憑依転生アンパンマン(中身32歳、独身住所不定無職) 作:地霊殿の壁
もしもし……私───アンッパンッマンッ!!!(発作)
というわけで宇沢レイサという偽名()を名乗る『わ、私はトリニティの希望にしてスーパーヒーロー!(裏声)』さんが勝手に着いてきたせいで見事誘拐犯になってしまったアンパンマンさんだよ。はぁ〜(クソデカ溜め息)、もう終わりだよこの国。(八つ当たり)
なんか下から銃弾飛んでくるし、私いじけちゃうし、タカキも頑張ってたし。
そんな事を心の中でボヤきながら飛んでくる大口径のライフル弾を足の爪先を動かした振動で砕いた後に、アサルトライフルの弾幕を急加速して避ける。
「───っっわあぁ!凄いっ、凄いですぅ!!むぐむぐ……んぐ、これどうやってるんですか!?」
キラキラとした目でアンパン片手に呑気なことを言う背中のアホ。
一口サイズに千切って渡したのにまだ食ってんのかコイツ。女の子かよ。()
カバオなら貰ったアンパン舐め回した後、本体にかぶりついてくるくらいの裏はかいてくるぞ。
「爪先動かした時の振動で壊してるだけだよ、こんなの食パンですら出来る」
食パンの戦闘能力しらんけど。
「はぇー……凄い……パクッ……モグモグ…………あのぉ、えとぉ、お茶無いですか?」
あー、菓子パンとか特に乾燥するし、お茶無いと食えないよね、わかる。
それ以前に三十路の舌には甘すぎて受け付けないんだけど……年齢を感じさせるねぇ……いやこの子は多分高校生ぐらいだけど。
「わかったよ、じゃあ地上に降りようか。僕に掴まってて?」
丁度追手も居なくなったからな。結構な距離移動したし諦めたか?
行方不明とか誘拐事件として大ごとになると面倒だが、そこら辺は自分でなんとかしてもらおう。大丈夫、ヘーキヘーキ方角は覚えたからいつでも飛んで戻れるだろ。
人が居ない自販機の前に降り立ち背負っていた宇沢レイサを下ろす……あー、やべ、そういや金無いな。
まぁそこら辺の自販機ブッ壊せば飲み物なり小銭なり出てくると思うけど……
さて、どうするか……
「あのー、もしかしてお金無かったり……?」
「よくわかったね、君。名探偵になれるよ」
「私、プ◯キュアになれちゃいます?」
「なにそれ、最近のプ◯キュアって探偵業やってるの?」
「えぇっ!『名探偵プ◯キュア!』をご存知でない!?」
いや、ご存知でない……って、ニコニコネタか?
多分違うんだろうな、これがジェネギャってやつか。
───下手にツッコんでおっさん扱いされてもやだし、ツッコまないでおくか。
「いやぁ、最近のアニメ事情には疎くてね……」
「ふむ!ではでは、この稀代の名探偵と呼ばれた───宇沢レイサちゃんが布教してあげましょう!!」
興味ないね。ということでハッキリと断ろう。
「ごめんねぇ、僕は───っ?!」
───瞬間、足元に違和感を感じ取り、ぞわぞわと鳥肌が立つ。いやこのボディに毛穴とか無いけどね?
それぐらい嫌な予感がするってことだよ。
まぁとりあえず───俺は宇沢レイサの手を引き寄せ、片腕で抱きかかえた上で
「ひゃぇっ……!?」
すぐさま空気の拳を地面と垂直になるように一発叩き込み、勢いよく吹き出す温水とアスファルトの破片を無理やり地面に押し込める。
一切の手加減が出来なかったことで、余りの威力にアスファルトの一部が圧縮されているが……ともかく、霧も水滴も掛からない場所へと避難する事が出来た───
……ふぅ、アンパンチ(遅)
「な、何が…………ぇえっ…………!」
───言葉を失ったような様子の宇沢レイサ。
目線の先を見ればそこには霧がかった空気によって綺麗な虹が掛かっており、地面が極限まで圧縮された結果太陽光を反射してキラキラと輝いている。
身の危険さえなければ確かに見惚れていたかもしれない。
「くっくっく、この美しさがわかっているようだねぇ!中々見込みのある生徒じゃないかぁ!!」
「え───えぇっ!!……まさか此処って……ゲヘナ…!?」
テンション高めの黒髪白衣萌え袖ロリ。
日本人の三分の一くらいの性癖をトリミングして煮詰めたらこんなのが出来そう。(小並感)
「キミ、今ものすごく失礼なことを思わなかったか?」
「僕、純朴かつ清廉潔白純真無垢な正義の味方だからわかんないなぁ……」
「部長ー、周囲に設置した測定器具全部壊れましたー!」
続いて、赤髪の女子生徒が吹っ切れたように言う。
「えぇ……?象が踏んでも壊れないと評判の測定機器をパンチの遠当て一つで?ほんとに人間かこいつ……?」
「いやいやいや、どう見ても人間じゃないよね〜あれ。頭にパンついてるし!というか頭がパンだし!」
散々な言われようだな。
「ふむ……確かに……と、こうしている場合ではなかった。巻き込んでしまったことは誠心誠意謝罪するが、私たちは温泉を掘るという重大な使命を果たさなければならないんだ。此処はどうか引いてくれないだろうかっ?」
おお、迫真の演技だな。このメスガキめっ!
「良いよ───ただし、此処であったことを誰にも漏らさないことを約束してくれればの話だけどね」
「ほぅ。それはそっちの子がトリニティの生徒だから、かな?」
自信たっぷりの表情で言い放つ黒髪白衣萌え袖ロリメスガキ。
このロリメスガキの方を見た瞬間、正確にはロリの角と校章を見た瞬間、宇沢レイサの表情が固まったからな。面識はなさそうだったし、恐らくは此処に来ている事自体が問題なんだろう。
此処に連れてきたのは俺だし間違いなく俺の責任だが、だからといってレイサが俺に責任を押し付けれるような精神をしてるとも思えない。
「そうだね、僕たちが此処に来たのはほんの些細な不慮の事故なんだ。見逃してくれるのなら僕の方も見逃そうかな?幸いにも君ら以外の人は居ないからね」
「これは学園間の因縁の問題だ。無償で見逃すってことはできそうにないが、そうだな。例えば今後、私たちが困っている時に助けてくれるってのはどうだ?」
……困った時に助けるか……まぁ別に構わない。俺は正義の味方アンパンマンだしな。
「わかった、だけど今回は除いても良いかな?」
「あぁ、ここの源泉はどのみち温泉には使えないからね。私たちも撤収するつもりさ、それで構わないよ」
「じゃ、そういうことで───」
俺は宇沢レイサを俵のように担いで飛び上がり、来た道を戻るようにして帰っていった。
1分くらいの間、放心していた宇沢レイサが顔を真っ赤にして暴れていたがそれは些細なことである。