俺は港町へと一人赴く。
森から港町に近づくにつれ、コンクリートやアスファルトのような人工資材で整備された道が現れ、民家が見えてきた、もう既に街へと入っているはずだが人が見当たらない、買い物を中断した、乗り物を乗り捨てて逃げたような跡がある、俺の接近は勘付かれていると見て間違いなさそうだ。
あの半魚人の武装から察するに惑星ベジータの科学力と似たようなレベルに居ると予想していたが、概ね当たっていた、ポッドの飛来も感知していただろう……ならなぜあの半魚人だけが現れたのか疑問だな……。
近未来的な街路を辿っていくと港町の中央部へと辿り着く、一際大きな城のような建築物、恐らく政府と言うものがあってここがその中心だろう。
その前には大きな広場がある、民を集め演説でもするのだろうか、景観が整備されて見栄えがいい、背後に見える海原と合わせて見るとより情緒がある、高く売れそうな星だ、地上げはしないがそう思う。
ここまで来て一人もいなかったということは、この大きな建物に避難していると見て間違いないだろう、スカウターが有ればもっとスムーズに事が運ぶだろうが……無い物ねだりは止めよう。
「……さてと、やーい! 誰かいないのかーッ!」
返事はなしか、当たり前だけど、手荒になるが脅して反応を見よう。
見せつけるならこれが効果的だろうと思い気弾を小さい手に浮かべた、小さく光るだけの球体だがこれだけでもかなり疲れる、やっぱり修行しないとフリーザなんて夢のまた夢だ。
これを目の前の建物へ向ける、脅しに一発ドンと行ってやろう、さぁ行くぞと手に力を込めると何処からか俺を止める声がする。
「待ってくれ」
どこからともなく予想外が現れた。
「ナメック星人……!?」
……まずい、今の俺はナメック星人に勝てるほどのパワーはないぞ、そもそも一体なぜこんな所にナメック星人が? 故郷の星から滅多に外に出ないはずだろうに。
「私はルベーサと言う、この惑星ブカリの全権代理人だ……サイヤ人の幼子よ、このまま何もせず帰ってくれぬか、であれば私も手は出さない」
冗談じゃねぇや、あの筋肉、締まった体躯、間違いなく戦闘タイプのナメック星人、勝てないぞ、戦闘力が本当に天と地のほどの差がある。
ここは引くべきだ、言われた通り手のなかの気弾を消す、これで良いかと聞くようにナメック星人、ルサーべを見る。
「……意外なほど素直だな」
「悪いかよ、素直で」
と言えばルサーべは顔色変えて俺を見る、そもそもが緑色なのにもっと緑になった、目も少し開いてる。
「っ!? ……私も何度かサイヤ人と戦った事があるがお前のような純粋な者は初めてだ、名前は?」
「トロモシ」
「…………名前のついでに教えてくれないか、なぜお前のような良識ある者がこの街を襲うような真似をしたのだ」
「なんせ無人だったんだ、声を掛けても出てこないし、一発撃ってビビらせてやろうかと思ってさ」
「そこはサイヤ人らしい、か」
ま、転生者だし、サイヤ人の性格的特性は持ってないに等しい、血湧き肉躍る戦いより目的のための力が欲しいお年頃です。
ルサーべは顔色が元に戻って血色良さそう、更にさっきよりも気配が柔らかくなっている。
「トロモシよ」
「なに?」
「敵対の意思は……ないということでいいか?」
「……そっちが襲ってこないなら、俺は戦うつもりないぜ、正直な所さ、サイヤ人らしく生きるのは俺には無理だ」
「なるほど、どうやら私達は同じかもしれないな」
同じ、同じって? サイヤ人とナメック星人の共通項ってある? あ、尻尾と触角かな? ってなわけあるかーい!
「私は故郷ナメック星を離れ旅をしている、戦いと栄誉を求めてな」
「で、俺は穏便にやり過ごすタイプのサイヤ人…………あぁお互い変わり者だな」
「だろ?」
ルサーべが笑う、紳士的な口調だがその笑顔は野性味がある、戦いと栄誉を求めるナメックの放浪戦士、かたやサイヤ人らしからぬサイヤ人か……なるほどな、俺達は同じってそういう事か。
目を合わせるとお互いに笑う、まさかこんな所で出会うとは思わなった意外な仲間、そういった空気感が出来上がっていた。
笑い合っているとルサーべの後ろに老いた半魚人がのそのそと現れ、不思議そうに彼に尋ねる。
「あの……なぜサイヤ人と談笑を?」
「ベルキラ大統領、このサイヤ人はサイヤ人であってサイヤ人らしからぬ温和な子、警戒せずともよい」
「…………まことの話かルサーべ殿? …………ほっ、良かったわい、みんなー出てきてええぞー!」
老半魚人、ベルキラ大統領というのが現れると建物からぞろぞろと半魚人が出てくる、女、男、子供、老人、もれなく全員半魚人だった、皆ホッとした様子でそれぞれの家に帰っていく。
「悪かったなトロモシ」
「いいさ、サイヤ人なんだ警戒して当然」
「そう言ってもらえるとありがたい」
「所でルサーべ、武装した変わった半魚人を知ってるか?」
「…………それはスラトカだな、私が来る以前、星外から来た宇宙人に親を殺されたとかで、ひどく星外の者を恨んでいてな……残虐性のあるサイヤ人は特に恨んでいた……私も因縁つけられたよ、殺したのか?」
「ビビらせたら失神した」
「そうか肝っ玉が小さいからな……彼」
なんか、かわいそうな奴なんだな、アイツ……
「そう言えばトロモシ、大統領は君をゲストして迎えると言っていた、何かしたいことがあれば行ってみるといいだろう」
「じゃあ行ってみる、サンキューな、ルサーべ」
「いいのさ、何かあれば言ってくれ、可能な限り手伝おう」
惑星ブカリ、いいとこだな。