とある付与師の帰還録   作:さくさくの森

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最高日間3位になって、原作の方も最終章投稿ラッシュ時のPVをダブルスコアしとる…
念のためクロスオーバータグ追加しました(商業作品では無いですが)

取り敢えず天空闘技場編終わるまではペース維持しますね…あとちょっとですけど。

※この作品のヒソカは『円』が使えるものとする。
但し、原作描写が無いため不得手(拡げることは出来るが維持が苦手で動きが著しく鈍る)とする。使うのはサービスの魅せプ疑惑があるものとする。


08.天空闘技場 VS ヒソカ=モロウ②

 

 小休止は終わり、私達は本格的な戦闘に移行していた。オーラの総量でも素の肉体性能でも圧倒的に負けている相手に、例え『纏』で強化した攻撃をした所で、殆どダメージは無いだろう。念の技術や知識は言わずもがな、探索者として散々鍛えてきた戦闘勘すら、良くて互角と言ったところ。最早勝てているのは相手からすると未知の概念である付与の腕だけ。戦闘におけるあらゆる全てを上回る相手…これを格上と呼ばずに何と呼べばいいのか? 

 

「ナイフに『突』を付与!」

「流石にその攻撃は喰らえない♠ ただ、警戒すべき攻撃がその付与とやらでの強化だけじゃ、残念ながら足りないよ♣」

 

 軽く躱してお返しとばかりに返ってくる拳は咄嗟に杖でガードするが、その衝撃は大きく軽く数メートルは吹き飛ばされてしまう。…当たり前だが、このまままともにぶつかっては勝ち目はないだろう。

 

 杖には継続して『水』を付与していたお陰で粘着質なオーラを洗い流せているが、これが無ければ直ぐにでも武器が奪われてしまうと考えると、非常に厄介な能力だ。拳で殴るなど、最早利敵行為にすら成りかねない。

 

(一度貼り付いたら恐らくそう簡単には剥がれない。ヒソカさんよりも圧倒的なパワーがあるなら逆利用出来るのかもしれないが、生憎私にそんなものは無い! いや……貼り付けたオーラが伸縮自在であるならば、任意で緩めることもきっと出来る。そうなるとパワータイプの敵すら手玉に取ってきそうだなこの人……強く引っ張ってもでろんと伸びる感じで……)

 

 今のところクリーンヒットこそ無いが、ガードの上からでも明確に押されてることから、劣勢なのは誰の目から見ても明らかだ。ならばと今度は()()を使う!

 

「『風』付与! 切り裂け!!」

 

 その言葉と同時に勢いよく杖を振り抜く。相手からすれば、鎌鼬(かまいたち)でも飛んでくるかのように思えただろう。ヒソカさんは咄嗟に身構えるが、私は何も飛ばしてない。そう、発声は付与発動の条件ではないのだ! 既にその辺りは最初の衝突で看破されているかもしれないが、それでも淀み無く溌剌と宣言されてしまうと、人はどうしても反応してしまうもの。本来は仲間との集団行動の中で必要に駆られて癖になっていた発声も、思わぬ所で役に立つものだ。

 

因みに本当に付与したのは『闇』。周囲の空間を薙ぐことで、ほんの一定期間、遮光の役割を持たせた膜を張る。

 

(『光』を付与。最大出力!!)

 

 膜から杖の先端だけを突き出した直後、極限まで高めた眩い閃光が迸る!! 観客席の人間ですら一時的に視力を失う程の圧倒的な光量は、間近の人間はたとえ目を瞑っていても網膜を焼く。それは念能力者といえど変わらない。

 

「……これはやられたね、何も見えないや♥ 本当に何でもアリだね、君の能力。ふふふ……暫く視力は回復しないだろうし、折角だから面白いものを見せてあげる。念には、こういうのもあるんだよ?」

 

 相手の発言には応じず、そのまま容赦なく投げナイフでの追撃を繋げた私は、信じられないものを見た。ナイフには『雷』が付与されており、刺さるのは勿論、例え柄を掴んだとしても感電して動けなくなる類のもの。急所にこそは投げてないが、勝負を決めるには十分な攻撃である事は間違いない。

 

 しかしそれらは全て、ヒソカさんを中心に薄く大きく広がったオーラに包まれたかと思えば、まるで視認できているかのように完璧に回避されてしまった。

 

「オーラを広げる高等技術……『円』というものだ。得手不得手があるから、熟練の念能力者でも使えない人は使えない♦ 僕もそこまで得意じゃないけど、使えるととっても便利だよ♥」

 

 恐らくは、オーラを広げることでその範囲内のものを細かく検知しているであろうことは推測出来る。確かに便利ではあるが……ふと私は一つの疑念を抱く。『いや……これはかなりリスクが高くないか?』と。

 

そう考えるに至った私は、薄く広がったオーラの中に躊躇わずに侵入する。

 

(やはり粘着性は無い……それに……)

 

「今なら、きっとダメージ入りますよね?」

 

 遠心力を利用して間断なく、全力で杖を乱打! 途中までは躱していたヒソカさんも、数発はガードに切替えざるを得なくなるが、一発受ける度にその余裕が剥がれているように思える。

 

(やはり纏っていたオーラが薄くなった分、明らかに効いている! ならば!)

 

 勝機とばかりに『水』の付与を『壊』に上書き、私の最大火力を叩き込もうとしたその瞬間。薄く広がっていたオーラがスン――と消える。…どうやら『円』とやらを解いたようだが、もう遅い! 既に私の攻撃は絶対に避けられないところまで迫っている。『纏』でガードした所で耐えられるようなものではない!

 

 決まった! …そう思った。

 

 今まで開示されていた状況からの判断であれば、それは恐らく正しかった。そう、それこそ突然、ヒソカが纏うオーラが()()()()()()()()()()()()()……。気付いた時には『壊』を付与した杖は左腕で受けられ、代わりにふざけた量のオーラを纏った右の回し蹴りが、私の身体を襲っていた。

 

 

 

 ▽ ▽ ▽

 

 

 

 クリーンヒット&クリティカル! 2ポイント! 

 クリーンヒット&クリティカル&ダウン! 3ポイント! 

 

 これより10カウントの確認! 

 10カウント後は続行不能として扱います! 

 

『1』! 

 

 ……審判の声が、辛うじて聞こえる。

 

 そういえば審判の視力は大丈夫なのだろうか? 一切配慮をしていなかったが……こうしてポイント加算が出来ているあたり、きっと何らかの形で防いだのだろう。

 

 ああ……そんなことよりも、私の身体は今どうなっている? 物凄く気怠い……そして痛い。これは多分肋骨にヒビくらいは入っていそうだ。思えば探索中に死にかけたことは何度かあっても、大怪我したことって無かった気がする……。いや、探索者なんてそんなものだ。何事も紙一重の連続である。

 

 きっとその辺りは仲間達が守ってくれたんだろうな……私が皆を支えるように、周りの皆が私を守ってくれていたんだ。有難いなあ……やっぱりまた、会いたいなあ……。

 

『2』! 

 

 ―――どうやらまだ寝かせてはくれないらしい。

 ここは…闘技場の端っこのようだった。

 

(思い出した……。ヒソカさんのオーラが急に膨れ上がって……そう……確か蹴られたんだった……。何度か跳ねて吹き飛んで……。たった一発でこれなんて……まるでダンジョン深層の階層主みたいな重たい一撃。)

 

『3』! 

 

 ……立ち上がれるかな? どうだろう? 

 というか何のために立ち上がるんだっけ?

 

 確か契約は『試合をすること』であって『勝つこと』じゃあない。多分ヒソカさんは私に対して、少し本気を出した……。つまり、()()()()。ここで終わっても結果としては十分だろうし、本当に死ぬかと思ったとゴネれば、今後私の都合にも、それなりに協力してくれるかもしれない。

 

『4』! 

 

 ヒソカさんは左腕を庇うようにして、私の方をじっと見つめている……。視力はもう回復してるのかな? 審判がカウント中ということもあり、追撃をするような気配はない。腕は……手応えはあったから折れてるかな? 

 

『5』! 

 

 ああ……何で立とうとしてるんだ私……。本当に意味が分からない。もう戦闘出来るようなコンディションでは無い筈なのに、痛みはどんどんと消えていく。アドレナリン? エンドルフィン? 確かオーリスが医学の勉強中にそんな事を言っていたような……どうやら他国で発見されて名前が定義されたとかなんとか……。

 

『6』! 

 

 気付けば膝に力を入れていた。

 ああ駄目だ……このままでは立ち上がってしまう。せめて何故立ち上がるかだけでも自覚しないと、それはもう 私の意思では無い。

 

『7』! 

 

 立ち上がろうとする私に、観客の歓声が飛ぶ。

 実況もここぞとばかりに煽りだすが、声色からして本気で心配してくれていたみたいだ。

 

『8……やれるか?』

 

 その言葉に反応すると同時に、ふと自覚する。

 

 

 ああ……なんだ……そんな単純なことだったんだ。

 

 

 私は元々……

 

 

「はい! まだやれます!!」

 

 

 自意識高めの負けず嫌いだった。

 

 

 

 ▽ ▽ ▽

 

 

 

(『練』を覚えてない相手に……『練』を使うつもりはなかったんだけどね♣)

 

 相手はまだ、四大行における『纏』しか扱えてない。感覚的に『凝』の覚えは早そうだが、念能力者同士の戦闘の要とも言える、オーラの出力を上げる『練』、そしてそれを維持する『堅』。それらを覚えていない相手に対し、一方的に使用した。否、使用させられてしまった。それは契約云々に関係なく、勝負としてはある意味、負けたと言っても過言では無いかもしれない。

 

(咄嗟にガードしたけど……それでも折れた♠ 『堅』でも駄目で、威力としては『硬』に近い♦ 完全に骨が砕けてるから、修復には時間が掛かりそうだね♣ マチの縫合も、骨折には意味がないし♥)

 

 念能力者として、最強を自覚する己の『練』での蹴り……ギリギリで理性が働いて()()()()()()()()()()()()にせよ、並の能力者であれば死んでもおかしくは無かった。しかし彼女は生き残り、あろうことか立ち上がろうとしてくる。

 

 

 ああ……そんな顔しないでくれよ……ダメダメダメダメ♥

 

 

 駄目なのに……勿体ないのに……

 

 

 我慢、出来なくなっちゃうだろ♥

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