⇒追加で投稿すればええやん!
――ということで続きました。流石にこれで完結で良いかな?
挿絵は後書きに載せます。
半分以上そのための投稿なので、是非見てね!
――2003年2月5日
クーデリア帰還からちょうど三年が経過。
キルア=ゾルディック(15歳)。
いま俺は、肉親であるアルカ(14歳)と恋人のスパー(19歳)と一緒に世界中を旅している最中だ。身長はここ2年で一気に伸び、今ではスパーの身長も超えたわけだが……それについては内心喜んでいる。
(なんつーか、その辺やっぱスパーが気にするんだよな。
背が並んだ辺りから急にデレデレし始めたし…やっぱ遠慮してたんかな?
あれだよなやっぱ。ショタコンとかそういう……)
己の師であるビスケがスパーに向けるあのぎこちない目線には、腹の底で少々イラっとさせられたくらいである。普段の旅でも並んで歩いて姉弟と思われる分には平和だが、恋人と知られると途端に生暖かい目をスパーに向けられるのは毎度のことであったが、決して面白い話ではない。
「お兄ちゃん! あれ!あれ!! でっかい塔!! なにあれー!? 人ばっかりであんまり進めないけど、あの塔だけはよく見えるよ!!」
「ん? あーあれか、あれは天空闘技場だな。俺が6歳の時に200階まで登れってんで、無一文で放り出されたんだぜ? 今思えば結構ヒデー話だよなぁ。てかもう、ここに来るのも三年振りか…」
奇遇なことに、今日はクー子を見送った日である。
周囲が少々混雑していたのは、恐らくそれが原因だろう。
(確か『全ての魔法の母・帰還の地』としてあの後に聖地化したんだっけか? クー子を迎えに来たラナさんの力が
「昨年にご挨拶はしたけど……やっぱりそういう家なのよね。私は大丈夫かしら…?」
混雑の理由について考えていると、スパーが心配事を口にする。いつも泰然自若で飄々としている割に、どこか心配性なところは彼氏としては可愛く思う。
「スパーはもう試しの門は開けてるし、更に一つ星のプロハンターで実績的には
「確か彼、クーデリアの影響で飲むようになったのよね? キルアが言うには元々家で唯一の魔法適正持ちだったとかで、しかもその魔法で夢が叶ったからかそれで熱心な信者になったとか聞いたけど?」
「お兄ちゃんのお兄ちゃんはねー。いっぱいフィギュアとかお人形さんを持ってるんだよ! それを動かしたり喋らせたり出来るって、もう毎日大騒ぎ!」
今では等身大フィギュアを専属秘書代わりにしているのだから、本当に魔法とは何でもアリだと称さざるを得ない。確かゴーレム生成系の魔法とかで、予めプログラミングの要領で存在を定義することで高度な意思疎通能力と演算能力を持つとか言ってたな。実質超高度AI搭載のアンドロイドとか何とか……それ金持ちに売って暗殺家業以外でも稼ごうとしてたんだよな…しかも富裕層の豊富なコネも間接的に利用出来るとか、延々と自慢してたっけか。スゲー早口で、イマイチ内容分かんなかったけどさ。
「にしても…本当に人混みが凄いな。ああでもそろそろ途切れるか、多分みんな、あの広場に集まってたんだな。見ろよアルカにスパー。あれは『試しの門・ミニ』て言って、クー子が造ったうちの家の門を真似たもので――」
二人にかつての思い出を共有しながらも、やはり思い出すのはこの世界から居なくなってしまった彼女の顔。最初から最後まで、元の世界に帰るんだと言い続けてくれたからか、こちらとしても幾分かスッキリと見送ることが出来た…自他共に認める程の天才で、強くて、賢くて、優しくて、慈しみがあって、真っすぐで、綺麗で、阿呆みたいな呑兵衛で、頭の螺子が外れてて、そしてどこか抜けていた、愛嬌溢れるあの女。
(今じゃあ何故かトリプルハンター扱いされてんだぜ? 戻って来たら、さぞ驚くだろうなw)
ピオスさんが
グリードアイランド攻略、及びそれに付随した『魔女の若返り薬』が齎した多大な影響。
第一級犯罪者であるビノールトの逮捕。
そして『異世界への帰還』という、人類史上初の快挙。
最後のものは功績として扱うべきか議論の余地はあるだろうけど、はっきり言ってそんなものはオマケだ。クー子が伝来した魔法という力は…世界の在りようすらも大きく変えて、それは現在進行形でも広がっている。
(俺も、お前がいなかったらどうなってたんだろうな。いや…俺以上にヒソカか。あいつ今では『世界最強』だの『紫華の奇術師』だので、超有名人だからな。それこそクー子がいたら、どんな反応するかは気になるね。一体今頃、何してんのかなーアイツ。それこそ帰還祝い日とか言って、仲間集めて飲み会か?)
……久々にゴンと会おうかな。
電話だけってのもあれだし、クー子の話と一緒にヒソカ発案の暗黒大陸渡航計画についての話でもするか!
▽ ▽ ▽
――その頃のクー子
特異ダンジョン深層 VS 雷鱗龍・天喰
「まだまだぁ!! ラナの斬撃に比べれば! ノルンちゃんパンチに比べれば!!
ぬるい!!」
『堅』で強化された私の肉体は、実戦用コートの裏地にビッシリと刻まれた神字によって更にブーストがかかる。敵の属性に合わせて身体に『雷』を付与することで致死の雷撃は常にシャットアウトしているが、振り下ろされる爪の一撃、
しかし私がそれらをまともに受けるようなことは、そもそもない。躱し、いなし、接触は常に最小限に抑えつつ、相手の攻撃を弾いて自身の動きを加速させる。その瞬間に生じる衝撃を緩和させるための強化である。
……それはつまり、それだけの
「お前如きに!翼を生やすまでもないっ!!」
あらゆる理を喰らう性質を持つに至った超強化雷鱗龍の周囲の空間は、常に喰らわれて消滅を続けている。ならば普通に攻撃したところでそれが決定打になることはない。こいつを確実に殺すためには、存在そのものを虚無に還すのが最適解であるのだが……ラナやノルンちゃんとは異なり、私にそんな手札はない。ならばどうするか? そこにあるじゃあないですか! 最高に都合の良い武器が! 目の前に!
「お前の力を寄越せ! 『斬』を付与!
……ハッハーやったね! 思った通り。『雷』と『天喰』属性の魔力刃の出来上がり!!」
雷鱗龍・天喰の
「お前はまだ第七層のボス! 今日は第八層まで行くからサクッと行かせてもらうよ!!
珍しくも明日から暫く、夫婦揃ってのお休み週間なんでね!!」
急に惚気られた龍はお怒りなのか、尋常ではない数のバッドステータスを付加するであろう大音量の咆哮を一つ飛ばすが、その程度で止められる私ではない。コートの内ポケット…時間を掛けてマジックアイテム化させた一枚のトランプのジョーカーが、単純な怯みから恐怖や絶望を含む、勝計できぬ多数の精神干渉から私という存在を守る。
(いい仕事するじゃあないですか、師匠。ちゃんと約束通り……探索中はずっと持ち歩いていますよ?
だから最後まで…一緒に戦ってくださいね? いつか一緒に…ラナやノルンちゃんにも勝ちましょう!)
相手の攻撃をすり抜けるように躱し、弾き、加速する。
瞬間的に『硬』で強化した魔力刃が急所を貫いたことを確認し、その場を脱出。
かつてパーティを全滅寸前まで追い込んだ『理喰らい』よりも更に強い『雷鱗龍・天喰』は、今この時をもって消滅した。
「いやぁ…本来はラナの仕事なんだけど…やっぱ私でもやれるもんだね。
こうやってちょくちょく委託して貰って鍛えれば、いずれはラナに届くかも?」
世界意志の代弁者たるラナ同席の上、世界の中枢たる核層にて『
今の世界の在り方を維持しつつ、世界の寿命問題も解決する。
今となってはラナの寿命は星の寿命と等しいことをノルンちゃんから聞かされたからこその解決策だった訳だが……この策で一番負担がかかるのは当然ラナである。それこそ、私たちが全員寿命で亡くなっても、一人世界のために戦い続けなければならない。
(そんなのって、やっぱり違うよね?)
ラナは、異世界に渡った私を迎えに来てくれた。
だったらきちんと、その恩返しをしなくっちゃ。
「ふふ…別に私だけでも無いけどね。他の皆だって同じ気持ち。ラナにだけ背負わせていいことじゃない」
月影国のロシャ・ファルマ夫妻も協力してくれるそうだし、他国の英雄級も難易度次第では特異ダンジョンに挑戦してくれている。自分たちの行動が、そのまま星の寿命になると思えば…本当に大きいことだと私は思う。
(あまりにも難易度が高いから、それこそ紫位級でやっとスタートラインなんだけどね…紫位昇格者が普通のダンジョンでいう黒位(新米)レベルとかいう…とんだ大魔境だよ! 今の私なら、特異の中でも熟練級のものでも踏破は出来るけどさぁ!? 幸いこのレベルの生成頻度はそう多くないから、仕事自体は大分減ったけどね。今更普通のダンジョンなんて五分とかで終わっちゃうし…)
「ふぅ。…おっ? 聖遺物ゲット!! やっぱり特異ダンジョンは多いねぇ。ざっくざくだよ。超高レベルの呪具も多いからか、ヴァルクも喜んでたね確か。今となってはみんな、聖遺物が通常装備だからね…う~ん。
▽ ▽ ▽
「たっだいまー!!」
「「「「「「「おかえり!!!」」」」」」」
「うおぉっ!? びっくりした!」
国への報告が済み、マイホームに戻って愛しの旦那様に向けての開口一番。
まさか七倍の返事が返って来るとは思わず、吃驚してしまった。
「ふっふーん! やっぱ私の思った通りだったね。大体このくらいの時間に帰って来ると思ったよ!」
「ラナ、ちょっと覚醒モード使った? やっぱりそれは狡いって」
「いや氷雨、儂が見る限り使った気配は無かったぞい? この中で今のクー子の実力を最も詳しく知るものがラナというだけじゃろ」
「…リディアの言う通りだな。まあ俺たちの予想も大方外れてはいないのだから良いだろう」
「今日の夜には絶対に戻って来る…トゥリオ含め、誰もそこは譲りませんでしたしね」
「オーリスよ。それは当然だ。家に戻って来ない筈が無いだろう…クー子は異世界からも帰って来たんだぞ?」
「そういう割には、普段より集中が浅かったように感じるがな。素直になったらどうだ? エルド?」
「……随分と吹っ切れた発言をするなヴァルク。ここ最近急速に呪具が増えて、少し奴に似てきたか?」
「まさか。隊長様の人間らしいところを、少し祝福したかっただけだ」
我が家に帰って来たと思ったら、『光焼く翼』の仲間全員が揃って文字通りのパーティの準備中だ。机の上には豪勢な料理や、秘蔵のお酒が所狭しと並ぶ、圧巻の光景である。えーと…なんでこんな事になってるんだっけ?
「その様子。もしかして祝われる本人が忘れてた? 今日はクー子の帰還記念日だよ?」
「あっ!?」
「えぇ……忘れてたの!? マジ? 流石に読めなかった…このラナさんの目をもってしても!」
「いや、その言い方では見逃すのが当然の節穴になろうて」
ああ…そっか。今日は2月5日か。ついうっかり…というか記念日があるから夫婦揃って休みにしたんだったね。失敬失敬。
「あはは…今回のダンジョン結構難易度高くてさ。攻略中はずっとそれに集中して、いざ家に帰るぞーってなった頃には、もう諸々全部が頭から抜けちゃってたかな! ま、まあでもちゃんと予定通りに戻って来たんだし結果オーライてことで…」
「それ、キルアとかゴン君が聞いたら悲しむんじゃないのー?」
「だね。ヒソカって人はまあ装備品があるからギリセーフ判定だとしても、あの二人は厳しい。
それに記念日を忘れられたってことで、うちのリーダーも悲しむんじゃない?」
「うぅ…二人が虐める。エルド助けてぇ……」
「俺は許すさ。それに、こうして無事に戻ったのなら、その二人もきっと許してくれる筈だ。向こうでの…クー子の仲間だったんだろう?」
「……うん! 二人とも自慢の仲間だからね! これくらいなら絶対許してくれるよ!ありがとエルド!大好き!」
私がそう返すと周囲は待ってましたとばかりに「うげぇ惚気だした」だの。「ご馳走様」だの。「ちくわ大…眼福じゃのぉ」だの。
…いやリディアなんだそれ? ちくわ大? ちくわ大眼福ってなに!? 怖いよぉ!?
(随分と騒がしいと思ったら……おかえり。クー子。
我はもう寝るから、汝も宴会は程ほどにするのだぞ)
(ロード…うん。ただいま。…大丈夫? 段々眠る時間が増えてきてるけど、やっぱり…)
(器が器だ。随分と長寿の範疇であろうよ。それに汝よ、我が本来何者かであるかを忘れた訳でもあるまい?)
ロードは既にマウスとして4年以上生きている。通常のマウスの寿命が2~3年であることを考えると、十分と長寿の範疇であることは事実ではあるのだが…それでもやはり別れというものは、どうしても辛く寂しい。本体といえる存在が別に存在していて、ある意味同一の存在であるノルンちゃんもこの世界に顕現しているとはいえ、それはそれというものだ。
(くっくっく…汝が考えることは手に取るように分かるぞ。そうさな…ここはひとつ、賢い賢い一般マウスたるこの我が、特別に予言をしてやろう。『来年の今日。我はまた汝の前に現れる』とな…。ふふふ!今度は理想のボディを用意させるから待っておれ!! それこそあのノルンにも負けん究極完全ボディよ!)
(それは予言というか…予定というか…まあ、いいか! だったら変身魔法も完備しておいてね! 今の姿のロードとも…また会いたいな!)
(我としては少々屈辱の記憶でもあるのだがなぁ…。まあよかろう。この情けない姿も、汝との縁の結果と思えば悪くはない)
――その日の宴会は大いに盛り上がり、この気持ちが異世界にまで届けば良いなと…そう思えるほどに心の底から楽しんだ。
夕食には少々早い時間から始まったことも手伝い、深夜前には全員解散。
その後のゴニョゴニョの時間もしっかりと確保できた。
……もしかしたら皆、気を遣ってくれたのかな?
(もう三年…か。キルアもゴン君ももう15歳。
この世界なら実質成人。時が経つのは、早いなあ。
あっちでもこうやって…平和に眠れて…いると…いい…か…な……)
…zzz