念を覚えた経緯はきっとそういうことである。運が良くて大怪我、悪いと死ぬリスクがあるのは流石にもうちょっと手心というか……。天空闘技場には優しさが足りない。
(外部から強くオーラをぶつけられれば、内側のオーラは目覚めやすくなる……。でもそれは念による攻撃を生身で受けるということ。そんな半死半生の状態で発生するのがオーラの噴出からの流出……オーラを纏えないとそのまま衰弱死が見えるなんてまさに泣きっ面に蜂。あまりにも鬼畜が過ぎる!)
うんうんと唸りながらも名案は浮かばない。それこそヒソカさんならある程度安全な方法で目覚めさせる方法も知っているのかもしれないが、まだ師弟関係では無いし。そもそも私のこのやり方以上に安全なやり方は多分殆どないんじゃないか? とも思ってしまう。
それこそ武術の達人であるならば、長時間の瞑想だったり丹田からの気の循環だったり、自身の内側のオーラを認識したうえで、ゆっくりと循環させて纏う……『纏』に自然と至ることが出来るのかもしれないが……生憎私は武術の達人では無い。魔法無しでは120階止まりの闘士だ。やはり何事もノーリスクという訳にも行かないだろう。
「……せめてリールベルトさんに『纏』を使う時の感覚を聞こう。『凝』とか含めて正式名称も共有できるし……うん。これぞwinwin」
び……ビビッてないよ? ただのリスクヘッジだよ?
▽ ▽ ▽
「構えは集中しやすければ何でも良い。吹き出す蒸気のようなオーラは堰き止めるのでなく、身体を中心にゆっくりと循環させる……重さの無い服を着てるくらいの感覚になれば成功」
リールベルトさんから電話口で聞いた話を復唱する。
「万が一失敗しても疲労で倒れるくらいで死ぬ可能性は低い……ていうのは知れて良かった」
(その割にマウスが二匹天に召されたけど……ま、まあ平均寿命2,3年のマウスと人間では流石に違うか)
因みにヒソカさんと試合すると言ったら滅茶苦茶に心配されたので、試合は五体満足が前提で、試合後に弟子になる契約だと話したら「いやまだ脳破壊される段階じゃないから」等とよく分からないことを言っていた。……大丈夫なのだろうか?
まあでもこれで準備は整った。
試合まではまだ数日あるので、仮に失敗しても約束を反故にせずには済むだろう。緊急時に倒れ込めるようにベッドの近くで、いつもの愛杖を構えて立ち、ダンジョンを探索する日の朝をイメージして精神を集中する。……達人で無くとも武の心得自体はある。丹田に気を集中させることくらいは意識してやれる。付与をかける場所の中心としては、ここが最も適切だろう。
「…………いくぞ! 私に『念』を付与!!」
瞬間、身体の内側で何かが弾けた。身体に微細な孔(後で知ることになるが精孔というらしい)が開き、そこからオーラが噴き出すのが見える。
魔力を操作した時とは違う。もっと原始的で、もっと自分自身に近い何か。以前、リールベルトさんの林檎に纏われたオーラへ触れた時とは比較にならない。あの時感じたのは、外側に存在する力だった。しかし今感じているものは、間違いなく私自身の内側から生まれている。
「……なるほど」
思わず呟く。そして、付与師としての感覚が答えを出す。
『つまり、力を押し付けるんじゃなくて、力が通る状態を作る。この世界の理を少しだけ滑らかにして、魔力が自然に流れるように整えるの。それが付与の本質──理屈の上では、ね』
過去の自分の言葉が思い起こされる。念と魔力は別物だ……それでも、私が長年磨き上げてきた付与の本質から完全に逸脱するようなものではない。そう、念もオーラも、例外では……ない!
私は更に意識を集中する。噴き出したオーラを押さえ込むのではない。魔力が魔法へ変換される時、最も効率の良い経路を探すように。水が自然に川を流れるように。身体という素材に対して、オーラという性質が最も馴染む形へ整える。すると、先程まで外へ漏れ出すだけだったオーラが、ゆっくりと身体の周囲を巡り始めた。
そしてそれは全身を覆う薄い膜になる。
重さはない。
けれど、確かにそこにある。
「……これが……『纏』。成程ね……確かにこれは使えないと勝負にならないわ」
使わずに2勝しといて何言ってんだこいつ……? と怒られそうだが、生命エネルギーをそのまま鎧として着込んでいるかのような安心感、そして身体能力を向上させるタイプの聖遺物を装備したかの如き全能感は、そんな言葉が思わず漏れてしまう程に強いものなのだ。
「付与もばっちりね。リールベルトさんは安定するまで結構時間が掛かったと言っていたけど、今の私は補助輪を付けているようなものだから当然か」
私の付与は最大12時間まで有効だ。流石に12時間はよっぽど気合を入れないと難しいし、それ相応に消耗する。なので普段は状況に合わせて短縮しているが……10分くらいが多いかな?
今回も恐らくあと5分もすれば切れるだろうから、そこからが第二の本番だろう。最終的には付与無しでも『纏』を使えるようにならないと、私の場合は特に問題がある。それは何か……?
例えば今は私の身体に『念』を付与しているので、最大限、念が使いやすい身体になっている。ただその状態で拳に『壊』を付与したりすると、『念』の付与が上書きされて消えてしまうのだ。……実は元の世界では【連環の匣】という、私が持つ数少ない聖遺物のお陰で、触媒を消費することで二属性同時の付与が可能ではあったのだが……無いものねだりだ。持って来れて無いのだから忘れるしかない。ああでも相棒の【供応の背嚢】も恋しい……そしたらマジックアイテムだってふんだんに使えるのに……。
「あっ付与切れた。で……でも……うん、何とか……なるかな? 一回感覚掴んだからか維持しやすいかも」
──―翌日
こうして何とか『纏』を習得出来た訳であるが、流石にまだ24時間は厳しい。
気が緩むと直ぐに垂れ流しに戻ってしまうし、集中しても2,3時間に一回は切れてしまう。リールベルトさんは時間を掛ければ勝手に慣れて、いずれは寝てても使えると言っていたので、ここは焦らず慣れていこうと思う。
『纏』を持続させながらもふと生き残ったマウス三匹の様子を見ると、非常に驚くべきことに『纏』が出来ていた。既に付与は切れているため、素の状態でも使えるということを意味する。
あれ……実は失敗じゃ無かったの?
因みにクーデリアが扱える付与の属性は、
斬突壊の物理3属性
火水土風雷闇光の魔法7属性です。
元の世界ではこの10属性が現存しております。
(氷は水の派生みたいな感じで扱われるので、細分化すると実はもっと多い)
そしてNEW!『念』属性
『念』を付与…要は『念』に身体を最適化させることで、精度が大きく向上するくらいに思ってください。
ヨークシン編のゴンに使うと、GI編終了時点くらいには向上します(流石に急に『硬』を覚えたりはしませんが)
あと付与の最大時間が12時間はちょっと人間辞めてる域です。一般的な付与師はどんなに頑張っても20-30分とかなので…。まあそんな長時間の付与は災害対応での応急処置(土台固めたり)くらいでしか使わないので、影薄いんですけどね。