またかよ...寝てる間に別の所に来るのはこれで二回目だ。だが、今回は前回と比べて異なる点があった。場所はともかく前回はソファに横になっている状態で目覚めたが、今回は立ったまま目覚めたのだ。
それに確認してみるとこの場所でも俺の力は使えるみたいで、インパクトカプセムやブレイカムゼッツァーを取り出すことができた。
「それで、いったい此処は何処なんだ。」
俺が今いる場所は何処か既視感のある場所だった。この部屋は広く、モニターから酒瓶まで雑多に物が置かれている。中でも一際目を引くのは、中心にある大理石で出来た大きな台とその横に添えられた長い柱のようなもの。
ここに来たことはないが、どうしてか既視感を覚える部屋だ。
「レイカには悪いことをしちまったな。あんなにも俺に気を使ってくれたのに、その対象が一日で消えちまうんだか「うるせぇ!何ごちゃごちゃしゃべってやがる!」ら...な...」
そこに居たのは銃を持った三人組だった。全員が全員黒いズボン黒い上着に黒いシャツ、ご丁寧に黒いマスクとサングラスを付けて見るからに悪者だというような口調とその印象を裏付けするように持っている銃。部屋を見ていた時には影も形もなかった、だけどもいつの間にか現れた。まるで元からそこにいたかのように。
ガチャッ
「...ッ!」
ダァンッ!
あと0.1秒でも台の影に隠れるのが遅れていたら確実に体のどこかに風穴があいていた...!どういうことだ?!初めからどこかに隠れていたとしても銃を持った状態で何の音も出さずに出てくるのは不可能だろう!?いやそんなことを考えている状況じゃあない!どうにかしてここから逃げなければ...!
だが相手は一人じゃない。リロードの隙をついて逃げるのも限りなく不可能に近いだろう。かと言ってこいつ等を一撃も受けずに制圧するのはもっと不可能だ。銃持ちの複数人VS喧嘩もしたことない一般高校生。銃で撃たれて死ぬだけだ。だからと言ってここに留まるわけにはいかない。すぐにこっちに来てハチの巣にされる。じゃあどうすればいい!俺にはこいつらに対抗する武器も力もないんだぞ!
「いや、ある...!武器も力も...!」
だが出来るか...?所詮俺は剣も銃も握ったことないただの高校生だ。そんな俺が出来るのか...?いや、どうせ此処に居ても回り込まれて死ぬ、逃げても背中を撃たれて死ぬ、立ち向かっても下手を撃てば死ぬ。ああ、笑えるほどに分の悪い賭けだ。だがこの博打に勝つしか道は、ない!
床を、壁を、天井を足場にして一番後ろにいる奴の背後に回り込む。
「寝てろ...!」
「ぐっ」
そのまま組みついて強化された力で首を絞め気道を塞いで気絶させる。
「なっ何が起きた!」
「撃て!撃てぇー!」
一番前にいたやつはまだ反応できていないみたいだが、近くにいたやつは反応してこちらに銃口を向けようとしているようだ。
「は?」
そいつが持っている銃をブレイカムゼッツァーで斬りつけるとキィンと甲高い金属音が鳴った後に銃は半ばほどから切り落とされ内部構造を露出している。
「これでも食らっとけ!」
「ぐぼぉ!」
ブレイカムゼッツァーを振り下ろした勢いで体を回転させ、そのまま後ろ回し蹴りを放つ。食らったやつは壁に背中をぶつけて気絶したようで静かになった。
「あと一人...!」
「ばっ化け物がぁ!」
ダァンッ!
キィン!
「っ……!」
さっき組み付いた時に拝借したハンドガンで銃を撃ち、無力化する。
「終わりだ...!」
「ごふぁ!」
強化された脚力で距離を詰め、膝蹴りを相手の腹に食らわせる。そいつは崩れ落ち、この部屋に起きている奴は俺以外居なくなった。制圧完了だ。
「っはぁ~〜〜!死ぬかと思った〜!冗談じゃなくて言葉通りの意味で!奇跡的に生還を果たしてやったぜ!アッハハハハハ!ドーパミンのせいで笑いが止まんねぇ!ハハハハハッ!」
張りつめていた緊張が途切れ、近くの壁に背中を預けて座り込む。腰が抜けてしまったようでここから一歩も動くことはできそうにない。今誰かが来たら抵抗できないくらいに力が抜けてしまっている。
「笑った笑った。死ぬほど笑ったわ。そうだ、これは確認しておかなきゃな。」
近くにいたやつの体を掴んでこっちに寄せて、サングラスとマスクを外してその下の顔を確認する。すると出てきたのは男性だった。
「あ~分からないことが多すぎて何から考えればいいのかすらわかんねぇ。」
此処は何処か、なぜここに来たのか、こいつ等は何処から出てきたのか。そしてなぜ俺はあんな動きが出来たのか。一番最後の奴は一体何なんだ。何で銃を使ったことのない高校生が相手の銃を撃ち落とすだなんて神業ができる?まるで本物のエージェントみたいじゃないか。
「まあいい。後で考えよう。それにしてもやっぱりどこかでこの部屋を見たことあるんだよな。それに、こいつ等も」
ようやく立てるようになったのでまたこの部屋を見て回ると、やはり既視感がある。それも中心にある台と柱は特に。そのためそれらの周りをぐるぐると回りながら観察すると、ちょうど柱が手前に台が奥にある時に既視感の正体を思い出した。
「あっ!これ第一話の莫の夢じゃねぇか!」
此処は仮面ライダーゼッツの主人公、万津莫の見ていた夢の中であり、コードナンバーセブンがねむを救出した場所であり、仮面ライダーゼッツとして初めて変身した場所でもある。
「つまり、此処は俺の夢っていうことか。だったら全ての疑問が解決するな。ここは夢で、あいつ等は夢だから急に出てきて、俺は明晰夢の力で自分を強化していたからあんな動きが出来た。」
何故明晰夢の力を手に入れたのかは...カプセムやブレイカムゼッツァーと同じだろうな。前の世界からキヴォトスに来る際に手に入れたんだろう。
「ここが俺の夢で明晰夢の力を使えるなら、こんな事も!」
空間に緑色の幾何学的な線が走ると、先ほどまでいた部屋から
「此処は俺の夢。」
着ているものが寝巻から白と黒を基調としたスタイリッシュなエージェント服へと変わり、その手にはソードモードのブレイカムゼッツァーが握られている
「たとえ此処で俺が死んだとしても、現実には何の影も残さない。」
斧、ナイフ、鉄パイプ...様々な近接武器を持った奴らが俺を囲むように現れる。
「さぁ、始めようか。」
その言葉を放つと同時に彼らは一斉に武器を振り上げ襲い掛かってくる。
「うぉおおお!」「やっちまえ!」「ぶっ殺してやる!」
「ハハハハハ!一度はやってみたかったんだよなぁこういうの!」
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「朝か...いい夢だった。」
夢から覚めた俺はキヴォトスの自室で目を覚ました。今の時刻は朝の六時、ベッドから起き上がったときに枕元にとあるものが置いてあるのを見つけた。
インパクトカプセムと同じ形ではあるものの、上下のパーツの色が赤からオレンジになり、中央の絵柄も異なっている。
「トランスフォームカプセムか。もしかして、寝るたびにカプセムが増えていくのか?だとしたらコンプリートも夢じゃないな。」
そんな事を考えながら着替えなどを終わらせて一階へと向かう。昨日の夜に決めたことだがこの家の食事、洗濯、掃除、つまり家事は全て俺が担当することになっている。と言ってもこれは、あまり外に出ていられないため、何かできることはないかと思い自分から言い出したことだ。ニートではない!
「さて、今日の朝食は何にしようかな〜っと。」
この家に元々冷蔵庫はあったが中身がなかったが、昨日レイカに近くのコンビニで少し買ってきて貰ったので今日の朝食ぐらいは何とか作れるようになった。
「おはよ〜」
「おはよう。もう少しで出来るから顔でも洗って待っててくれ。」
そんなこんなで調理をしているとレイカが起きてきたようだ。
「はい、出来たぞ。」
「ありがとう〜!いただきます!」
「いただきます。」
「「ごちそうさまでした。」」
「いや~、私も今日から高校生!人生二回目の高校生目一杯楽しむぞ!」
「おっ、今日が入学式なのか。来た次の日に入学式とは忙しいスケジュールだな。準備は大丈夫なのか?」
「大丈夫!と言ってもあんまりすることもなかったけどね。」
「なら良かった。そういえば、ブルーアーカイブのストーリーはいつ始まるんだ?」
「え~っと、正確な時期は分からないんだけど今年度中には始まるはず。」
「随分とアバウトな予測だな。何か理由でもあるのか?」
「ゲヘナの風紀委員長が原作と同じ三年生だからかな。」
「なるほど。ストーリーが始まる予兆とかはあるのか?」
「あるよ。連邦生徒会長が失踪して治安が悪くなってくると原作の始まり、つまり先生がやって来る合図だね。」
治安の悪化...そりゃあ、キヴォトス全体をを統治する組織のトップが失踪すれば混乱が起きる、混乱が起きれば治安が悪化する。ただでさえ銃撃戦ばっかのキヴォトスで、これ以上治安が悪化するとどうなるんだ。
「治安の悪化って言っても、どんくらいなんだ?」
「具体的なことはあんまり分からないんだけど、違法な武器の流通が2000%以上増加したらしいよ。」
「2000!?200じゃなくて!?」
「2000%以上だね。」
「もう終わりだよキヴォトス。」
「まだ始まってすらないよ。」
「そうなんだよなぁ...」
これがキヴォトスってことかよ。それで、主人公である先生はこんなキヴォトスで生徒のお悩み相談をし続ける訳だ。聖人か?
「行く時間になっちゃったみたいだ。帰ってきたらまた教えてあげるよ。」
「時間を取っちまって悪かったな。」
「全然大丈夫だよ!むしろ湊くんに興味を持ってもらえて嬉しかったよ。それじゃ!行ってきまーす!」
「ああ、行ってらっしゃい。」
ガチャ、と扉を開けて出て行ったレイカの足音はすぐに聞こえなくなった。
...静寂に包まれたこの家で一人になると考えてしまうことがある。それは、このままの生活を続けるべきなのだろうかということ。危険なキヴォトスで生きていく為には力が必要で、力が無ければこうして外に怯え閉じ籠もるしかなくなる。それは、仕方のないことなのだろう、必要なことなのだろう。それでも
「セブンの様なエージェントに成りたい」
と、夢見ることは止められなかった。
前の世界では叶うはずもない夢。キヴォトスでも俺は肉体の脆弱性という弱点がある。だが、この世界ではそれを補って余りある
「『信じれば夢は叶う』か...絶対に叶えてやる、俺の夢を。」
そしていつか、この鳥籠から飛び出してこのくそったれな世界を思う存分楽しんでやる。
「そのためにもまずは目先のことを終わらせないとな。」
夕食の仕込み、パジャマの洗濯、無駄に広い家の掃除。やるべきことは山積みだ。まあ、どうせ本命は夢の中。現実では暇なんだ。家事くらいはやっておかないとな。
「それに、エージェントは優雅で完璧であるべきだろ?」
だったら何から何まで本職以上を目指してきっちりやらないとな。それがエージェントを目指す者としての流儀だ。
「やっとキヴォトスで生きていく目的が見えた気がするよ、レイカ。」
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