他の五人はお留守番です。
そして今回1.5話分くらい文量がありますね…お得感たっぷり!
――ゲームからの帰還後
まず最初にハンター協会宛にグリードアイランドのゲームクリアを報告して、10日後には元の世界に帰還する予定である旨を電話口で伝えた。
それと同時に神字についてのノウハウを要求したり、協会員に対して各種工業製品等の製造工程…特に半導体技術についての収集を依頼したりした。
一部の製品や商品については持ち帰れる範囲で購入を検討しているが…魔人がどこまでの荷物を許容してくれるかまでは分からないので、大きめのリュック複数個に入る範囲までを検討している。空間拡張機能付きのリュックとかがどこかで出品されてないかも念のため探したけど…見当たらなかったからね。仕方ないね。
その後、何故かその場にいたパリストンさんとも通話することとなったのであるが……
「ジンさんが作ったゲームをクリアしたと伺いましたよ! いやぁ〜流石は異世界の英雄様ですね!! なんでもプロハンター含めて10年以上クリア者が出なかった伝説のクソゲーらしいじゃないですか。どうでした実際は? 神ゲーでした? それともやっぱりクソゲーでした? 僕どうにも気になっちゃってー!」
どうにも開口一番元気な人である。
「うーん……神4普通3クソ3で、ギリ良ゲー判定ですね。極端なバランスですけど、修行には打って付けの環境ですし、ラスボス…失礼。ゲーム上の最高難度のイベントは、それに恥じないだけの難易度であったと思います。クリア報酬も魅力的なもの揃いだったあたりも、しっかり神ゲー要素でしたね。
ただ離脱手段についてはもうちょっと楽でも良かったかなーと思いますね…これについてはプレイヤー側の問題ではありますけども。あと一部のゲームマスターが…ちょっと…まあ…はい。その辺りが駄目な要素ですかね。」
「詳しいレビューありがとうございます! 今度ジンさんに会う機会があったら、クソ要素が三割あったぞってきちんと伝えておきますね!」
この人はさあ……と思いつつも、話の主題は今後の魔法関連事業の代表名義についてに移った。決まった内容を要約すると、もし私が元の世界に本当に帰還出来れば、今後発生するロイヤリティや印税等についてはハンター協会に帰属するという話で同意するに至った。これについては元々この世界に魔法が広まった経緯が、私に魔法の学術書を執筆させるよう、パリストンさんが発案したところから始まるため、半ば当然のことである。それこそ実証から製本、流通、政府各所との連携まで丸投げしていたのだ。私としても一切の異論はない。
「貴女が広めた魔法は、我々ハンター協会一同が責任を持って管理・発展していきますからご安心を!」
この人はどうにも善か悪かの判別が難しい。
態度は慇懃無礼でありながらも人をまとめる能力や政治力は私から見ても高いと分かるし、部下の言うこともよく聞いて取り入れて、世界にとってプラスになるように働いているようにも感じる…。一緒に仕事(実証試験後の魔法指導)をした経験もあり、お酒もくれたしで人の心の機微にも聡い人であることも理解している。
それでも…正直どうにも、不穏な感覚が拭い切れないんだよなあ、この人。
遊び場が面白い間は大切にするけど、一緒に遊んでいた仲の良い友達が引っ越し等で会えなくなったら、急にその遊び場を嬉々として破壊するかのような……そんな危うさを感じてしまう。
(多分この人…自分と対等な人が少ないんだろうな。能力が高いからこそ、世界をある程度は自分の好きに動かせてしまうからこそ。どこか退屈で、常に遊び場を求めている。私がこの世界に齎した魔法という力……悪用はして欲しくないなあ…。だったら最後に、無駄かもしれないけど、この言葉だけでも残しておこう)
私は電話をマーメンさんに返そうとするパリストンさんを制して、最後に一つだけ言葉を贈る。
この言葉が、彼の今後の活動指針の楔になってくれることを願って――
「パリストンさん。世界はきっと、貴方が思うよりもずっとずっと、面白くて、尊くて、そして深いものです。……だから、私がいなくなっても、いつかネテロ会長がいなくなっても、この世界をツマラナイものだとは思わないでください。だって、未知に挑戦するというのが、ハンターの本分としてあるべき姿なんですよね? だったらきっと…貴方が我を忘れて夢中になれるものが、人が、きっとこの世界のどこかにあると、私はそう信じております。」
▽ ▽ ▽
その後はストーンハンターのビスケさんのツテで、大量に超良質の宝石を仕入れられる宝石商を紹介してもらったり、ゴン君とツェズゲラさんに動いてもらってオークションに出品されている希少品を買い集めたり、実況ちゃんを最後のお見送りに誘ったり、キルア…を経由してミルキさんに、裏表問わずに大量の物品を一纏めにして運べそうな魔法や念能力を持っている人がいないかを探して貰ったりをした(勿論依頼料は支払った)。
運び役の人については『カメラで撮ったものを写真の中に収められて、写真を破ると元に戻る』という能力を持っている人を見つけることが出来たので、これで解決である。とはいえ万が一だが、私の元の世界では能力が発動しないという可能性もある。故に絶対に失いたくない貴重品については適用できないが、これで大荷物の持ち込みについての苦慮も、大方解消するであろう。
ピオスさんについてもしっかり動いてくれたようで、最新の医療機器から、私の世界には不足しているタイプの薬までを用意してくれていた。薬についてはそれぞれの成分表、調合手順、更に薬を再現・研究・量産するための分析機器や培養器、臨床試験データまで完備する徹底ぶりである。
「私がお手伝い出来ることは、この程度でしかありません。ですが……どうかこれで、クーデリア様の世界で病に苦しむ人を一人でも多く救えればと思っています。こちらの世界で積み重ねてきた知識や技術が、遠い異世界で誰かの命を救うために役立つのであれば……それ以上に嬉しいことはありません」
…とのことで、これまた立派な方に療術の才能があったものである。
この世界に神様がいるのかは分からないが、取り敢えず感謝はしておこう。
彼女の献身と立派な志については、あっちへフラフラこっちへフラフラ…ゲームの外に出てからというもの、手伝う気があるのか無いのかよく分からない我が師匠にも、爪の垢を煎じる勢いで見習って頂きたいものである。
▽ ▽ ▽
――2月4日 帰還前日
(ねえロード。チュー助とまーちゃんは、どうするか決まった?)
(うむ…どうやら彼らはこの世界に留まるようだ。我としては少々名残惜しいが…まあ、致し方無かろう。少なくとも元の世界にいる器は、本来その世界のものではない存在が世界に入ることには若干否定的だ。この我ですら、器の肉体はこちらの世界のマウスのものであるが故、そこまで歓迎はされぬであろうからな)
(え? 随分と厳しいんだね…。えーと…その方は、元はロードと同じ存在なんだよね?)
(その辺りは難しくてな。それぞれの器はそれぞれの役割を持って、理想のボディを用意した上で世界に顕現するのが普通なのであるが…我の場合はかなりの特殊事例であるが故、元が同一であっても同一とは言い難い…。我が自称一般マウスなのもそのためだ)
私がこの世界に転移したことに伴い、どうやら上の方々も随分とややこしい状況になっていたようである。しかしそうなると、『理素結晶』はそのままで良いのだろうか? 没収なり破壊なりされてしまいそうなものだが…?
(……何を考えているかは察しがつくから先んじて答えるが、『理素結晶』については恐らくそのままだ。あれは我の世界で生まれ、我の世界のために動いた代物でしかない。故に、我らの側でどうにかすることはないであろうよ。世界のことはその世界のものに任せる。それが器によっても変わることがない、我らの絶対的なスタンスだ)
(…あの世界に暮らす一人の人間としては、下手なことは言えないね)
どうして助けてくれない? どうしてもっと楽にしてくれない? どうしてこんな理不尽な目に……そう訴えかけてくる多くの存在がいることは、紛れもない事実だろうし、その訴えが間違いだとも思わない。ただ、世界をその世界の存在に任せて、ただ見守ってくれる存在というのは…ただそれだけで、ありがたい存在であると私は思う。例え任された存在達の都合で、世界そのものが滅んでしまうようなことがあったとしても…だ。
(話は変わるんだけどさ、私達の方の世界にいる器ってどんな方…というか人なの? 確かだいぶ前に、戻ったら紹介してくれるって言ってたけど…)
(少なくとも器は人の身体だ。肉体年齢としては11~13歳といったところ、白髪蒼眼の女児だな。一応立場としては古豪の名門貴族のご令嬢であるからして、少なくとも失礼の無きように。まあ、別に貴族として何か役目を担っているわけでもないようだがな。表向きの立場というわけだ)
(ロードが言うには、私は会ったことが無いそうだし、少なくともサンライズではないんだよね?)
(うむ。月影国の西側、ウェールズという小国の貴族だな。知らなくとも無理はない)
(……ちなみに名前は? 聞いたことくらいはあるかも…?)
(そうさな……ノルン・ハーディスを名乗っている。
家名はハーディス家だが…聞き覚えは?)
(う~ん…無いかなぁ)
隣国でライバル国でもある月影国の貴族ならそこそこ知ってるけど、流石に小国の貴族までは聞いたことが無かったなあ…。ウェールズに足を運んだ回数自体が数回だけだし、その時も大体外交官が応対してくれていたし…王様との謁見は1回だけあったけど、その時も復興支援が主目的で、貴族の紹介とかそういうのは特に無かったからね。
……ん? ノルン・ハーディス……ノルディス…ノルディスハーン?
ロードのフルネームが確かロード・スぺクティア・ノルディスハーン…。
(もしかしてその子って、凄い可愛い? 羨ましい感じ?)
(なんだ、得心したように、急に不躾な話をするでない!
だからあまり言いたくなかったのだ! はあ……あの器は…人の美の結晶と言ってもまるで過言ではないだろうな。器の強度としても、唯人とは比較にもならん。我としては心底羨ましい器よ……我も本当は、あんな器が欲しかった……)
(今のロードも可愛いよ? 足とかプニプニだし!)
(慰めにもならんわ! ええい! ここぞとばかりに揉むでない!!)
▽ ▽ ▽
――2月5日 帰還予定日
天空闘技場から少し離れた場所、私が造った『試しの門・ミニ』がある広場にて、皆がお見送りしてくれることとなった。気まぐれ魔人に1000個のお願いを伝える必要があるため、都合2時間以上の拘束となることに加え、5%の確率で全てがご破産になる可能性すらあるのだが……それでも集まって下さった皆さんには感謝しかない。
集まったのはレイザーに挑戦した15人に実況ちゃん、更に加えて私が直接指導した200人の生徒(ピオスさんは重複)…と、話を聞いて颯爽と駆け付けてきた副会長ことパリストンさんの姿まで見えたのだから驚きだ。
野次馬対策はハンター協会側が色々と頑張ってくれたようで、広場で魔人を呼び出しても混乱を招かないように配慮されている。現れる魔人については映画の撮影ということにして、部外者が入り込まないように簡易的な柵と警備員まで準備してくれていた。頭が下がる仕事振りである。まあその辺のお金の原資は私なんだけど…。
(個人的にはイルミの姿が見える方が驚きなんだよね…ピオスさんの付き添いかな? イルミは一応彼女の師なわけなので、理屈としては分からないでもないのだけど……。思ったより付き合い良いんだねこの人)
因みに私が現実に持ち帰った三種のカードは、『気まぐれ魔人』、『リスキーダイス』、『ブループラネット』の三種であり、『ブループラネット』は勿論ビスケさんへの報酬だ。
というのも、これについてはランクSSカードであり、現実で呼び出した魔人でも叶えられない可能性が万が一にでもあったことによる選択である。
既に一人だけ願いが叶っているビスケさんはゲームから帰還した初日から随分と上機嫌であり、私もこの10日間で8回ほど彼女の…正確には具現化されたクッキィちゃんのマッサージを無料で堪能させて頂いている。別にお金は有り余っているのだが……これについては気持ちの問題なので別に良いとのこと。というよりそれがビスケさんなりの私への餞別だったようだ。
最終的な私の荷物は、貴重品を詰めた大きなリュック一つと、大量の写真…という名の持ち帰り予定物品が詰まった旅行ケースが一つ。
これだけで百億分の貴金属類や宝石、最新の半導体、最先端の工業製品やその製造手順書等、医療レベルを確実に数段は引き上げるだけの各種医療品が全て詰まっているのだから、念能力というのは実に便利なものである。
(多分大丈夫だと思うけど…これで復元出来なかったら泣けるね…。世界を跨いだから能力無効です! なんて可能性は否定出来ないから仕方がないけど…まあリュックに入ってる分だけでも十分な金銭と新技術の詰め合わせにはなるから、その時はその時だね)
▽ ▽ ▽
準備は全て整ったので、ついに最後の大勝負。
リスキーダイスお祈りタイムである。
まずは魔人を呼び出し、願いを聞かせる段階まで進め、ついにここでリスキーダイスを振る。
集まった200人以上の祈りの感情は、『《
そんな大きな願いを乗せた魂の一投の結果は――
『大吉』!!!
周囲の歓喜の声に釣られて私もこのまま歓喜の声を叫びたくなるが、そこはぐっと我慢。
『私を元の世界に帰してください。場所指定が可能なら、王都ソルディアの自宅前でお願いします!』
本当は仲間の目の前に飛んでいきたいところであるが、もしダンジョン攻略中であれば大問題だ。私が飛んだことで定員超過が発生し、以前のダンジョン融合事故を彷彿とさせる窮地に陥りかねない。なのでここは平和的に自宅前を指定する。
さて…これで私の願いは叶う筈であるが…実はもう一人、願いを叶えたいと立候補する人がいた。
その人こそ、自身の父親に会いたいと真摯に願い、プロハンターにまでなったゴン君である。
私からダイスを受取り…ダイスを振ろうとするゴン君であるが、実は彼の願いについては私の願いとは異なり、必ずしも本人が振る必要は無い。何故なら『ジン=フリークス』という人間はこの世界に実在しており、その上でプロハンターであることまで添えれば同一氏名の人間は他に存在しないことが確定しているからだ。
ただしこれは、自分の願いに他者を巻き込みたくないとするゴン君の覚悟であるため、私も黙ってその出目を見届けるという選択をした。
ジンさんはゴン君がグリードアイランドをクリアしてでも自分に会いに来ることまでを想定していた可能性が高いと思うが、まさか息子が自分に会うために、5%の確率で命まで賭けている*1とまでは…果たして予想出来ているのだろうか?
私がそのようなことを考えている間にも、運命のダイスは転がり転がり……出た目は…『大吉』!!!
それを確認して大喜びのゴン君とキルア…とついでに私。願いは当然…『オレの親父、ジン=フリークスをこの場に連れてきて!』である。
可能ならキルアと一緒に私の紹介もしたいとのこと。魔人が願いを叶える順番は、言った順番と関係なくランダムですよ? とエレナさんも言っていたので、叶う順番によってはそういう事もあるであろう。
最後の一つは特に周囲からの要望もなかったので、998個の中からランダムに選ばれることとなる。
以前小人に作ってもらったリストを流用しているので、どれが叶えられても嬉しい願いばかりだ。どれが当たるかは、叶えられるまでのお楽しみである。
「ふ~むよろしい! 確かにお主らの1000個の願い、聞き届けた! それでは早速叶えようぞ…うむ、最初はこれにするとしよう。『元の世界に帰りたい』とな? …成程成程…いやこれは…ううむ…いやこの方法なら……うむむむむ!」
どうやら私の願いが最初なので、お父さんに会えて喜ぶゴン君は見れないなあ…と呑気に考えていたが、魔人がどうも悩んでいる…ゲーム内の魔人も説明の最後に「タブン」とか付け加えていたけれど…本当に大丈夫なのだろうかと不安になってきてしまう。
そうしたところで、魔人が急に「カ―――ッ!!!」と叫びだした。
「………ヨシッ!! これで叶ったであろう!!」
「いやまだ私いるんですけど!?」
こちとら前日のお別れ(予定)会の時点で、皆とのお別れの挨拶はきっちり済ませているのだ。
その上で『リスキーダイス』で大吉を当てているのだから、こちらとしてはさっさと帰してもらいたいのだが……この魔人、まさか不良品か!?
(…………いや、どうやら不良品ではない様であるぞ?)
(ロード?)
(安心するが良い。きっともうじき…)
ズアッ
という音が聞こえたかどうかは定かではないが……今、確かに
――世界が裂けた。
そう認識をした刹那、今度はそのまだ薄い裂け目を通して、剣のシルエットが確かに見えた。
「……!! あれは!!!」
あのシルエットには、見覚えがある……
サンライズ王国の国宝にして、私が直接関わる機会に恵まれた、唯一の神器。
ラナ・シエルの愛剣にして最強の武具――【神剣ラグナ】!!
「やっと! やっっっと!! クー子に会えるんだよ!! 絶対にここで合ってる!!
聞き覚えのある掛け声と共に、文字通りに世界の壁を切り裂く勢いで、白銀の光を纏った【神剣ラグナ】が、既に薄い裂け目が出来ていた空間を、上段から一閃する。
ひと一人が楽に通れる程に裂け目を広げ、
栗色の髪を後ろに結び、迷いのない琥珀色の瞳が特徴的な、一人の女性。
美しい筋肉の張りと豊満な胸元が目立つ軽装の剣士。
快活で明るそうな印象を与えるその顔立ちは、私の転移前から、まるで変わっていない。
白銀の翼をその背に広げ、【神剣ラグナ】を携えし、世界意志の代弁者。
私の最高の仲間の一人……ラナだった。
「ちょっとラナ…置いてかないでよ。僕も早くクー子に会いたいんだよ?」
あっ後ろに氷雨もいた! 二人とも超久しぶり!!
氷雨は僕っ娘です。クー子の2歳くらい下で、外見はキノさんを水色っぽい髪色にすると割と近いですね。互いに気付いてませんが、実はクー子とはちょっと離れた親戚という裏設定あり。
最終話は9/25の夕方以降~深夜に投稿予定です。