其処は、悪夢。昏い、昏い、昏い、夢の底。ソレは一人佇んでいた。ソレは、悪夢。“模倣”の悪夢を体現するナイトメア、レプリカナイトメアである。
「……ああ?あいつの深層心理に変化があるだと?一体全体何が起きてやがんだ。」
カツカツ、と深層心理が滲み出たその空間に乾いた足音が鳴り響く。昏い闇を切り裂き現れたのは、この夢の主である望月湊だった。
「ハッ。テメェが
「残念ながら今回はその逆さ。……
そう言うと
「アッハハハハ!一度は悪夢に呑まれたお前が?!この
「違うな。一度は呑まれたからこそ、俺はお前に決着をつけなくちゃならない。」
「へえ……だったら、もう一度お前を悪夢の底に叩き落してやるよ!」
「
ブレイカムゼッツァーでレプリカに切りかかるが、鏡面張りの腕で防がれる。やはり自分の悪夢というものは、一筋縄ではいかない相手だ。
「忘れたか?オレは“模倣”の悪夢。こんなこともできるんだぜ?」
レプリカは黒いモヤに包まれ、異形の姿を模り始める。ソレは刺々しいデザインにルーレットのような仮面を持ったナイトメア───デスゲームナイトメアの姿となって現れた。
「チッ、面倒な。だが、それでも退きはしないさ!」
「その余裕がいつまで持つか見ものだなァ!」
そう言うや否や、
「……だが、特別な力があるのは何もお前だけじゃない。」
「カプセムか……実に無意味で哀れな抵抗だな。」
やはり、威力はそこまでだな。“模倣”にも制限があるとみていいだろう。ティザスターという他のナイトメアとは一線を画す見本がある。なのにそれをしない……。それをしない事情があるということだ。
「なら、付け入る隙はある!」
俺は
「くっ!猪口才なァ!」
だが、銃撃は
「なら、こうすればいい。」
「ぐっ、おおおおおお!」
風の弾丸は真っ直ぐに戦場を突き抜けていきトランプのシールドと衝突する。大気とトランプは拮抗し火花を散らし、その衝撃で生まれた突風が前髪を揺らし、俺はエネルギー同士のぶつかり合いを静かに見つめていた。
だが、大気の夢の力は霧散し、トランプはひび割れながらもその存在を保っていた。
「……お前とオレの力の差がようやく理解できたか?お前はオレを倒せないんだよ!」
「そうだな、いくら必殺技といえど防御に徹されたら無意味だ。俺にはそのガードを真正面から打ち破る手段なんてないからな。」
俺は笑った。これは諦めの笑みじゃない、勝利の笑みさ。
「だがあえて言おう。トリックだよ。」
「は?」
「ぐはっ!何が起きた……何をした!」
ブレイカムブレイズを受けた
「言ってしまえば簡単なトリックだ。お前がバレットに集中している間にブレイズを回り込ませた。それだけさ。シックスも同じようなことやってただろ?*1」
攻撃を受けた後の様子を見る限り、どうやらアイツはある程度の衝撃で能力が強制解除されるらしい。と言っても、やることは変わらず攻撃を続けるだけだ。
「言うは易く行うは難し、って感じだがな。……だがまあ、やるしかない、か。」
「クソがァ!遠くからチマチマチマチマと鬱陶しいんだよ!だったら……」
そうしてレプリカは再び姿を変える。くすんだ銀色のボディに血のように赤黒いラインが走り、黒いベルトが巻き付いている。ソレは狼の悪夢を体現するナイトメア──ウルフナイトメアとなって現れた。
「この手で直接切り刻んでやらァ!」
「それは御免だね!」
「バラバラに解体してやるよ!」
「おっ、と。そんなのは御免だね。」
俺はその攻撃を一つ、二つと躱し、距離を取る。そして再び俺を解体しようとする爪を、下から振り上げた
「何故ここまでして
「俺はその夢を叶えたい。意味なんてそれで十分だろ。」
バスターごと相手の腕をかち上げ、がら空きとなった胴体を薙ぎ払った。ブレイカムバスターはブォンと大気が裂ける音を奏で、叩き斬らんと迫る。……が
「そんなトロい攻撃になんて当たらねェよ!」
「面倒だな…」
やっぱ
「なら捉える必要をなくせばいい。」
ブレイカーとゼッツァーで弾を放ちアイツの行動を少しでも制限する。とはいえ当たったところでさして効くわけじゃない。
「ハハハハハッ!こんなのじゃあ傷一つつかねェぜ!」
そう言いながらエネルギー弾を爪ですべて弾き落とし、それらが周りの地面で弾けていく。ああ、ソレを待っていた。お前が足を止めるその瞬間をな。
「おいおい!打つ手なしかァ!?だったらご愁傷さまだぜ!俺はこのままヒット&アウェイを繰り返せばいいんガシッだから……あ?」
「つーかーまーえー、たァッ!」
「うわああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
インパクトカプセムによって腕が膨らみ、力が満ちていく。強化された力で思いっきりゼッツァーを振り上げる。するとアームが開き
「かなり飛んでったな……」
さあさあ、あとはコイツをタイミングよく当てるだけだ。よーく狙って狙って……今!
「ぐあっ!」
虹色に輝くエネルギーを纏った刀身が空から墜ちてきたアイツを切り裂いた。
「まだ倒せねぇのかよ。どんだけ頑丈なんだか。」
「クッ、ソがァ!こうなりゃオレもろとも悪夢に沈みやがれェ!」
レプリカが再び能力によって他のナイトメアを模倣する。しかし先ほどまでと比べ、そのスピードは遅くなっているように見える。
「おいおいマジかよ……!ボムはちょっとばかりマズいんだがな…!」
顔の中心に時限爆弾のタイマーのような大きな単眼があり、上半身が無数の赤と青のコードが絡み合ったような姿となっている。その異形の名もボムナイトメア。爆弾の悪夢を体現するナイトメアである。
「バリアを使えばいいが、こっちも攻撃できなくなるんだよな。」
爆発は武器じゃ防ぎきれない。今のところはひたすら避け続けるしかないか。
「ごちゃごちゃうるせェ!木っ端微塵になりやがれ!」
「やばっ!」
「チッ、運のいいやつめ。だが次こそは、お前を跡形もなく吹き飛ばしてやる!」
「危ねぇ危ねぇ。お前がノーコンで助かったぜ。」
今のところはひたすら
「だけどそれでアイツが倒れるわけじゃないしな、っと!」
「こんなものが効くかァ!」
今度はどうやって攻撃を通せばいいんだ?アイツもかなり消耗してるはずなんだが、それでもなお勢いが衰えない。それどころか加速してきているように見える。本当に頑丈だな……
「これでも喰らえェ!」
「その程度!」
「こりゃジリ貧だな。」
だがそれは俺も同じだ。いくらバスターと言えど通常の銃撃では傷を負わせることができず、必殺技を放とうとしても爆発の反動を利用して回避されるだろう。
このまま距離を取り続けても、
「くっそ、思いつかねぇ。」
「何をごちゃごちゃしゃべってやがる!」
「おっと。」
爆破の勢いで距離を詰めてきた
さぁて思い出せ……。ゼッツの対ボムナイトメア戦を。何かヒントがあるはず……
「!これならできるかもな。」
「ああァ?どうした、遂に大人しく死ぬ気になったか?」
「ハッ、馬鹿言え。なったのはお前を倒す気にだよ。」
「おっ、らぁ!」
手に持ったゼッツァーを
「フン!」
やはりというべきか、掌から放たれた爆発によって弾き飛ばされる。そして
「これで終わりかァ?」
「まだだ!」
「こんなものに当たるほどノロマじゃねェぜ?」
爆破の反動によって躱されてしまうが、羽の生えたエネルギー弾は方向を変えて再び
「チッ、面倒だ。」
「これで終わりだとでも?」
爆破によって煙が立ち込める。それを利用し間合いを詰めた俺は、煙の中から躍り出て
しかし、その一撃は交差した両腕によって受け止められる。拮抗する刃と両腕。互いを倒そうと力を籠め続ける。その最中、
「お前の憧れは結局お前の心の闇。それが本物の憧れだと言えんのかよ。」
「始まりはどうであれオレはセブンに憧れた。それだけは、変わることのない事実だ。」
少しの沈黙の後、二人は示し合わせたかのように後ろへと跳び、距離が生まれる。
「ハハハハハッ!ならば歪な憧れを抱えて悪夢に墜ちろォ!」
そう言うと
「ボムナイトメアの体は爆弾そのもの!いくら攻撃を続けようと最後は爆発あるのみ!変身できないお前には止められない!」
「確かに、俺には止められない。俺にはね。」
「ぐあっ!」
ずるり、と刃が抜け
「『生憎、爆発物の処理はエージェントの嗜みでね』」
体内の爆弾のコードを切断された
「……まだだ。まだ、悪夢は終わりじゃない!」
「往生際が悪いな。」
レプリカはゼッツァーを振り払い、最初の邂逅で見せた姿──銃の悪夢を体現するガンナイトメアの姿を模倣した。
「悪夢に、呑まれろォ!」
左腕から放たれた弾丸をゼッツァーで切り落とす。
「おいおい、こんなもんか?」
「一発防いだ程度で調子に乗るんじゃね……ぐっ!」
「模倣の力が弱まっているのか?アイツも流石に息切れみたいだな。」
だけど、こっちの
そうだ。もう明晰夢の力が使えるんじゃないか?アイツの消耗は相当なはず、もう四回もまともに喰らわせてんだからな。
「なら、やってみるか。」
地面に緑色の幾何学的な線が走る。すると途端に地面は変形し、こちらに飛んできていた弾丸を防ぐ壁となる。
「何故その力が使える?!この
「気づいてないのか?お前は消耗しすぎたんだ。それこそ俺が夢を操れるようになるまでな。」
世界が、夢がその姿を変える。瞬きをする間に目に映る風景が変わる。其処は万津莫の夢の模造、ガンナイトメアとゼッツの決戦の地である。
「……ああ、確かに今のオレには明晰夢の力を封じることはできやしねェ。だが!お前を殺すなんて造作もねェんだよ!」
そう言うとこちらに左腕を向け、銃口から何発もの弾丸が撃ち出された。
放たれた弾丸は甲高い音を立てながらゼッツァーによって切り落とされ、俺に掠ること無く地面に落ちる。
「……ふぅ。流石は特別を司る夢の力、このくらいはお手の物か。」
エクストラカプセムの能力は使用者の能力の著しい強化。一度に一つまでとはいえその能力は凄まじい。俺は先ほど思考速度を強化し、当たりそうな弾だけ切ったのだ。
「さて、明晰夢の力が使えるようになり、ガンナイトメアに面倒な能力はない。」
そして、消耗具合を見るにこれで本当に最後だろう。ならここは一気に畳みかけるべきだな。
「死ねェ!」
「っと!」
飛んできた銃弾を躱し時には切り落としながら、明晰夢の力で作り出した遮蔽へと身を隠す。
「遠距離じゃ分が悪いな……」
ガンナイトメア相手にわざわざ撃ち合いに付き合うつもりはない。銃撃戦じゃあっちの火力とこっちの火力が違いすぎる。だったら近距離で戦ったほうが百倍マシだ。
「そのためにも!」
力が、満ちる。強化された脚力は俺とアイツの間にあった距離を一瞬で消し去り、俺はその勢いのままゼッツァーを振り下ろした。
「ぐっ!」
「まだまだ!」
そのまま一つ二つ三つ四つとゼッツァーでの斬撃を浴びせ続ける。一撃ごとに
「ぐおぁ!」
やはりカプセムの力で強化されれば
「調子に、乗るなァ!」
「そんなのに当たるかよ。」
マズいな……再び近接戦に持っていこうとしても容易く切り込めるような距離じゃない。むやみに動くのは愚策だな。
「ここでオレを倒してもいずれお前は、また悪夢に呑み込まれる!偽物となり果てるだけだ!」
「だから何だ。俺が偽物と成るってなら、それすら呑み込んで言ってやるよ。偽物であることすら俺だってな。」
そう言い返すと
「なら、偽物のまま死んじまえよォ!」
屈んで弾丸を回避すると背後の地面に弾丸が撃ち込まれる。その音を聞きながら思い切り力を込めて地面を踏みしめる。そして、跳ぶ。
弾丸のように風を切りながら瞬く間にアイツとの距離を殺し、そして──
紅色の斬撃が
「があぁ!」
「まだだ。まだ終わりじゃ…ぐっ!」
レプリカは再び模倣の能力を使おうとして立ち上がった。だが、その瞬間黒いモヤは霧散し、その場に崩れ落ちた。
「オレはお前の悪夢だぞ…ッ!なのに、なんでお前なんかに負ける!?」
「忘れたのか?お前が俺に夢を叶える力を与えたのさ。俺に夢を叶えようとする気持ちを強くするために。」
「ああ、確かにオレはお前にカプセムと武器を与えた……。だが!いくら力があるとはいえ変身できないお前なんかに!」
「俺の深層心理から生まれてきたくせに知らないのか?だったら教えてやるよ。」
「俺が仮面ライダーゼッツから教わったことさ。」
俺は崩れ落ちたレプリカを見下ろす。顔のない鏡のマネキンじみた姿であるため、表情から感情を読み取ることはできなかった。
「……クソがァアアア!」
レプリカナイトメアは怒りのままに叫び、立ち上がって殴りかかろうとする。
「これで、悪夢は終わりだ。」
俺は左腰に手を伸ばした。ゼッツの力を模した武器ではなく、俺が、俺自身の意思で引き金を引くための
ホルスターに収められた俺の憧れは、黒く鈍く輝いている。
それを引き抜き、さながらセブンのように
「……じゃあな。」
放たれた弾丸は寸分違わず、レプリカの頭部の鏡を割った。既に限界に達していたのであろうレプリカの体は、その衝撃によって徐々に紫の粒子に変化していく。
「Mission, complete.」
レプリカが完全に消え去った後──気付けば、辺りは明るくなっていた。
顔を上げてみると、地平線の向こうから光が差し込んでいた。その光は暗闇を裂き、地上を照らしながら、悪夢を優しく終わりへと導いた。
「これからは、良い夢が見られますように。」
決着!
今回はかなり早く更新することが出来ました!まあ、遅れた原因がこの辺りまで書いてからそれぞれ単独にしようと書いてたせいなので当たり前ですが。
前回の後書きでも少し言及しましたが、わざわざ分割したのにはちゃんとした理由があるんですよ。
一つは文字数が増えすぎたから。もともと一万字くらいになっていて、長いなってことで前の部分を分割して書き足していったわけです。
と言っても、一番大きな理由は二つ目の方なんですよね。
それは、プロローグの最後を第"7"話にしたかったから、という理由です。
この作品はゼッツひいてはセブンに憧れた人の物語。故に7という数字にはあやかりたいわけです。
プロローグの終わりまでもう少し!これからもよろしくお願いします!
文量をどうするか
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減らして投稿頻度上げろ
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そのままでいいよ
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投稿頻度下げてもいいから分量増やせ
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何でもいいよ