とある付与師の帰還録   作:さくさくの森

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そろそろ最終回も近いですね。
想定では67話で終わります。
あとちょっとなのでもう暫くお付き合いください。

結局ペース全然下がんなかったですね…
『紫華の付与師は今日もお留守番』の頃からですが、一度執筆すると止まらぬのです。


61.グリードアイランド編⑲

 

 ピオスさんの即席の診断によると、レイザーは全身の骨が砕け、主要臓器にも甚大な損傷が確認できる重篤な状態とのことで……私は即座に『大天使の息吹』を使用して、レイザーを治療した。

 

 優秀な療術師といえども治療には限度があることは、私はよく知っている。それにレイザーの周りの部下は重犯罪者――死刑囚ばかりである。先程のボポボの反乱のように、弱った今がチャンスとばかりに裏切られかねないのであれば、時間を使った治療は危険だとする判断である。

 

(全治一年を覚悟しろとは言ったけど、死んで欲しい訳ではないからね…。それに…その…レイザーは多分この世界で一番優れた付与師だろうし、今ここで死なすには惜しい!)

 

「いや咄嗟に使うのは構わないけどさ、使うならこっちのコピーの方にしろよな…クー子の方がオリジナルだろ?」

「ゴメンねキルア…。そこまで頭回らなくてさ。それに診断結果を聞くに一分一秒を争うレベルだったから、急ぎたかったんだ…」

 

「まさかゲームマスターである俺がプレイヤーに助けられるとはな、それもランクSSのカードを使わせてしまった…船の件も含め、重ね重ねすまなかった……俺に出来ることがあれば、可能な限り叶えよう。」

「……でしたら私とゴン君とで少し話をしませんか? ゴン君は父親のことを聞きたいでしょうし、私は私で念のため確認しておきたいことがあるんです。」

 

 ――少し席を外して、三人で会話をする私たち。

 

 どうやらレイザーもまた死刑囚だったようで、ジンに雇われてゲームマスターの一人になったとのこと。

 死刑囚に自分が作るゲームを嬉々として何時間も話し、自分の息子をその死刑囚と戦わせようとするジンをイカれてるとすら思ったようだが…それでも心の底からレイザーという一人の人間を信じてくれたジンに、大きく救われたという経験があったようだ。

 

「世界中にたった1人、1人だけでも自分を信じてくれる人間がいれば救われる…と。ジンが教えてくれたんだ。」

 

 …少なくとも私には、レイザーは真面目にゲームマスターとしての仕事に従事しているように見えた。それこそ10年以上も腐らずに、だ。船を壊されたのは実はまだ許してないが…それも仕事の一環だったとは理解しているので、これ以上はとやかく言うつもりは無い。

 

(それはそれとして、何らかの補填はしてもらうけどね)

 

「ゴン。ジンに会えよ!」

「うん!!」

 

 いい感じにゴン君との会話が終わったので、次は私の番だ。

 

「お互いの死力を尽くした、良い試合だったと思います。お疲れ様です、レイザー。」

「ああ…良い試合だった…。結局15戦15敗…俺に至っては命を救われるという大完敗だ。まさに完膚なきまでに叩きのめされたというわけだ。」

 

「ふふふ、こればかりは有言実行です。なにせ『紫華の付与師』の名の下に宣誓したくらいですからね。国家の英雄が、軽々と嘘を吐く訳にはいかないんです!」

「……国家か…お前は…本当に、異世界の人間だったんだな。このゲームを始めたのは、元の世界に帰るためか?」

 

 あら…どうもレイザー側から話を進めてくれたみたいである。私としてもこれが本題なのでさっさと聞いてしまおう。

 

「ええそうです。どうやら95%の確率で帰還が叶うようで…『離脱(リーブ)』だと暗黒大陸直行便になる恐れがあるとして『リスキーダイス』と『気まぐれ魔人』のコンボに頼るつもりですが…それとは別に確認したかったのが『同行(アカンパニー)』や『再来(リターン)』です。

 これで地名を宣言することで帰れる可能性もあるのでは…というのは少々引っ掛かっていて…念のための確認がしたかったんです。」

「うむ……そうだな…まさに俺がそういった移動系のスペルを担当しているゲームマスターであるからこそ断言するが、『同行(アカンパニー)』や『再来(リターン)』での帰還は不可能だろう。そもそも俺…どころかジンですらも、恐らく異世界は認知していない。移動不可能地域と判断されて無効化されてしまうのが関の山だろうな。」

 

 ある程度予想はしていたことであるが、こうして担当者にまで直接確認が出来たことは大きな前進だ。やはり帰還はもう魔人一本で突き進むしかないことがここに確定した。

 

「あ、あとこの本は返却します。ここまでボロボロになるまで読み込んでくれて、ハイレベルな実践までしてくれたのは、作者冥利に尽きるというものですね。表紙のサインに加えて後書き部分に特別メッセージも添えておきました。大サービスですよ!」

「おお。それは嬉しいな…。付与魔法の第一人者にそうまで評価されるのは悪くない気分だ。そちらから見て、俺の付与に何か足りないものはあったか?」

「う~ん…魔力制御技術がまだイマイチですね。あと発動までが遅いです。その辺りが改善できればワンランク上がると思いますよ? とはいえこれらは慣れの問題が大きいので、時間を掛けて徐々に改善するしかないですねぇ。感覚は人次第なので、個別のアドバイスは出来ない領域です。」

「つまり俺は既に、その領域までには届いていたということか…師からのお墨付きは励みになるな。」

 

 自信を持って頂けて何よりである。

 さて、それであとは別件であるが――

 

▽ ▽ ▽

 

 負傷が比較的大きいツェズゲラ、ヒソカ、カストロ(イルミはピオスさんに治療させるとのことで断られた)に『複製(クローン)』で増やした『大天使の息吹』を使用して手早く怪我を治療した後、私たちはソウフラビの物憂げな女性NPCに海賊を追い払ったことを伝えて、ついにNo.002『一坪の海岸線』を入手した。

 

 これで99枚揃った訳であるが…多くのメンバーが限界までオーラを消耗したということで、丸二日はお休みとなった。一日目は私もゆっくりと休んだが、二日目はメンチさんを連れてグリードアイランド未知の食材ツアーを楽しむなど、残り少ないゲーム世界での生活を楽しんだりした。

 

――1月22日

 

「皆、ありがとう! それじゃあこれから本(バインダー)に99枚目をセットして、100枚目のイベントを開始しますね!」

 

 元ハメ組の皆さん+15人と随分な大所帯で集まり、今ここにNo.000を除く全ての指定ポケットカードを本に収める。すると島全体にアナウンスが発生し、あるプレイヤーが99種のカードを集めたこと。これからNo.000『支配者の祝福』を巡るクイズ大会が始まることが告知された。

 

「今から10分後に、指定ポケットカードに関する問題全100問ですね…。まあ流石にこれだけいれば誰かがトップを取れるとは思いますが、その時はこちらに譲ってくださいね?」

 

 元々そういう契約ではあるが、一応念を押しておく。元ハメ組の人達も、既に総額で316億以上もの大金を受取ることが確定しているためか、追加報酬については強く要求してこなかった。

 

(多分トップはツェズゲラ組かな…? 私達も自力で70枚以上は集めたけど…奪ったり譲ってもらったものも相当数あるから、自力獲得数では足りてない気がするんだよね)

 

 そうこうしていると唯でさえ大所帯なのに、更に6人…いやもっと増えるな…9人のプレイヤーがこちらに向けて飛んできた。どうやら彼らの大半は野次馬兼、報酬のおこぼれ目的であるようだが…残りの数名は違うようで…

 

「ほ、本当にクーデリア・リーフィスさんだ!」

「本物だったんだ! ああ~ちょ…ちょっと『3Dカメラ』*1で「《風弾翔撃(ウィンドバレット)》!」

 うわあ!ぶっ壊された!?」

 

「ふん! 馬鹿な奴よ…ここは『レインボーダイヤ』*2で既成事実を――

「『双頭の蛇による固定砲台(ソングオブオフェンス)』!!」 ほげぇええええええええ!!」

 

「甘いんだよお前ら! こっちは『マッド博士のフェロモン剤』と『魔女の媚薬』のコンボだぜ! あとは『長老の精力増強剤』で…ぐひょひょ「それのダブり持ってなかったんだよね♦ ちょっと遊ばないかい?」ひょ…?」

 

 

 

 <<不埒もの成敗中>>

 

 

 

(なんというか…碌でもないものの集まりが相手でちょっと疲れてしまった。有名人というのも些か考え物だね…まあこれは元の世界でもそうなんだけどさ。)

 

 などというやり取りをしている間に10分が経過。

 グリードアイランドの全プレイヤーを対象にしたクイズ大会の始まりである。

 

――数時間後

 

「終了――――――!!」

「それではこれより最高得点者を発表いたします!!」

「最高点は100点満点中94点!!」

「プレイヤー名」

 

「ツェズゲラ選手です!!」

 (知 っ て た!)

 

▽ ▽ ▽

 

「ふっ…これで元トッププレイヤーとしての面目躍如といったところか…依頼主のバッテラ氏の顔に、泥を塗らずに済んだな。」

「私がゲームにいなければ、多分ツェズゲラさんがゲームクリアしてたと思いますよ?

 レイザーもあそこまで本気は出さないでしょうし…《標転移(マーカー)》を駆使すれば、きっと勝利は拾えたでしょう。」

「それを言い出したら君がこの世界にいなければ…いや、止そうか。賞賛は素直に受け取るしよう。

 ……ん?」

 

 ツェズゲラさんと会話していたら、封筒を足で掴んだフクロウが飛んできて、その封筒をツェズゲラさんに向けて落としていった。封筒の中身はNo110のランクSSカード『支配者からの招待状』。

 どうやらこの招待状の中に入っている地図と、バッジを持つ者のみが、入城を許されるようだ。

 

「これは当然君に渡す。恐らくこの支配者とやらが、No.000『支配者の祝福』を直接渡してくれるのだろう」

「最後までありがとうございますツェズゲラさん!私がこの世界から帰る時も、是非見送ってくださいね!」

 

 会話の最中に飛んできた、指定ポケットカード全種を狙うべラム兄弟とやらは私が相手をするまでもなくフロアマスター三人衆にボッコボコに伸されていたので、放っておいても良いだろう。

 地図を見るに城下町のリーメイロに行く必要があるが、生憎そんな場所には行ったことがない…ということでまずは『漂流(ドリフト)』を使って移動。一発目で見慣れない城が見えたので、これが正解と判断して『磁力(マグネティックフォース)』で戻る。

 

 あとは皆と合流して『同行(アカンパニー)』で城下町まで移動である。

 

 城に入れるのは残念ながら1名だけのようだが…城下町はそれなりに広そうだったので、74人が休憩するスペースくらいはあるだろう。

 

▽ ▽ ▽

 

「ようこそG・I(グリードアイランド)城へ」

 

 出迎えてくれたのは、ソバカスが特徴的な金髪の青年(後にリストと判明)。

 年若く見えるが…何歳なのだろうか?

 

 ただそこから案内されたのは……汚部屋。

 はっきり言って、心証は最悪である。

 

 部屋の主であるドゥーンなる男も無精髭にフケが溜まったチリチリ頭と…正直生理的に受け付けない風貌であり、これでは祝福でなく罰ゲームだと内心思ってしまうことは致し方が無いだろう。

 

(これ招待されたのが潔癖症の人だったら卒倒案件だよね?

ゴン君には悪いけど、やっぱりこれクソゲーだよ!?)

 

 最高得点者とは異なるが、99枚を集めた実質的なゲームクリア者として紹介される私であるが、立ち込める臭いのせいで気が気で無い。まずはさっと『風』を付与して部屋中の汚臭を集め、一か所に滞留させることで臭いだけでも対策させてもらうことにした。

 掃除までする気にはなれないが、せめて臭いだけはなんとかしないと話す気にもなれない。

 

 その後、汚部屋から探し当てられたNo000『支配者の祝福』が渡されるが…どうやらこのカードは本来クイズ大会の優勝者に渡されるものであるようで…カード説明にもしっかり書かれてしまっている。とはいえ入城条件は招待状のバッジを付けているものなので、そこは特に問題ないようだ。

 

「お前さんはこれで100種そろったわけだな。よってもう1つ! イベントが発生する」

 

 そういってまたガサゴソと探されて見つかった本(バインダー)を手渡される。

 ……これも後で消毒しておこう。

 

 この本(バインダー)に入れたカードは現実世界へ持ち帰って使用することができるとのことで、念のために保存期間を確認したところ、そこはゲームと変わらずに本(バインダー)から出さない限りは無制限ということだった。ただ外でも本(バインダー)を出すためには指輪を嵌めている必要があり、その指輪の方のセーブがゲーム中と同じく10日しか保たないとのことだったので、実質的な保存期間は、ゲームを出てから10日間ということになる。

 

(ゲームクリア後、お別れまでに島の外で色々やりたかったけど…10日がMAXってことだね。いやまあもう一回ゲームに入って延長とかも出来そうだけど、あんまりズルズル延ばすのも良くないからね…きっちり10日でお別れにするべきかな…?)

 

 これで話は終わりだが…私にはレイザーを通じて依頼しておいた別件がある。

 

 そう、それと言うのも…グリードアイランドではこのゲームの初クリア者を祝っての大規模なパレードが発生するようであるが、船の弁償代+『大天使の息吹』使用代ということで、そのパレードを本来一日のところを三日三晩にするようにと要求したのだ。

 

 この話は既にこの場の二人にも伝わっていたようで若干苦笑いされたが…折角の一大パレードだ。一夜の夢で終わらせるのは勿体ない。

 

「やるんならプレイヤーもNPCも全員集めて、パーッ!とやりましょうパーッ!と!!」

 

 五月雨でプログラム組むしかねえよなあ…とボヤいているドゥーンさんとリストさんであったが、この程度はやってくれないとこちらの気持ちも晴れないというものだ。

 

(…結局レイザーは治療して無傷で終わっちゃったしね。黙ってはいるけど汚部屋案内の件もあるし…それくらいはやって貰わないと!)

 

▽ ▽ ▽

 

 城の周りで待っていてくれたヒソカ・ゴン君・キルア・ビスケさん・ツェズゲラ組の計8人とも合流し、ついに入手した100種類目のカードと、現実にカードを持ち帰るための本(バインダー)を説明した。

 これから三日三晩あるパレードが終わった後、外に出てからの最大10日の猶予期間中に、お世話になった方々への声掛けをしたり、元の世界に持ち帰るための物品の検討等を行う旨を伝える。

 

 ヒソカがゴン君とキルアに何やら目配せをしたのが一瞬気になったが、私の心は既に三日三晩のパレードに囚われている。あまり気にしても仕方がないと思考を切り替え、久方ぶりの『オールグリーン(二日酔い知らず)』発動予定に、今から自ずと気合が入る。

 

 空前絶後の大宴会の 始 ま り だ !!!

 

*1:
サイズ調整可能で質感まで再現できるカメラ。完全にエロ用途しか思い浮かばない。

*2:
プロポーズの成功率が100%になる。




作者がプレイヤーだったら多分『3Dカメラ』で盗撮してます。
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