とある付与師の帰還録   作:さくさくの森

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までの流れが美しすぎる…皆ありがとう。

紫華の付与師の方もちらほら読まれてるみたいで嬉しいです!

そして階層主…もといボス戦は専用タイトルとします。


07.天空闘技場 VS ヒソカ=モロウ①

 

『纏』を覚えて数日。ヒソカ戦の前までにあまり意識しないでも維持出来るようになったのは幸いだった。彼との戦いに『纏』無しで挑むのは、流石に危険が過ぎる行為だとは薄々感じていた。

 

「満員御礼感謝! さあさあ今日はなんの日? 何やる日? そう!! あの『破砕の魔王』……もといっ! 『死華の破王』の第3戦!! 戦績は現在2勝0敗の無敗街道爆走中!! リールベルト選手、サダソ選手と、天空闘技場200階が誇る中堅どころを完封勝利で薙ぎ倒し! 快進撃が止まらない我等がアイドル!! 綺麗な華にゃ棘じゃ足りない! 拳を合わせりゃゴリラも粉砕! クーデリアァァァアアア・リーフィスゥウウウウウ!!!」

 

「「「「「「「うおおおおおおおおおお!!!」」」」」」」

 

 ……いつもの実況節には最早何も言うまい。

 

「それに対するは正真正銘の怪物!! 現在7勝2敗、しかしその2敗はマッチングせずの不戦敗! つまり実質全勝!! 闘士にとっては悪夢以外の何者でも無い死神ピエロだ!! 頼むから推しを殺してくれるなよ! 絶対だぞ!! このスナッフビデオ製造機ィ! ヒソカァァァアアア・モロウッッッ!!!」

 

 紹介に私情を挟みすぎだと思うが、実況が助命嘆願をする辺り筋金入りである……。まあそれだけ試合の致死率が高い人だからこそ、私も頑張って交渉した訳なんだけど……大丈夫かな?

 

「……へえ。『纏』は覚えたんだね♦ この短期間で、凄いじゃないか♠」

 

「ちょっと頑張りました。これで事故死が減ると良いなあと思ってますよ!」

 

 軽く会話するが、ここで最終確認だ。

 

「契約のこと覚えてますよね? 履行されないならここで棄権しますよ?」

 

「ふふ……約束は守るさ。でもそうだね、念のため確認しておくよ♥ 君は仮に試合の10分後には五体満足だったとして、それは履行したと見做してくれるかな?」

 

「……試合終了時点ではなくて10分後ですか?」

 

 良く分からない物言いに小首を傾げる。予想される状況としては腕の良い癒術士……いやこの世界に魔法は無いから医療系の念能力者か……が控えていて、直ぐに治療してくれるといったあたりだろうか。

 

「そちらの備えは知りませんが……治療体制を整えているということであっても、私は今年ハンター試験を受験する予定があるんです。流石に欠損等の治療はリハビリを含めてかなりの時間が掛かりますし……それは流石に困るのですが……」

 

「うんうん。その懸念は最もだよ♣ でも彼女は腕が良くてね……それこそ腕が取れても10分後にはまた動かせるようになることは保証する。それならどうだい?」

 

「う……うーん?」

 

 そうは言っても限度があるような……というよりこの人はそこまでして欠損上等な残虐ファイトがしたくて堪らないのだろうか? 随分な変態の戦闘狂である。師匠選び間違ったかなあ……。

 

 早速弟子契約の話を後悔しそうになる傍ら、先日の私の交渉の意趣返しとばかりにヒソカさんは畳み込んでくる。

 

「ふふふふふ……それに奇遇だね。僕も、今年のハンター試験は受ける気なんだよ♦ 去年はちょっと途中で失格になってね♣ それでも一応イイトコまでは進めたからか、今年はナビゲーターが付いてくれるみたいなんだ♥ 多分君なら、僕と一緒に本戦会場まで連れて行ってくれると思うよ?」

 

「あっじゃあやります。履行と見做します」

前言撤回。大当たりだわこれ。

 

「うん……やっぱり君も大概だね♠ 僕は嫌いじゃないけど♥」

 

「えーどうやらお二人は知り合い? のようです! でもでも手抜きは厳禁!! やるからには真剣で、互いに死力を尽くして戦いましょう!! そしてそろそろ観客のボルテージが限界突破間近! さあこっからは待ったなし!! さっそく始めて頂きましょう。今の天空闘技場200階の最強は誰か!? ヒソカか! カストロか! そして新進気鋭のクーデリアか! その結末は君たちの目で確かめるんだ!! はーい、審判さん始めてくださーい」

 

 えっ私っていつの間にか最強候補になってたんだ……知らなかったそんなの……。そう思ったのも束の間、審判が私とヒソカさん双方を見やり、()()()()()()()()をしてから開戦のための口火を切る。

 

「──試合開始!!!」

 

 

 まあ……実は()()()()()()()()()()()

 戦闘は始まってたんですけどね。初見さん。

 

 

 試合開始の宣言から1秒。

 

 突如生成された身の丈を超える程に巨大な石腕がヒソカを襲い、それを大きく躱すヒソカ。その隙を潰すように、粘着質なオーラを纏った4枚の鋭利なカードが私に向かって殺到してくるのは想定済み。身体にはとっくに『念』を付与済みだ。『纏』を覚えたてであることは事実であるが、その練度については当然ブラフ。付与無しでは24時間の維持がやっとの『纏』も、まるで半年はみっちり修練を積んだかのように滑らかだ。飛んでくるカードは『水』を付与した上で、オーラで強化した杖を使って的確に叩き落とす。

 

『念』を付与してるのは身体だけで、持ってる杖については対象外なのは当然確認済み。『纏』で強化された膂力に加え、杖自体に『纏』をして更に強化したものを、更に付与で強化!都合三重の強化が私の愛杖には掛かっている!!

 

 息も付かせぬ攻防であるが、これは勿論準備ありきのものだ。私と話してる間にも粘着質なオーラを蜘蛛の巣のように張り巡らしていたのは見えていた。『凝』とやらは使えないが、『纏』すら使えなかった時期ですら似たようなことが出来ていた私だ。オーラを隠す技術を駆使していようが見逃さない。

 

 黙って闘場に『土』を付与して遠距離攻撃の準備。身体には『念』を付与して精度を上げる。こっそり罠を準備していたあたり、多分ヒソカさんもこういうのがお好みなんだと思って合わせてみたが、どうやら効果は覿面のようだ。

 

 ──もう辛抱堪らんというような顔を見て、

 私はやっぱりちょっと後悔した。

 

 

 ▽ ▽ ▽

 

 

(『伸縮自在の愛(バンジーガム)』をつけたカードが杖にくっ付かない……♣ 宣言は無かったけど、何らかを『付与』したのかな? つまり宣言しないと駄目という誓約は無い……♦ それにしても『周』まで覚えてるなんてね♥ 隠してたのか、それともそれすら彼女の能力の一部なのか……? うーんやっぱり戦闘(ダンス)はこうでなくっちゃ♪)

 

 

 

 ────それは余りにも謎が多い能力だった。

 

 有望な新人が200階に(途中から)ストレートに上がって来ると知って、青い果実か熟れた果実かと期待して見たのが、確か190階の試合。『破砕の魔王』とやらの異名に嘘は無く、少なくとも非能力者の中ではかなりの上澄みであろう拳法家が一撃で沈んでいた。

 

 少なくとも彼女は『纏』すら使っていない。しかしあの体格、あの拳の速度であれ程の威力は、念を除いては説明が付かない。『オーラを偽装する発』を疑う程の、明確な矛盾がそこにあった。

 

(周囲には垂れ流しにしか見えないように偽装して、実際は『凝』や『堅』で殴っている? しかしそれなら今までの対戦相手の誰か一人くらいは念に目覚めても可笑しくない♦ まっそこまでは調べなくて良いかな、面倒だし♠)

 

 しかし()()()()()()()()()()()という推測は、リールベルト戦で覆された。

 

(回避に風……投げられたナイフから大量の水……そして最後に闘場の操作……あり得るなら操作系だけど、それだとオーラの偽装の発と矛盾する♦ そうなると残りは特質系しかない♣ ……と考えそうなところだけど、それも多分違うだろうね♥)

 

 特質系はそれこそ何でもありな能力を開発しやすいが、これほど種類が多く複雑な発を扱うには、それ相応のリスクがあって然るべき。それも『オーラの偽装』の発の精度を極限まで高くしているなら、それに割く余裕など殆ど無いはずだ。

 

 そしてそれが半ば確信に近づいたのがサダソ戦。

 

(サダソの拳を一方的に砕くならば最低でも『練』からの『凝』は必須♥ つまり彼女が念能力者であると仮定するならば、目に『凝』を使ってサダソの左腕を看破、その後、『流』によるオーラの移動で即座に拳にオーラを移したことになる♦ なのにどこからどう見ても完全に『纏』すら使っていない垂れ流しなんて……仮にこれが発だとしたら、雑多な能力の一つにしてはあまりにも高度過ぎるね♥)

 

 もし仮に彼女がオーラの偽装をしているならば、それは高度な特質系の発に加えて、複雑な操作系の発も抱えた一級品の念能力者ということになる。そしてもし仮に彼女がオーラの偽装をしていないのならば、それは完全に未知の、念能力者に匹敵する力を持った存在ということになる。……どちらにしても、大変そそられる。

 

 まだ扱いには迷うけども、どこかで取って食べたくなる。そんな魅力を感じさせる蠱惑な果実。そんな玩具がまさか自分から「念について詳しく教えて欲しい」と声を掛けてくるなんて、夢にも思っていなかった。

 

 

 

 ▽ ▽ ▽

 

 

「君、結構戦闘慣れしてるでしょ?」

 

「ええまあ、超がつく危険地域の探索が本業なので、それはもう沢山」

 

 どこからか取り出したのかトランプが一束。それを弄びながらも蜘蛛の巣のように広げていたオーラが回収されていく。…接近戦を誘っているのか? と警戒するも、どうにもそういう気配はない。戦闘はまだ序盤も序盤、ファーストコンタクトが終わっただけだというのに小休止。実は結構お話好きな人なのかもしれない。

 

「命に頓着しているようで、実のところは軽い♦ 死が日常…とまでは行かなくても、力及ばず失う命は当然のものとして受け入れている。さっきの僕の攻撃だって、君が何も対処出来なければ死んでいたかもしれない♣ 棄権しても、契約違反だと抗議しても良いんだよ?」

 

「いえ、結構です。こうなることはある程度想定してましたし、違反分は後で身体で支払って頂くつもりです。あっ変な誤解をされても嫌なので補足しますと、具体的には、私の目標達成のための積極的な支援ですね。因みに、ハンター試験合格後からが本番なので悪しからず。」

 

 私があっさりとそう答えると、ヒソカさんは一瞬ぽかんとした後、私に対して本気なのかと確認するような目線を送る。そう…今の私の発言は要約すると『後払いするなら試合中は好きなだけ契約違反して良いですよ。その途中で仮に死んでも文句言いません。』という風に解釈できるしそれが正解だ。()()()()()()()()()()()()()()という、ある種かなり上から目線の発言でもある。

 

 散々予防線を張っておいて何を開き直っているんだ。狂ったかと思われるかもしれない。しかし…そう…私はかなり思い上がった女だ。ちょっと触れ合って、実力の一端を知っただけ、まだ相手の本気の一部すら見てもいないのにも関わらず。『ここでは死なない』等と勝手に判断を下している。今ここが、最速最善での目標達成のための賭け時なのだと、己の命を全力でBETしている。

 

 普段の私は…クーデリア・リーフィスなら()()()()()()()()()()()()。何故なら自分だけじゃなくて()()()()()()()()()()()()()。でも…私は今、一人だ。この世界では、独りぼっちだ。()()()()()()()()()()()()()()()。こちとら世界の壁を超える必要があるのだ。この程度の死線一つ越えられないようじゃ、勝手に助けをあてにしている元の世界の仲間達に合わせる顔が無い。

 

 私が本気であると察したのだろう。ヒソカさんは嬉しそうに…そしてちょっとだけバツが悪そうに言葉を零す。

 

「捕まった(捕まえた)のは僕(私)の方だね(です)」

 





「命を預かっている」時の行動と、
「預かってる命なんてどこにもない」時の行動にはどうしても差が出ます。
※クー子は今まで、常に前者でした。

ストック0で走り出した影響か、ここ最近仕事と執筆以外何も出来て無いので流石にペース落とします。どこかで週1くらいに落ち着きたいですね
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