とある付与師の帰還録   作:さくさくの森

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65.グリードアイランド編 VS ヒソカ=モロウ③

 

 取り出した宝玉(マジックアイテム)の名は…『蒼穹玉(カエルム)』。

 

 私はこの宝玉をベースに、自身の発である『万物との対話(ワールド・オーダー)』を組み合わせ、新たな発を開発した。

 メモリ的に新たな発を作ることは不可能だったが、特殊な条件付けによる一部拡張であれば許容されたようで……そうして完成したのが、魔法と念能力を融合させた完成した『発』である。

 

 まさに昨日完成したばかりの『発』であり、その時は僅か五秒しか維持出来なかったというとんだじゃじゃ馬……。それも使用後には脳にかなりの負荷がかかるので、使い終わったら殆ど戦闘能力を喪失するという、非常に使いどころが限られる代物である。

 

 しかもそれだけのリスクを負う割には、念や魔法の出力自体が向上する訳でもないという……キルア辺りが聞いたら「ハズレ能力じゃね? もっと練ったら?」と言われかねない難しい能力であることは否定できない。

 

 更に加えて、今の私の残存魔力は六割程。すぐに解除したとはいえ、暴風バリアで多くの魔力を消耗したことも手伝い、持続時間は三秒といったところであるが……それでも私はこの能力を信じて、ヒソカに最後の攻撃を仕掛けるつもりだ。

 

「最強の片鱗…ね♥ 君のことだから、その最強とはラナ…『ラナ・シエル』だろう? まさか君も(・)――世(・)界(・)意(・)志(・)の(・)代(・)弁(・)者(・)にでもなるつもりかい?」

 

「まさか! それは時(・)期(・)尚(・)早(・)というものですよ!」

 

 お喋りはもう終わりだ。

 師匠(ヒソカ)には悪いが、攻撃開始のタイミングは一方的に決めさせてもらう!

 

 

『《世界ノ翼(ラナの知覚)》』

 

 

 その能力を発動した瞬間、私の背には青(・)白(・)く(・)輝(・)く(・)翼(・)が発現。

 

 私の前には、先ほどまでとはまるで違う世界が広がっていた。

 

 

▽ ▽ ▽

 

 

 会話中に前触れなく突然に、その背に翼を得たクーデリアが、急速に僕に迫る。

 

 この翼には見(・)覚(・)え(・)がある…とはいえ勿論この世界の話ではなく、彼女の杖を通して追体験した、クーデリア側の世界の話だ。ラナと呼ばれる快活な女が背負っていたのは巨(・)大(・)な(・)白(・)銀(・)の(・)翼(・)であり、今クーデリアが背負っている小(・)さ(・)な(・)青(・)白(・)の(・)翼(・)とは、似ているようでまるで別物だ。

 

 存在感は大きいが、それに比して特段圧は感じない……出力が合体攻撃を超えることは無いという彼女の言葉は、きっと本当なのだろう。

 

(ここに来ての完全に未知な能力♥ しかも彼女ほどの使い手が最後を託し、最強(ラナ)の片鱗とまで位置づける最上の発♥ 生半可なものでは無いとは確信出来るね♦) 

 

 ラナは「相手の攻撃は斬るか避ける」を体現する、軽快さと豪胆さを併せ持つパワータイプだった。杖の記憶ではクーデリアの体術の師匠もまたこのラナである。神器を覚醒させてからは完全に別次元の存在へと進化してしまったが…それでも性根や立ち回り方については、殆どそのままであったと認識している。

 

「受けて立つよ♥ その杖が、僕に届けば君の勝ちだ♥」

 

 回収した小石の礫、その全てにオーラを纏わせ『伸縮自在の愛(バンジーガム)』を飛ばす。地面にも蜘蛛の巣のようにオーラを広げつつ、お喋り中に用意していた、高速射出用のオーラ三本についても既に発射待機済み、更に加えて背中からは緊急退避用のガムも伸ばしてと…機先を制されていたように見せかけて、実は万全な準備は既に済ませてある。

 

(あの翼からは、僕でも分かるレベルで尋常じゃない魔力を感じる…♣ さっきの暴風のバリアよりも、遥かに消耗が激しいだろうから、どんなに長くてもあと五秒。もしかすると…あと一秒だって保たないのかもしれない♥ だったら、オーラが張り付いた時点で僕の勝ちだよ♥ 緊急退避はちょっとズルいケド、逃げる相手を仕留められないような時間制限技には意味がない♦ 『天罰のつえ』なんて使った、不肖の弟子へのほんのお返しさ♥)

 

 

▽ ▽ ▽

 

 

 加速した思考の中で――周囲一帯のあらゆる情報が高密度に叩き込まれる。

 

 これは世界に存在する情報そのものを、異常な密度で認識可能とする能力。

 

 オーラの気配と位置、筋肉の僅かな動き、物体同士の位置関係…それこそ次に吹く風の強さや方向、吹くタイミングすら正確に予測が出来るだろう。

 限定的な未来予知に近いレベルの超高度な状況把握能力が、この能力の最大の強みだ。

 

 単純に視力や聴力が強化される訳でなく、世界に存在する情報そのものを直接『理解』できる。それこそがこの能力の本質であり、世界意志の補正が入ったラナと同等の、理不尽な知覚力を私に齎してくれる。

 

 ……つまり変わったのはただ一つ。

 世界を認識する精度だけだ。

 

 

(投擲された礫……この程度を避けるのに付与は要らないけど、避けた後にも再利用するつもりだね。『水』を付与した杖で避けきれない分だけでも的確に弾き返す)

 

(返却分は避けずに受けるね、地面のオーラは足場が限定されて面倒だし、それ以上に厄介なのが退避用のガム。今の内に切断するためにも、事前に用意しておいた、尻を糸で繋げたナイフを『周』で強化、『水』を付与して……ここでヒソカに投げる。そう、その避け方をすると背中のオーラが糸で切れる)

 

(ここで足元の粘着質なオーラが邪魔になるから、足元に『風』を付与して加速して一気に飛ぶ…と見せかけて一回しゃがむ。うんやっぱり。飛んでたら高速射出のオーラは避けれなかったね。危ない危ない)

 

(あとは今度こそ『風』の付与で距離を詰めれば…)

 

 

「……ここで能力が解除されましたね。こちらにはもう、余力は一切ありません。

これでもまだやれるなら、師匠(ヒソカ)の勝ちです」

 

「ああ……そうだ…ね♥

 でも……ここからは流石に…無理………か…な……?」

 

 胸(・)板(・)を(・)『(・)突(・)』(・)付(・)与(・)の(・)杖(・)で(・)貫(・)通(・)さ(・)れ(・)た(・)状(・)態(・)の(・)ヒ(・)ソ(・)カ(・)がその言葉を吐き出した直後、ゴボリと口から赤黒い血が溢れる。致命傷は間違いがなく、仮にこの場に医者がいても治療の余地はない。最早余命は五分と残されていないだろう。

 

(まあそんなことには…絶対に…ならない…けど……あとは…お願い…キルア…ゴン…君)

 

 『神速(カンムル)』で駆け付けたキルアが既に『大天使の息吹』をゲインしている姿を目にした直後、息苦しさと激しい頭痛……更に魔力欠乏の症状が襲い、私の意識はそこでブラックアウトした。

 

 

▽ ▽ ▽

 

 

「随分とまあ、猟奇的な決着になったこと。まあ私としては少しすっきりしたけど…クー子が倒れたのは酸欠ってとこよさ? 急に倒れて驚いたけど、アンタの言う通りに、最後まで黙って見届けた上で、双方無事に終わったことは幸運に思うべきね」

 

「いやぁ…まだ作ったばかりで能力に慣れてないんですよね。倒れたのは仰る通りに酸欠と…魔力欠乏が主な要因だと思います。完全に空っぽになると身体が休眠モードに入りたがりますし……無事に帰還するまでが探索である探索者としては、あまり推奨されない状態なんですよね。

 でも、勝ちましたよ! 師匠相手に! 異世界で…しかも対人戦であっても負け越しゼロ! これで胸を張って、元の世界にも帰れるってもんです!」

 

「翼が生えてからのクーデリアは、俺から見ても異常…というより、あまりにも的確過ぎる動きだった。もしかすると未来予知の能力…いや魔法か? マジックアイテムを使うというのは聞こえていたが…」

 

 私の動きを褒めてくれたリールベルトさんは、そのまま能力の考察に移っていた。

「奥の手みたいなものなので、詳細は伏せさせてください」と言ってはぐらかしておいたが、マジックアイテムの有用性は伝えておいたので、今後は天空闘技場でそれらを使って暴れるリールベルトさんが見られるかもしれない。

 

「あれだけイイ闘いが出来て…終わったらすっかり元通りだなんて♥ ここは随分と良いところだね♣ 今後は誰かとヤル時は、ここを拠点にするのもアリなのかも♥

 でも…う~ん悩ましいなぁ♥ アチラを勃てればコチラが勃たず♥」

 

 私に胸板を貫かれて死にかけていたヒソカであるが、『大天使の息吹』を使用されてからは元気いっぱい。完全に無傷で復活している。流石は有用な呪文カード40種を集めて初めて交換可能なランクSSカードである。

 

 ゴン君による私の治療が済んだ後、キルアからは「殺気を殆ど感じない割に、特に急所も避けずに杖で貫いた時はビビったんだが!?」と突込みが入っていたのだが……実は『大天使の息吹』の影響範囲については、準備期間中個別にゲームマスターに確認していて、『脳波が完全に停止していない限りは有効』と言質は取っていたんだよね。

 それこそ植物状態の患者だったり、人工心肺の患者にも適用できないと「瀕死の重症、不治の病 なんでも一息で治してくれる天使。」という説明には不適切だから、仮に心臓を貫いていたとしても十分助かる見込みがあったのだ。

 

(なにより驚いたのが、枯渇した魔力も回復したことなんだよね…。レイザー戦後のツェズゲラさんは「魔力は回復していない」と言っていたけど…もしかしてアップデートが入った? グリードアイランドも「クリア者が出たから終わり!」という訳でもなくて、今後も続いていくってことなのかな?)

 

「お姉さんもヒソカも、本当に良かった! 二人に何かあったら俺…自分が許せなくなることだったから……」

 

「ゴン君もいいのいいの。こうして無事に終わったんだから!

 でもそうだね…悪いと思っているなら、ちょっとこれからを手伝ってね。私が元の世界に帰るまで残り約10日……これからぐっと忙しくなるよ!」

 

 ピオスさんは本来非常に多忙な方だが、長い時は一か月ほどかかるハンター試験用に取得した長期休暇が2/7まであるそうで…私の帰還予定日として設定した2/5までは私をガッツリ手伝えるようだ。私としてはこれ幸いとばかりに、私の世界よりも発達していそうな分野の医学書や医療機器等を見繕って頂く想定である。

 

(ヒソカの腕治療時に大病院へのツテも作ったし、その辺りはある程度お任せした方が良さそうだしね。餅は餅屋…こっちは何が欲しいかを可能な限り詳細に伝えられればそれで十分!)

 

「では……非常に名残惜しいですが、ゲームからは出ましょうか。外に持ち出す三種のカードについては既に決めていますから、もめることもありませんしね……。

 魔人に叶えてもらう願いも二つ迄は既に決まってますので、もし三つ目があれば誰か叶えても良いですよ? …リスキーダイスを誰かが振らないといけないのでそこは注意ですけど。」

 

 クリアまで134日…。サヨナラまで139日もの期間、世話になったグリードアイランドもこれでお終い。ソフトは当然、プレイのためのフロアを提供してくれたヒソカにそのまま譲るつもりである。

 

 これでこの世界にいられるのは…たったの10日。

 一部の金銭の貴金属類への変換や、神字を含む元世界には無い未知の技術の仕入れ作業、関係各所へのお別れの挨拶…やらないといけないことが山積みである。それこそ大半の作業は、外注するように動くことから始めた方がいいかもしれない。

 

「よーし! やるぞー! どうせなら元の世界の皆にも「クー子偉い!超偉い!」って、沢山褒めてもらわないと! 元世界でも、技術革新を起こしちゃうぞー!! 星の寿命問題解決も合わせれば…こりゃもう向こう数万年は、歴史に名を残すこと間違いなし!!」

 




ラストバトルも終わり! ここからはウイニングランです!
インフレしてるようでしてないようでメチャしてる…そんな戦いでしたね。
自分で書いてて「ラナ強すぎだろ馬鹿か?」てなりました。
でも設定上これくらいの知覚力はあるので……
というかこれくらいは無いとクロス元作品のラスボス(レイグレン)に勝てません。

とはいえクー子はラナより遥かに賢いので、情報処理能力や素の知識量が重要になる知覚力(状況把握能力)だけなら『クー子>>>ラナ』で明確に…というより大幅に上回ってます。
現状最大五秒ですけどね。

今回のヒソカ戦は色々と苦労したので…感想等あると非常に嬉しいです。
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