世界を救え?できらぁ! 作:星5すり抜けとNTRは悪い文明
一回目の人生は本当に最悪だった。いやまあ、俺が悪いのかもしれないけどNTRのビデオを毎日毎晩のように部屋のタブレットに送られるし、一度でもマイルームに入れたサーヴァントは目を離したら寝取られる。
まともな彼女らと共にイカれた方法で自殺した─ついでに人理を救える方法で、だけど。最初にカウンセリングしてくれたロマニもいつのまにかいなくなってたけど、死んでなきゃいいんだが。
死んだ。転生した。死んだ。
幼馴染がどっか献血で外に出ていってから数日後。ちゅどーんとか他の言葉で形容できるのかもしれないけど、とりあえず地球は滅びましたとさ。
よくわからんけど二回目の人生もあっけなくよくわからんパワーによって死にました。前世みたいな死に方をしなくてよかった、と思うべきなんですけど。
「なんでこんな奇妙なとこにいるんですかね?」
地面から浮いている空中に神殿が浮かび上がっている。天国ってのはこんなところなんだろうか、そんくらいには神秘的。一回目の死ぬ前に三人で見た景色にそっくりだ。
白くてぶよぶよした踏み心地に驚きつつ、眩しい光を放つ方向へと歩いていく。
「世界の終末点って感じしてお得だねぇ。死んだ後にこんなところに来られるなんざ思っていなかった…っと」
後ろから呼び止められるように肩に手を置かれた。誰なのか気になってふりかえれば誰もいなかった。
正確には褐色の気の良いお兄さん。どこか混乱しながら話しかけてきているようにみえるのは気のせいではないだろう。
『少年、世界を救うつもりはないかね?』
「え、全然もっかいやりますけどその後の俺に関係するものに関する干渉はやめてください」
降って湧いた幸運だけどようわからん。この神様から告げられたけどやりたいことができるかって言ったらまた違う気がするし。
『…あっさりしている。ではすぐに君が呼び出されるようにしよう』
「うい、じゃ呼んでね。どうせチートみたいなもんつけてくれるんでしょ?」
警戒なんてするはずがない。あのときみたいなヘマはせん、なんざ思っても前回は無駄だった。
(やだよ、あんなカスしかいない場所。世界救った後に崩壊するようにお願いしといたけど、果たしてどうだか)
自分の身勝手で産んだ彼女に始末をお願いしたことを後悔しつつ、ゴキゴキと鳴る体を動かす。
「全員救う…は、無理だけど六人くらいは手を伸ばしたいんだ」
前も守れた人は三人…いや、二人だけか。最後の最後に作ったのは助けたには入らないだろう。
兄貴にも捨て駒みたいな戦闘をさせたし、本来サーヴァントにさせるはずじゃない無茶ばっかやらせてしまった。
『世界を救うためにその程度だけでいいのか?』
「あ?テメェ俺のことわかった上で呼んだんじゃねぇのかよ」
傷を負いすぎたし、今世の幼馴染に対してもなまじヤンデレがするような束縛をしてしまっているような人間だ。
『いや、失礼。君から手を伸ばしたいなんて弱々しいセリフが出るとは思わなくてね。一度は別の世界を救ったのだろう?』
「…俺達が助かる道がなかっただけだ。あちらさんが聞いてくれたら間違いなく救わなかった」
忌々しくはない─というより、憐憫の情を向けられた。そりゃそうか、もともとが人理に残るような偉大な人たちのはずなんだから。
(殆ど取られなかったのは混沌じゃねぇか)
結局汚染されなかったサーヴァントが反英霊に分類されている時点で終わっている気がする。
『その後悔を糧に進むといい。…どうか君の旅路が血塗れになることを願おう』
「へっ、そっちのほうがよっぽどいい。三回目のコンティニューは楽しみやねぇ」
人生をゲームのように楽しむ、なんてダメとは思うけど。
そうでもなきゃ、やってらんなかったからしょうがない。
藤丸立香は逃げていた。何から、なんて考えるだけ野暮だろう。
スケルトン。燃え盛る炎。歴史に残る偉人からの襲撃。普段の貞操の危機なんて比べ物にはならないほどの殺意。
「はぁ…はぁ…」
どこに逃げるべき場所があるかわからない。瓦礫からも逃げ回っていればついに追い詰められた。
(脳裏に浮かぶのが彼の顔なんてなぁ…)
いつも心配性なくらい自分のことを想って助けてくれる幼馴染。好きだと気づいても手のかかる妹くらいにしかあっちからは思われてないかも。
それでも立香にとっては初恋の人であった。彼女が死ぬ間際になって思い出すのは大切な人ばかり。名字が同じだからとやけに気にかけてくれた兄のような存在。
「キキッ、キ」
殺そうとするその短剣をぼんやりと見つめていた。黒く炭の塗られた短剣が立香の心臓をめがけて貫かんとする。
「…フーくん」
レイシフトやらなんやら─そもそも、彼に伝えてない献血からこんなところにいっていて、しかも来るはずがない。
「呼ばれたからには、行きますよっと」
だが、ここに例外が存在する。
いつも通りの、通学路で声をかけるかのような気やすさで彼は現れる。
白い皮をコートとして羽織り短剣を無造作に受け止めた彼は立香に対して仁王立ちで相対していた。
「えーと、なんて名乗ればいいんだっけなぁ…」
悩んでいる間に周囲に雷鳴を轟かせ、彼女へと迫る全ての害を破壊する。締まらなくてもその強さは日常と変わらないようだった。
「とりあえず、ストーカーしてきました?」
困ったように絞り出した声は、普段と同じだった。助けに来たときと同じ、すっとぼけた声。
「なんでストーカーするほうが疑問なの?おかしなフーくん」
目元の潤みを彼の顔で拭くように抱きしめる。なぜ来たのか、なんてわかりきっているからだ。
(私の危機に駆けつけてくれるって約束、ずっと守ってくれてるもんね)
どこまでも巻き込まれ体質な立香にとってのお守り。依存してはいけないだろうと薄々わかっていても避けられない魅惑の対象。
「一応、名乗ってもいい?サーヴァントとして来たからそんくらいしときたい」
「え、あぁ、うん」
落ち着かせるのが目的なのかそれとも単に引き剥がすのが目的なのか─わからないまま、立香は少しだけ寂しくなりながら彼から手を離す。
「個にして集。集にして個。
人理を救った上で全てを破壊した愚か者。
有名にして無名の暗殺者。
サーヴァントですらない─存在しない72の呪い」
丁寧にお辞儀をしてから立香に密着する。獣らしく、人を勢いそのままに殺そうとするように。思わずドキンと胸が鳴るが、彼女は逃げ出そうとする類の動機ではないことを理解していた。
「クラス・プリテンダー。仮名は
そのままチュッ、と小さな音。額に小さくキスをされたことで顔を赤くしたのもつかの間、コートを被せられて見えなくさせられる。
「ちょっ、フーくん?」
立香にはわかるはずもない彼の前世において、最も最初に彼へ傷をつけた少女。
関係ないと割り切っていようと出る声は低い声だ。
「マシュ・キリエライトか。わかりきった答えを返すつもりはないが、君に彼女を守りきれる資格などない」
「なっ…!」
純然たる殺意の顔。立香に見せないその無貌は、まさしく獣でしかない。マシュが一歩後ろに下がろうとも、殺意の質も量もなんら変わりはしていない。
「別にマシュ・キリエライトが藤丸立香を守れる白亜の盾であることは変わらないだろう。そこは変わらないとも」
だがそれでも死ねと突きつける。ただの八つ当たり。
(…あーあ、やんなっちゃう。同じ世界に転生してたのかよ)
とりあえず、NTRなんて悪い文明から立香だけは守る。
元人類最後のマスター・