憑依転生アンパンマン(中身32歳、独身住所不定無職) 作:地霊殿の壁
───国民的ヒーローアンパンマンに転生した。
もう一度言う、国民的ヒーローであるアンパンマンに転生した。(精神年齢32歳独身住所不定無職)
いや、何を言ってるのかわからないと思うが俺も何を言っているのか分かってない。
……そのココロの底から
それと、特筆事項として───この世界はアンパンマンワールドではないようだ。
つまりはジャムおじのパン工場もなければ、新しい顔よ!でバタコに投げつけられる替えの顔も無い。顔が濡れたら一発OUTだ。
後、周りは近代風の教会を模した建造物が多く、住民はたまに見るロボットか、二足歩行の動物か、銃器携えて輪っかと羽を生やした女しか居ない為、マジでバカほど浮く。
何もしていない今でこそ、そういう類の出し物だと思われて特段警戒されていないが、多分目の前で顔千切った瞬間補導されると思う。
補導される正義の味方とか誰が見たいんだよ。
そう思って、気がついたら俺は―――自 ら の 顔 を 千 切 っ て い た 。
「―――さぁ、僕の顔をお食べ」
「え゛……」
……いや、違うんすよ。違うんすよ!(全ギレ)
「───僕の顔をお食べ、ホラハヤクタベロ」
「……え、えっと貴方は……?」
うーわ、聞いてきやがったコイツ。
「僕───正義の味方、アンパンマン!!!(本能)」
はぁぁぁっ、もうさぁ、なんでこんな往来の場で馬鹿デケェ声出して名乗らなきゃならねぇんだよ。あ、あの人多分警察呼んでるな。
あーらら、第二の人生早くも終わっちゃった……精神年齢32歳独身無職住所不定に前科持ち付くのワロタ。笑っちゃうよねー、タハー!
「せ、正義の味方!?───わ、私はトリニティの希望にしてスーパーヒーロー!宇沢レイサです!」
「あっそっかぁ、ウン───」
「なんですかその残念なものを見るような目は!」
ぶっちゃけ残念なものにしか見えないが、今や同じ穴の狢なのが悲しい。
現実でヒーローを名乗るやつに大抵ろくなヤツ居ねぇから。今の俺含め。
「正義実現委員会の羽川ハスミです、少しお話を聞いても?」
警察組織みたいなものか?うおっ黒っ……まぁ取り敢えず───
「うーん、四の五の言わずに僕の顔をお食べッ!!」
「むぐっ」
手に持ったアンパンを自称スーパーヒーローの口に突っ込む。
そして───
「それいけ!コークスクリューアンパーンチ!!」
空中に向けて軌道が捻れたアンパンチを放つ。
時に諸君、アンパンマンのスペックを知っているか?
コイツは重力を振り切って大気圏を抜ける程のスピードで空を飛び、金属製のUFOをパンチ一つで地平線の彼方にまで吹き飛ばせる。
今回はそれにコークスクリューブローを加えたわけだ。
コークスクリューブローはパンチに回転を掛けて相手に打ち込むことで心肺を停止させるほどの威力を叩き出す技。
つまり、アンパンマンスペックから生み出されるそれを空気中に放てば一時的に目の前すら見えない、容易に立てないくらいの突風を引き起こせるってわけだ。
「ッ───!!」
咄嗟に自分のスカートを覆う正義実現委員会の羽川ハスミ。
おお、女子力高いな。だがそれが隙の糸だ───俺はトンと空中に浮かび上がり、身を翻す。
───さぁ、全速前進DA!!逃ーげるんだよォーー!!
「……それで、何でキミが僕の背中に乗っているのか聞いてもいいかい?トリニティ(?)の希望にしてスーパーヒーローさん」
「私は宇沢レイサです!!」