太陽が眩しい時間だ、あえて見上げて目を細めて見る、うーん、眩しい、それに空気が薄い、そして寒い。
それもそのハズ、惑星ブカリで一番標高が高い山の頂上にいるからだ。
高い山だ、ひたすらに高い、雲が遥か彼方眼下に広がる絨毯で、太陽はスタンドライトのように近く感じる。
荒涼とした山頂は武舞台一つ分、天下一武道会会場と同じ広さだ、空を飛ぶ俺たちにしては狭い。
ここには乾燥した食物と水、掘っ立て小屋をルサーべが用意している、ここはルサーべの修行場らしい。
「どうだ、中々落ち着く場所だろう?」
「落ち着くのは落ち着くが、むしろ高すぎないか? …………ここに飛んでくるまでにかなり疲れたんだが、もう……息が上がりそうだ」
「ふ、まだまだ始まってすらないぞ、私は一応宇宙を旅してきたんだ、その中でサイヤ人と何度かやり合ってどういう種族でどういう特性をを持っているか知っているつもりだ、成層圏までなら呼吸は出来るのだろう?」
「どうかな…………一応ここでもまだ普通に呼吸は出来るけどな」
「ならいいな、我々のような放浪の戦士は過酷な環境でこそ強く冷静な心を養わねばならない、最後に頼れるものは己だからな、己に裏切られたくはないだろう?」
ルサーべは掘っ立て小屋へと入る、俺も続いて入る、ベッドが2つと物置が一つ、棚が一つ、狭くもなく広くもない、修行場にある部屋という視点で見れば普通だろう。
「さてと、いつくかあったかな」
「何をしてるんだ?」
「ん? 修行を助ける薬をここに置いてある、これだ」
ルサーべが棚から取り出すのは瓶入りの丸薬、ほのかに金色を帯びて少し癖のある薬品という匂いがする。
「名付けてキンター薬、飲めば傷がたちまち治る、更に生命エネルギーの循環を整え精神を安らげる、更に更に食物の吸収を助け効率化する……私の力作だぞ」
「凄いな、後半の意味はよく分からないけど」
「使ってみれば効果がわかるさ」
「……うーん、なんか不思議だな、ナメック星人は水だけでいいんだろ? なんでこんな薬を作ろうと思ったんだ?」
「他のナメック星人はそうだろう、だが私はそうは思わない、強い体を作ってこそ強い力が生まれる、その源は豊かな食だ、食べてこそ強くなれると私はサイヤ人を見て思った」
「なるほど、一理ある」
「このキンター薬を一日一つ飲み、修行すれば……そうだな、サイヤ人の平均値を大きく上回る事ができるだろう、お前たちの言う戦闘力で言うところの…………1万までは一週間もあれば伸びるだろう、それから先は体を慣らしつつ高めればいい……最終的には10万を目標に詰めていけばサッファにも手が届くだろう」
「10万……やってやるさ」
それから俺の修行が始まった。
内容は至ってシンプル、食う、寝る、戦う、これを繰り返すだけだ。
ルサーべと組手を重ね、実戦のなかで生体エネルギー、つまりは気の使い方や身のこなし、格上への対応など覚えていく、俺は初めてサイヤ人が戦闘種族だと実感している、武術は覚えていくしかないが、攻めや引き、相手の急所、相手の気配、それらを嗅ぎ取る嗅覚が鋭いと自分でも驚いた。
シンプル故にとても厳しい修行だ、これに俺は更に瀕死になるまで追い込む事を付け加えた、というのもルサーべに提案したのだ、サイヤ人の特性の一つに死にかけの状態から復活すると大きく戦闘力が伸びるのだと。
「本気でやるのか? 一歩間違えれば死ぬんだぞ!」
「やる、じゃなきゃ何年経っても強くなれねぇ……俺はサイヤ人だからさ、サイヤ人が何に強くて何が弱いのか、わかる…………これはサイヤ人の良いところさ、追い込めば追い込むだけ応えてくれるのさ」
「………………キンター薬を二粒、前もって飲め、じゃなきゃうっかり殺しかねん」
「すまねぇルサーべ」
「やるからには手加減なしだ、泣いてもわめいても手は緩めない、いいな?」
「……おう!」
そこを説得し瀕死まで追い込むような過激な修行をする事ができた、一日に何度も瀕死になると痛みで馬鹿になりそうになるが、キンター薬はそれも治す、毎日新鮮な死の間際を味わい、着実に確実に俺は強くなっていく感覚がある。
そんな日が一週間、一ヶ月と過ぎていく…………そして三ヶ月後にはルサーべの動きを目で追い、気を探り、攻撃を与えては反撃を避け、フェイントを織り交ぜた攻防についていくことができるようになってきた。
次第に俺のなかに生まれた感情、強さへの渇望が、ルサーべとの修行で強まる、俺はどこまで行けるのか、どこまでも行けてしまいそうだと思い始めた。
「……今日で修行を始めてから1年、短いようで長いようで……ハハ、見違えたな…………我ながら良い先生だったと思うぞ」
「自分で言ってちゃ世話ないぜ、確かに俺は強くなった……まだルサーべの底は見てないけどな」
「冗談いうな、もうとっくのとうに私より強くなってるだろう、技術の差でなんとかなってるだけさ」
「その差がどうにもならねぇんだよ」
「まだ負けないさ……さて、稽古も終わりが近い、私から教えられることはすべて教えたつもりだ、私が伸ばせる伸び代もなさそうだ……君はまだ4歳、伸び代は無限大だ、私はその入口を開いただけだ、それでももうすでにサッファも相性次第では単独で倒せるほど強くなったな」
「どうしたんだ改まって」
「修行の仕上げをやろうと思ってな、この私と本気の試合をしよう」
「それってつまり…………アレもありか?」
「そうだな、君の作り上げた必殺技をつかって構わない、今まで教えた事のすべてをつかって私を倒してみろ、トロモシ」
「ああ、感謝を込めてぶっ倒す!」
俺とルサーべは荒涼とした山頂で睨み合う、かたやサーベルを構え、かたや自然体で構えることはなく、静かに風が吹いた。
俺たちの間には、静かで激しい気の渦が巻き起こり、これから始まる戦いの暗示をしているようであった。